6/30 K-1 MAX 横浜アリーナ興行(地上波) 簡易観戦記

文句なく、今年最高のK-1 MAX

地上波観戦した限りでは、最初に放送された魔裟斗 vs 小比類巻貴之ですら好勝負だったのに、今日は時間が進むに連れその内容を超える試合が次々に飛び出した。佐藤嘉洋以外の選手は皆、己の力をフルに発揮。こんな激しい試合の連続がつまらないワケがないよね。特にアンディ・サワーを応援する立場としては、今日の内容はかなり熱かった。

じゃ、見てない試合を含めて感想をば。

オープニングファイト第一試合(未観戦) 西脇がなんでミドル級にっ!?

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
野田貢(シルバーアックス)
●西脇恵一(チームドラゴン)
[1R 1分45秒 KO]
※右フック

試合の模様(オフィシャルサイトへのリンク)

http://www.so-net.ne.jp/feg/database/060630more/20060630_op1.html

シルバーアックスもチームドラゴンもキック界を席巻するジム、僕としてはSBで観戦した事のある西脇を応援していたのだが…結果は完敗だったようだ、残念。それにしても、西脇ってSBではヘビー級で闘っていたんだがなぁ。3ヶ月で30kgの減量ですか、ご苦労さまでした。

オープニングファイト第二試合(未観戦) WSR軍団の猛威、ついにK-1へっ!

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
○ヨードセングライ・フェアテックスジム(171cm/70.0kg/タイ/フェアテックス ムエタイ&フィットネスジム/ルンピニーウェルター級 王者 & WBCムエタイ70kg級 世界王者)
●カマル・エル・アムラーニ(176cm/72.0kg/ドイツ/バーサスジム)
[判定 3−0]
アムラーニは3Rにダウン1

イヤイヤついにWSR軍団がK-1 MAX進出か。あのダンシングオヤジが長い花道を踊りながら歩く姿が全国放送されなかったのは残念だな(笑)。で、K-1 MAXを生観戦した人が口を揃えて「ヨードセングライが良かった。本戦でも全然イケるレベル」とか言っているところを見るにつけ、この人は近いうちにテレビに出るだろう。…イヤ、WSR軍団の同階級にはゲンナロン・ウィラサクレックもいるな。どちらが先にTVに出るんだろ?

リザーブファイト(未観戦) 古豪の強さ衰えず

K-1 WORLD MAX 2006 トーナメントリザーブファイト 3分3R + 延長3分1R
アルトゥール・キシェンコ(170cm/72.0kg/ウクライナ/キャプテン オデッサ)
●ライアン・シムソン(185cm/72.0kg/オランダ/チーム アーツ)
[判定 2−0]

歴戦の兵であるシムソンが勝つかなぁ…と思ったら、負けてしまったようだ。しかしまあ、試合経過を読む限りではマストシステムでなければドローの内容っぽいね。昔の選手の腕が衰えていない事に一安心。

第一試合 小比類巻は技術は上がったけど、勝ちたいという執念は薄かった

K-1 WORLD MAX 2006 トーナメント二回戦 3分3R + 延長3分1R
魔裟斗(174cm/70.0kg/シルバーウルフ/K-1 MAX '03 世界大会優勝)
小比類巻貴之(180cm/70.0kg//チーム ドラゴン/K-1 MAX '04 & '05 日本大会優勝)
[判定 3−0]
※小比類巻は3Rにダウン1

今日の小比類巻は良かったなぁ。自ら下がる事はなく前蹴りとローキックの連発、特にローキックは有効打になっていたように見えた。惜しむらくは、魔裟斗のパンチを怖がらずにもっとローキックの手数が出ていれば…ね。もっと勝利に貪欲になって欲しい、というか。

もっとも、その打撃を出させないくらいに、魔裟斗のパンチのスピードは速かった。特に要所要所で繰り出した左ボディブローは圧巻、3Rに小比類巻からダウンを奪ったストレートも見事。この試合での魔裟斗は存分にパフォーマンスの高さを披露したと言えるだろう。…とはいえ、ローキックで体が流れたり、後ろを向いて逃げたりする等の「らしくない場面」も目立ったように思う。この試合での魔裟斗のダメージは見た目よりも大きいと見た。

第二試合 サワー、ようやくK-1で真価を発揮

K-1 WORLD MAX 2006 トーナメント二回戦 3分3R + 延長3分1R
アンディ・サワー(178cm/70.0kg/オランダ/シュートボクシング オランダ/K-1 MAX '05 世界大会優勝 & S-CUP '02 & '04 覇者)
ヴァージル・カラコダ(178cm/70.0kg/南アフリカ/スティーブズジム)
[3R 2分23秒 KO]
※2ダウンによる/サワーは1Rにダウン1

ん?K-1のサワーのプロフィールはおかしいな?サワーは178cmもないぞ。確か172cmだと思ったんだが…。
で、リーチ差やパンチでの相性などを考えると「サワーは前半は不利だろう」と予想していた。元々サワーはスロースターターだしね。で、案の定、カラコダの一発を喰らってダウン。あ〜あ。それにしてもカラコダは手数が多かった。左ジャブが伸びまくってたね。

ダウンしてからのサワーの攻めは圧巻だったが、これは初来日から彼を観戦している立場としては「サワーは追い詰められると、逆に力を発揮するタイプ」という一言で説明できる。僕はSBで彼がローブローを喰らってから鬼神の攻めを見せる場面を何度も見てきたし…って、ローブローかよっ!ま、パンチは元々巧いし、最近はローキックや飛びヒザ蹴りとかも覚えたし、何よりも辛抱強い選手だし。最後の逆転劇も僕としては順当な感じ。

やたらとサワーに対する評価の低い一般マスコミの皆さん、覚えてください。これがサワーという選手なんです。

第三試合 ドラゴみたいな選手は嫌いじゃないです

K-1 WORLD MAX 2006 トーナメント二回戦 3分3R + 延長3分1R
○ドラゴ(175cm/72.5kg/アルメニア/チーム イッツ ショータイム)
アルバート・クラウス(175cm/70.0kg/オランダ/チーム スーパープロ/K-1 MAX '02 世界大会優勝)
[判定 3−0]
※クラウスは1Rにダウン1

打撃は大振りだけどフォームはしっかりしていたドラゴ。クラウスからダウンを奪った上段のヒザ蹴りもバランスが良かったなぁ。クラウスもあんな体勢からヒザ蹴りが来るとは思わないよねぇ。ただ最後は消耗戦になっていたところを見るにつけ、スタミナにはかなり難があるように見える。まあ、あのフォームじゃ疲れるのもムリはないか。

それにしても、一般には「ボクシングテクニックが有効」なんて言われているK-1 MAXだけど、それ一辺倒になってしまったクラウスでは、これから先のK-1 MAXを勝ち抜くのは難しいんじゃないかなぁ?

第四試合 この時点で、ブアカーオの優勝は約束されていたように思う

K-1 WORLD MAX 2006 トーナメント二回戦 3分3R + 延長3分1R
ブアカーオ・ポー・プラムック(174cm/68.0kg/タイ/ポー プラムックジム/K-1 MAX '04 世界大会優勝)
佐藤嘉洋(184cm/70.0kg/フルキャスト&名古屋JKF/K-1 MAX '06 日本大会優勝)
[2R 18秒 KO]
※左フック/佐藤は1Rにダウン1

その強さに唖然。この日のブアカーオは今までとはまるで別人、恐ろしいパンチ力を身に付けて、背の高い佐藤に対しても真正面からパンチで向かっていく。かと思えば、佐藤の前蹴りは悉くキャッチする嫌らしさを発揮。正直、ムエタイらしいミドルキック連打で攻めて来る事を予想していた佐藤にしてみれば、この闘い方はかなり面喰ったのではないか?

前回大会で、首相撲を封印されながらもカラコダのパンチをスウェーでかわす進化を見せたブアカーオ、その進化の最終系が今日のファイトなのだろう。本気でK-1に取り組んだムエタイ戦士の底力を見せられた思いだ。ただ、パンチで闘う事を念頭に入れたファイトにシフトしすぎるあまりに前回、カラコダに苦戦したような気もする。逆に言えばこれでローキックなんかを覚えたら、もう手が付けられない強さになるんじゃないか?恐ろしや。

で、「ブアカーオが圧倒的勝利を修めた」って事は「佐藤が惨敗した」って事とイコールなわけで。いくら桁外れのリーチをもつ佐藤でも、パンチの練習しないと今のK-1 MAXじゃ勝てないよなぁ。佐藤の実力は決して「この程度」だとは思わないので、また練習してこの舞台に戻ってきて欲しい。あ、僕としては所属のところに堂々と「名古屋JKF」の文字があるのが妙に嬉しかったね。

第五試合(未観戦) 試合自体はTATSUJIが圧倒したらしいが…

スーパーファイト 3分3R + 延長3分1R
TATSUJI(174cm/70.0kg/アイアンアックス/K-1 MAX '06 日本大会準優勝)
白須康仁(170cm/70.0kg/花澤ジム/MA日本ウェルター級王者)
[判定 3−0]

スポナビの記事を読む限りではTATSUJIがボクシングテクニックで白須を圧倒したらしいが、ダウンを奪えなかったのは地味に痛いなぁ。そのパンチの技術やキャラクターはK-1 MAX向きだと思うのだが、破壊力がまだ今一つなのかな?年齢的なものを含めて、次世代のK-1 MAXを背負う選手としては最適の存在だと思うのだが…。相手からKOを奪う事が今後の課題だね。

第六試合 サワー、ますます真価を発揮

K-1 WORLD MAX 2006 トーナメント準決勝戦 3分3R + 延長3分1R
アンディ・サワー(178cm/70.0kg/オランダ/シュートボクシング オランダ/K-1 MAX '05 世界大会優勝 & S-CUP '02 & '04 覇者)
魔裟斗(174cm/70.0kg/シルバーウルフ/K-1 MAX '03 世界大会優勝)
[判定 3−0]
魔裟斗は3Rにダウン1

雑誌とかで選手の強さをダイヤグラムにしているのをよく見かけるけど、一般誌の評価とかを見てるとサワーの数値は必ずといっていいほど低い。でも、いざ蓋を開けると意外な程に強い。それは何でかっていうと、サワーは持っている武器が意外に多いという事と、全体的な攻めのバランスが絶妙…という事を見逃しているからだと思う。一般誌のダイヤグラムって、あんまり「総合力」っていうのをパラメーターにしてないんだよね。攻めのバランスがいいから守りに入るのも早い、って感じだと思うんだけどね。

この試合でのサワーは、魔裟斗とパンチの技術力が互角ならばとローキックの連打を見せる。前の試合で見た目以上に足を負傷していた魔裟斗は2R以降は失速、ジャンピングハイキックなんて大技まで喰らってしまう事に。これが決まった時の魔裟斗はモロにノーガード、「サワーにはこんな武器はないだろ」と思っていたんじゃないかな。サワー対策がちょっと甘かったね。それにしてもサワー、どれだけ疲れていてもその動きのパフォーマンスが落ちないのは凄いな。この意外なタフネスっぷりも強さの一つかも。

試合後に見せた魔裟斗の笑顔が気になった。爽やかなんだけど「燃え尽きた」って感じにも見えたし。また引退発言とかが出てきそうだなぁ…。

第七試合 この試合はちゃんと見たかった

K-1 WORLD MAX 2006 トーナメント準決勝戦 3分3R + 延長3分1R
ブアカーオ・ポー・プラムック(174cm/68.0kg/タイ/ポー プラムックジム/K-1 MAX '04 世界大会優勝)
●ドラゴ(175cm/72.5kg/アルメニア/チーム イッツ ショータイム)
[判定 3−0]
※ドラゴは2Rにダウン1

地上波はダイジェスト放送で何が起きたのかサッパリ判らないんだけど…、スポナビの記事を読む限りではなかなか面白そうな展開だった。しかしまあ、ドラゴは前の試合のダメージが大きかったように見えたけど…、そうでなくても今日のブアカーオに勝つのは難しかっただろう。

ちなみにこの試合のブアカーオはムエタイっぽい試合運びだったようで。選手によって闘い方をスイッチできるのは大きな武器だね。

第八試合(未観戦) これ以上武田をどうしようというのか?

スーパーファイト 3分3R + 延長3分1R
○フェルナンド・カレロス(173cm/72.0kg/アメリカ/アメリカン ケンポー カラテ アカデミー)
武田幸三(173cm/69.6kg/治政館ジム/元ラジャダムナンスタジアムウェルター級 王者)
[判定 3−0]
※武田は1Rにダウン1

対戦相手が試合後のインタビューで「武田選手の今までの試合であごが弱いのを発見したので、あごを狙うのが有効だと思った」という、ズバリそのものなコメントを残している。
…これを言われちゃあ、お仕舞いよ。武田は後半かなり押し気味に試合を進めたらしいけど、結局アゴを狙われたら、仮にこの試合が5R制でも勝てたかどうかわからんしねぇ…。TITANSでのジョン・ウェイン・パー戦とかも、後半は押し気味に試合しつつもアゴに一発喰らって負けたし。

前にも何かに書いたけど、もう武田はムエタイ狩りに専念させて、壮絶に散らせた方がキャリアにも傷がつかないと思うんだけどね。

第九試合 せめてサワーが満身創痍でなければ…

K-1 WORLD MAX 2006 決勝 3分3R + 延長3分2R
ブアカーオ・ポー・プラムック(174cm/68.0kg/タイ/ポー プラムックジム/K-1 MAX '04 世界大会優勝)
アンディ・サワー(178cm/70.0kg/オランダ/シュートボクシング オランダ/K-1 MAX '05 世界大会優勝 & S-CUP '02 & '04 覇者)
[2R 2分13秒 KO]
※3ダウン ブアカーオが世界大会優勝

1Rの攻防を見るにつけ、ボロボロのサワーにも勝機はあったように感じる程、ブアカーオはサワーを苦手にしているように見えた。パンチに破壊力はあるけれどテクニックにはまだまだ自信がないのかな?

だが2R、クリンチしてブレイクを待つサワーにブアカーオの左フックが炸裂!う〜ん、これはブアカーオのマナー違反…ではないよね。サワーが気を抜きすぎた、っていうか、あの距離であんなフックが来る事を予測していなかったように見えたなぁ。いずれにせよこの一撃で勝負あり。激闘続きのサワーに体力は残っていなかった…。

それにしても今年のブアカーオは本当に強かった。ムエタイの闘い方がルールによって次々に封印される中、本気でK-1 MAXに合わせて練習したムエタイ戦士がいかに強いかを見せつけられた思いだ。脱帽ですな。マジでローキックの打ち方とか覚えないでね。本当に手が付けられなくなるから。

今日は負けたサワー、だが彼の闘いにはまだまだ続きがある。K-1 MAX準優勝という肩書きを引っさげて11月のS-CUPに出陣だ。今日の強さを見るにつけ、三連覇は堅いのか?それともシーザー会長がとんでもない強豪を来日させるのか?はたまた宍戸や緒形を始めとした日本人勢が彼らを止めるのか?その興味は尽きないね。

雑感

前回以上に見応えのある興行ではあったが…、K-1 MAXを「お嬢様ルール」と言い捨てた佐藤嘉洋がまったく力を発揮できずに敗北し、それ以外の選手がルールに順応した闘いぶりを披露、激闘が続いた事はなんとも皮肉な話。今後の魔裟斗の去就とか、惨敗した佐藤嘉洋とか、今後の日本人勢の活躍には大きな不安が残る内容でもあったように思う。

K-1 MAXもまた「外国人天国」と化していくのだろうか?興行を引っ張ってきた「魔裟斗人気」の行く末は?色々と気になる事は多いが…。

今日はただただ、ブアカーオの強さに敬意を表したい。おめでとう。


以上、長文失礼。