1/24 NJKF 後楽園ホール興行 観戦記 Ver1.0

初めてじゃないんだけど、初めて書きます。

本日は後楽園ホールNJKFを観戦。


私事で恐縮なのだが、僕自身NJKFを観戦し始めてから四年くらいになる。だが、こうやってNJKFの観戦記を発表するのは初めてだったりする。本当は、昔懐かしきkansenki.netの活動末期にNJKFの観戦記を投稿した事があったんだけど、末期の混乱の中で没になっちゃって、そのままkansenki.netが活動を休止したんだよね。う〜む、国崇の魅力を色々と書いたんだけどなぁ…。

本当に面白いのよ、NJKFって

さてさて。今までは僕自身、何も発表してこなかったNJKFが一体どんな団体なのか。簡単に記述すると…。


(1) 最近は日本のキックボクシング界の多くの団体が興行時間の短縮の為に「3分3R制」にしたり、K-1と提携する為に「肘なしルール」や「首相撲からの膝蹴りを制限」したりする中、NJKFは頑な(かたくな)に「3分5R制」「肘あり膝あり」を守り続けている。保守的というネガティブな見方もあるけれど、僕としてはキックボクシング本来の魅力と伝統を守っている、というイメージかな。


(2) 選手層は意外と厚い上、最近は若い選手の台頭が著しい。WBCムエタイルール日本統一ウェルター級王者の宮越宗一郎(23歳)、NJKFウェルター級王者の健太(22歳)、WBCムエタイ日本統一フェザー級王者の心センチャイジム(23歳)、WMCインターコンチネンタル・ライト級&NJKFライト級王者の大和哲也(22歳)、WBCムエタイルール日本統一スーパーフェザー級NJKFスーパーフェザー級王者の羅紗陀(21歳)と、他団体に比べて若い王者が沢山いるのが、この団体の強みである。


(3) 他団体以上に「打倒ムエタイ」を標榜しており、タイから本当に強い選手を呼んできてしまう。それ故なのか試合の傾向、元全日本キックと比べると、昔ながらのキックボクシング…ミドルキックの応酬や首相撲の攻防を多く観れるように思う。もちろんパンチの技術が高い選手も沢山いるけど、それ以上にキックや首相撲を得意としている選手が多い気がするなぁ。


という感じ。まあ、これらの事を一言で現すのなら「正統派のキックボクシング団体」ですな。

今日のメインはキックファン必見っ!そしてセミは長渕ファン必見っ!?

そんなこんなで、初めて発表するNJKFの観戦記。今日のメインイベントでは「NJKFの若武者」羅紗陀が、「闘う修行僧」前田尚紀との一戦に望む。21歳という若さでキック日本二冠王に輝く羅紗陀にとって、ネームバリューは抜群の前田との一戦は、自身にとって大きなターニングポイントとなる可能性が高い。羅紗陀はこの試合に勝利して、その名前をキック界全体に轟かせる事は出来るのか?またセミでは、心センチャイジムと岩井伸洋が「俺だけのナガブチ争奪マッチ」に挑む。「負けた方の選手は今後、長渕剛の曲で入場できない」という、選手にとってはこれ以上ないくらいに過酷なルール(?)を課せられたこの試合。俺だけのナガブチを手にするのは、果たしてどっちだっ!?


ちなみに観客の入りは約六割。う〜む、今日のマッチメイクでは羅紗陀と前田尚紀の一戦が突出しているけど、他のカードがイマイチだからなぁ。まあ、僕としてはこれでも「カードの割には入ったなぁ」って印象があるけどね。

第四試合 やっぱり首相撲はいいね

62kg契約 3分5R
田中秀和(橋本道場/MA日本ライト級 五位)
●一輝(OGUNI-GYM/NJKFライト級 三位)
[判定 3−0]

この試合の3Rから観戦したが、相変わらず一輝は得意の右ロー一辺倒、そこに時折パンチが入る…という感じの攻め方。対する田中は首相撲からの膝蹴りを中心とした攻めである。う〜ん、途中からの観戦だけど、これなら大体それまでの展開が観えるな(笑)。終盤、一輝の右ローに合わせて田中はカウンターの右ハイを当てる。それでも一輝は右ローに固執。うむ、これでこそ一輝だ。




4R、一輝はやっぱり右ローを中心に、時折右ストレートを放って田中を牽制。対する田中、序盤は右ローとワンツーで応戦。中盤に一輝の右ストレートがヒット、だが田中にはダメージがない様子。ラウンド後半、田中は再び首相撲からボディや腿にコツコツと膝蹴りを重ねる戦法に切り替えると、縦の肘打ちも駆使して一輝を攻める。一輝はこれを捌けずに苦戦。地味だけど、田中がペースを握っているなぁ。



5R、やはり田中は首相撲からボディへ膝蹴りを連打して攻める。離れてからのボディストレートをヒットさせて一輝を後退させた田中は、この後も首相撲からのボディへの膝蹴りと縦の肘打ちをしつこく繰り返した。何度も接近してくる田中を前に、一輝は手を足も出ない状態で、ブレイクの直後にワンツーをヒットさせる場面もあったが、最後まで田中の首相撲からの打撃に手を焼いた。



判定の結果、3−0で田中が勝利。



う〜ん、一輝は名前とは裏腹に闘い方は地味そのものだよなぁ。まあ、首相撲に完敗したのも勉強かな。ちなみに、対戦相手の田中秀和選手は、元新日本プロレスのリングアナウンサー(現在はSBでリングアナをする事が多い)である田中ケロ氏(本名:田中秀和)とは何の関係もありません、多分…。

第五試合 残酷な言い方をすると、アスリートとしての身体の出来が違っていたかな…

ヘビー級 3分3R
中西裕一(180cm/99.5kg/フリー/元PANCRASEミドル級 王者 & 元DEEPミドル級 王者)
篤志(181cm/98.8kg/ブリザードジム/NJKFヘビー級 一位)
[判定 2−0]

総合格闘技の舞台では王者も経験、何かと冷遇されながらもちょこちょこと試合を続けている中西裕一が突如、NJKFに参戦。頭にモンコンを付け、キックのトランクスを履いて入場する姿はちょっと新鮮だが、観客は発表体重が約100.0kgの中西の小デブぶりと、入場曲にKAT-TUNのデビュー曲である「Real Face」を選ぶセンスに少々驚いている様子。対する篤志は入場曲であるKISSの「勇者の叫び」を、スティーブ・ウィリアムスの入場バージョンに切り替えて入場。そうか、前から気にはなっていたけど、やっぱりこの入場曲は殺人魚雷コンビに影響を受けてのチョイスだったのか。Dr.Deathよ永遠なれ…。




1R、試合開始早々に放たれた中西の右ローが重い。会場中に響く「バッシーン!」の音に観客がどよめく。対する篤志は得意のワンツーを繰り出しながら前に出る。だがダッキング篤志の打撃をかわした中西は、その圧力をやり過ごすべく自ら下がっていき、遠距離から右ローと左ミドルで蹴っていく。これを見た篤志は愚直に中西を追いかけてパンチを放つが、中西はスウェーやダッキングでやり過ごしてしまう。自分の得意な展開に持ち込めない篤志、厳しい展開だ。対する中西、総合格闘技の時とやっている事が変わらない。う〜ん、試合の図式が郷野聡寛が、西田和嗣から全日本キックのヘビー級王座を獲得した時の試合と同じだなぁ(笑)。



2R、まずは中西が重い左ミドルで篤志を蹴っていく。対する篤志は下がる中西を追いかけ、接近戦で組み付いて肘打ちを放つも、中西はしっかりと防御した上で、離れたところに右ローを重ねていく。尚も接近しようとする篤志を前蹴りを入れたりクリンチしたりしながらやり過ごす中西に対して、中々接近できない篤志は裏拳の奇策に出るも、中西は自ら下がって充分に距離を置くことでアッサリと対処。う〜ん、打つ手が肘打ちしかなくなってしまうのを含めて、試合の図式が郷野聡寛が、西田和嗣から(略)



3R、必死に前に出る篤志を何度もクリンチでやり過ごす中西。篤志は右ハイを何発か繰り出すも。中西は冷静に捌いてしまう。中盤、篤志ローブローで試合は中断。再開後、中西は後がない篤志の突進を下がってやり過ごし、コーナー際に追い詰められたら巧く入れ替わって捌き、尚も突進して来る時は前蹴りで止めたりして、最後まで篤志にペースを握らせなかった。



判定の結果、2−0で中西が勝利。う〜ん、クリーンヒットがないからドローにした審判がいるみたいだけど、この試合はどう見ても中西の勝ちでしょ。しかしまあ…最初から最後まで、試合の図式が郷(略)


第六試合 大接戦でした

NJKFウェルター級王座決定トーナメント 準決勝 3分5R
○大和侑也(173cm/66.15kg/大和ジム/NJKFウェルター級 五位)
●為房厚志(174cm/65.9kg/二刃会/NJKFウェルター級 三位)
[判定 2−1]

大和侑也が所属している大和ジムっていうのは名古屋にある名門ジムで、ここにいる大和哲也って選手が、キックボクシング好きには注目の的になっている。理由は単純で「強いから」。その日本人離れした打撃の重さを観れば、誰もが納得をするだろう。大和哲也、マジで覚えておいて損のない名前ですぜ。

んで、今日試合をするのは哲也ではなく、同じジムに所属している大和侑也の方。一見、苗字が同じだから兄弟のように見えるけど、血縁関係はありません。この大和ジムムエタイのジムと同じで、ジムの名前を苗字にする慣わしなのですよ。ちなみに侑也は19歳にして7戦5勝2敗4KO。期待のルーキーですな。




1R、大和が積極的に右ミドルと右ハイを繰り出して前に出る。対する為房は下がりながらのパンチで応戦。大和はまるでローを打つような頻度で右ハイを多用し、ここから時折パンチへと繋げていく。変則的なスタイルの持ち主である大和に対して、為房はパンチでのカウンターを狙う。う〜ん、大和のスタイルって本当に変わっているよなぁ。あんなに右ハイを多用しているのに、バランスを崩さないのが凄いよなぁ。



2R、大和は相変わらず右ハイ主体の攻撃、これに為房がカウンターを狙っていく。為房がカウンターを狙っているのを知っていながらも、大和は構わず右ハイを繰り出していく中で迎えた中盤、大和が放った右のボディフックがクリーンヒット。一発で効いて下がる為房に、大和はワンツーの連打を浴びせるが、為房はこれを耐えしのぐとワンツーで逆襲。しかし大和は、前に出ようとした為房に、右の肘打ちや右の膝蹴りを返して攻め込んでいく。



3R、序盤から接近して打ち合う両者だったが、大和の右ハイに今度は為房の右フックがカウンターでヒット。これで距離を詰める為房に対して、喰らいつつも殴ろうとする大和。お互いのストレートとアッパーが交差する中、為房のワンツーが更にヒット。大和は自ら下がって距離を置き、再び右ハイを連発する戦法に戻したが、為房はここで再び右ストレートを入れると、続け様にワンツーを放って攻勢。う〜ん、中々実力が拮抗しているなぁ、面白いよ。



4R、前に出る大和、下がる為房。大和が右ハイからワンツーを放てば、為房もワンツーで対抗、これに大和がワンツーで応える。持てる技術を駆使して殴り合う両者、スウェーとカウンターが何度も出る。派手な展開に両者の応援団が歓声を上げる中で終盤、為房の右ストレートがヒット。だが大和は右ミドルで応戦、再び両者のパンチが交差する。う〜む、派手な技術戦だなぁ。



5R、為房は左ジャブを連発、前に出ようとする大和を牽制。だが大和は構わず前に出て、右ハイを中心に手数を増やし、大振りながらも回転の早い打撃のコンビネーションで攻勢。だが為房は大和の右ミドルにワンツーを返して応戦、これに大和がワンツーで対抗。両者の打撃が休みなく放たれる中で迎えた終盤、前に出る大和に為房のカウンターのパンチがヒット。両選手の応援団の歓声の中で試合は終了。



判定の結果は2−1で大和が勝利。大接戦をモノにした大和は「今度は今日よりもっといい試合をしますので、もっと大和侑也の名前に注目して下さい!」とアピールしていた。



ぬぅ、これは接戦だったなぁ。もし僕が判定をつけるとしたら…、クリーンヒットの数は為房の方が多かったかもしれないけど、より手数が多かった大和を勝者にするかなぁ。っていうか、この試合はNJKFウェルター級の王座決定トーナメントの準決勝だったのか。全然、気付かなかった(笑)。決勝は誰とやるんだろ?後で調べようっと。

第七試合 色々あるさ、色々ね

NJKF女子フェザー級 初代王座決定戦 3分3R + 延長2分1R
○AZUMA(166cm/57.0kg/y-park/J-GIRLSバンタム級 二位)
●成沢紀予(174cm/57.0kg/フォルティス渋谷/J-GIRLSフェザー級 二位)
[2R 30秒 KO]
※右ストレート/AZUMAが初代王者に

この試合は、この度新設されたNJKF女子フェザー級の初代王座決定戦。最近のキックボクシング界はまた、どの団体も女子に力を入れるようになったなぁ。




んで、この試合に出場するのはパンチを得意とするAZUMAと、長身の持ち主である成沢紀予。22歳のAZUMAの戦積は18戦9勝7敗2分3KO。正直、そこまでいい戦績というワケではないが「女子の打撃は軽い」と言われる中で3KOの実績は見事なものだと思う。対する成沢は、何でもJ-GIRLSの発足以前から女子キック界で活躍していた選手で、戦積は24戦10勝11敗3分という豊富さである。敗北先行の戦績はちょっと気になるが、巡って来たチャンスはモノにしたい。ここは174cmという抜群の身長でカバーしたいところだね。



1R、成沢は距離を置いて右ローで牽制、対するAZUMAは細かいステップワークからパンチを放つ。序盤は様子見の状態が続いたが、先に仕掛けたのはAZUMA。二段蹴りで成沢を挑発すると、接近してのワンツーや前蹴りを一発入れた後、すぐに成沢の間合いから離脱するというヒット&アウェイ戦法に出たのだ。成沢はAZUMAのパンチを警戒するあまり、なかなか接近できない様子である。

「う〜ん、あれだけ身長があるのに首相撲とかできないモンなのかなぁ?」と思ってパンフを読むと、女子の場合は首相撲からの打撃に厳しいルールがあるようだ。「両者が合意しないと顔面に膝を入れられない」とか「首相撲からの打撃は一発だけ」とか。ああ、これじゃこの試合で成沢の良い所は出ないだろうなぁ…。

そんなこんなで迎えた終盤。AZUMAは成沢の懐に飛び込むと、ワンツーの連打で一気にプレッシャーを強める。1R終了のゴング付近でAZUMAの頭が成沢にヒット。ゴング直後、成沢は目の辺りを押さえてレフェリーに抗議するも、レフェリーは聞き入れない。う〜ん、妙にキナ臭い。




2R、1R終盤の攻めで流れを掴んだAZUMAは、積極的にワンツーを繰り出して成沢にプレッシャーを掛ける。



そして、前蹴りで成沢の顔面を蹴ったAZUMAは、成沢が前に出たところにカウンターの右ストレートを叩き込む。この一撃で成沢は完全にダウン、カウント6で立ち上がり始めたけれどファイティングポーズが取れず、レフェリーがそのままカウント10を告げた。うむ、AZUMAの完勝だね。



勝ったAZUMAは涙ながらに「これからは、もっとチャンピオンらしい試合をしていきます。会長の誕生日にベルトが獲れて嬉しいです(要約)」と語り、観客の温かい拍手を誘っていた。



ちなみにAZUMAの所属するy-parkの山崎将会長は、NJKF女子統括部長なのだそうである。そうかそうか、NJKFに突如女子部が出来たのはy-parkがJ-NETWORKから移籍してきたからなのか…。

まあ、このベルトに価値を与えていくのは、これからの話だと思う。折角、女子王座を新設したのだから、NJKFとしてはこれからドンドン女子の試合を組んでいって欲しいね。

第八試合 ♪おお順子ぉ、君の名を呼ぶだけで、せ〜つないよ〜っ!(黒歴史か?)

59.5kg契約 3分5R
○心センチャイジム(168cm/58.5kg/センチャイムエタイジム/WBCムエタイフェザー級 日本王者)
岩井伸洋(170cm/59.5kg/OGUNI-GYM/NJKFスーパーフェザー級 二位)
[判定 3−0]
※岩井は4Rにダウン1/岩井は今後「一匹の侍」での入場が禁止に(但し、心は使用を許可)

本日のセミファイナルは「俺だけのナガブチ争奪マッチ」と題し、両者が長渕剛の入場曲の使用権を賭けて争う事になった。成程、長渕剛コントラ長渕剛ってワケだな。

小学生の頃にドラマ「とんぼ」を見て以来、長渕剛のファンだという岩井伸洋は元自衛隊員。左ミドルと主体とした激しい打撃を見せる選手で、それ以上に激しい応援団の野次も含めてインパクトの強い選手である。う〜む、岩井応援団って多分、自衛隊時代の仲間が中心で構成されているんだろうなぁ。そんな岩井の入場曲は「一匹の侍」。ふ〜む、こうやって聴くと、本人が醸し出す雰囲気と、ギター一本による弾き語りがマッチしていて良いねぇ。

対する心センチャイジムもまた、小学生の時にドラマ「ボディーガード」を見て以来の長渕剛のファンなのだそうな。う〜ん、23歳という若さで長渕に嵌るというのも、なんだか生き急いでいる気がするなぁ…。それはともかく、パンチと首相撲を得意とする心の入場曲は「ひまわり」なんだけど…正直、僕はあんまりこの曲は好きじゃないんだよなぁ。っていうか、やっぱり長渕はギター一本による弾き語りが一番、真価を発揮するでしょ。うん、とりあえず入場曲だけなら岩井の勝ちだな。




1R、心は距離を置いて右ミドルを放ったのに対して、岩井は左ミドルから接近してワンツーを連打。岩井がプレッシャーを強める中、心は岩井に組み付いて首相撲からの膝蹴りや肘打ちを連打して応戦。やがてレフェリーがブレイクすると、再び岩井がプレッシャーを強めてヒット&アウェイで攻め、心が組み付いて首相撲から…という展開が続く。成程、岩井は近距離で攻めたくて、心は至近距離が得意の間合いなワケか、わかりやすいね。

終盤、岩井の左ストレートがヒット。岩井応援団の歓声の中、心が右ミドルを返すと、岩井は得意の左ミドルで対抗。う〜ん、まずは岩井が攻めているねぇ。




2R、序盤から両者のパンチが交差する激しい展開の中、心は首相撲を駆使して肘打ちを放つ。岩井も肘打ちで対抗し、距離が開けば激しいパンチで心に襲いかかる。だが心は重い右ミドルを連発して岩井の身体を折り曲げると、またしても首相撲からの肘打ちと膝蹴りを繰り返してダメージを与えていく。岩井は苦しい状況となったが膝蹴りで応戦、ブレイク後にはまたワンツーを繰り出して接近する。長渕の曲に負けないくらいの激しい試合内容だな。



3R、相変わらず両者のワンツーが交差する激しい展開だったが、心の攻撃はあくまで首相撲からの肘打ちと膝蹴りが中心である。首相撲を捌けない岩井は至近距離ではやや一方的に打撃を喰らっていたが、ブレイク後には得意の左ミドルやワンツーで反撃。すると中盤、岩井はワンツーをクリーンヒットさせて心の動きを止める。岩井応援団の歓声の中、チャンスを迎えた岩井だが…心は首相撲で岩井のプレッシャーを弱めると、終盤にはワンツーと膝蹴りで逆襲を掛ける。う〜ん、譲らないねぇ。



4R、岩井は左ミドルを連発して襲い掛かるが、心も膝蹴りや右ミドルで迎撃する。だが岩井はパンチの中に左アッパーを混ぜて攻め込むと、このアッパーが見切れない心が前に出れなくなる。ここで岩井は前蹴りを駆使して自分の距離を作り、そこから得意の打ち合いへと持ち込む。心のパンチにカウンターを合わせる岩井、心は得意の首相撲が使えずに苦戦。



だが、心は強引に接近して膝蹴りを放つと、岩井の顔面に肘打ち一閃。これで岩井は右頬をカットし、ドクターチェックが行われる。幸い傷は浅く試合は再開したが…。その直後、心の右肘打ちが岩井の顔面にクリーンヒット!岩井は尻餅をつくようにダウンを喫してしまう。う〜ん、ここまでは実力拮抗の好勝負だったけど、ここで明暗が分かれたか…。



5R、4Rにダウンを奪うことでアドバンテージを得た心が前に出る。そしてダウンによって後がなくなった岩井もまた前に出る。こうして両者はまたしても、正面からの打ち合いを披露。激しい展開に両者の応戦団が歓声を上げる中、心はワンツー〜飛び膝蹴りの連続技でプレッシャーを掛けると、首相撲から岩井を何度も押し潰していく。更には首相撲を駆使してバックに回っての膝蹴りや、離れての右ミドルと右膝蹴りで容赦なく岩井を攻めていく。だが岩井も心に組み付いて体力を回復しつつ、最後までワンツーを放ち続けて応戦した。



両者の応援団の大歓声の中、壮絶な展開で試合は終了。判定の結果、4Rにダウンを奪った心が3−0で勝利。だが心は「皆さん、聞いてください!僕は賭け事が大嫌いです!岩井さんといえばファンの人も『一匹の侍』を思い浮かべるだろうし、僕も岩井さんの『一匹の侍』が大好きです!応援団の皆さん、今後も岩井選手は『一匹の侍』が聞きたいですよね?だから、今後も『一匹の侍』を使って下さい!」と叫び、観客の歓声を浴びていた。



う〜ん、これは非常に悪い言い方になっちゃうんだけど…。正直、今日の試合で負けた事によって、逆に「岩井伸洋=『一匹の侍』」のイメージが強くなっちゃったかもなぁ。負けた後、何も言わずに控え室に去っていく姿がまた「一匹の侍」の曲のイメージと凄くマッチしてしまったというか…。とりあえず「一匹の侍」って曲自体が、岩井のイメージに凄くマッチしているから、僕も入場曲は変えないでいて欲しいなぁ。

そりゃそうと、今回の企画は色々なアレンジが出来そうで面白いな。個人的には湘南乃風コントラ湘南乃風をやって欲しい。洋楽ならLinkin ParkコントラLinkin Parkだな(笑)。一時、猫も杓子も「Faint」を使っていた印象が強くてねぇ…。

でも、長渕といえばコレでしょ!夜ヒットの伝説「巡恋歌

■URL■http://www.youtube.com/watch?v=Pbq8Yabg9FI

第九試合 若武者、修行僧を粉砕

60.0kg契約 3分5R
○羅紗陀(170cm/59.8kg/キングジム/WBCムエタイスーパーフェザー級 日本王者 & NJKFスーパーフェザー級 王者)
前田尚紀(166cm/60.0kg/藤原ジム/元全日本フェザー級 王者)
[判定 3−0]
※前田は5Rにダウン1

本日のメインイベントは、日本キックボクシング界の60kgの明日を占う重要な一戦である。「NJKFの若武者」赤十字竜改め羅紗陀(らしゃた)が「闘う修行僧」前田尚紀に挑む。


まず入場してきたのは、今日は敵地での闘いとなる「闘う修行僧」こと前田尚紀。このところはKrushを主戦場としていた前田だが、昨年末に「来年は、キックルールを主体に闘う」と宣言。その公約通り、前田は今日キックルールの舞台に立っている。前田とNJKFといえば、一年前に米田貴志と対戦した一戦を思い出す。バンタム級では日本キック界最強の一角である米田に対して1Rに二度ダウンを奪われる等で苦戦した前田だが、ラウンドが進む毎に徐々にパンチのプレッシャーを強めると、最終Rには逆に二度ダウンを奪った末に逆転勝利を収めている。今日の相手は米田と並ぶくらいの強豪だが、敵地に来ても前田は前田らしく淡白に入場。




さてさて。今まではNJKFの観戦記を書く機会がなかった為、僕自身は羅紗陀の事を書く事もなかったのだが…。実はこの選手、メチャメチャ強い。

自身が所属するキングジムの会長が父親だという羅紗陀は21歳の若さでありながら、独特の間合いと鋭い打撃の連打で、相手を簡単に寄せ付けない…という、まるでベテランのような闘い方をする選手で、現在は日本キック二冠王に君臨している。戦績は12戦9勝2敗1分3KOで、過去には真王杯60kg準優勝の中須賀芳徳、MAキックやRISEなどで活躍する末広智明を倒しており、山本真弘を下した"狂拳"竹内祐二とはドロー。この先、間違いなく日本キック界の軽量級を背負う人材の一人となるであろう羅紗陀は今日も和太鼓の生演奏のみによる入場曲で入場。これがまたインパクトがあるんだよねぇ。




ちなみに羅紗陀は以前、赤十字竜の名前で闘っていたが、昨年末に日本赤十字社からクレームが来てしまった為に改名を余儀なくされた、という過去を持つ。う〜ん、赤十字竜って名前はいい名前だと思うんだけどなぁ、勿体ない。



1R、まず前田は右ローを放ちながら様子見の状態。対する羅紗陀は左ローを返していく。ジリジリと間合いを詰めていく前田に対して、羅紗陀は「近寄るな!」とばかりにサイドキックを返す。前田が羅紗陀の間合いに飛び込んで、左ストレート〜右ローのコンビネーションを繰り出せば、羅紗陀は鋭い右ストレートを返して間合いを開けると、すかさず右ハイを放つ。前田は再び接近してワンツーを放ったが、羅紗陀はガードした後に前田を遠ざけると、今度は自らジリジリと前に出て鋭い右肘と右ローを返す。ここで1Rは終了。前田を容易に近付けない羅紗陀の圧力が凄まじい。



2R、前田は左ストレート〜右ローで懐に飛び込もうとするが、羅紗陀はパンチでこれを拒むと逆に右フックを前田の顔面に叩き込み、怯む前田に一気にラッシュを仕掛ける。左ボディと膝蹴りを突き刺す羅紗陀、一発の打撃の重さが凄まじい。だが前田はこれを喰らいながらも堪え、右ストレートや右ボディを返していく。この後、羅紗陀は距離を置いて右ローを蹴り続け、その合間に前田が接近してワンツーを放つ…という展開が続いたが、前田は終盤にテンポ良くワンツースリーの連打を放って羅紗陀の足を止める。むぅ、段々と前田が羅紗陀との距離を縮め始めたな。



3R、前田は右ローで羅紗陀の左足を蹴り続け、ここから左フック〜右ストレートをヒットさせる。プレッシャーが弱まる羅紗陀に対して、前田は右ローとワンツーを積極的に繰り出して徐々に追い詰めていく。中盤、またしても前田のワンツーの連打がヒット。羅紗陀は右アッパーを返すも、前田は続けて右ロー〜左フックのコンビネーションをヒットさせる。羅紗陀も負けていない、ワンツーをヒットさせると、怯む前田に更なるワンツーを浴びせていく。う〜ん、一進一退だなぁ。

だが、ここで再び前田の右ロー〜左フックがヒット。ふ〜む、どうも羅紗陀は前田の右ローが効いて来たらしく、意識が完全に下に向いてしまっているようだな。苦しい展開となった羅紗陀、それでも左ストレート〜右アッパー、そして右ハイのコンビネーションで前田に逆襲。段々と激しい展開になってきたね。




4R、ついに前田が主導権を握る。ワンツーの連打で攻め込むと、締めは当然右ローだ。羅紗陀もワンツーの連打と左ローで返すものの、あの独特のプレッシャーは完全に消えてしまっている。こうなると前田の勢いは止まらない。前田は容易に羅紗陀に接近して打ち合いを挑み、左フックを叩き込んで左ミドルで追い討ち。羅紗陀は右ストレートを一発返すが、前田は終盤にも右フックを叩き込むなどで攻勢をキープ。羅紗陀はこのラウンドで、結構な数のパンチを被弾してしまったなぁ。さあ、どうする羅紗陀っ!?



5R、前田がプレッシャーを強めた。まず左インローを放つと、羅紗陀の右ローを喰らいながらも前に出て、ワンツーやフックの連打で攻めていく。羅紗陀はストレートを一発返すも、前田の勢いは止まらない。左ミドルを放つ前田、羅紗陀が右ローを放てば、反対に前田は右ローの連打で攻めていき、パンチを放とうとする羅紗陀を前蹴りで突き放す。前田の打撃を喰らい続けた羅紗陀に疲れの色が見える。

と、ここまでは多くの観客が前田の判定勝利を確信していただろう。だが…。




5R終盤、羅紗陀からダウンを奪うべく前田が最後の猛攻を見せる。右フックを叩き込むと、尚もフックの連打で羅紗陀を追い詰める。だが…。試合終了の20秒前、羅紗陀が不意に放った右フックがクリーンヒット、前田は痛恨のダウンを喫してしまう。思わぬ大逆転劇に観客は騒然、羅紗陀応援団の大歓声、そして前田応援団の悲鳴が飛び交う中、前田は何とか立ち上がるも、試合時間は残り数秒。前田は果敢に攻めたが、ここで試合終了のゴングが鳴る。



判定の結果は3−0で羅紗陀の勝利。勝った羅紗陀はマイクで「最後のダウンは狙っていませんでした。こんな試合になってしまって、僕もまだまだですけど…前田選手という名前のある選手に勝てたのは嬉しいです。今日は改名してからの第一戦ですが、羅紗陀の名前を早く覚えて下さい」とアピール、観客の歓声を浴びた。



このカードが決まった時、僕は正直、もっと羅紗陀が圧勝すると思っていた。それくらい、NJKFにおける羅紗陀の強さは圧倒的だったのだが…、前田が羅紗陀のプレッシャーを切り崩してきたのには驚いたなぁ。とはいえ、結果は敗北。後一歩のところまで追い詰めながらも、自身が得意としている逆転劇で負けたのは本当に残念だった。

反対に言えば、どう見ても劣勢という状況の中で、逆転のワンパンチでダウンが奪える羅紗陀の勝負強さにも驚いたね。う〜ん、まだ若いのに、こんな勝ち方ができるとはなぁ…。末恐ろしい21歳だ。

雑感

う〜ん、今日はセミとメインが出色の出来だったね。


セミの「俺だけのナガブチ争奪マッチ」は、長渕剛のイメージとマッチしたいい試合だったように思う。そして文中にも書いたが、この試合でより長渕だったのは、負けた岩井伸洋の方だと思うので、岩井にはこれからも是非「一匹の侍」で入場してきて欲しい。


そしてメインは期待に違わぬ緊張感と激闘で、試合内容も非常にドラマチックだった。そして羅紗陀がこの一戦で勝ち得たものは非常に大きいと思う。桜井洋平、石川直生山本真弘山本元気大月晴明、石井宏樹…。羅紗陀の階級である60kg級には、団体内にも団体外にも強豪がひしめく階級である。これを機に、どんどん良い対戦相手と闘って欲しいね。


以上、長文失礼。