6/24 全日本キック 新宿FACE興行 観戦記

見出しをつけるのに困る興行

本日は新宿FACE全日本キックを観戦。


今日の見所は…ズバリ言って「なし」。話題を提供する事にかけては中小のマット界の中でも随一である全日本キックにしては、目玉になるものがまったく存在しない興行である。従って今回は淡々と書いていく事になるだろう。実際、もう書く事もないし(苦笑)。

チケット代、本日は珍しく椅子席を購入。ドリンク代込みで5000円、ちょっと高め。客入りは、最初は閑散としていたが、第一試合が終わる頃には満員になっていた。ま、FACEは箱自体が小さいしね。

第一試合 三十路の半ばにしてデビューする女性、美しいね

女子バンタム級 2分3R
正木純子(172cm/52.7kg/Hilltop)
●佐竹のぞみ(161cm/52.7kg/鷹虎ジム)
[判定 3−0]

第一試合は三十路を往く女性同士の対戦。ムエタイスタイルの正木 純子が32歳なのに対し、佐竹 のぞみはなんと35歳な上、この試合がデビュー戦だという。そのチャレンジ精神は素晴らしい!敬意を表します。


試合。子供達の「じゅんこぉ〜!」という声援を背に受けつつ、172cmという女性としては長身を持つ正木が1Rから首相撲からのヒザ蹴りと前蹴りで圧倒していく。対する佐竹は接近してのワンツーで対抗するが、正木の首相撲はなかなかしつこい上、2R終盤には右のフックをガンガン叩き込む。3Rは二人ともバテてしまったが、正木は右ローキックと右ストレートで佐竹を圧倒した。
試合は判定までもつれ込み、3−0で正木が勝利。


全然関係ないが、正木はピーターに似てた。正木さん、失礼。

第二試合 DRAGON GYMの新鋭が、デビュー戦ながら力を発揮

女子スーパーライト級 2分3R
○村上リエ(172cm/62.5kg/DRAGON GYM)
●たま☆ちゃん(165cm/62.5kg/巴組)
[判定 2−0]

全日本キックでは、前半の試合は共通の入場曲で選手入場を行うのだが、たとえ自分の入場曲が流れなくてもノリノリで入場してくるのがたま☆ちゃんという女性。持ち前の明るさで会場を賑わせて、トップロープからジャンピングイン。この健康的な明るさは好きだなぁ。対するのは、今キック界の中で「もっとも脂がのっているジム」であるDRAGON GYM所属の村上 リエ。これがデビュー戦である。


試合では、身長に優る村上がたま☆ちゃんを寄せ付けない。総合格闘技出身の戦士らしく、インファイトを望むたま☆ちゃんを捕まえる村上、首相撲からのヒザ蹴りを何度も連打。しこたまボディにヒザ蹴りを喰らったたま☆ちゃん、それでも村上に接近していく。しかし打撃戦でも村上が圧倒、ワンツーが次々にヒット。
試合終盤、何とか状況を打破すべく、たま☆ちゃんはショートアッパーで対抗、村上の首相撲は強引にロープ際に押し込んで外していく。だが村上は、それでも首相撲からのヒザ蹴りに拘る。たま☆ちゃんも、頑なに接近してのパンチ連打を繰り返す。真正面からの堂々とした打ち合いに、会場も大いに盛り上がった。
試合は判定までもつれ、村上が2−0で勝利。


勝った村上がリング上でファイティングポーズを取る中、たま☆ちゃんはどうどうとリングを降り、最後まで笑顔を絶やさずにリングを後にした。どこまでも明るい女性、凄いなぁ、たま☆ちゃんは。対する村上はなかなかの素材。生まれ持った背の高さもあるし、デビュー戦でたま☆ちゃんを破ったのだから実力も充分。これは、これからの女子打撃界を背負っていく存在になれるかな?

第三試合 心を折る闘い、その1

ライト級 3分3R
○佐藤飛太(174cm/61.1kg/S.V.G.)
●榧木勇治(175cm/60.8kg/鷹虎ジム)
[3R 2分19秒 KO]
※3ダウン/榧木は1Rにダウン1、2Rにダウン1

第三試合は2戦1勝1敗の佐藤 飛太と1戦1勝の榧木 勇治という、お互いにルーキー同士の対戦。


だが試合は一方的。大振りなパンチを連発する榧木に対し、佐藤はローキックと首相撲からのヒザ蹴りを連打してペースを握る。特に首相撲は有効な攻撃になっており、榧木のボディへは何十発となくヒザ蹴りが突き刺さっていた。1R終盤にダウンを喫する榧木、2R中盤にも同じ展開でダウン。身体も心も既に限界の榧木、自ら倒れて時間を稼ぐシーンが目立つ。
3R、佐藤、今度はローキックの連打で榧木を崩す。足にも大ダメージを負った榧木、佐藤に押されて倒れると立ち上がれず、これが一度目のダウンになる。この後、自らわざとマットに倒れたのを二度目のダウンと数えられ、三度目は佐藤のワンツーのラッシュを前に自ら腰を落としてのものだった。


終わってみれば、榧木の心をバキッと折った佐藤の完勝劇だった。

第四試合 心を折る闘い、その2

55kg契約 3分3R
○甲野裕也(167cm/54.9kg/S.V.G.)
●菊地慧(167cm/54.9kg/藤原ジム)
[3R 1分19秒 KO]
※3ダウン/菊池は2Rにダウン2

藤原ジム所属、若干19歳の菊地 慧は小林聡をセコンドにつけての登場。見た目からして非常に気の強そうな風貌だったが、試合を圧倒したのはちょっと気の弱そうな甲野裕也の方だった。


1Rから、甲野の左ローキックが強烈な音を立てて菊地の足に叩き込まれる。嫌がる菊地が接近すれば、甲野は組み付いてのヒザ蹴りを連打。菊地はなんとかパンチで挽回しようとするが、甲野はこの打ち合いでも優位に立つ。2R、甲野は打つ手のなくなった菊池から左ローキックで二度のダウンを奪う。菊池はダメージが相当に大きく、首相撲を掛けられると自ら腰を落としたり、打撃を出してバランスを崩して倒れたまま立ち上がらない…等、藤原敏男会長が激怒しそうなシーンが目立つようになる。3R、体力の限界まできた菊池に対し、甲野は首相撲からのヒザ蹴りを連発。このラウンドでの三度のダウンは、すべて菊池が自ら倒れていた。


甲野はいい素材だね。決め手になったのは首相撲からのヒザ蹴りだけど、僕としては序盤に放っていたローキックの破壊力の方が印象に残ったよ。

第五試合 歯車の噛み合った好勝負

ライト級 3分3R + 延長3分1R
○上杉武信(167cm/60.9kg/藤原ジム/全日本ライト級 八位)
●栗原豊(167cm/60.9kg/光ジム/全日本ライト級 九位)
[判定 3−0]

藤原ジム所属の上杉 武信は当年とって33歳。戦績は15戦5勝7敗3分と負けが先行しているものの、軽いフットワークから繰り出される打撃はなかなかのものを持っている。対戦相手は、技術的には悪くないものを持ちながらも、今一つ勝ち星に恵まれない栗原 豊。


1R、上杉はインアウトを繰り返しつつ先手を取り、ワンツーと右のローキックで攻める。対する栗原は、相手の出入りに関係なく前に出てワンツーを出し、更にはローキックと組み付いてのヒザ蹴りで反撃。両者の打撃が次々に交差する好勝負となったが、これに競り勝ったのは上杉。2Rも徹底して右のローキックを放ち続けた上杉、栗原の左モモは真っ赤になっていた。3R、動きの落ちた栗原に、上杉はややスタミナ切れを起こしながらも右のローキックを入れ続ける。足はボロボロ、それでも栗原は前に出続けてパンチを出し続けた。
試合は判定にもつれ込んだが、3−0で上杉が勝利。


今日は快勝した上杉だけど、もう少しパンチ力とスタミナが欲しいなぁ。年齢的にはここから上に行くのは難しいかもしれないけど、テクニックは本当にいいものを持っているから、この地位に満足しないでもう一つ上のランクを目指して欲しいね。

第六試合 上位ランクインを狙うテコンドー戦士を待ち受けていたのは「落とし穴」

ライト級 3分3R + 延長3分1R
○村山トモキ(170cm/60.9kg/AJジム/全日本ライト級 五位)
●海戸淳(167cm/61.2kg/S.V.G./全日本ライト級 七位)
[判定 3−0]
※海戸は1Rにダウン1

村山 トモキの入場曲はPE'Zの「Hale no sola sita 〜LA YELLOW SAMBA〜」。PE'Zの音楽は僕の耳にはちょっと軽くて好きじゃないんだけど、新宿FACEのような狭い空間の中、大音量で流れてくるとちょっと考えも変わるなぁ。対するテコンドー戦士、全日本キックファンにはお馴染み海戸 淳の入場曲は、エレファント・カシマシの「今宵の月のように」。ちなみに昔、僕の顔はエレカシのボーカル・宮本浩二にそっくりだった。今の僕はちょっと太ったから似てなくなったけど。


1R、ランキングは下でありながら実力は充分の海戸が圧倒的攻勢を掛ける。力強い右ミドルキックの連打、ワンツースリーのコンビネーション、ローキックの連打。中盤頃、海戸のストレートがクリーンヒット、崩れる村山。チャンスとばかりに海戸はラッシュを仕掛ける。ワンツースリーとテンポよくパンチを繰り出し、更にはワンツー〜ミドルキック。防戦一方の村山を追い詰めるべくどんどん前に出る海戸だったが、そこへ村山のカウンターの右フックがヒット。タイミングの良い一撃を前に海戸は痛恨のダウンを喫する。
思わぬ失態を観せた海戸が必死に挽回を図る。2Rから積極的に前に出て左ミドルキックを連発、さらには接近してのヒジ打ち、ワンツー、裏拳と持てる技を駆使して村山に襲い掛かる。この勢いを前に押され気味の村山だが、海戸が接近するタイミングに合わせて組み付きヒザ蹴りを連打。3Rも海戸がワンツーや右ミドルキックで猛チャージを見せるも、村山はこのラウンドも組み付いてのヒザ蹴りを多用、海戸の攻めの流れを要所で断ち切る。終盤、必死になりすぎた海戸は攻め疲れを起こしていた。
試合終了、判定は3−0で村山が勝利。


試合を観るにつけ実力的には海戸が一枚上手だったが、村山は1Rに奪ったダウンを大事にして勝った…という流れ。海戸にしてみれば無念だろう。現在ライト級七位だが、本当はもっと上にいてもおかしくない存在。こんなところでつまづいている場合ではないのだが…。

第七試合 ムラッ気は激しいが、勢いに乗せると怖い男

スーパーウェルター級 3分3R + 延長3分1R
○白川裕規(183cm/69.8kg/S.V.G./全日本スーパーウェルター級 四位)
●小松隆也(180cm/69.4kg/建武館/全日本スーパーウェルター級 五位)
[1R 1分53秒 KO]
※3ダウン

今日のメインイベントには、このところ勢いに乗る白川 裕規が登場。テクニックは荒削りながらも恵まれた長身と一発入ればKO必至のパンチ力で、全日本スーパーウェルター級四位に君臨する男だ。今日も大応援団の大歓声を背に入場してきた白川、対戦相手は小松 隆也、四肢の長さを武器に持つ男だ。


この試合、両者の勢いの差が如実に現われた。試合開始後、間もなく白川が接近してパンチのラッシュ。真っ直ぐ後ろに下がる小松に、パンチのうちの一発がモロにヒット。これに気を良くした白川が完全に勢いに乗った。すぐさま更なるラッシュを仕掛ける。一度目のダウンはラッシュの中の右ストレート、二度目のダウンはラッシュの中の右フック、三度目のダウンは左ストレート〜右フック。立て続けに3ダウンを奪った白川が、あっという間のKO勝利を修めた。大応援団の歓声の中、白川はマイクで「減量がキツかったけど、勝ててよかったです。みんな、お酒飲みに行きましょ!」と、身内に向けてアピールしていた。


う〜ん、白川は勢いに乗っていると力を発揮するんだけど…なんか体格とか自分のセンスだけで闘っているように見えるんだよなぁ。確かに身体は非常に恵まれているとは思うんだけど…、ここからランクを上に持っていくのであれば、もう少し確かな技術が欲しいなぁ。

雑感

二時間ピッタリの短い興行だったが、白熱した好勝負が続いたので満足度はそこそこ高い。

目に止まったのは第四試合の甲野。勝気な相手のペースに呑まれる事なく、強烈なローを叩き込む姿には大器を感じた。あと、デビュー戦ながらもたま☆ちゃんを破った村上も強かった。女子キック界を掻き乱すような活躍を期待したい。

それにしても今日は、組み付いてのヒザ蹴りや、首相撲からのヒザ蹴りが勝敗を分ける試合が多かったなぁ。何かの偶然なのだろうか?


以上、長文失礼。