4/4 K-1 MAX 横浜アリーナ興行(地上波) 簡易観戦記

なんとなく影の薄いK-1 MAX

う〜ん、今回のK-1 MAXはどうにも中途半端な印象を受ける。いわゆるK-1 MAX 世界大会への布石的となる興行なんだろうけど…今一つ、興行の焦点が定まっていない感じがするね。僕としては、魔裟斗の復活、ダニエル・ドーソン&山内裕太郎K-1 MAX参戦以外は、あんまり興味が沸かないなぁ。

ちなみに今回の興行、観客動員数は11000人台だったようで。う〜ん、横浜アリーナでこの数字はちょっと寂しい。正直、数字の上ではWJの旗揚げ興行よりも少ない事になるんだよね(苦笑)。ま、実際の数字はそれよりは多いと思うけどさ。

第零試合 少年よ、夢を持て

60kg契約 3分3R
○HIROYA(164cm/60.0kg/フリー)
西村憲孝(170cm/60.0kg/KSS健生館)
[1R 2分47秒 KO]
※3ダウン

う〜ん、15歳でキックデビューっていうのはちょっと聞いた事がないなぁ。17歳の選手は沢山いるけどね。で、そのHIROYA、右のローキックで相手を崩して、パンチでダウンの山を重ねて1RKO勝ちですか。これはまた、お見事でしたなぁ。

これから先はタイで武者修行だそうで。う〜ん、凄い決断をする15歳だなぁ。多感な時期をタイで過ごすのは色々と大変だと思うけど、キック界の未来の為にも頑張って欲しいね。

第一試合 こんなところで終わる選手ではないハズだ

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
イアン・シャファー(172cm/70.0kg/オーストラリア/ファイブリングス オーストラリア)
尾崎圭司(169cm/68.0kg/チーム ドラゴン)
[判定 3−0]
※尾崎は1Rにダウン2、2Rにダウン1

テコンドー系の回転技ばかりがクローズアップされる尾崎。だが彼の本当の武器は、一発一発の打撃の強さにある。しかし、それはシャファーとて同じ事。「だとしたら、より破壊力の強いシャファーが勝つだろう」と予想していたのだが…、「案の定」といったところだな。

それにしても、K-1 MAXの舞台で宍戸大樹に判定で勝っただけで、随分と持ち上げられている尾崎だけど…。その宍戸戦ではスタミナ不足を露呈し、佐藤嘉洋戦では格の差と無策さを曝け出し、そしてこのシャファー戦ではローキックを効かせながらも、肝心なところで回転系の大技に頼ってしまうツメの甘さを出してしまった。

正直、今の尾崎は世界と闘える選手じゃないと思うね。反面、ここで終わるような選手でもないと思うので、K-1 MAXでの経験を活かし、もっともっと練習した上での捲土重来を期待したい。

第二試合(未放送) やはりミドル級ではムリなのか

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
○ツグト・"忍"・アマラ(171cm/68.0kg/モンゴル/フリー)
ジャダンバ・ナラントンガラグ(170cm/70.0kg/モンゴル/プチテンジム)
[判定 3−0]

ふむ、正直アマラがパワー負けすると思っていたんだけど…、どうやら勝ったようで。

とはいえ、スポナビの記事を読む限りでは…1Rこそ攻勢をキープしたものの、2R〜3Rは追いつかれたようで。アマラは本来、ラウンドが進むごとに回転数を上げていく選手なんだけどねぇ。やはりライト級からの約10kgアップというのはムリがあるよなぁ。

第三試合 今日もまた「武田劇場」が炸裂

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
マイク・ザンビディス(167cm/68.7kg/ギリシャ/メガジム)
武田幸三(173cm/69.6kg/治政館/K-1 MAX '03 日本大会 準優勝)
[判定 3−0]
※武田は1Rにダウン1

誰だよ!こんな「ラスベガスでは賭けが成立しない」ようなマッチメイクをした奴は!アゴの弱い武田さんが、ボクシングを得意とするザンビディスに勝てるワケないだろ!

…とはいえ、僕の予想よりは武田さんは頑張ったと思います、結果は完敗だったけど。それにしても、武田のあの「ガードの甘さ」は何とかならんのかねぇ。そしてザンビディスのコンビネーションは相変わらずの美しさだった。ホント、銭のとれる選手だと思うよ。

第四試合(未放送) 帰ってきた「オーストラリアのSB戦士」

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
○ダニエル・ドーソン(176cm/70.0kg/オーストラリア/SBオーストラリア/WBOスーパウェルター級 七位)
ジョーダン・タイ(180cm/69.0kg/ニュージーランド/レイ セフォー ファイトアカデミー)
[判定 3−0]

コレ、いいカードだな。是非、テレビで放送して欲しかった。

んで、スポナビの記事を読む限りでは、ドーソンがボクシング・テクニックを駆使してタイを圧倒したようで。S-CUPでは調整不足によるスタミナ切れで敗れ去ったドーソンだが、今回はそういう事はなかったようだ。

曲者タイを一方的に下したドーソン、本格的にキック界へ復帰するとなれば「K-1 MAXにまた一人、強豪が参戦!」と言わざるを得ないね。

第五試合(未放送) せっかく勝ったのに、地上波未放送とはねぇ

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
○TATSUJI(174cm/70.0kg/アイアンアックス/K-1 MAX '05 & '06 日本大会 準優勝)
アルバート・クラウス(175cm/70.0kg/オランダ/チーム スーパープロ/K-1 MAX '02 世界大会 優勝)
[判定 2−0]

う〜ん、どんなに微妙な勝利であっても、どんなに試合内容がつまらなかったとしても…、初代K-1 MAX王者に日本人が勝ったのだから、ダイジェストでもいいから放送すべきだったんじゃないかなぁ。

で、試合自体はKOやダウンが飛び出すような試合ではないにせよ、TATSUJIがパンチで攻めきったようで。本人はそういう闘い方を反省しているようだけど、どうせK-1 MAXラウンド数は短いのだから、手数で押し切る闘い方もアリだと思うんだけどね。ムリにKOなんて狙う必要はない、というかね。

まずは勝つ事が大事だよ。格闘技の世界は「勝てば官軍」というかね。

第六試合 元ボクサー同士ならではの攻防

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
ヴァージル・カラコダ(178cm/70.0kg/南アフリカ/ウォリアーズMMAアカデミー)
前田宏行(178cm/70.0kg/BUKURO GYM)
[判定 3−0]

う〜ん、なかなか面白い試合だったなぁ。

キック・ボクシングにおけるカウンターって、いわゆる「後の先」が多いんだけど…。この試合におけるカウンター合戦は「先の先」の奪い合いだったねぇ。前に出ようとする相手に合わせてパンチを当てていく、というねぇ。ボクシング出身の選手同士ならではの試合展開だね。

とはいえ、「拳が互角なら…」とばかりにカラコダは右ローキックを連発。これを捌けない前田は徐々に失速、最終的にダウンこそ免れたものの判定負けを喫してしまった。この試合での前田は、あまりにもローキックに対して無防備すぎ。先にパンチで倒すつもりだったのだろうけど…K-1 MAXはそんなに甘い世界ではない、というか。逆に言えば、ローキック対策さえシッカリすれば、前田はもっと上に行けると思う。

年齢的には非常に厳しい前田(35歳)だけど…頑張って欲しいね。

第七試合 絶対王者、ついに完成

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
ブアカーオ・ポー・プラムック(174cm/68.0kg/タイ/ポー プラムックジム/K-1 MAX '04 & '06 世界大会 優勝)
アンディ・オロゴン(181cm/70.0kg/ナイジェリア/チーム オロゴン)
[判定 3−0]

う〜ん…正直、アンディがここまでやるとは思わなかったなぁ。今となっては小比類巻貴之が負けるのも頷ける、というかね。パンチもなかなか巧いし、ディフェンスもシッカリしてるしねぇ。試合中に谷川貞治Pが連呼していた「自分の身体の特徴を活かした闘いができている」という言葉は、まさにその通り。小比類巻にアンディの爪の垢を煎じて飲ませてあげたいよ。

それでも、試合自体はブアカーオの完勝。この試合で僕が恐ろしくなったのは、ブアカーオがローキックでアンディを切り崩していたこと。ムエタイ出身のブアカーオ、ミドルキックは得意技だが、ローキックを放つイメージはなかった。昨年は強烈なパンチを身につけたブアカーオ、僕は密かに「これでローキックを覚えたら本当に手がつけられないなぁ」と思っていたんだが…。「ローキックを覚えた」という事は、ローキック対策も万全なんだろうなぁ。こうなると本当に誰も勝てないかも。

第八試合(未放送) 悔しい、ただただ悔しい

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
○ドラゴ(175cm/70.0kg/アルメニア/チーム イッツ ショータイム)
山内裕太郎(180cm/70.0kg/AJジム/全日本スーパーウェルター級 王者)
[3R 1分50秒 TKO]
※タオル投入/山内は1Rにダウン1、2Rにダウン2、3Rにダウン2

全日本キックでは「敵なし!」となった山内が、いよいよK-1 MAXへ進出。しかしその結果は惨いものになったようで…。う〜ん、宍戸大樹の時と同じくらい、この結果にガッカリしているキック関係者は多いだろうなぁ。んで、一ファンである僕もガッカリ、本当にガッカリ、心底ガッカリ。

スポナビの記事を読む限りでは、スロースターターの山内が序盤に強烈な一撃を喰らい、すべての歯車が狂ってしまったように読める。そういえば山内は、一撃が強烈なタイプの選手は苦手にしている印象があるんだけど…ドラゴはモロにそのタイプに属する選手ではあるねぇ。あとは、ドラゴの変則的な打撃の軌道を見切れなかったんだろうなぁ…。

この試合に関する別の記事で「倒れても立ち上がる山内の精神力には、観客から惜しみない拍手が起きた」と書いてあるのを読んだけど…。ハッキリ言って僕が見たかったのは、勝って堂々と勝ち名乗りを受ける山内の姿なんだよね。僕はK-1 MAXの舞台で…「精神力が強い」とかではなく、いつも見ていた「本当に強い」山内を早く見たいよ。

第九試合 キミはこんなところで足踏みをする選手ではないハズだ

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
アンディ・サワー(172cm/70.0kg/オランダ/SBオランダ/K-1 MAX '05 世界大会 優勝)
佐藤嘉洋(184cm/70.0kg/フルキャスト&名古屋JKファクトリー/K-1 MAX '05 & '06 日本大会 優勝)
[判定 3−0]

う〜ん、1Rは確実に佐藤のラウンドだと思ったんだけどねぇ。リーチを活かしてインロー、アウトロー、テンカオと小気味よく放っていたし、サワーもかなりやり難そうにしてたしね。で、2Rからは前に出るサワー、佐藤はサワー得意の左ボディを喰らって失速、これ以降はサワーのプレッシャーに苦しむ事に。1Rの圧倒ぶりもどこ吹く風、コツコツと打撃を喰らい続けた佐藤は判定負けを喫してしまった。

ぬぅ、佐藤はもっと前蹴りとかジャブとかを散らして徹底的に距離を突き放せば良かったのに。佐藤が思っている以上に、サワーは佐藤みたいな選手(=長身の選手)を苦手にしているのだからね。なんか、勝てる試合を落としてしまったように見えたよ。満身創痍の緒形健一が勝てた選手に、なせ佐藤が勝てないんだよ?

佐藤はもう少し、K-1 MAXでの闘い方を洗練した方がいいと思う。いつまでも「日本では最強、世界には勝てない」ってポジションにいてはイカンよ。

第十試合 これでも充分に強いのに、更なる強さを求められるのが今のK-1 MAX

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
魔裟斗(174cm/70.0kg/シルバーウルフ/K-1 MAX '03 世界大会 優勝)
オーレ・ローセン(177cm/70.0kg/デンマーク/アンテイムド)
[判定 3−0]

ふ〜む、なんだかんだで魔裟斗は強いねぇ。

今日の魔裟斗は、打撃を上中下に散らしていたのが良かったなぁ。特に右のローキックはかなりの嫌がらせになったんじゃないかな。パンチのコンビネーションも止まらなかったし、時折放つ右のミドルキックも良かったし、常に前に出る姿勢も良かった。ローセンも強かったけど、今日の魔裟斗はその一枚上を行っていたね。

だが、しかし。こんな事を言うのは酷なのだが、谷川貞治Pも「今日の魔裟斗は凄く良かった!」と絶賛する程の強さを見せられても、「今日の魔裟斗がブアカーオと闘ったら」とか考えると…正直、魔裟斗が勝つ姿を想像できないんだよね。世界一の壁を越えるには、今日の完璧さに更に「プラスα」が必要となるだろう。パワーとか、スピードとか、スタミナとか、ね。

う〜ん、「人類最激戦区」の頂(いただき)はあまりにも高い。っていうか、ブアカーオが高くしちゃったんだけどさ。

雑感

KO劇の少ない地味な試合内容、日本人の相次ぐ敗北により、全体的には印象の薄い大会になったような気がするねぇ。そんな中、キッチリと結果を残す魔裟斗はさすがですな。それにしても…、山内の敗北は本当に無念。キック界では数少ない「最後の大物」だったんだけどなぁ…。

こうなったら、日頃から「魔裟斗なんて簡単に倒せる!」と吹きまくり、食べるのは大好きで減量は大の苦手、今はギックリ腰で療養中のアノ男に参戦してもらうしかないな。

というワケで、フリジッドスター氏(id:frigidstar)も貼っているYouTubeの動画を僕も貼る。

計量前に焼肉の誘惑に負けて食べまくり、計量日に6時間かけて減量するハメになりつつも、
試合では尾崎圭司をKOする男。その名は須藤信充


コノ男がどこまでK-1 MAXで闘えるのか、非常に興味があるんだよね。


以上、長文失礼。