6/25 R.I.S.E. ディファ有明興行 観戦記

Mask_Takakura2006-06-25

正直、チケット代にはやられた!

本日はディファ有明にてR.I.S.E.を観戦。


この興行の目玉はなんといっても、セミファイナルに控えた「須藤信充 vs 尾崎圭司」だ。マニアの間では「K-1 MAX 待望論」が渦巻いている須藤 信充だが、SBで宍戸 大樹の首を狙う尾崎 圭司だって決して弱い選手ではない。どちらも負けられない一戦、「隠れた実力者対決」は本当に楽しみだ。

また、本日は60kg級の1dayトーナメント「FLASH to CRUSH TOURNAMENT」も開催。こちらには「トンコツドロドロファイター」KAWASAKIや「熱血ヒーロー」ファイヤー原田が参戦。こちらも要注目だ…って、まあKAWASAKIも原田もキックを観戦していないと知らない名前だろうけど。


さて、いつもはサラリと書いているチケット代についてだが、今日は…。

やられた!

いつものように当日券を購入しようとしたのだが、安い席はすべて完売。「じゃあ今、売っている一番安い席は?」と尋ねれば…。

金壱万円也!

さすがの僕もこの料金設定には大きく動揺、ディファ有明の前で大きく考え込んだが…。有明は、お台場以外には近くには行く所がない。しかもお台場はカップルでないと面白くない場所。つまり格闘技ファンには逃げ場がないのだ。まあ、どうしても「須藤 vs 尾崎」が観戦したかった事もあり、ここはおもいきって一万円の席を購入する事にした。

くそ〜っ!当日は全体に立見席が出ると思っていたんだが、甘かったなぁ…。あまりのチケット代の高さに泣く泣く会場を後にするファンもいたようだし。


ねぇR.I.S.Eさん、立見席くらい出してよ。「一見さん」だってお客さんでしょ?

第一試合 正直、イマイチッ!

FLASH to CRUSH TOURNAMENT リザーブファイト 60kg契約 3分3R + 延長3分1R
○龍馬(170cm/契約体重60kg/y-park)
●藤井徹(170cm/契約体重60kg/湘南格闘クラブ)
[延長判定 2−1]
※本戦判定 1−0

大振りなパンチを振り回して前に出る龍馬に対して藤井はローキックで切り崩すが、龍馬は前進しながらのワンツーを止めない、こんな闘い方なのにスタミナも切れない、そしてクリンチも止まらない。単調な展開が続いたが、3Rも残り30秒、龍馬の裏拳がヒット。ここぞとばかりの攻勢を掛ける龍馬だったが、判定結果は龍馬の1−0で延長戦に突入。

延長R、前に出てワンツーを繰り出してはクリンチ…を繰り返す龍馬、藤井がこれを捌けない…という展開が3分間続く。観る側にはちょっと辛い展開だったが、この戦法を貫き通した龍馬が延長判定3−0で勝利。


闘っている二人には失礼だが…凡戦だったなぁ。

第二試合 正直、実力差があったっ!

FLASH to CRUSH TOURNAMENT 一回戦 60kg契約 3分3R + 延長3分1R
上松大輔(173cm/契約体重60kg/チーム ドラゴン)
●加護秀明(173cm/契約体重60kg/レグルス池袋)
[判定 3−0]

第一試合での龍馬と同じく、前に出続ける戦法を取る「R.I.S.E 軽量級のホープ」上松。しかしそのパンチは龍馬ほどには大振りではなく、まあまあシャープ。そして受ける立場になった加護だが…この打撃を捌けない。

2Rから上松がパンチのコンビネーションとヒザ蹴りで攻めると、打撃を喰らい続けた加護は防戦一方で下がる場面が増える。上松は3Rもこのペースをキープ、加護は下がる…というよりは「逃げる」場面が増えてしまった。判定の結果3−0で上松が勝利。


R.I.S.E.のアマチュア大会である「KAMINARIMON」で二度の優勝経験があるらしい加護だけど、この試合での上松との差は大きいように感じた。

第三試合 正直、トンコツはドロドロッ!

FLASH to CRUSH TOURNAMENT 一回戦 3分3R + 延長3分1R
○KAWASAKI(170cm/契約体重60kg/リアルディール/リアルディールライト級 王者)
●黒田アキヒロ(167cm/契約体重60kg/フォルティス渋谷/J-NETWORKライト級 四位)
[判定 3−0]

試合前にトンコツラーメンを客席に投げるKAWASAKI、どういうファンサービスだ。ちなみに僕はトンコツであれば「九州じゃんがららーめん」と「山岡家」が好き。特に「じゃんがら」はお店に行く度に替え玉を三回はする。ええ、長生きなんてできませんとも。

クリーミーなトンコツならココ、「九州じゃんがら」うぇぶ

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北で生まれた家系トンコツ最大のチェーン店、「山岡家」

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試合では、KAWASAKI得意の「トンコツドロドロファイト」が爆発。セオリー無視でとにかく前に出続けるKAWASAKI、黒田は完全に攻めが後手になる。何度もコーナー際でラッシュを仕掛けるKAWASAKI、攻め終わればクリンチ…という攻めを繰り返す。反対に黒田の打撃が入れば、マウスピースをわざと吐き出して休憩する。KAWASAKIは意外にしたたかだな。

対する黒田の打撃はそれなりにシャープだったが、この試合に関してはKAWASAKIの「トンコツドロドロファイト」にハマってしまい、全ラウンドを通して思うように打撃が出せていなかった。判定の結果、3−0でKAWASAKIが勝利。


「ヒジ打ちはなし」「組み合った時のブレイクが早い」というR.I.S.E.のルールであれば、KAWASAKIの戦法はかなり有効かも。っていうか、第一試合で勝利した龍馬も、第二試合で勝利した上松も、KAWASAKIと同じ戦法だったわけだが。

第四試合 正直、カッコいいっ!

FLASH to CRUSH TOURNAMENT 一回戦 3分3R + 延長3分1R
○末廣智明(167cm/契約体重60kg/大道塾吉祥寺支部)
●板橋寛(170cm/契約体重60kg/大誠塾)
[1R 46秒 KO]
※2ダウンによる

その佇まいからして他の選手とは一線を画していたのが大道塾の末廣 智明。空手家独特の厚みのある身体に凄みを感じる。このトーナメントの優勝候補との呼び声も名高い末廣は、試合でもそのポテンシャルを発揮。


試合開始早々、ミドルキックでプレッシャーを掛ける板橋に対して、末廣の右フックが一閃。その打撃のシャープさに観客が驚く中で板橋は一発でダウン、立ち上がるも足元がフラフラ。すぐさま末廣が左ストレート〜右フックを叩き込むと板橋は再びダウン。このトーナメントは2ダウン制なのでこれにて末廣のKO勝ち。泥試合と判定決着が続いた後での「戦慄のKO劇」に観客は騒然となった。


う〜ん、末廣は強いし、いい体格を持っている上、顔もカッコいい。こりゃあ今日のトーナメントの優勝候補と言われるのもわかるわ。

第五試合 正直、ファイヤーッ!

FLASH to CRUSH TOURNAMENT 一回戦 3分3R + 延長3分1R
水谷秀樹(172cm/契約体重60kg/スクランブル渋谷/DEAD or ALIVE TOURNAMENT '05 三位)
ファイヤー原田(170cm/契約体重60kg/レグルス池袋/J-NETWORKライト級 五位)
[判定 3−0]

「熱血ヒーロー」ファイヤー原田『ファイヤー劇場』が始まった。リングに上がれば大きく見栄を切って押忍の構え、試合前には大袈裟にファイティングポーズを構える。これぞ知る人ぞ知る『ファイヤー劇場』の入り口だ。だが、これに対して水谷も…同じくファイティングポーズで対抗。観客からは試合前から大歓声が。


1R、前に出ての裏拳を連発する水谷に対して原田はしっかりとガードを固めて防御。原田は逆に左ボディブローとローキックで攻勢を掛ける。しかし2R中盤、水谷の左ストレート〜ヒザ蹴りがグサリとヒット、原田は失速、水谷が前に出てのパンチで攻める。

3R、客席に向かって「勝つぞ!絶対に勝つぞ!」と叫んで『ファイヤー劇場』を展開、観客を沸かせた原田だが…水谷はローキックとヒザ蹴りを効かせて試合をリード。劣勢にまわった原田もボディブローとアッパーで必死に喰い下がり、試合は消耗戦に。疲労を隠せない両者だが、それでも最後まで打撃を繰り出し続けた。観客も大歓声で両者を応援。

判定の結果は3−0で水谷が勝利。逆転勝利に意気揚々と花道を歩く水谷に対し、原田は何もかも燃え尽きたように意気消沈。


それにしても原田は、見ているだけで銭の取れる選手だね。正直、選手としてはそんなに強くはないんだけど、「過剰なまでの感情表現」は観る側にも伝わる何かがある。格闘技なのだから選手として「強さを求める」のは当然だけど「観ている者を沸かせる」って姿勢も大事だよね。原田の『ファイヤー劇場』には賛否両論あるけど、僕は好きだな。

ちなみに。この試合でファイヤー原田以上に燃えていたのが、リングの外で興奮しながら原田を応援していた!サトル ヴァシコバであった事は追記しておく。応援の声も身体の振りもデカかった…。

第六試合 正直、トンコツは一回戦よりドロドロッ!

FLASH to CRUSH TOURNAMENT 準決勝戦 3分3R + 延長3分1R
○KAWASAKI(170cm/契約体重60kg/リアルディール/リアルディールライト級 王者)
上松大輔(173cm/契約体重60kg/チーム ドラゴン)
[判定 3−0]
※1R、上松はダウン1

FLASH to CRUSH TOURNAMENT の準決勝戦、第一試合は「一回戦で前に出続けてのファイトを貫いた者同士の対戦」。


試合全般を通して前進を続けたのは、元々このスタイルを「トンコツドロドロファイト」を称しているKAWASAKI。1R、前進しながらパンチを連続で繰り出しつつ、いきなり右フックをクリーンヒットさせてダウンを奪う。機先を制された上松、しかしKAWASAKIは前進に合わせてカウンターの右フックや右ストレートを叩き込んで反撃。

それでもKAWASAKIの勢いは止まらない。2R、3Rも「トンコツドロドロファイト」を貫き通すKAWASAKI、前進しながらのメチャクチャにワンツー、接近すればクリンチを繰り返す…という「蟻地獄」。上松は2Rこそワンツーやヒザ蹴りを当てていきリードを奪い返すも、時間が進むにつれてセオリー無視のKAWASAKIの打撃を喰らう場面が増える。試合終了直前にKAWASAKIの右ストレートが連続でクリーンヒット、上松はバテ気味だ。こうして判定の結果、3−0でKAWASAKIが勝利した。


う〜ん、KAWASAKIは前進してのワンツーをひたすら繰り返しているのに、それほどバテていないのが不思議だな。年齢だって32歳で全然若くないのに、なんでこんなにスタミナがあるんだろ?「これがトンコツラーメンの力なのか?」と思い調べてみたが…トンコツラーメンに含まれているコラーゲンには、新陳代謝を活発にする効果があるらしい。成程、KAWASAKIは若々しさをトンコツラーメンでキープしているのか。これは僕も、もっとトンコツラーメンを食わなきゃならんね。ま、僕の場合はその前に痩せなきゃいかんのだが(苦笑)。

第七試合 正直、大逆転っ!

FLASH to CRUSH TOURNAMENT 準決勝 3分3R + 延長3分1R
水谷秀樹(172cm/契約体重60kg/スクランブル渋谷/DEAD or ALIVE TOURNAMENT '05 三位)
●末廣智明(167cm/契約体重60kg/大道塾吉祥寺支部)
[判定 2−0]
※3R、末廣はダウン1

FLASH to CRUSH TOURNAMENT の準決勝戦の第二試合。一回戦を「ドロドロの消耗戦」の末に勝利した水谷に対して、末廣は戦慄の秒殺KO勝ち。体力の面から見れば末廣が圧倒的優勢で、そうでなくとも末廣はトーナメントの優勝候補。で、その下馬評通り末廣は序盤から実力を発揮し、そのまま圧勝するかに思われた。だが…。


1Rから首相撲からのヒザ蹴りと右ミドルキック、パンチの連打で攻勢に出る末廣。2R、末廣は首相撲からのヒザ蹴りを集中的に繰り出し、水谷に何もさせない。水谷のハイキックを悠々とスウェーでかわす余裕ぶり。

だが3R、苦境に立たされた水谷は状況打破の為に裏拳を繰り出すと…これがモロにヒット。予期せぬ一撃に思わず怯む末廣、そこへ水谷の裏拳が再びヒットする。フラフラになる末廣、水谷は左ストレートを叩き込みついにダウンを奪った。この「一発大逆転」の展開に観客も大歓声を上げる。

思わぬ失点、焦る末廣は組み付いてのヒザ蹴りを連発し挽回を図る…が、勢いに乗った水谷の裏拳が連続でヒットする。気がつけば末廣の顔面からは鼻血が。末広は必死にワンツーを繰り出しつつ前進するがクリーンヒットが出ない。そして終盤、末廣は攻め疲れでバテバテに。試合は判定にもつれ、2−0で水谷の逆転勝利。水谷応援団が大歓声で勝利を祝福する。


…いいのかなぁ、この判定?1Rと2Rは10-9で末廣、3Rは10-8で水谷で、28-28のドローが正しい判定だと思うんだがなぁ。

まあそれでも、水谷の逆転劇自体は非常に美しかったと思う。圧倒的劣勢の中、自分自身が持つ武器を総動員し、わずかに残された勝利の芽をしっかり掴む…という。「諦めない姿勢」が勝利に繋がった一戦というか。いいものを観た。

第八試合 正直、流しやがったっ!

70kg契約 3分3R
○白虎(177cm/契約体重70kg/レンジャー品川ジム/DEAD or ALIVE TOURNAMENT '05 準優勝 & 元NKBウェルター級王者)
●磨裟留(172cm/契約体重70kg/フリー/DEAD or ALIVE TOURNAMENT '03 優勝)
[判定 3−0]

昨年、現在はK-1 MAXで活躍するTATSUJIDEAD or ALIVE TOURNAMENT の決勝を争った白虎は典型的なキックボクサー体型、でもお腹がちょっとゆるい感じ。対する DEAD or ALIVE TOURNAMENT の初代王者、磨裟留の身体はムクムクと大きい感じ。総合格闘技の選手みたいだ。

で、パンフレットによると…この二人の対戦は「DEAD or ALIVE TOURNAMENT、昨年度ファイナリスト vs 初代王者」であると同時に「ハードパンチャー対決」という側面もあるらしい。


1Rはローキックを基点とした打ち合いとなる。距離を保ちながらの打撃戦は互角。二人ともローキックの間にパンチを絡めるが…成程、どちらの打撃も破壊力がありそうだ。2Rはローキックとパンチが交差する展開となったが、これまた互角。実力が拮抗しているな。

だが3R、両者に差がつく。白虎がワンツーがヒットした事を切欠に磨裟留を追い詰める。この後でヒザ蹴りもヒット、磨裟留が下がる場面が増える。磨裟留も必死にパンチを返すが、白虎は終盤にパンチのラッシュで優位に立った。ダメージの大きい磨裟留に対し、白虎は前に出てパンチのラッシュを仕掛けるが…トドメの一発が出ない。結局そのまま試合終了。判定は3−0で白虎が勝利。


う〜ん、白虎の最後のラッシュだが…判定で勝てると思ったのか、ちょっと流していたな。ラッシュは仕掛けていたものの、本気で倒しに行く姿勢が見えなかったというか。磨裟留が弱っていたのは事実なんだし、あそこはダウンを奪って欲しかった。

第九試合 正直、天才っ!

70kg契約 3分3R
須藤信充(172cm/契約体重70kg/team SUDO/前NKBウェルター級 & ミドル級王者)
尾崎圭司(169cm/契約体重70kg/チーム ドラゴン)
[2R 1分28秒 KO]
※3ダウンによる

本日の第九試合は、事実上のメインイベント。

これまで全日本キックライト級、K−Uライト級、NKBウェルター級、そしてNKBミドル級と、三団体・三階級・四つの王座を制覇。35歳にしてK-1 MAXへの進出を狙う「努力する天才」須藤 信充。テンションの高いキャラクター、ビッグマウス、天才的な打撃のセンス。天から色々なものを授かったこの男は、この試合前にも「2R以内にKOして、格の違いを見せる」とか「相手のことは尊敬しているけど、今までくぐった修羅場の数が違い過ぎる」などのビッグマウスぶりを発揮。

だが減量中に焼肉の魅力に負けて食ってしまいドカ食いし、しっかり当日の計量に失敗。九時間かけて1.1kgオーバーした体重を必死に落とし、22:00にどうにか計量をパス。そして尚、「尾崎君を相手にワンサイドで勝てないようだったら、K-1 MAXなんて言ってられない」と吠えまくる。これが「須藤クオリティ」、いちいち完璧すぎるキャラクターだな。


須藤の対戦相手は、チーム ドラゴン所属の尾崎 圭司は「R.I.S.E.のエース」の一人。テコンドーをベースとした独特のスタイルを持ち、裏拳やソバットに代表される回転系の技を得意としている。現在はSBが主戦場、虎視眈々と宍戸 大樹の首を狙っている男だ。現在までの戦績は12戦11勝1敗4KO、いかに須藤が天才であっても一筋縄では行かない相手のはず。


…だったが、終わってみれば須藤の完勝劇。これが「須藤クオリティ」


1R、尾崎は打撃を出さずにジリジリと前に出て須藤をロープ際へと追い詰めると、前蹴り、ローキック、飛びヒザ蹴り、ソバット等を単発で繰り出しプレッシャーを掛ける。対する須藤、強烈なボディブローで尾崎を牽制。ボディブローは須藤の得意技、尾崎としては警戒したいところ。

2R、いきなりクライマックス。尾崎の飛びヒザ蹴りが須藤にヒット。鼻血を噴き出す須藤。


だが、これで「努力する天才」に火がついた。


須藤はすかさず強烈な左ボディブローを尾崎に叩き込み、怯んだ尾崎に左右のフックを繰り出して逆にプレッシャーを掛ける。ボディブローが効いた尾崎、須藤の攻めが終わると反撃の右ローキックを放つが…須藤はこれを待っていた。カウンターの左フックを繰り出すと、片足立ち状態だった尾崎の顔面にモロにヒット。一発で効いてしまった尾崎がダウン、観客もこの一発に歓声を上げる。イヤイヤ、須藤の一発は本当にとんでもない破壊力を秘めているな。

カウント8で立ち上がった尾崎、だが須藤は容赦なくラッシュを仕掛ける。ワンツーとボディブローのコンビネーション、尾崎は左のショートフックを返すが…、待っていたのは「努力する天才」の一撃。振りの小さいフックに合わせたカウンターのショートアッパーが尾崎の顎を貫いた。尾崎はあえなく崩れて二度目のダウン。あまりに天才的な一撃、これが「須藤クオリティ」

そしてこの一撃で勝負あり。再び立ち上がった尾崎だが、足元はフラフラだ。必死にガードを固める尾崎に対し、須藤はハイキック、フック、ローキックと叩き込む。ガクッと崩れる尾崎が三度目のダウンを喫して試合終了。終わってみれば「予告通り」の2RKO劇、そして予告通りの「ワンサイド」。須藤、圧勝!

勝った須藤はマイクを持ち、テンション高く「いや〜、尾崎君のスピードにテンパったんだけど…。ま、試合には破壊力とタイミングとスピードが必要だってことで勉強になりました。ハハハハハ!」と高笑い。その明るいキャラクターに観客がドッと沸く。


尾崎が実力者である事は、僕自身がSBでの試合を観戦しているので知っているのだが…。その尾崎を何の問題にもせず勝利する須藤。彼をNKBで初観戦した時は「正直、そんなに強くないのでは?」と思っていたんだが…この一戦でハッキリと判った。彼は強い!ハンパでなく強い!特に二度目のダウンを奪ったアッパーは本当に凄い一撃だった。脱帽です。こうなったら次は、海外の強豪選手との対戦が観てみたいねぇ。

第十試合 正直、感動!

FLASH to CRUSH TOURNAMENT 決勝 3分3R + 延長3分2R
水谷秀樹(172cm/契約体重60kg/スクランブル渋谷/DEAD or ALIVE TOURNAMENT '05 三位)
●KAWASAKI(170cm/契約体重60kg/リアルディール/リアルディールライト級 王者)
[3R 45秒 KO]
※左ローキック/KAWASAKIは3Rにダウン2、二度目のダウンでKO

FLASH to CRUSH TOURNAMENT の決勝戦は、意外にも「共に三十路を行く者同士の対決」となった。「逆転勝利男」がこの試合でも逆転勝利するのか?それともトンコツパワーがトーナメントを制するのか?


1R、KAWASAKIは相変わらず「トンコツドロドロファイト」を貫き、水谷は組み付いてのヒザ蹴りや左ミドルキックで対抗。試合は「蹴っては組み、殴っては組み」の我慢比べだ。2R、水谷が前進を開始、KAWASAKIのお株を奪う「トンコツドロドロファイト」を展開する。KAWASAKIもパンチで対抗、腰は入っていないがグチャグチャに殴り合う両者だったが、この消耗戦に競り勝ったのは水谷。パンチの合間にローキックを繰り出せば、KAWASAKIは蹴られた足を気にする素振りを見せる。

3R、ついに決着。開始直後に水谷がローキック、足にダメージの残るKAWASAKIは思わず転倒。これを見た水谷、再び左のローキックを繰り出す。足元から崩れるKAWASAKI、レフリーがダウンを宣告する。水谷応援団の大歓声の中、水谷は何とか立ち上がったKAWASAKIに再び左のローキック。KAWASAKIはあっさりと二度目のダウンを喫し、そのまま立ち上がる事ができなかった。観客の大歓声の中、トーナメントを必死に闘ってきた水谷が見事な優勝を果たした。

勝った水谷はリング上の勝利者インタビューの中で「年齢が遅くなっても、願いをずっと持っていれば必ず叶います。今日の僕の試合でそれが伝われば嬉しいです」とコメントしていた。


実は水谷、昨年は DEAD or ALIVE TOURNAMENT に出場していた選手である。DEAD or ALIVE は 70kg級のトーナメント、つまり水谷は今回、体重を10kg落としているのだ。彼が「優勝」という言葉に高いモチベーションを持っていた事がわかる話だが、今日は試合展開でも「勝ちたい気持ち」を体言いたように思う。原田との試合ではボロボロの消耗戦を制し、末廣との試合は劣勢の中で放った一発で勝利を呼び込み、そしてKAWASAKIとの試合では相手のお株を奪う前進ファイトでKOを修めた。そしてこの事実を踏まえた上、もう一度上記の水谷のコメントを読んで欲しい。文章だけでも、言葉が重く感じられるでしょ?

また彼はインタビューの中で優勝賞金の使い道を聞かれて「いままで31年間、迷惑ばかり掛けていた母親に親孝行をしたいです。お母さん、今日は喜んでくれた?」ともコメント。う〜ん、本当に親孝行な気持ちがないと、こういうコメントは出ないよなぁ。彼の人柄が伝わってくるね。こういう人には、素直に「優勝おめでとう」といいたくなるよ。

雑感

本日の興行、トーナメントについては正直、内容的には単調な部分もあったけど…レベルはそこそこだったし、水谷の優勝劇は感動的だったし、ファイヤー原田もいたし(笑)、結構満足している。ま、ぶっちゃけ一万円の価値があったかどうか別だけど(笑)。

で、ちょっと気になったのはR.I.S.E.のルール。上に「内容的は単調な部分もあった」と書いたのは、試合の殆どが「突進を繰り返した選手が勝つ」という図式であった事を指している。「ヒジなし」「組み付きは即ブレイク」というK-1に近いルールを採用しているR.I.S.E.だが、このルールだと足を止めない選手はみんな突進して組み付き…を繰り返すんじゃないの?と考えさせられた。正直、僕は「ヒジ打ち」や「ヒザ蹴り」のある普通のキックボクシングのルールの方がいいなぁ。

あと、須藤はわかってはいたけど天才だ。正直、日本のキック界では彼を相手にできる選手は少ないだろう。さっさとK-1 MAXに出場してくれ(笑)。


以上、長文失礼。