6/10 MAキック 後楽園ホール興行 ちょっと長めの観戦記

Mask_Takakura2007-06-10

正直、宍戸が出なけりゃ、全日本キックの「CUB☆KICKS(二日目)」を観戦していたでしょう

本日は後楽園ホールにてMAキックを観戦。


今回は実に六年ぶりのMAキック観戦となったのだが…、普段は観戦しないMAキックを観戦した理由はただ一つ、SBの宍戸大樹が対抗戦に挑むからだ。昨年から今年に掛けて、今までコツコツと積み上げた実績を崩してしまった宍戸。今日は一階級上のミドル級王者が相手だが、ここを勝たないことには、宍戸の格闘技人生は開かれないだろう。アウェーの地で、城戸康裕を相手に何を見せるのか。

またメインイベントでは、お馴染み「喧嘩師」我龍真吾が、技巧派として知られる白須康仁が持つWMAF世界王座に挑む。M−1では見事ミドル級王者になった我龍だが、二冠王に君臨する事はできるのか?


ってなワケでチケットを購入、立見席は4000円也。値段としてはボチボチだね。パンフレットは1000円だったが、他のキックボクシング団体と比べるとちょっと造りが安っぽくて残念。正直、500円で売るのがスジじゃないのかなぁ。観客の入りは、客席こそ空席が目立つものの、立見の人数が結構いる為、とりあえずは満員といっていいんじゃないかなぁ。っていうか、意外に客が入っているのね、MAキックって。

第一試合 短すぎて語れません

新人王トーナメント一回戦 ウェルター級 2分3R
○モハン・ドラゴン(ネパール/士魂村上塾)
●YOHSUKE(モンゴル/新東金ジム)
[判定 3−0]

今日はこの試合の2Rから観戦したのだが…、2分3R制だったので、あっという間に試合終了。3Rの試合ぶりを観ると、両者ともにボロボロの状態だった。で、大振りなパンチを武器に前に出続けたドラゴンが、判定の結果3−0で勝利を修めた。

第二試合 大は小を兼ねる

新人王トーナメント一回戦 ウェルター級 2分3R
○加藤渉(185cm/65.8kg/Kインター柏ジム)
●岡田進吾(180cm/65.9kg/新東金ジム)
[延長判定 3−0]
※本戦判定 1−1

試合の図式としては「リングを回る岡田の右ロー vs 追いかける加藤の首相撲からの膝蹴り」。お互いに得意な打撃を連発する中、3Rには両者ともにスタミナ切れを起こした。だが判定の結果は…三者三様の1−1、ドローとなり試合は延長戦へ突入。

延長戦を制したのは、リーチに優る加藤。スタミナを失いフラフラながも、首相撲からの膝蹴りで岡田を一方的に蹴り続けた。終盤、岡田は完全に動けなくなったが、加藤は尚も膝蹴りを連発。

ここで試合終了。延長判定の結果は3−0で文句なく加藤が勝利した。


うむ、やっぱり身長が高い事はいい事だな。

第三試合 モンゴル出身の選手は、とにかく序盤の勢いが凄い

肘無しルール 54kg契約 2分3R
○松本圭一太(172cm/53.25kg/土浦ジム)
●デルガームラン・ツシンバヤル(173cm/53.8kg/モンゴル/新東金ジム)
[2R 1分55秒 TKO]
※デルガームランが目頭を負傷

モンゴル出身の選手らしく、非常に大振りなワンツー、左ハイ、左ローなどを放つデルガームランに対して、松本は勢いに押されながらもワンツーや右ローを重ねていく。

すると2R、右ローや右ミドルを重ねた松本の右ストレートがヒット。そしてこの一撃で、デルガームランの左目の上からは流血が。その傷の度合いは深く、やがてデルガームランにドクターストップが掛かった。


ふむ、序盤のデルガームランの勢いを見るにつけ、松本はよくもまあ勝ったものだなぁ。

第四試合 畠山のロングスパッツはスパイダーマン風でした

肘無しルール 52kg契約 3分3R
○信末小僧(163cm/51.2kg/新東金M.A.G/MA日本フライ級 十位)
●畠山悟史(164cm/51.75kg/シーザージム)
[判定 2−0]

ここからは3分3R。んで、この試合はMAキックとSBの対抗戦。リングサイドには緒形健一やシーザー武士会長の姿が。


だが試合では、まだ17歳なのに落ち着きのある信末が、右ローを重ねて畠山を攻略していく。畠山もワンツーや前蹴りで対抗するも、2R終盤には信末の右ローが効いてしまい動きが鈍ってしまう。3R、畠山は必死に距離を詰めてワンツーを放ち信末を追い詰めるも…信末は自ら下がりつつ、時折ワンツーや右ローで反撃する。

ここで試合は終了。判定の結果、ジャッジの一人が3Rの畠山の攻めを支持してドローと裁定するも、残り二人のジャッジが信末を支持。2−0で信末が勝利した。


う〜ん、畠山はシーザージム所属選手らしく、スタミナは結構ありそうだったんだけどねぇ…。序盤に信末の右ローの連発を喰らい過ぎちゃったな。3Rは畠山が押し気味に試合を進めていただけに残念だね。

第五試合 村上竜司の弟子が大暴れ

肘無しルール 59kg契約 3分3R
○拳竜(172cm/57.5kg/士魂村上塾/MA日本フェザー級 八位)
●三井基州(164cm/57.1kg/ダイケンジム)
[1R 1分24秒 KO]
※左膝蹴り/三井は1Rにダウン2、二度目のダウンでKO負け

拳竜はフェザー級と思えない体格の持ち主。見るからに筋肉の埋まった身体は、さすがは『士魂村上塾』と思わせるものだった。


試合では、拳竜が三井基州に対してパワーの違いを見せ付けた。拳竜は試合開始早々から、強烈な左ミドルを連打で放つ。威勢よく前に出て攻める拳竜に対して、体格で劣る三井は早くも防戦一方。

こうして難なく主導権を握った拳竜は、その破壊力のある左ミドルで三井からダウンを奪うと、立ち上がった三井に対して左膝蹴りを突き刺し、更なるダウンを奪う。一度目は立ち上がった三井だが、二度目のダウンは立ち上がれず。観客の歓声の中、拳竜が豪快な秒殺勝利を修めた。


ちなみに三井は暫くの間、立ち上がる事ができなかった。多分、肋骨を折ったんじゃないかなぁ。う〜ん、拳竜はもう少し上のステージで闘うべきだな。実力が吊り合っていないよ。

第六試合 う〜ん、怪しい勝利だなぁ

60kg契約 3分3R + 延長3分1R
○ウルジーバト・エンフバヤル(168cm/59.2kg/モンゴル/新東金ジム/モンゴルプロキック60kg級 '06 王者)
●NOZOMI(172cm/59.65kg/習志野ジム)
[2R 23秒 TKO]
※NOZOMIが左目尻を負傷/NOZOMIは1Rにダウン1、ウルジーバトは1Rにダウン1

またまた登場するモンゴル出身のファイター、ウルジーバト・エンフバヤルは昨年のモンゴルプロキック60kg級の王者らしい。「モンゴルプロキック」が何なのかは各自調査だが…昨年、このウルジーバトはプロデビュー戦で、いきなり「WSRの厄介者」赤羽秀一を撃破しているようだ。…ま、調べたところ、この勝利はかなりの眉唾ものらしいんだけどさ。


と、いきなり腐すような書き方をしたのには理由がある。この試合の決着がなんともグレーだったからだ。


1R、モンゴル出身の選手らしく、大振りな左右フックを連発するウルジーバトに対して、NOZOMIは右ローでウルジーバトの意識を下に逸らし、右ストレートを顔面に叩き込んでダウンを奪う。観客の歓声の中、NOZOMIは尚も大振りなパンチを振るうウルジーバトに対して右肘を入れるが、ウルジーバトは裏拳で反撃すると、足の揃ったNOZOMIに右ストレートを入れてダウンを奪い返す。観客からは歓声が沸く中、両者のパンチが交差する。

2R、勢いに乗って前に出るウルジーバトに対して、NOZOMIはワンツーを連打し、組み付いての肘打ちを放つ…のだが、これらの攻撃で左目尻をカットしたのは、どういうワケかNOZOMI。この傷に対してはドクターチェックが入り、やがてレフェリーが手を振った。何の攻撃でカットしたのかはサッパリわからないのだが、ウルジーバトがTKO勝利を修めた。


う〜ん、どうも怪しいなぁ。NOZOMIのカットはバッティングじゃないのか?ウルジーバトは、デビュー戦の赤羽戦もグレーな勝利を修めているしねぇ…。なんとなく、興行を主催している新東金ジムへの贔屓(ひいき)を感じる決着だな。

第七試合 ところでNJKFに加盟しているジム「拳之会」にも高橋拓也っているよね?

55kg契約 3分3R + 延長3分1R
高橋拓也(169cm/54.6kg/習志野ジム/MA日本バンタム級 三位 & 元王者)
●平本悠(168cm/54.8kg/橋本道場/MA日本バンタム級 六位)
[判定 3−0]

高橋拓也はMA日本バンタム級の元王者なのだが、パンフレットでは「全盛期に比べて、やや粘力が落ちた」と指摘されている。今年二月のSBでは、えなりのりゆきに判定負けを喫してしまった高橋、ここは下位ランカーの平本に圧勝し、実力をアピールしたいところだ。


試合では、ベテランの高橋が平本を翻弄。試合全般を通して、高橋は自ら下がりながら平本と一定の距離を保ち、ガードの隙間へ左ミドルを叩き込んでいく。そして平本が接近すれば、高橋は左右のストレートや肘打ちで迎撃。非常に単調な展開ではあるが、平本は高橋との距離を詰めれずに大苦戦。平本応援団は声を枯らして平本に声援を贈るも、平本からは有効な打撃が出てこない状態だ。

結局、大きく局面が変わる事はなく試合は終了。判定の結果、3−0で高橋が勝利。


ふむ、えなり戦では接近戦を仕掛けるえなりに手を焼いた高橋だが…、今日はその攻めが上手いことハマったなぁ。ベテランの味、堪能させてもらいました。

第八試合 う〜ん、これまた怪しげな判定だなぁ

66kg契約 3分3R + 延長3分1R
○アルタンゲレル・ガントムール(165cm/65.2kg/モンゴル/新東金ジム/モンゴルプロキック65kg級 '06 王者)
●一貴(175cm/65.35kg/マズターズピット/MA日本ミドル級 十位)
[判定 2−1]

本日四人目のモンゴル出身ファイター、アルタンゲレル・ガントムールは昨年のモンゴルプロキック65kg級の王者なんだそうだ。…というか、新東金ジムは応援団が多いなぁ。日本人選手よりも声援を集めているぞ。どうなってるの?


1R、モンゴル出身の選手らしく、アルタンは大振りな左右のフックと右ローを連発して突進。どうにもこうにも「モンゴル人のキックボクサーは、なんでこの戦法ばっかりなんだろ?」と考えさせられる光景が続いたが、一貴は突進してくるアルタンゲレルにカウンターの右ストレートを叩き込む。一瞬グラついたアルタンゲレルだが、この後もめげずに突進と打撃を繰り返す。ラウンド終了直前には華麗なニールキックを披露するアルタンゲレル。モンゴル戦士の馬力は凄いな。

2R、尚も突進を繰り返すアルタンゲレルを、一貴が徐々に攻略していく。ひたすら前に出るアルタンゲレルにカウンターの右ストレート、右ロー、そして右フックを合わせて行くと、中盤にはアルタンゲレルはスタミナ切れを起こした。それでも前進を続けるアルタンゲレルに、一貴は右ストレートを叩き込んでダウンを奪うも、これは何故かスリップ扱いに。う〜ん、足の揃ったところに入った一撃とはいえ、コレはどう見てもダウンだと思うけどなぁ。またしても新東金ジム贔屓(ひいき)なのかねぇ。

3R、試合の主導権を握っていたのは一貴。右ストレートと右フックを細かく刻んでいくと、動きの鈍ったアルタンゲレルに右ローを叩き込む。これに対して時折、大きな打撃を返すアルタンゲレルだが…ローも効いているのか、パンチを振るうのも苦しそうだ。そんなアルタンゲレルを一貴は首相撲に捉え、膝蹴りを連発。


試合終了。この展開を見るにつけ、どこからどう見ても一貴の勝利だと思うのだが…、実際の判定結果は2−1でアルタンゲレルが勝利した。


ぬぬぅ、2R終盤の「疑惑のスリップダウン」といい、この判定結果といい…どうにもこうにも新東金ジム贔屓(ひいき)を感じる、というかねぇ。なんだか白けちゃうなぁ。

第九試合 いい展開だったのに、ダウンがないのは拍子抜け

ヘビー級 3分3R + 延長3分1R
○コウイチ・ペタス(186cm/体重発表なし/ザ スピリットジム)
●高山博光(183cm/体重発表なし/DANGER/MA日本ヘビー級 四位)
[判定 3−0]

最近は色々な団体で見かける「ニコラス・ペタスの一番弟子」コウイチ・ペタスが、MAキックに出場だ。ヘビー級の日本人としては珍しい、ワンツー〜ローというコンビネーションを駆使する選手で、僕としてはK-1 JAPAN系の選手よりも全然強いと思っているのだが…なぜかK-1の出場経験はなし。早く出場しないかね。


試合では、ヘビー級の体格でありながらも、得意のワンツー〜右ロー&左ローを連発するペタスに対して、対戦相手の高山博光は何もできずに立っているのみ。ペタスよりひっきりなしに放たれる「ローの嵐」、高山の動きはラウンドを追う毎に動きが鈍っていく…のだが、ペタスはかなりの数のローを叩き込んでいたが、高山は最後までダウンを喫する事はなかった。

ってなワケで試合は終了。判定は…言うまでもなく3−0でペタスが勝利。え?「随分、あっさりしてるなぁ?」って?いや〜っ、試合は本当に一方的だったんだよねぇ。他に大きな展開もなかったしね。


それにしても、ペタスのローは重さはあると思うんだけど…、僕が観戦した試合ではそのローが決め手になった試合はないんだよなぁ。むしろ、そのローで意識を下に逸らして、顔面にストレートやハイキックを叩き込んでダウンを奪う…って展開の方が多いような。とはいえ、せめてダウンくらいは欲しかった。

第十試合 齢(よわい)32歳にしての狂い咲き

65kg契約 3分3R + 延長3分1R
水谷秀樹(172cm/64.5kg/スクランブル渋谷/R.I.S.E. Flash to Crush '06 優勝)
●山本佑機(170cm/65.0kg橋本道場/MA日本ライト級 一位)
[判定 2−0]

僕は知らなかったんだけど…この試合に出場する山本佑機と、その兄である壮泰は「スーパーツインズ」として有名らしい。で、昨年九月のR.I.S.E.では、その壮泰と水谷秀樹が対戦。試合は壮泰が有利に進めたものの、試合中に骨折してしまい水谷のTKO勝利となったそうだ。不運よのぉ。

ってなワケで、この試合は「山本がホームリングで、兄の敵を討つ」という図式になるらしい。山本はR.I.S.E.ルールには存在しない首相撲からの膝蹴りを得意とし、最近はパンチにも開眼しているそうだ。今日は難敵を迎えた水谷先生、アウェーの地で快勝を上げられるか?


試合では…水谷先生が鬼神の強さを発揮。兄の敵討ちに燃える山本を、圧倒的な勢いで返り討ちにした。


1R、水谷はR.I.S.E.Flash to Crushを制覇した時と同じく積極的に前に出て、ワンツー〜右ローを放つ山本の蹴り足をキャッチしては、ローやフックを叩き込む。更には左のテンカオを連発して山本を攻め込み、山本が首相撲を仕掛けても膝蹴りで堂々と応戦。そして、それ以上に凄かったのが水谷の表情だ。「鬼気迫る『笑顔』」とでも表現したくなるような物凄い形相で、山本の蹴り足を捌いていく。「お前など眼中にない!」と言わんばかりの水谷、弱点とされていた首相撲で互角の展開に持ち込まれた山本の胸中やいかに?

2R、激しい笑いを浮かべながら自ら接近する水谷。下がりながら右ローやストレートを放つ山本に対して、水谷は右ローの連打やテンカオを放ち、至近距離では首相撲を仕掛けていく。他にも時折、大振りな裏拳で牽制する水谷に対して、山本は手数の上では互角の展開でありながらも、ここまでは水谷の勢いに圧されている。凄いなぁ水谷先生、精神力の強さには昔から定評がある選手ではあるけど…正直、ここまで気の強い水谷先生は初めて観たよ。

3R、試合の主導権を握っていたのは、やはり水谷。序盤は右ロー合戦が展開されたが、水谷は裏拳やアッパーなどを駆使して山本の反撃を呑み込んでいく。そして、ここでも水谷の表情からは笑みが絶えない。山本は首相撲からの膝蹴りやストレートで反撃を試みたが、水谷はこれを膝蹴りで応戦すると、常に前に出続けて若い山本にプレッシャーを与えていった。


ここで試合は終了。判定の結果は2−0で水谷先生の勝利。試合後、マイクを持った水谷は、この試合に向けて沢山練習してきた事を告白。特に4月13日のR.I.S.E.での村浜武洋戦は大きな反省材料となっていたらしい。


今回の水谷先生は、R.I.S.E.での一戦をよっぽど反省したのだろう。村浜戦とはうって変わって、前に出ての積極的な攻めは、昨年のFlash to Crushを制した時を彷彿させるものがあった。加えて、相手を圧倒しようという気に満ちた表情、そして昨年に比べて格段に向上した打撃の技術…いや〜っ、強くなったなぁ水谷先生。これなら、もう少し大物との対戦も期待したくなるね。案外、NJKFの桜井洋平と対峙しても、今日の水谷先生なら互角に渡り合いそうだな。

第十一試合 士魂村上塾の応援団は色々な人がいました そして村上竜司は怖かった

MA日本ウェルター級 王者決定戦 3分5R + 延長3分1R
○水町浩(176cm/66.3kg/士魂村上塾/MA日本ウェルター級 一位)
●笹谷淳(176cm/66.7kg/橋本道場/MA日本ウェルター級 二位)
[2R 2分18秒 TKO]
※タオル投入/水町が新王者に

この試合は、白須康仁の世界王座の戴冠に伴い返上した、MA日本ウェルター級の新王者決定戦となった。対戦するのは…一発の破壊力が凄まじい水町浩と、このところは連勝を続けている笹谷淳。僕は二人ともあんまり知らない選手なんだけど…、パッと見たところ、水町の筋肉はなかなか凄まじい。成程ね、一撃が強烈だというのも頷けるな。


試合では、全般を通して牽制の右インローを放ち続ける水町に対し、笹谷は1Rに右の肘打ちで水町の左目尻を切り裂きと、2Rには右インローで意識を下に逸らした上で左ハイを叩き込むと、怯む水町に左ストレート、左膝蹴りを連発で叩き込む。これで主導権を握った笹谷、試合はこの図式のまま進んでいく…と思われた。


だが水町は、たったの一撃で試合の流れを変えた。


不意に放った飛び膝蹴りが笹谷にヒットしたのだ。大きく怯む笹谷を水町は逃がさず、パンチの連打でダウンを奪う。士魂村上塾応援団の大歓声の中、水町は立ち上がった笹谷に更なる飛び膝蹴りを叩き込む。これをモロに喰らった笹谷は再びダウンすれば、士魂村上塾応援団の大歓声は更に大きくなる。何とか立ち上がった笹谷だが…、顔を見ると見事に鼻が曲がっていた。セコンドがタオルを投入し試合は終了。

新王者となった水町は応援団に感謝の言葉をかけると、塾長・村上竜司の音頭で士魂村上塾応援団が大挙してリングイン、水町と共に記念撮影に応じていた。う〜ん、PANCRASEでは大問題となった光景も、所が変われば微笑ましい風景に早代わりかい。僕はあんまり、素人がリングインするのは好きじゃないんだよなぁ。


まあ、試合自体は見事な逆転劇だったのは事実かなぁ。一発が強力なのは大きな武器だね。前王者の白須がK-1 MAXに出場した経験の持ち主である事を考えると、彼もこのベルトを肩書きにしてK-1 MAXに出場する可能性は高いだろう。

で、水町のスタイルはK-1 MAXには向いているとは思うけど…、なんだろうなぁ、あんまり活躍する姿を想像できないんだよなぁ。試合前半で攻め込まれる場面があったのと、筋肉質ではあるけどちょっと身体が細いのが、ねぇ。

第十二試合 これは後々まで響きそうな「致命的な一敗」だな

肘無しルール 70kg契約 3分5R
城戸康裕(180cm/69.9kg/谷山ジム/MA日本ミドル級 王者)
宍戸大樹(174cm/69.0kg/SB シーザージム/SB日本ウェルター級 王者)
[判定 3−0]
※宍戸は2Rにダウン1

最近、どうにも宍戸大樹がよろしくない。


まあ、K-1 MAXにてブアカーオ・ポー・プラムックに秒殺されたのは仕方がないにせよ…、S-CUP 2006では緒形健一に持ち味を発揮できないまま敗北し、今年のK-1 MAXでは長年、宍戸との対戦を希望していた尾崎圭一に苦敗。特に尾崎戦は、内容自体は宍戸が圧倒しながらも、序盤のダウンが響いての敗北。過去には小谷直之、加藤督朗、イム・チビンマルフィオ・カノレッティイアン・シャファーオーレ・ローセンアンドレイ・ジダといった選手に勝利を修めてきた叩き上げの兵(つわもの)であるにも関わらず、いざ大舞台となると取りこぼしが続く宍戸。なんだか、PRIDEにおける近藤有己みたいだなぁ…。

そんな宍戸が再起を賭けて、アウェーの地での試合に挑む。対戦相手は一階級上の王者である城戸康裕だ。本来はスーパーライト級が適正体重の宍戸、今日のウェイトは目一杯上げて69kg。明らかに上の体重から下げて69.9kgに調整している城戸の身体と比べると、やはり宍戸の身体は細い。だが、そんな身体でも強豪を相手に白星を積み重ねてきたのが宍戸という選手なのだ。今日はスカッと勝利して、せめて尾崎にはリベンジを果たして欲しいのだが…。


そして試合は一部始終、あらゆる意味で「宍戸ペース」で進んでいった。


相変わらず宍戸は、序盤からハイペースで試合に挑む。1R開始早々にいきなりニールキックを放つと、細かいパンチのコンビネーション、左ボディブロー、そして右ロー&左インローを休みなく放ち続けて攻め込んでいく。

対する城戸は、宍戸の手数には手を焼きながらも…その攻撃は強烈無比。特に1R中盤に放った右ローはかなり重さで、宍戸応援団も思わず声を上げる程だった。更に城戸は、一撃必殺の重さを持つワンツーを放つ。試合の図式としては「破壊力の城戸 vs 手数とテクニックの宍戸」だな。


2Rになっても、宍戸の攻めが止まらない。細かくインアウトを繰り返しつつ、ワンツースリーフォー、右ロー&左インロー、前蹴りを連発。これに対して、序盤こそ強烈な右ミドルとワンツーで応戦していた城戸だが、2R後半になると、動きが落ち始める。そうだ、これぞ宍戸の真骨頂だ。たとえ自分より大きい相手でも正面から闘い、手数の多い打撃で相手の動きを止めてしまうのが宍戸の闘い方なのだ。

だが、「これなら今日は、宍戸の勝ちは動かないな」と思っていた2R終盤、宍戸がもう一つの「らしさ」を発揮してしまう。得意のアッパーを放つ宍戸に対して、城戸は動きが鈍りながら右ミドルを放つと、宍戸に接近して右の膝蹴り一閃。モロに喰らった宍戸がダウンを喫すれば、城戸応援団からは大歓声が沸く。

んあああぁぁぁ〜っ!やっちまったなぁ宍戸!確かに、防御を無視してあらゆる打撃を連打するが故に、特に序盤に強烈な一撃を喰らう事が多い宍戸だが、アウェーの地でこのダウンは致命的だなぁ。しかも、ダウンさえ喫しなければ、このラウンドは宍戸が取っていたのに。もったいない、本当にもったいないっ!


3R〜4R、宍戸は2Rの失態を挽回すべく奮戦する。ワンツー、右ロー&左インロー、右ミドル、アッパー、前蹴り、ボディブローといった多彩な打撃を「コレでもか!」とばかりに連発して城戸を撹乱すると、飛び膝蹴りによるビッグヒットを狙う。休む事なく打撃を繰り出していく宍戸、相変わらずそのスタミナが凄い。

対する城戸は、宍戸の打撃を前に殆ど手数が出なくなる。時折、テンカオ、右ミドル、そして左右ストレートで反撃するが、その打撃に序盤のような勢いはなく、動きも非常に緩慢。ここまでのダメージの大きい城戸に対して、宍戸は2Rのダウンがなかったかのようなパフォーマンスを披露。う〜ん、これぞ宍戸の真骨頂!という展開なのだが…試合のペースを完全に握りながらも、ヘロヘロの相手からダウンを奪えないのも宍戸らしい、というかねぇ…。今日はアウェーなんだから、キッチリとダウンを奪わないと勝てないぞ。


そんなこんなで迎えた最終5R。このラウンドも宍戸は前に出てワンツーの連打、アッパー、右ミドル、右ロー、右ボディストレートといった多彩な打撃で城戸を攻め込むが…、このラウンドを乗り切れば勝利が確定する城戸はバテバテながらもワンツーの連打、右ミドル、右ローで反撃。時折、城戸の打撃がクリーンヒットすれば、城戸応援団からは歓声が沸く。城戸の打撃に手を焼く宍戸は、ここまでの攻めも手伝って動きが落ちたが、最後まで飛び膝蹴り、右ミドル、アッパーを放って勝利を諦めなかった。


試合終了。判定の結果は…50−48、49−47、50−47の3−0で城戸が勝利。う〜ん、この展開で50−48とか50−47というのはワケがわからんなぁ、贔屓(ひいき)にも程があるというかね。とはいえ、僕の裁定は49−48で城戸。まあ、仮にこの試合がSBで行なわれていればドローで延長戦という展開だと思うが…、宍戸はダウンを一回も奪えなかったのが痛かった。


それにしても、宍戸は嫌な負け方が続いているな。K-1 MAXでの尾崎戦といい、今回の城戸戦といい、試合内容では相手を圧倒しながらも、序盤に相手の一発を喰らってダウンし、判定に泣くという敗戦が続いちゃった。ここに来て、欠点の一つである「決定力不足」を露呈しているなぁ。試合内容は悪くないだけに、余計にもったいない、というかねぇ。こりゃあ、肉体改造に着手しない限り、70kg級ではずっとこういう敗戦が続きそうな予感がするなぁ。

それとは別の話として、今日の宍戸の敗戦はかなり痛い。本当に痛い。ひょっとしたら、この敗戦を機にK-1 MAXへのオファーが逆に増えるかもしれないなぁ、但し「白星配給係」としてのオファーだけどね。う〜ん、宍戸はこんなところで終わっていい選手ではないんだけどねぇ。まずは、ホームであるSBのリングで一から実績の積みなおしだな。

第十三試合 結果的には一方的な展開だったなぁ

WMAF世界スーパーウェルター級 タイトルマッチ 3分5R
白須康仁(172cm/69.7kg/花澤ジム/WMAF世界スーパーウェルター級 王者)
我龍真吾(178cm/69.7kg/ファイティングマスター/M−1ミドル級 王者)
[判定 3−0]
※白須が防衛に成功

本日のメインイベントは、白須康仁が持つWMAF世界スーパーウェルター級のタイトルマッチ。挑戦するのは、我龍タイムでお馴染みの「喧嘩師」我龍真吾だ。我龍は3月4日のM-1にて白虎を下し、M-1ミドル級の王者になったばかり。業師の白須を下して、二冠王に君臨する事はできるか?それとも白須が、変幻自在の攻撃で王座を防衛するのか?

相変わらず多数詰め掛けている我龍応援団の大歓声に包まれて入場してくる我龍。応援団のTシャツの背中には「我龍一家心得」が記述されていた。一、決して折れない心。一、すべてに前向きな心。一、何事にも挑戦する心。成程、いかにも我龍が掲げそうな心得だな。対する白須は、白いハッピ姿の若い衆を従えて、捻り鉢巻き姿で入場。彼にとって試合は「祭り」のようなモノなのかねぇ。んで、そんな二人がリングに上がれば、真正面からメンチを切り合うのは必然だった。嫌がおうにも盛り上がる光景だな。


だが試合は、序盤から壮絶な殴り合い…なんて事はなく、1Rはお互いに相手の様子を見る静かな展開に。これが記念すべき50戦目となる我龍、「喧嘩師」という肩書きとは裏腹に闘い方はいたってクレバーに右ロー、右ミドル、ワンツーといった攻撃を散発。対する白須も業師らしく、最初から「エンジン全開」というような事をせずに左インロー&右ローといった打撃を散らす。う〜ん、なんともおとなしい展開だな。

そして2Rも、展開はおとなしめ。白須は右ローを中心した攻撃を散発し、我龍はワンツーや右ロー、右ミドルを散らして応戦。とはいえ、お互いに強烈な攻撃が出ているとは言い難い。試合の図式としては「右ロー合戦」なのだが、まだまだお互いに懐を探って合っている印象だな。


迎えた3R、ここで白須がギアを一段上げた。足を使ったヒット&アウェイで我龍を撹乱しつつ、単発ながらも強力な左右フック、左ボディ、右ローを我龍に叩き込んでいく。対する我龍は、このスピードについていけない様子。序盤に喰らっていた右ローも、かなり効いているようだ。

そして4R、白須のヒット&アウェイが止まらない。しつこく放たれ続けるワンツーと右ロー、喰らい続けた我龍の動きがドンドン落ちていく。我龍応援団が必死に声援を贈る中、劣勢を自覚してた我龍は…一発逆転を狙って肘打ちを放つが、白須はこれをかわしつつ肘打ちで応戦。ぬぬぅ、我龍はいよいよ「打つ手なし」って感じだなぁ。


最終5R、尚も接近して右ロー、そして右ボディを放つ白須に対し、ダメージの大きい我龍は前蹴りで距離を離すのが精一杯の状態。防戦一方の我龍だが、どこか消極的な闘い方は明らかにあの時間を狙っての事だろう。

そして迎えた「残り一分」、我龍はこれまでとは一転し、自らのガードを解いて顔を突き出して白須を挑発する。いわゆる「我龍タイム」の入り口を開放した我龍に対し、白須が付き合うかどうかに観客の注目は集まったが…。

白須の答えは「No」、相変わらずヒット&アウェイを繰り返して右ローを放ち続ける。こうなると我龍自身が無理にでも白須を「我龍タイム」に付き合わせるようなファイトを期待するしかないが…、これまた答えは「No」。我龍は前蹴りを放ち続け、接近する白須を必死に遠ざけ続けた。万事休すだね。


そして試合は終了。判定の結果は3−0で白須がストレート勝ちを修め、WMAF世界スーパーウェルター級王座の防衛に成功した。


う〜ん、正直…試合前の睨み合いとは裏腹に、試合内容は一方的な展開になっちゃったな。ま、僕が白須という選手を知るにはいい試合ではあったけど…、我龍は何だか色々な団体で便利屋さんになっちゃっているなぁ。それにしても、ここまで歯が立たないとはねぇ。ま、相性の問題とかもあるんだろうけどね。

雑感

久々に観戦したMAキックの感想を言わしてもらうと…。


第六試合(ウルジーバト・エンフバヤル vs NOZOMI)の不可解なカットによる決着、第八試合(アルタンゲレル・ガントムール vs 一貴)のよく判らない判定結果などに代表される新東金ジム贔屓(ひいき)やら、第十一試合(水町浩 vs 笹谷淳)終了後に士魂村上塾軍団が大挙してリングインするなど、興行の随所で「身内興行」の雰囲気が目立ってしまったように思う。宍戸の敗北も、ちょっとこの流れに巻き込まれてしまったねぇ。


…とはいえ、興行全体としては、進行のテンポもよく、決してつまらないワケではなかったかな。キック観戦の選択肢にMAキックを加えてもいいかな?と思うには充分な内容だった。ま、毎回行こうとは思わないけどね。


以上、長文失礼。