4/22 新日本キック[TITANS NEOS] 後楽園ホール興行 観戦記

Mask_Takakura2007-04-22

滅多に来ない新日本キックの会場へ

色々なキックボクシングの団体を生観戦している僕なのだが、新日本キックはあまり観に行く事がない。

理由はいくつかあって、「新日本キック協会が採用している、3分2R制があまり好きでない」とか「チャンピオンクラスの選手と、若い選手のキャリアの差が激しい上、あまり王座が移動しない」とか「基本的に鎖国団体なので、話題性に乏しい」とか「興行内容が昔ながらの淡々としたもので、とっつきにくい」とか「最近は、看板選手の武田幸三がリングで華のあるところを見せる事も少なくなった」とか。

ま、早い話が「僕好みの団体ではない」って事だね。


んで、そんな僕でも「新日本キックの事が嫌いなのか?」と言われれば…、別に嫌いってワケはないんだよね。特に新日本キックが年に一回行なうTITANSは、基本的に他団体交流を目的としていたり、ビッグマッチが組まれたりするので、なるべく観戦するようにしているし。

ってなワケで今回、後楽園ホールで行なわれるのは、そのTITANSの新シリーズ、その名もTITANS NEOS。「名前を変えると、なにか変わるの?」って気もするが、とりあえずTITANSの名前を冠した興行なので観戦しとこうか…というのが今回の生観戦の動機。メインイベントの石井宏樹 vs 小宮由紀博は結構楽しみだね。


ってなワケでチケットを購入。立見席5000円…って、キックボクシングにしては随分と高いな。パンフレットは1000円。デカくて持ち運びが難しいのは嫌な感じだが、内容はそこそこ充実していた。

観客の入りは…ありゃりゃ、あんまり良くないね。せいぜい6割程度かな。確かに今回のTITANSは、ビッグマッチの割には影が薄い気はしていたけど…こんなモンかね。

第一試合 見てないです

ヘビー級 3分3R
○國吉(178cm/78kg/治政館/新日本ヘビー級 三位)
●松本勇三(173cm/85kg/勇三道場)
[判定 2−1]

2R途中から観戦。壮絶なパンチの打ち合いを展開した両者だが、試合はあっという間に終了。判定の結果、2−1の僅差で國吉が勝利。

う〜ん、途中からの観戦な上、観やすい場所を探すのに必死だったので、試合についてはニントモカントモ。ただ、「MARSの生え抜き選手」という風変わりな肩書きを持つ松本先生の敗北はちょっと残念。

第二試合 怪しい判定です

肘無し ウェルター級 3分3R
○タカ・オサミツ(177cm/66.68kg/伊原道場/新日本ウェルター級 一位)
●アルテム・シャロシュキン(182cm/66.68kg/ロシア/チームM サンディエゴUSA)
[判定 3−0]

K-1 MAXにも出場経験のあるタカオサミツだが、その試合では全日本キックのサトル・ヴァシコバに秒殺負け。再びK-1 MAXの舞台に立つためにも、こんなところでは負けられない。


1R、いきなりタカが飛ばす。ストレート、アッパー、フックを駆使したパンチのコンビネーションを放ち続け、いきなりシャロシュキンを圧倒する。次から次へ放たれるパンチを前にシャロシュキンは後退、タカは主導権を握ったが、シャロシュキンの反撃のストレートをポコポコ貰っているのが気になるところ。

迎えた2R、やはりというか何というか、タカは攻め疲れで減速。これを見たシャロシュキンが反撃を開始。前に出ての強烈なワンツー、右ボディ、右ローが次々にタカにヒットしていく。やはり攻め過ぎとガードの甘さが裏目に出たな。

3Rも試合の大局は動かない。ワンツーや右ローでリードを奪うシャロシュキン、いよいよこれはタカが判定負けするか?と思われたが…ラウンド終盤にタカはシャロシュキンを首相撲に捕らえ、顔面へ膝蹴りを数発入れて鼻血を誘う。やや怯んだシャロシュキンだが、それでも最後までワンツーを繰り出し続けた。

試合終了、判定の結果は3−0でタカが勝利。


う〜ん、試合のペース自体はシャロシュキンが握っていたから、僕は彼が勝利すると思っていたのだが…。まあ、最後の鼻血の印象が悪かったかな。

第三試合 ムエタイは強いです

63kg契約 3分3R
○イソラサック・シッセックサン(174cm/62.37kg/タイ/元ルンピニーフェザー級 王者)
●中尾満(175cm/62.14kg/伊原道場/新日本ライト級 八位)
[2R2分5秒 KO]
※右フック/中尾は2Rにダウン2(二度目のダウンでKO)

NJKFの桜井洋平と並んで「日本ライト級最強」との呼び声が高いのが、今日のメインイベントに出場する石井宏樹。そして過去、その石井から二度のダウンを奪い、判定で勝利しているのが、かつてはルンピニー・フェザー級王者だったイソラサック・シッセックサン。今日は格下の中尾満を相手に、強さをアピールする。


1R、何故か両者共に大振りな蹴りを連発し、試合は思わぬスウェー合戦となった。鋭い前蹴りで牽制しつつ、大振りな左ハイをブン回すイソラサック、対する中尾は振りの大きい前蹴りや右ミドルで対抗。腰を振りながら挑発するイソラサックは、華麗なブラジリアンキックで観客を沸かせる。

2R、意を決して前に出た中尾は右ミドルで牽制するも、イソラサックは左インローで中尾の動きを止める。それでも右ミドルを放つ中尾だが、イソラサックはこれをキャッチして左ストレートを叩き込むと、ダメージの見える中尾に肘打ち、左ストレート、アッパーを打撃を連発、トドメのストレートでダウンを奪う。なんとか立ち上がる中尾だが、イソラサックは中尾のパンチに右フックを合わせる。中尾は再びダウンし、立ち上がる事はなかった。


う〜ん、さすが元ルンピニー王者、その強さは鬼だった。こんなのがゴロゴロしているから、キック界は打倒・ムエタイから抜け出せないんだよなぁ…。

第四試合 グダグダながら激闘です

肘無し 70kg契約 3分3R
新田明臣(180cm/70.87kg/バンゲリングベイ/UKF世界ミドル級 王者)
●後藤龍治(173cm/70.76kg/伊原道場/IMFスーパーウェルター級 王者)
[判定 2−0]




試合はまだ前半戦だというのに、このタイミングで注目の古株対決が実現。現在はJ-NETWORKの看板選手となった新田明臣と、かつてはSBの外様エースであり、現在は伊原道場所属となった後藤龍治の対決なのだが…。新田いるところにバンゲリングベイ応援団あり。入場曲の「Samba De Janeiro」が流れれば、応援団は上へ下への大騒ぎ。風船が飛び交い、スタンガンがバンバン鳴る。新田劇場はいつだって会場を異空間へと引きずり込む。

Bellini「Samba De Janeiro」

ウォーーーーーーーッ!
新田ッ!(チャチャチャ)
新田ッ!(チャチャチャ)

1R、SBで活躍していた頃よりも上半身の厚みが増した後藤が、前進しながら右フック、左アッパー、ワンツーといったパンチをフル回転させて新田を追い込んでいく。対する新田はリングを回りながら、右ローをコツコツと当てて対抗するも、ここまでは後藤の圧力に押され気味。

新田ッ!(チャチャチャ)
新田ッ!(チャチャチャ)
新田ッ!(チャチャチャ)

だが2R、重戦車と化した後藤のパンチに対して、新田は下がりながら右アウトローと左インローを連打。すると、ローが効いてきた後藤の動きが鈍り始める。バンゲリングベイ応援団の「超」大歓声の中、新田はこれまでとは一転、前に出てワンツーを連打しつつ左右のローを連発。劣勢に立たされた後藤もパンチで対抗、激しい打ち合いを観た観客から大歓声が沸く。

新田ッ!(チャチャチャ)
新田ッ!(チャチャチャ)
新田ッ!(チャチャチャ)

この打ち合いは3Rも続いたが、ここでもリードしたのは新田。前に出ながら先手先手でワンツーを連打、更には左インロー、右アウトローを連発すれば、後藤の反撃のパンチがどんどん減っていく。時間が進む毎にバテバテになる両者、左足が言う事を効かない後藤は棒立ちの状態になっていた。

ウォーーーーーーーッ!
新田ッ!(チャチャチャ)
新田ッ!(チャチャチャ)

試合終了、判定の結果は2−0。新田が激戦を制すると、バンゲリングベイ応援団は万歳三唱で新田の勝利を祝福していた。

バンザアアァァーーイ!
バンザアアァァーーイ!
バンザアアァァーーイ!

ふ〜む、しばらく見ないうちに後藤は随分とスタイルを変えたなぁ。以前はあんなにパンチに頼った闘い方なんかしていなかったのに。上半身につき過ぎている肉も気になるところ。SBであらゆる打撃を駆使していた頃を知る者としては「こんなの、後藤じゃない!」と言いたいなぁ。

対する新田、相変わらず地味な闘い方ではあったが…3Rはワンツーで前に出る等、勝利に対する執念を観た。今日はなかなかいい勝ち方だったと思う。次はそろそろ、国内強豪を相手に大一番を迎えてもいいんじゃないのかなぁ。

第五試合 飛ばしすぎです

肘無し ヘビー級 3分3R
天田ヒロミ(185cm/101.6kg/フリー)
●ウィル・リーバ(180cm/96.16kg/イタリア/チーム バンビナチョオ)
[判定 3−0]

かつてはK-1 JAPANで活躍していた天田ヒロミTITANSの舞台に登場。さすがに後楽園ホールで観る天田は非常に大きかった。まさに「デカくて1000円!」の世界だね。ボクシングをベースとスタイルで、K-1 JAPAN 2004にて優勝を飾った経験を持つ天田。対するはニコラス・ペタスを師匠に持つウィル・リーバ、極真会館出身で桜木裕司をKOした経歴の持ち主だ。


1R、天田は重くて強烈なパンチのコンビネーションを連発。左フック、右ストレート、左ボディを素早く回転させる天田、観客は驚きの声を上げる。更には強烈な左ローを放てば、リーバは必死に右ローを返すも、やや防戦一方に。観客は天田のKO勝利を期待したが、僕は「ちょっと飛ばしすぎかな?」と思っていた。

で、僕の予感が的中する。2R、序盤〜中盤はパンチの連打と左ローを放ってリードを奪った天田だが、リーバがコツコツと放っていた右ローが効いてきた天田は、攻め疲れも手伝い徐々に失速。ここぞとばかりに右ローを連打するリーバ、しかし天田もワンツーでリーバをグラつかせる等、一方的には攻め込ませない。

3R、リーバはパンチのダメージでバテバテ、天田は左足のダメージと攻め疲れでヘロヘロ。それでも天田はパンチを繰り出し、リーバは右ローを放つ。主導権を握ったのは天田、要所で右ストレートと左フックをヒットさせていた。

試合終了、判定の結果は3−0で天田が勝利。


う〜ん、天田は明らかに序盤に飛ばしすぎ。勝つには勝ったけど、KO勝ちできる試合を逃してしまったって感じ。勝ったお金で焼肉でも食いながら猛省してくれい。

伊原会長の恫喝、もとい挨拶

10分の休憩を挟んで、TITANSプロデューザー・伊原信一氏(伊原ジム会長)がトップロープ越えでリングイン。観客に挨拶を行なった後、今年3月11日の興行で、試合中に自らが行なった暴挙(レフェリーに向かってパンフレットを投げつけ、この行為に怒ったファンと揉み合いになった)について謝罪を行なった。

自らパンフレットを持ち、前に向かって投げ捨てた伊原氏は「二度とこのような事はしません!」と宣言、観客の爆笑と拍手を誘っていた。

この件についてのリンク(BoutReviewのリンク)

http://www.boutreview.com/data/reports05/070311sn-kick.html

〜(略)〜


だが3R、嚴がパンチをもらった後、グッタリした状態をタックルでごまかすように組み付き続け、そのまま膝をついたことでレフェリーはダウンを宣告。すぐさま嚴は「ダウンじゃないよ」と叫び、嚴の師匠の伊原信一・新日本キック代表がパンフレットを本部席からリングに投げつけ抗議する。


 ここで審判は毅然とした態度を貫いておけばよかったが、試合続行を躊躇している間、怒った観客が立ち上がって伊原代表に殴りかかろうとし、周囲も巻き込んでの大乱闘騒ぎに突入する。試合は5分近く中断。結局1分24秒のタイムから再開したが、最初に審判長が「3Rは0からでどうでしょう?」と説明したため混乱が収束せず、中断を長引かせた。


〜(略)〜

…のはいいんだが。

その後、何度かパンフレットを知らぬ間に踏んだり蹴ったりしていたのは、反省する態度としてはいただけないね。なんかこの人の場合、同じ事を繰り返しそうで嫌だな。怒ると我を忘れるタイプだしねぇ。

エキシビジョンマッチ ソックリです

双子ガチンコバトル 2分2R
−江幡睦月(伊原土浦)
−江幡塁(伊原土浦)
[勝敗無し]

ここで何故か、双子の兄弟によるエキシビジョンマッチが行なわれた。両者共にレガースを付けてはいたが、お互いの打撃はかなりのガチンコだった。なんでもこの二人は高校二年生なんだとか。年齢的にはもうすぐデビューしてきてもおかしくないな。

体格はバンタム級フェザー級くらいと見たので、新設されるK-1 60kg級に参戦するかもしれんな。二人の今後の活躍に期待。

第六試合 危なっかしいです

肘無し 68kg契約 3分3R
○正木和也(172cm/67.58kg/藤本ジム/新日本ウェルター級 王者)
●ダニロ・カルドゾ・ザノリニ(172cm/67.81kg/ブラジル/ブラジリアン タイ)
[判定 3−0]
※ザリノニは2Rにダウン1




僕はあんまり知らない選手なのだが、この正木和也は昨年五月に新日本ウェルター級王者となり、今回は満を持してTITANSのリングに上がるそうだ。あのサムゴー・ギャットモンテープとも互角の打ち合いを演じた事もあるという正木、今日は総合と立ち技の両方のリングに上がるダニロ・カルドゾ・ザノリニを相手に勝利を修める事ができるか。


1R、ザノリニは左右のハイ、かかと落とし、上段後ろ回し蹴り、空中二段蹴りといった派手な蹴りを連発しつつ、素早いパンチで正木を攻める。観客からは驚きの声が上がったが、正木はガードを固めてザリノニの攻撃を防御、ワンツーや右ローをコツコツ当ててザリノニを切り崩していく。

2R、回し蹴りを放つザリノニにワンツー〜右ローを入れる正木。ザリノニが蹴りを返せば、カウンターの右ストレートで迎撃、モロに喰らったザリノニがダウンを喫する。パンチのラッシュで反撃してきたザリノニだが、正木が右ローと右ボディを刻むと、スタミナを失い徐々に失速。終盤には正木の右ストレートがザリノニの顔面を打ち抜く。

3R、もはや試合は正木ペース。正木が容赦なく右ローを連打すれば、ザリノニの動きは止まってしまう。もはや正木の勝利は動かないと思われたが…終盤、ザリノニは正木を首相撲に捉えて膝蹴りを連発。モロに喰らった正木も失速、観客も驚きの声を上げる。それでもこのピンチを乗り越えた正木、再びワンツーと右ローでザリノニを攻めていった。

試合終了、判定の結果は3−0で正木が勝利。


う〜ん正木、油断は大敵というかねぇ。最後のザリノニの膝蹴りは危なかったなぁ。いずれにせよ、今日は快勝を得た正木、次の舞台はいよいよK-1 MAXかっ!?

第七試合 作戦勝ちです

肘無し 74kg契約 3分3R
○ファブリジオ・ベルガミーニ(180cm/72.69kg/イタリア/チームM サンディエゴUSA/イタリアミドル級 王者)
松本哉朗(182cm/73.03kg/藤本ジム/新日本ミドル級 王者)
[2R2分24秒 KO]
※3ダウン




新日本ミドル級王者の松本哉朗は、新日本キックのリングでは負けなし(他のリングでは負けている)の絶対王者。これまで33戦23勝5敗5分17KOという立派な戦績を誇っている。50%を超える高いKO率も魅力の選手だ。

対するのは、一年前のTITANSで松本と対戦、判定で敗れているファブリジオ・ベルガミーニ。実はこの一戦、ベルガミーニの直訴で実現した試合なのだ。曰く「あの時は体調が悪かった。ファイトマネーはなしでもいいから再戦させてくれ」。今日は晴れてリベンジ戦となったが、実力を発揮する事はできるか。


1R、ベルガミーニは長い足を使ってサイドキックや左ハイを放つ。対する松本は右ローでベルガミーニを崩しに掛かるが、ベルガミーニはソバットやワンツーで松本を攻める。松本は右ロー一本槍だが、その蹴りには威力もスピードもある。ベルガミーニはなかなか自分の打撃が放てずに苦戦している様子。

しかし2R、松本の右ローのタイミングを掴んだベルガミーニは、カウンターの右ストレートを合わせてダウンを奪う。すぐに立ち上がって右ローを放った松本だが、ベルガミーニはこのローをキャッチしてカウンターの右ストレートを叩き込む。松本は二度目のダウンを喫する。

攻勢が一転して大ピンチ、松本はここからは慎重に様子を伺い、遠距離から右ミドルを放つ。対するベルガミーニは前に出てワンツーやボディブローを連打。嫌がる松本はベルガミーニを突き放し、再び右ローを放っていくが…。これが罠だった。リズムに乗った松本が放った何発目かの右ローに、ベルガミーニがカウンターの左フックを合わせれば…、松本はあっさりと三度目のダウンを喫してしまった。


うん、これはベルガミーニが巧かったね。1Rは様子を伺いつつ、2Rはカウンターでダウンの山を築いていくという、なんとも理想的な試合ぶり、というかねぇ。対する松本は、まんまとベルガミーニの術中にハマッてしまった、という感じ。ま、何度もこういうミスをする選手ではないと思うので、再起に期待したいね。

第八試合 ギャラ泥棒です

58kg契約 3分5R
△ノッパチャイ・ラッタナヲン(165cm/58.00kg/タイ)
△菊地剛介(171cm/57.61kg/伊原道場/新日本フェザー級 王者)
[判定 1−0]




27歳という年齢ながらも、51戦38勝7敗6分18KOという立派な戦績を誇る日本人がいる。それは新日本フェザー級王者の菊地剛介。前回のTITANSではTURBOを相手にダウンを奪って判定勝利を修めている。今日の対戦相手は、かつて菊地と対戦して引き分けているムエタイ戦士、ノッパチャイ・ラッタナヲン。菊地はTITANSの舞台で白黒つける事ができるか?


試合は非常に起伏に乏しい展開となった。1Rから4Rまで、お互いに一定の距離を保ちながら様子を伺ったため、何もせずに時間だけが流れていった。時折、菊地は右ローを放って牽制。対するノッパチャイも、時折は前に出てストレートを放ち、首相撲から菊地を投げ捨てる。だが、その後はジーッと様子を見合う両者、観客には辛い時間が続く。

それでも5Rは多少、打ち合った。ノッパチャイは左ミドルを連打すれば、菊地は右ローやワンツー、右ボディストレートを放つ。お互いに打撃を交換していったが…結局、試合の大局が動く事はなかった。

試合終了、判定はノッパチャイの1−0でドロー。こんな展開で勝敗をつけるジャッジって…。


う〜ん、セミファイナルでこの内容とは、なんとも厳しいのぉ。この試合に関しては、それ以上の感想は出てこないや。次行きましょ、次。

第九試合 大・大・大逆転です

63.5kg契約 3分5R
○石井宏樹(176cm/63.50kg/藤本ジム/新日本ライト級 王者)
小宮由紀博(173cm/63.50kg/フォルティス渋谷/J-NETWORKライト級 一位 & LIGHTNING TOURNAMENT '07 優勝)
[5R 2分18秒 TKO]
※小宮が額をカット/石井は1Rにダウン2




今日のTITANS NEOSのメインイベントは…日本キック界、屈指の好カードとなった。

NJKFの桜井洋平と並んで「日本ライト級、最強の一角」とされているのが、新日本ライト級王者の石井宏樹。これまでの戦績は56戦37勝9敗10分17KO。TITANSの舞台では、小林聡を圧倒した「ムエタイ四冠王」ジャルンチャイ・ケーサージムを、キックルールなら石井の勝ちと言えるくらいに一方的にボコボコにし、病院送りにした経験の持ち主だ。今日は他団体のエースを迎える石井、日本人に負けるようではムエタイの頂(いただき)には辿り着けない。

対するのは、J-NETWORKで頭角を現している小宮由紀博。昨年はタイ人二人から勝利を奪っている。しかも、そのうちの一人は、かつて石井が三度対戦したものの、1敗2分で負け越してしまったムアンファーレッグ・ギャットウィチアンなのだ。石井が三度やって勝てなかったムエタイ戦士に勝利している小宮、17戦15勝2敗5KOの戦績は伊達ではない。石井を倒し、狙うはムエタイの頂(いただき)だ。


1R、いきなり観客は驚く事になる。石井が序盤に牽制として放った右ローをキャッチした小宮が、カウンターの右ストレートでダウンを奪ったのだ。いきなりの出来事を前に観客が驚く中、小宮応援団からは大歓声。しかし立ち上がった石井にダメージはなさそうだ。

石井は右ロー、左ミドルといった蹴りで立て直しを図る。対する小宮は、左右の蹴りで石井を牽制しつつ、接近すればパンチを放つ。そして…、左ボディストレート〜右ストレートのコンビネーションを放てば、モロに喰らった石井は二度目のダウン。観客から再び驚きの声が上がり、小宮応援団はお祭り騒ぎの状態だ。

立ち上がった石井、今度はダメージがありそう。これを見た小宮は距離を詰めてパンチで一気に崩そうとするが、石井はジャブや左ローで牽制、なんとかこのラウンドを逃げ切る。


2R、インターバル中に立ち直った石井は、ワンツーと右ローで小宮を攻める。対する小宮もワンツーと右ローで応戦。一進一退のまま迎えた終盤、小宮の右ストレートがヒット。下がる石井に、小宮はボディ〜ワンツー〜左ローというコンビネーションを放つ。まだまだ試合は小宮のペースか。

3R、左ミドル、右ロー、ワンツーといった打撃を放つ石井、特に右ローはかなりの重さだ。対する小宮もワンツーと右ローで応戦。小宮は中盤、左ストレートを石井に叩き込むが、終盤は石井の強烈な右ローを前に距離を詰める事ができなくなる。徐々に石井がペースを取り戻しているな。

4R、相変わらずワンツーや右ローで攻める石井に対して、小宮は序盤にアッパーをヒットさせると、中盤にも左ストレートが二連続でヒット。終盤にも小宮のワンツーや左ストレートがヒットする場面が。石井は肘打ちやハードヒットを狙って前進するも、そこを小宮に狙い撃ちされている。いよいよ追い詰められた石井だが、右ローを放ち続ける事は忘れない。


5R、このラウンドで石井は右ロー主体の攻めを捨て、接近してパンチのコンビネーションを放つ。これに小宮も応戦し、試合はパンチの打ち合いに発展。前進したり後退したりしながらストレート、フックだけではなくアッパーも駆使して殴り合う両者、お互いのパンチが顔面にヒットし、両者応援団が歓声を贈る中、いよいよ試合時間は1分を切る。この時点で勝利を確信していた小宮応援団からは大歓声が沸いたが…次の瞬間、小宮応援団の大歓声が大きな悲鳴に変わる。


石井はこのタイミングで、フルスイングの右の肘打ちをヒットさせたのだ。


モロに喰らった小宮の額からは大流血。目の前で起こった一発逆転劇を目にした観客から大歓声が沸く中で、小宮にドクターチェックが入る。小宮応援団にとっては「止めなければ勝ち、止まれば負け」という状況、当然ながら彼らから出てくる言葉は「止めるな〜っ!」「まだやれる〜っ!」の大合唱だ。

だが、ドクターの判断は「No」。やがてレフェリーが両手を振ると…多くの観客からは大歓声が、小宮応援団からは悲鳴と野次とブーイングが飛ぶ。負けた小宮は声を上げて泣き崩れ、全身で悔しさを表現していたが、やがて落ち着きを取り戻すと四方に礼。観客からは大きな拍手が贈られていた。


うん!「これぞ、キックボクシング!これぞ、肘打ちの醍醐味!」という展開だったなぁ!恐らく最後の肘打ちは、石井がずっと狙っていたのだろう。さすがはベテラン、窮地に陥った時でも勝ち方を知っているって感じだね。1Rに二度のダウンを喫しながらも、しっかりと立て直してしまうあたりも素晴らしい。「日本ライト級、最強の一角」と言われるのも頷けるね。

対する小宮、今日は石井の妙技の前に大きな勝ち星を逃してしまったが…小宮も充分に強い事は新日本キックファンの多くが知る事になっただろう。僕としては、この敗戦にくよくよせず、再び打倒ムエタイに向かって突き進んで欲しいなぁ。巧みなパンチで石井を圧倒していたのは、紛れもない事実なのだからね。

雑感

メインイベントを観る前までは「ムエタイは強いなぁ」とか「そこそこいい試合が多いなぁ」とか「新田劇場」とか、あんまりしっかりした感想を持っていなかったんだけど…、今日はメインイベントの大逆転劇で一気に目が醒めた。あれは凄かったなぁ。


ちなみに新日本キックは年内に、もう一度大会場でTITANSを行なう予定らしい。この時は今日以上のビッグマッチが組まれるだろうから、これは絶対に観に行こう、と心に留めた新日本キック観戦だったとさ。


いや〜っ、たまに観る新日本キックは、本当に面白いですねぇ。


以上、長文失礼。