2/9 ボクシング 亀田大毅世界戦 神戸ワールドホール興行 TV観戦記

Mask_Takakura2010-02-09

男子三日会わざれば、剋目して見よ!

2009年10月7日。自身としては二度目の世界王座戦で、王者であるデンカオセーン・カオウィチットの、クリンチを利用した老獪な試合運びの前に敗れてしまった亀田大毅。だが、大毅は再び立ち上がる。あれから四ヶ月が経過した今日、大毅が異例の早さでリベンジマッチに挑む。次の挑戦者候補と目されていた坂田健史を差し置いて…。


う〜む、どういった政治的な動きがあったかは知らないし、ぶっちゃけ前回の試合も仕事の都合で観ていないんだけど、「正直、兄の興毅や世界王者クラスの選手達と比べると、実力では一枚も二枚も劣る今の大毅では世界王座は取れないだろう」なんて事をぼんやりと考えていた。だが…。

そこにいたのは『生まれ変わった男』

WBA世界フライ級 タイトルマッチ 3分12R
亀田大毅(168cm/50.8kg/亀田ジム/WBA世界フライ級 十一位)
デンカオセーン・カオウィチット(161.0cm/50.2kg/タイ/WBA世界フライ級 王者)
[判定 3−0]
※亀田が新王者に/デンカオセーンは6Rに減点1、11Rに減点1

ふ〜む、それにしても…。四ヶ月前に王者に敗れたランキング十一位の選手が、ボクシングの名門である協栄ジムの選手を差し置いて、自分の母国でリベンジマッチか。多分、この試合の実現の為にどれだけ『大きな力』が動いたんだろう。「亀田家では一般企業がスポンサーにつかない」なんて報道もある中で、よくこんな試合が実現したモンだなぁ。とりあえずTVでは、有名企業が何社かスポンサーとして名前が出ていたけど、以前に比べて数は激減していたから、視聴率は良くても赤字なんだろうなぁ…。

ちなみに大毅の戦績は17戦15勝2敗11KO、対するデンカオセーンは50戦48勝1敗1分20KO。ふ〜む、あんまり知らない選手なんだけど、デンカオセーンは大ベテランなのね。ただ、TVで放送していた内容によると、現在のデンカオセーンは下り坂なのだそうで。前回の試合で「大毅と試合をして、僅差の判定勝ち」という報道だけを聞くと、あんまり強くない王者なのかな?って気はしちゃうよね。ま、坂田健史に圧勝して王者になったのだから、弱いとは思わないけどさ。


1R、まずは両者が距離を取る。デンカオセーンは前に出てワンツーを放てば、大毅は足を使って下がってノーモーションの右ストレートを返す。尚もデンカオセーンは前に出るが、ここで大毅の右フックがヒット。この後もデンカオセーンが前に出てプレッシャーを掛けるも、大毅は軽快なフットワークや前に出てのクリンチでやり過ごす。終盤、大毅の左フックがクリーンヒット、これでデンカオセーンがよろめくと、大毅は右ストレートを当てる。終了直前の打ち合いでも堂々と左右のフックを入れる大毅、このラウンドは取っただろう。

2R、1Rの流れを変えるべく、デンカオセーンが左ジャブを連発してプレッシャーを掛ける。大毅は前に出て右ストレートを放つが、デンカオセーンも前に出てワンツーを返す。ここからデンカオセーンは、クリンチを使って大毅の勢いを殺しつつ、ボディに焦点を絞ってパンチを放つ。大毅はカウンターを入れる場面もあったが、このラウンドの大毅はデンカオセーンの巧さに攻めあぐねた。

3R、流れを変えたい大毅は、左ジャブをよく伸ばして牽制しつつ得意の左ボディを放つ。対するデンカオセーンはこのラウンドもボディ中心の攻め。中盤、デンカオセーンが放ったワンツーに、大毅が左ストレートを合わせる。グイグイと前に出るデンカオセーンは、大振りなボディフック〜クリンチという流れを連発して大毅のペースを乱しに掛かる。だが大毅も、モーションの少ない右ストレートで反撃。う〜ん、このラウンドはちょっと判定が難しいけど、まあデンカオセーンかな?

4R、このラウンドのデンカオセーンは積極的に前に出て打って来た。次々に放たれるフックの連打を、大毅はステップバックしたりクリンチを使ったりでやり過ごす。だがデンカオセーンはこれに構わずに前に出て、大振りな右ボディを当てた後でクリンチ…という戦法を多用。大毅は終盤に右ストレートを当てるも、このラウンドもデンカオセーンだな。

序盤戦終了。ここまでの僕の裁定は39-37でデンカオセーン。とはいえ…今日の大毅は、今まで僕が見てきた大毅とはまるで別人のよう。ステップは軽いし、オーソドックスの構えから放たれる左のジャブもよく伸びる。ノーモーションで放たれる右のストレート、そして返しの左フックという武器もいい感じ。立ち振る舞いも堂々としていて好印象。正直、こんな大毅は初めて見た。


5R、デンカオセーンがプレッシャーを強めて前に出る。これに対して大毅も前に出てパンチを放った後でクリンチ、相手の勢いを殺していく。両者のクリンチの数が明確に増える中、大毅は中盤に左フックを入れると、続いて右ストレートを当てる。更には左の細かいフック、そしてボディブローの連打でベテラン王者のスタミナを奪いに掛かる。ふむ、このラウンドは大毅がとったかな。

6R、相変わらず、両者が接近してクリンチ…という展開が続く。そんな中、序盤に大毅は右アッパーと左フックを当てるも、デンカオセーンも右アッパーで反撃、毅の左フックを返す。中盤、デンカオセーンは大毅の腕を脇に抱えてのクリンチを多用してしまい、レフェリーが減点1を勧告。観客の歓声の中、大毅は試合再開後に左右のパンチを入れる。終盤、デンカオセーンの右ボディを喰らったが、このラウンドも大毅がとったかな。

7R、序盤は打ち合う両者、デンカオセーンはクリンチを利用したサバ折りで大毅にプレッシャーを与えると、左右のボディで体力を奪いに掛かる。中盤、大毅の右ストレート〜左フックがヒットするも、デンカオセーンはボディを殴りながらのクリンチを多用。終盤、大毅の右ストレートがクリーンヒットするも、デンカオセーンは尚もクリンチを繰り返す。ここはデンカオセーンかな。

8R、左のジャブを伸ばす大毅に対して、デンカオセーンがクリンチからのサバ折りでプレッシャーを逃れる。大毅は左フックを連続でヒットさせたが、尚もデンカオセーンはパンチを打ってはクリンチ…を繰り返す。大毅にとってはやり難い展開が続いたが、大毅は軽いステップワークで距離を置くと、尚もボディを狙ってくるデンカオセーンに右ストレートを叩き込む。一瞬、デンカオセーンの腰がわずかに落ちると、大毅はこれを見逃さずにラッシュを仕掛ける。このラウンドも大毅だな。

中盤戦終了。僕の裁定は76-75で大毅。いや〜、今日の大毅はいいね。相手をKOするパンチではないけれど、確実にポイントを奪えるパンチを身に付けている、というか。ぶっちゃけ、今日の試合だけなら兄の興毅よりも全然、面白いよ。


9R、開始直後からデンカオセーンがクリンチを使わずに打ち合いを挑んできた。これに大毅が応え、両者は角を合わせての激しい乱打戦を展開。大毅は左右のフックを次々に叩き込み、デンカオセーンはボディの連打で巻き返しに掛かるが、ここでもヒット数が多かったのは大毅の方。そして、この打ち合いでスタミナを消耗したデンカオセーンは、中盤以降は動きが止まってしまう。大毅は左ボディでデンカオセーンのスタミナを奪うと、終盤には小さいパンチの連打をヒットさせる。デンカオセーンはクリンチで逃れようとするも、先ほどまでの力強さがない。このラウンドは明確に大毅のラウンドだ。

10R、デンカオセーンが左ジャブ〜右ボディで攻めてくるも、大毅は左のジャブを伸ばし、右フックを顔面に叩き込む。尚も大毅は左のジャブと左ボディを使って攻める。デンカオセーンのプレッシャーが益々弱まる中で、大毅は相手を追い詰めて左ボディを入れると、左右のフックを多用してダメージを与える。軽いステップから活き活きと左のジャブを放つ大毅、デンカオセーンはスタミナ切れだな…というワケで、このラウンドは大毅。

11R、デンカオセーンは前に出てボディを攻めるも、そこへ大毅の左ストレートがヒット。この後、両者が前に出てのクリンチが繰り返されたが、デンカオセーンの手数が目に見えて減っている。終盤、またしてもデンカオセーンに減点が告げられる中、大毅は細かいパンチを入れてポイントを稼ぐ。このラウンドは大毅。

12R、後がないデンカオセーンは前に出てボディへパンチを放つも、大毅は左ジャブで牽制しつつ下がりながらのワンツーを何度も当てる。結局、デンカオセーンは前には出るも有効打が出ることはなく、逆に大毅のパンチを何発も貰ってしまった。ゴングと同時に沸き返る観客。セコンドも判定結果が出る前から肩車で大毅を祝福。兄の興毅も、弟の和毅も笑顔だ。会場の誰もが新王者の誕生を確信したのだろう。


試合終了、僕の判定では116-110で大毅。そして実際のジャッジの採点は116-110、114-112、116-110で全員、大毅を支持。観客の歓声の中、新王者・亀田大毅が誕生した瞬間だった。そして、その大毅の勝利者インタビューが始まるか否か…というところで、僕の録画映像も終了してしまった。う〜む、今日は時間ピッタリにしか録画準備をしていなかったからなぁ。ま、肝心の試合の方は全部録画できたから、とりあえずはOKだったけど…延長があるなら最初から言ってくれよ、TBSさんよぉ。


それにしても今日の大毅は、本当に強かった。過去に見たどの大毅よりも全然、強かった。相手を倒すボクシングではなく、徹底的に相手からポイントを奪うタイプのボクシングに見えたけど、以前とは比べ物にならないくらい動きが良かった。あのインファイトしか戦略がなく、それが相手に通じないと何をしていいのか判らなくなっていた大毅が…足を使って距離を取り、左のジャブで牽制し、右のノーモーションのストレートを当てる、という。今日の試合のために本当に練習してきたんだろうなぁ。うん、今までは大毅に対して辛口だった僕だけど、その努力は素直に賞賛したいね。

雑感

さてさて、晴れて新王者となった大毅の次の対戦相手は…もし、このベルトを防衛する気があるのなら…坂田健史との「元同門対決」という事になるのだろうが、噂では大毅はベルトを返上し、一階級上のスーパーフライ級王座への挑戦に挑むようだ。となると、現在のWBA世界スーパーフライ級王者である、名城信男との対戦の可能性もあるわけか。僕としては、今回は王座挑戦を譲ってもらったのだから、坂田との対戦を実現して欲しいところだが…本人曰く「もう、フライ級への減量は厳しい」らしいからなぁ。そういえば、今日の大毅はフライ級の割には身体が大きかったね。


まあ何にせよ、このままなら日本人王者対決が実現するって事だな。まあ、それはそれでいいんじゃないかな?今、日本にはボクシングの世界王者が七人もいる状況だしね。


以上、長文失礼。