3/30 アイスリボン 市谷アイスボックス興行 観戦記

あぶれたッス

本当は後楽園ホール全日本プロレスを観ようとしていたのだが、当日券は見事に全席売り切れ。観客動員数で苦戦を噂されていたチャンピオン・カーニバル五連戦だが、さすがに決勝戦は大入りだったようで…。我ながらナメ過ぎたな。


こうして僕はアッサリとこの日の目的を失ったのだが、ボカァこの程度では転ばない。いつもの悪い癖で「この際、何でもいいから観たい」と思い立ち、すぐにこの日の興行予定を調査。その結果、水道橋から二駅先にある市ヶ谷でアイスリボンが開催されている事が判明した。


「ぬぬぬぅ…。よりによってアイスリボンかぁ。さすがに抵抗があるなぁ…」

さすがにちょっと躊躇したッス

知らない人の為に書いておくが、「アイスリボン」とはさくらえみが主宰する女子プロレス団体である。我闘姑娘から独立したこの団体の特徴は、所属レスラーが『キッズ』と呼ばれる女子小中学生を中心に構成されている事にある。老舗団体の相次ぐ倒産・解散により若手が育つ環境がなくなった事により、選手の高齢化が激しくなった女子プロレス界において、アイスリボンは「女子プロレスの新しい形」として注目を集めているのだ。


とまあ、偉そうに能書きを書いては見たが…つまりまあ、僕は今から「女子小中学生のプロレス」を観ようとしているのだ。


正直、色々な団体を観戦してきた僕ではあるが、これにはさすがに抵抗があった。「三十路を越えた独身男」の行為として、「女子小中学生のプロレス」を観るのは正しいのだろうか?こうしている間にも、人間としてやる事はないのだろうか?本当にこんな事でいいのだろうか?とは思ったが…。


何を書いたところで、こうして観戦記を書いている時点で既に「観に行った」のは確定、というか。結局、僕の良心は「一体、どんなプロレスが行なわれているんだろう?」という好奇心に勝てなかった…。

何もかも違ったッス

さてさて。アイスリボンという団体は「市谷アイスボックス」という場所を常打ち会場としているのだが、今日はこの場所で毎週金曜日に行われる定期興行を観戦する事になる。アイスリボン初観戦の僕にとっては、この市谷アイスボックスも初見だったのだが、その空間の特殊性には心底、驚かされた。


まず、会場が異常に狭いのだ。間取りで言えば15畳程度の大きさしかない。賃貸オフィスを強引にプロレス会場にしている市谷アイスボックス、その中には4m四方の青い「低反発マット」が無造作に敷いている。そしてマットを囲むように丸椅子が20個ほど準備されており、あとは音響用のラジカセが一台。シンプルといえば、これ以上ないくらいにシンプルな作りだが…、これこそがアイスリボンの全容なのだ。


他のプロレス団体とは、何もかもが勝手が違うアイスリボン。闘いのフィールドは狭い上、目の前には素人のお客さんがビッシリ。ロープもなく、コーナーポストもない。こんな特殊な空間の中で、このリングで闘うレスラー達はどのように自己表現をするのだろうか?ちょっと楽しみだな。


そりゃそうと、こんなに金の掛からない会場なのに…、チケット代は2200円だってさ。ま、小額といえば小額なんだけど、設備とか出場選手の事とかを考えるとちょっと高いような気がするなぁ。1500円くらいが妥当だと思うんだが…。ま、目くじらを立てる程の事ではないんだけどさ。

生暖かいッス

いよいよ興行開始。まずは主宰のさくらえみが「♪金曜日はぁ〜アイスリボん〜、市ヶ谷へ行きましょおぅ〜 ゴォう!」と恥ずかしそうにテーマ曲を歌い、いよいよ選手入場。当然ながら「キッズ」と呼ばれる女の子達も元気よく入場してきたのだが…。


う〜ん、なんていうかねぇ。ある程度は想像できた事ではあるんだけど…やっぱり「キッズ」はか弱いんだよなぁ。

アイスリボン所属選手紹介(オフィシャルサイトへのリンク)

http://ice-ribbon.ne07.jp/blog/st_profile.html


こんな子供達が、大人から銭を貰ってプロレスするのかぁ。一体全体、どんな苦労があって、こんな人生を歩んでいるのだろう?親は病気しているのかなぁ?毎日、お見舞いに行っているのかなぁ?朝五時に起きたら、まず弟の分もお弁当を作った後で新聞配達をしているのかなぁ?…と、勝手に妄想して悲しくなっていた。いや待てよ、彼女達はただ単にお小遣い欲しさにプロレスをし、そのお金で夜の街…、ダメだ、これ以上の妄想するとロクな事にならん。


そりゃそうと。ある程度予想していたんだが…、その予想以上に、周りの『ファン』の視線や声援は生暖かかった。キッズ達のやる事なら全肯定する『ファン』の群れ、妙に縦ノリなその空気はプロレス会場のソレではなく、寧ろアイドルのミニ・コンサート会場という感じ。正直、この空気はかなり苦手だなぁ。

第一試合 これがアイスリボンの世界ッス

シングルマッチ 10分一本勝負
○ホノ(136cm/29kg) ※平成7年10月16日 生
みなみ飛香(157cm/40kg) ※平成6年12月27日 生
[4分59秒 片エビ固め]
ムーンサルト・プレス

小学6年生と中学1年生による対決…という割には、両者の体格差は相当に激しい。人間って、一年でこれだけ成長するものなんだなぁ、と妙なところで関心してみたり。

それにしても、小学生の女の子は本当に身体が柔らかいねぇ。だけど小さな女の子が、相手に向かってお腹にストンピングを入れる姿というのはちょっと引くなぁ…とか考えていたら、ホノがみなみをムーンサルト・プレスで下していた。

第二試合 でも男子プロレスもあるッス

シングルマッチ 15分1本勝負
趙雲子龍(165cm/65kg/フリー)
●大橋篤(163cm/70kg/大日本(デビュー前))
[9分24秒 キャメルクラッチ]

4m四方に満たない程に小さい上、ロープも存在しないフィールド。普段のプロレス以上に創意工夫が要求される環境の中で、趙雲はグラウンド技と得意の打撃で試合を組み立てていく。これに大橋もよく喰らい付き、中盤の張り手合戦ではドロップキックで趙雲を倒す場面も。ふむ、高橋のような「デビュー前の選手」に、観客の前で闘わせる経験を与える、というのは良い事だと思うな。

で、勢いに乗った大橋は、先輩の高梨を踏み台にしてスイングDDTを敢行するも、趙雲は「調子に乗るな!」とばかりに高橋をキャメル・クラッチに捕らえる。垂直になるくらいに身体を曲げられた大橋には、タップする以外にこの技から逃れる術はなかった。ま、デビュー前だしね。

第三試合 でもってハンディキャップマッチもあるッス

ハンディキャップマッチ 15分1本勝負
○李日韓(158cm/63kg/大日本(レフェリー))
vs
●真琴(166cm/51kg) ※平成1年9月26日 生 & 対人恐怖症
●牧場みのり(154cm/59kg) ※平成4年11月4日 生
[3分32秒 エビ固め]
※2人まとめて押し潰す

真琴と牧場は、李のダンナさんである伊東竜二の入場曲である「MORTAL KOMBAT」に乗って入場。履いている衣装も伊東が着ているものとまったく一緒な上、Tシャツまでもが伊東のもの、しかも今では売っていないバージョン。当然ながら李は照れまくり。


さてこの試合、僕は「普段は大日本プロレスでレフェリーをやっている李がプロレスに挑む」という事で、ちょっと注目していたのだが…、それ以上に目を惹いたのが真琴の存在。色々と噂には聞いていたのだが、その虚ろな目つきには大いに驚かされた。どんな時でもオドオドした表情を絶やさない真琴、「対人恐怖症」というのもギミックじゃないかもな。逆にもしこれが演技だとしたら、それはそれで物凄い表現力だ。

んで、試合では…何かとすぐに逃げ回ってしまう真琴を年下の牧場が必死にフォローするも、結局は李が二人を圧倒するという展開に。おっかなびっくりの真琴が果敢にスクール・ボーイにトライしたり、牧場が一本背負い〜腕十字という連携を出したり…という場面もあったが、まったくといって良い程、李を追い込む事ができない。最後は李が、二人まとめて手首を極めて合気道のように投げた後で、まとめてエビ固め。

勝った李は二人に伊東Tシャツを返すよう要求するも、二人は脱兎の如く逃げていった。


色々な意味で真琴は「凄すぎた」。この試合はその一言に尽きるなぁ。

第四試合 更には男女混合タッグマッチもあるッス

タッグマッチ 15分1本勝負
 王子ミッキー(166cm/72kg/DDT) ※MIKAMI
○ひなた(150cm/38kg/我闘姑娘) 平成6年9月17日 生
vs
 リボン高梨(170cm/70kg/DDT) ※高梨将弘
●りほ(127cm/23kg) ※平成9年6月4日 生
[12分6秒 キューティースペシャル(ブリザードスープレックス・ホールド)]

このアイスリボンでは、高梨は「男子部のエース」という事で通っているらしいのだが…なんというか、こんなに力強くて頼もしい高梨を観たのは初めてかもなぁ。体の小さいりほに声援を贈ったり一生懸命フォローしたりする姿が微笑ましかった。いや〜っ、いいお兄さんをやっているなぁ。El Doradoでは、全身黄金タイツでお笑いプロレスばかりやっている男とは思えん。

対するミッキー、お客さんから椅子を借りて高梨にダイビング・セントーンを二連発で敢行。アイスボックスにはフィールドの隅にコーナーがないので、お客さんの力を借りないと空中殺法も出せないのだ。しかもアイスボックスの椅子は小さな丸椅子なので、安定感が大変に低い。こんな時は、お客さんが丸椅子を押さえる事でレスラーをフォロー。こういった経験ができるのも、レスラーとの距離が近いアイスボックスならでは、だねぇ。

試合は、ミッキーと高梨によるグラウンドでのルチャ合戦と、りほとひなたによる組み体操のような柔らかいプロレスが交差する展開。最後はひなたがりほボー&アローを極めた後で、キューティースペシャルなるスープレックスで3カウントを奪った。

第五試合 でも最後はやっぱりココに帰ってくるッス

シングルマッチ 30分一本勝負
○希月あおい(162cm/60kg) ※平成1年3月26日 生
●聖菜(155cm/39kg) ※平成6年5月23日 生
[8分30秒 ダブルリスト・アームサルト]

希月あおいは平成元年生まれ。という事は、年齢的にはもう二十歳に近いワケだ。物心がついてから女子プロレスへの道を選択したのだから覚悟や決意もあるのだろうが、正直、年齢の割にはファイト内容に幼さを感じてしまう。下積みを経験していない子のファイトぶり、というかね。

しかし。今の時代、思春期を過ぎたばかりの若い女性がプロレスラーを志願している、というダケでも「稀有な存在」なのかなぁ…と、試合を妙に感慨に耽(ふけ)ていたら、希月が美しい孤を描いて聖菜をフォールしていた。

これって、どうなんだろうか…?

全試合終了後、さくらえみの音頭で興行はエンディングへ突入。感想を聞かれた上井文彦氏(真琴に誘われて会場に来たらしい)は「いや〜っ、みんな必死にやっていると思いますよ。大橋君はデビュー前とは思えないくらいに動きは良かったし、趙雲君もMIKAMI君も素晴らしかったです」と饒舌に語り、キッズ達の評価については「一生懸命さが伝わってくる」とコメント。ガハハハハ、キッズ達の評価を巧く避けたな。




最後は選手全員による握手会。僕も参加し、高梨には「El Doradoも観てますよっ!」と声を掛け、李には「友達がファンなんですよ」と声を掛けて写真を一枚獲らせていただいた(実際、PON君(id:pon-taro)がファンなのだ)。




んで、ここで気になる事が。


この握手には当然、キッズ達も参加したのだが…この握手がなんとも弱々しいのだ。昔、学校の体育でフォークダンスとかやらされた時に、好きでない人と手を繋ぐ時はロクに手を握らなかったなぁ、なんて事を思い出す。正直、知らない男の人と握手をするのが怖いのだろう。そしてそれ以上、お客さんという存在を「ありがたい」とは考えていない、イヤ考える発想そのものがないんだろうなぁ。


さくらえみさん、ハッキリ言って「子供が嫌がる事」をやらせてはいけませんよ。それでも、握手会を続けるのであれば、まず「お客さん」を相手するという事が、どういう事なのかを徹底的に教えてあげてください。それが大人としての振る舞いだと思います。

雑感

今回は、読んでもらってわかる通り、いわゆるキッズ達のプロレスについては殆ど触れなかった。その理由については…。


まあ確かに、彼女達は必死にプロレスをやろうとしていたし、その頑張り自体は認めるんだけど…。でも彼女達のファイトぶりからは「プロレスをやる理由」のようなモノが見えなかったんだよね。まあ単純な動機として「声援を浴びたい」というのはあるのかもしれないけど、そういうのはアイドルとかをやった方が早いように思うし。秋葉原あたりを歩けば、それこそ草の根で頑張っているアイドルなんて沢山いるよね。


つまり「声援を浴びる手段として、何故プロレスでなくてはいけないのか?」が見えなかったんだよなぁ。ま、もっと突っ込んだ言い方をすれば…キッズ達は多分、自分の意思でプロレスをやっていないんだと思う。なまじっか選手とお客さんの距離が近いから、彼女達の一挙手一投足からそれが伝わってきてしまうのが痛いね。


…とまあ、小中学生のプロレスを捕まえて厳しい事を言ってしまったが、僕が言いたいのは「アイスリボンに関わる大人達は、彼女達が『プロレスをする』という事実について、もっと責任を取るべき」という事かな。年端もいかない彼女達が、知らない大人を相手にして、お金を取る商売をしている…という事実を、関係者はもっと自覚して欲しいんだけどなぁ。

というワケで

まあ色々と書いてきましたが…「アイスリボン」がどういう団体なのかについては、実際に皆さんの目で見た方が早いと思います。というワケでYouTubeの動画をば。

2006/10/15 アイスリボン 千本桜ホール


以上、長文失礼。