6/9 全日本キック 新宿FACE興行 観戦記

Mask_Takakura2007-06-09

生観戦を重ねていると、小さいハコの方が好きになってくるようです。

本日は新宿FACEにて、全日本キックを観戦。


いきなり個人的な事情を書くのだが…最近、仕事場が後楽園ホールから遠くなってしまったせいで、平日に興行を開催されると前半戦が観れなくなってしまった。我ながら結構、手痛い話なのだが…それ以上に痛いのが、ひいき団体である全日本キックが昨年に比べて平日興行を増やしてしまった事。おかげで最近は、前座戦線がサッパリわからなくなったよ。密かに全日本キックは「青田買い」も楽しみの一つだったんだがなぁ…。

そこで。今回の「CUB☆KICKS」だ。後楽園ホールでいえば、前座で活躍する選手が主役となるこの興行で、全日本キックの前座戦線を勉強し直そう、というのが今回の観戦の動機。正直、今回は名前すら知らない選手が多いんだけど、この中から「明日の強豪」が現われるのだから、しっかりと観戦しよう。

ちなみにメインイベントでは、バンタム級の強豪であるBOOCH BEATの寺戸伸近が、韓国四冠王のチェ・ジンスンに挑む。フライ級では無類の強さを発揮したチェを相手に、寺戸は勝利を奪う事ができるか?


ってなワケでチケットを購入、立見席3500円也 + ドリンク代500円。パンフレットも購入、こちらは100円。観客の入りは…、客席には空席もあったが立見の客が圧倒的に多く、最終的には満員と言ってよいだろう。ま、今の全日本キックであれば、たとえカードが弱くても…これくらいのハコなら満員にしちゃうよね。

オープニングファイト第二試合 BOOCH BEAT待望の新人がデビュー

ライト級 3分3R
○原田直樹(180cm/60.5kg/BOOCH BEAT)
●成田弘法(168cm/60.5kg/韓道場)
[判定 3−0]

この試合は両者ともにデビュー戦だったが…試合ではBOOCH BEAT待望の新人である原田が、180cmの長身を活かして成田を圧倒。


原田は全ラウンドを通して、前蹴りやワンツーを連打して成田を近づけず、いざ接近すれば…首相撲からの膝蹴りを成田の顔面へ、ボディへと無差別に連打していく。ラウンドを増す毎に、成田の全身は真っ赤なアザができ、顔面からは大量の鼻血が噴き出していた。う〜ん、一方的だなぁ。

試合は判定へともつれたが、3−0で原田が圧勝。


ライト級としては規格外の体格を持つ原田の今後の活躍に期待したい。

第一試合 ダウンを奪ってなけりゃ負けてたねぇ

ウェルター級 3分3R
△清水武(181cm/66.0kg/藤原ジム)
△増田光紀(175cm/66.1kg/超越塾)
[判定 1−0]
※清水は1Rにダウン1

ここからは本戦なのだが、この試合も両者ともにデビュー戦。う〜ん、本戦とオープニングファイトって、どこで線引きしているんだろ?


試合では、1R序盤は両者ともにクリンチが多かったが、そんな中で清水がワンツーと左ローを重ねて増田にダメージを与えていく。清水は右ストレートを返していくが…1R終盤、増田は長身の清水の顔面に右ハイを叩き込んでダウンを奪う。増田の健闘に超越塾応援団が大歓声を上げる。

だが、2R以降は長身の清水が試合のペースを握る。左右のストレートと首相撲からのヒザ蹴りを武器に攻め込めば、増田はあっとういう間にスタミナ切れに。必死に右ハイなどで一発逆転を狙う増田だが、清水の首相撲を捌けずに最後で苦戦していた。

ここで試合は終了。判定の結果は、ジャッジの一人が試合後半を圧倒的なペースで支配した清水を支持するも、残り二人は1Rのダウンを加味してドローと判断、最終的には清水の1−0でドローとなった。


う〜ん、増田は序盤に奪ったダウンが幸いしたな。

第二試合 序盤戦に飛び出た派手なKO劇

ミドル級 3分3R
○夏鬼(175cm/72.1kg/SOUL GARAGE)
●三澤勲大(174cm/70.0kg/韓道場)
[2R 25秒 KO]
※右ストレート

三澤はデビュー戦、夏鬼は1戦1敗というルーキー同士による試合。


試合では、お互いにパンチが得意なのか、1Rから二人ともほぼノーガードのまま強気な打ち合いを展開するという、非常に派手な内容となった。

そんな中、最初にクリーンヒットを出したのは夏鬼。大振りな右フックがヒットすると、三澤は大きく怯む。勝負処と見た夏鬼は、積極的に接近してワンツーを連打、三澤をロープに追い詰めると…組み付いて場外へと放り出そうとする。オイオイ、それは反則でしょ。

とはいえ、主導権は完全に夏鬼が握っているのは事実。2R、夏鬼は前に出る三澤の顔面に、カウンターの右ストレートを叩き込む。この一撃で三澤はダウン、立ち上がる事はなかった。この見事なKO劇に、観客も大いに沸いた。


夏鬼はまだ18歳だそうで。ガードはもう少し固めた方がいいと思うけど…、まあ今日のKO勝ちは見事でしたな。

第三試合 実績の吊り合わないカード編成だねぇ

ウェルター級 3分3R
○沢尻太尊(166cm/66.6kg/U.W.F.スネークピットジャパン)
●倉持厳(172cm/65.1kg/超越塾)
[判定 3−0]

髪の毛を真っ赤の染め上げて、大江慎、望月竜介、歌川暁文といったU.W.F.スネークピットジャパンの面々を引き連れて入場してきた沢尻太尊。これがデビュー戦の沢尻だが、応援団の数は半端ではなかった。それもそのハズ、沢尻はプロボクシングで18戦12勝5敗1分6KOというキャリアがあるのだ。対戦相手は、1戦1勝1KOの倉持厳。超越塾応援団は「なんだよ、このカードっ!? 分が悪すぎるだろっ!」と怒っていた。ごもっとも。


んで、試合では沢尻が肩書き通りの実力を発揮。全ラウンドを通して積極的に倉持に接近した沢尻は、ボクシング仕込みの素早いパンチのコンビネーションを何度も何度も浴びせていく。

対する倉持は前蹴りで沢尻を遠ざけたり、首相撲からの膝蹴りや右ローなどで動きを止めようとしたが…、沢尻の勢いはまったく衰えない。2R中盤にはスタミナ切れを起こした倉持に、沢尻は最後まで前に出て連打を叩き込んでいった。

試合は終了。沢尻はダウンこそ奪えなかったが、判定の結果3−0で倉持を下した。


とりあえず今日はルーキーを相手に圧勝した沢尻だけど…、ウェルター級で闘うにはちょっとリーチが足りない気がするなぁ。ローキックを得意とする長身の選手とかと闘ったらアッサリ負けそうな気もするね。

第四試合 本当は未勝利戦じゃないけど、まあ未勝利戦みたいなモンです

ライト級 3分3R
○丹藤義則(168cm/61.0kg/AJジム)
●相馬一仁(173cm/60.8kg/DEION GYM)
[判定 2−0]
※相馬は1Rにダウン1

前座戦線では何度か見かけた事がある相馬一仁だが、ここまで5戦1勝3敗1分と勝ち星には恵まれていない。今日の対戦相手は、これまで2戦2分の丹藤義則。う〜ん、このカードは「未勝利戦」のノリだな。


試合では、リーチでは劣る丹藤が強気な攻めで相馬を押し込むと、1R序盤にいきなりダウンを奪う。これで勢いに乗った丹藤は、立ち上がった相馬を尚も攻め込んだが…、相馬は首相撲からの膝蹴りで丹藤にダメージを与える。これで主導権を奪った相馬は2Rは積極的に前に出て、首相撲からの膝蹴りや右ストレート、左右のインローで序盤の失点を回復していく。

だが3R、今度は丹藤が持ち直した。前に出てワンツーを繰り出す相馬に対して、丹藤も強気にワンツーを返していく。派手な打ち合いが展開される中、3R中盤には両者ともにスタミナ切れに。そんな中、丹藤は必死に首相撲を仕掛けようとする相馬を押し込んで何発もワンツーを叩き込むが、相馬のリーチの長いパンチも何発かクリーンヒット。う〜ん、なかなか壮絶な光景だな。

試合終了、判定の結果は2−0で丹藤が勝利。


序盤に奪ったダウンが、そのまま勝利に繋がったねぇ。

第五試合 なんとかKO勝ちには間に合いました

フェザー級 3分3R
○梅原ユウジ(173cm/57.0kg/REX JAPAN)
●上杉隼土(167cm/56.9kg/超越塾)
[3R 2分58秒 KO]
※3ダウン/上杉は2Rにダウン2

梅原ユウジはデビュー戦でなかなか良い動きをしていた選手。身長173cmという数字の割には長い手足が武器。対するは超越塾の上杉隼土、戦績上は負けが先行しているけど、こちらもなかなか良い選手。


1R、リーチに劣る上杉は、序盤から梅原の懐に飛び込みワンツーによるラッシュを仕掛けていく。これに対して梅原もワンツーによるラッシュと右ローで応戦。お互いに打ち合いを得意とする両者の対戦は、距離を取ったり、接近したり…を繰り返しながら派手に展開していく。

だが1R終盤、梅原のラッシュを喰らってスタミナを落とした上杉のガードが下がってしまう。これを見た梅原は2R、右ローを連発して上杉の意識を下に逸らすと、接近してワンツーを連打。右ストレートが顔面を打ち抜き、これで上杉はダウン。勢いに乗った梅原は立ち上がった上杉にワンツーやミドルを連打。嫌がる上杉が背を向けて逃げ出すと、レフェリーはダウンを宣告。大ピンチを迎えた上杉は、これ以降はリングを回って逃げ続けた。

3R、2RのKO勝利は奪えなかった梅原だが、このラウンドも気持ちを切らさず上杉を攻める。まず序盤に打撃でダウンを奪うと、立ち上がった上杉にワンツーと膝蹴りを連打し更なるダウンを奪う。後がなくなった上杉は、またしても逃げ回ったが…梅原はワンツー、右ボディ、右ローといった打撃を連打。最初は何発か打撃を返していた上杉だが、やがて一方的に殴られまくるシーンが目立つようになる。これを見たレフェリーが試合を止めた


ちなみに、試合終了までは残り二秒。梅原はKO勝ちに間に合ったねぇ。

何でもK-1 MAXに奪われたんじゃ、コッチはたまったモンじゃないなぁ

休憩明けには、七月の後楽園ホール興行に出場する山内裕太郎山本優弥が挨拶を行なった。


山内裕太郎
前回、違う舞台でぼっこりやられてしまいましたが、心は折れていません。
世界でトップクラスの選手とやりあって、世界の強豪の仲間入りしたいと思います。
夢に向かって走っていきます。


山本優弥
怪我して以来、今までは一戦一戦を大事に試合をしてきました。
しかし今度は、お客さんが喜んでくれるような面白い試合をしたいと思います。
隣にいる山内選手とは、二回闘って一回も勝てていないので、
世界一を決める舞台で、もう一度闘って倒したいです


や、山本…。そのカードは是非、全日本キックで実現して欲しい、というか。

第六試合 かつては「黄金」と言われた全日本キック・ライト級に、久々に若い選手がランクイン

ライト級 3分3R + 延長3分1R
○寺崎直樹(174cm/61.1kg/青春塾)
●上杉武信(167cm/61.2kg/藤原ジム/全日本ライト級 六位)
[判定 2−0]

ここからは、全日本キックのランカーが登場。

上杉武信は藤原ジムに所属するベテランなのだが、戦績は18戦7勝8敗3分と負けが先行。パンチのテクニックには定評があるだけに、この戦績は意外だなぁ。対するは、今年始めにJMC横浜GYMの野間一暢と死闘を演じた寺崎直樹。まだノーランカーの寺崎としては、上杉を倒してランキング入りを果たしたいところ。


1R、お互いにワンツーと右ローを積極的に交換する中、主導権を握ったのは上杉。打撃に肘打ちを織り交ぜて寺崎を攻めると、2Rには得意のヒット&アウェイが飛び出す。スウェーバックを駆使しつつワンツーと右ローを連打して寺崎を圧倒。と、ここまでは上杉のペースで試合は進んだが…。

2R終盤、寺崎は要所で右ストレートを顔面に叩き込んで上杉から鼻血を誘うと、3Rも手数多くワンツーや右ローを連打する上杉の軸足に重い右ローを叩き込む。この一撃が効いてしまった上杉の身体が折れると、ここから試合は一気に寺崎のペースに。右ローとワンツーの連打で上杉を追い詰めると、3R終盤にはワンツーによるラッシュを仕掛ける。上杉もワンツーを連発で返したが、やはり右ローのダメージは大きそうだ。

ここで試合終了。判定の結果は2−0で、寺崎が見事にランクインを果たした。


ふ〜む、上杉はパンチのテクニックは充分なんだけど、パワーが今一つなんだよなぁ。もう34歳だから肉体改造も難しいだろうけど、僕としてはもっと上を目指せる選手だと思うんだけどね。対する寺崎は、トントン拍子で見事にランクインを果たしたね。現在、全日本キックのライト級のランカーは三十路の選手ばかりなので、若い寺崎が入ってきたのは良い事だな。

第七試合 「新・常勝軍団」が徐々に全日本キックを支配していく

ウェルター級 3分3R + 延長3分1R
渡辺雅和(181cm/66.6kg/チームドラゴン/J-NETWORKウェルター級 二位)
●後藤友宏(175cm/66.5kg/青春塾/全日本ウェルター級 七位)
[判定 3−0]

「新・常勝軍団」チームドラゴン渡辺雅和J-NETWORKウェルター級で二位のランカーなのだが、戦績は13戦6勝6敗1分2KOの五分。そして対戦相手の後藤友宏もまた、戦績は12戦6勝6敗4KOの五分。戦績的には勝った方が勝ち越しとなり、負けた方が負け越してしまうという、まさに「天下分け目の試合」なのだ。長身の渡辺に対して、重いローキックを武器とする後藤はどのような攻めを見せるのか?


1Rはお互いに様子見のラウンドに。両者の右ローが淡々と交差する展開となったが、2Rはこの展開にパンチが加わる。渡辺は右フックと前蹴りを後藤の顔面にヒットさせるが、後藤は左ストレート、右フック、右ローを武器に対抗。試合はまだまだ互角だ。後藤は途中、縦の肘打ちを織り交ぜて渡辺を攻めるも、背の高いに渡辺に当たる事はなかった。

迎えた3R、両者の均衡が崩れる。渡辺は右ストレートや左フック、右ローを繰り出して攻勢。後藤は右ローや右ストレートで反撃するも、懐の深い渡辺を相手に間合いの中に飛び込めずに苦戦。こうして試合の主導権を握った渡辺は、身長差を利用した首相撲からの膝蹴りを多用し、勝敗を決定づけた。

試合終了。判定の結果、3−0で渡辺が勝利し勝ち越しに成功した。


う〜ん、後藤は全日本キックでの初戦となった大蔵 "PHOENIX一号" 戦こそ圧勝したものの…、強敵を相手に連敗が続いているなぁ。決して弱い選手だとは思わないんだけど…、巡り合わせが悪いのかね。とはいえ、この渡辺には勝って欲しかったなぁ。決して実力差があったようには思わないだけにね。ひょっとして後藤は、リーチの長い選手は苦手なのかな?

第八試合 全日本バンタム級No.2の男が、ついにNo.1への奪取に動いた

54kg契約 3分5R
寺戸伸近(166cm/53.8kg/BOOCH BEAT/全日本バンタム級 一位)
●チェ・ジンスン(167cm/54.0kg/韓国/韓国バンタム級 四冠王)
[1R 2分59秒 KO]
※3ダウン

昨年から今年にかけてコンスタントに試合をこなしている、全日本バンタム級一位の寺戸伸近。得意の華麗なコンビネーションで白星を積み上げ続ける寺戸だが、全日本バンタム級王座への挑戦は未経験。今日の相手は、J-NETWORKフライ級王者の魂叶獅を1RKOで下した経験を持つ、韓国四冠王のチェ・ジンスン。しかしチェは、藤原あらしが判定で勝利した相手。寺戸としては、それ以上の戦績を残して王座挑戦をアピールしたい。


試合では、軽量級とは思えない破壊力のある打撃を連発するチェに対して、寺戸は真っ向からコンビネーションで勝負を賭ける。チェが強烈な裏拳、右ミドル、右ハイを繰り出せば、寺戸はワンツーと右ローの連打、首相撲からの膝蹴りで対抗。観客から驚きの声が上がる中、寺戸は強力なワンツーの連打でチェからダウンを奪う。

こうなると寺戸は強い。尚も左右のストレート〜右ローのコンビネーションを連発した寺戸は、飛び膝蹴りでチェを何度も襲う。気がつけばチェの左のこめかみからは流血が。寺戸はこの後も手を抜く事なくワンツーを叩き込んで再びダウンを奪う。それでも立ち上がるチェだったが…、寺戸がワンツーを連打するとチェはガードをする事ができない。これを見たレフェリーがダウンを宣告、寺戸が見事なKO勝ちを修めた。


勝った寺戸は試合後にマイクを持ち、藤原あらしが持つバンタム級王座への挑戦を表明。おおっ、これは観たいねぇ。無尽蔵のスタミナをベースに左ミドルを連打する藤原あらしと、日本キック界では屈指のコンビネーションを持つ寺戸伸近。正直、どんな試合になるかが想像がつかないなぁ。ま、お互いの間合いはまったく違うので、その辺がカギになるのかなぁ。

雑感

久しぶりに狭いハコでキックを観戦したんだけど…今日はダウンが多かった事もあり、観客の熱はかなり高かった。我を忘れて声を枯らす観客の熱気を体感するにつけ、「やっぱり自分はキックが好きなんだなぁ…」という事を改めて痛感。なんていうか、やっぱり新宿FACEはいいね。


以上、長文失礼。