7/11 DEEP公武堂ファイト Zepp Nagoya興行 観戦記 Ver1.0

実は人生で三度目の名古屋なのですが、観光をしたのは初でした




名古屋駅



名古屋港!



名古屋場所



名古屋城



そして、
公武堂ファイト

久々に密航してきました

本日はZepp Nagoyaで、DEEP公武堂ファイトを観戦。


さてさて。普段は東京近郊の興行を観戦している僕が「何を突然、名古屋に?」と思われる人もいるかもしれないが、ちゃんと理由はあるのだ。


僕はこの大会を運営している長谷川匡紀氏(名古屋の格闘技用品店、公武堂の社長)と、梅村寛氏(総合格闘技ブラジリアン柔術アカデミー「NEX」の代表で、自身も選手として活躍)の二人がMCを務めるネット配信番組『公武堂TV』(http://www.stickam.jp/profile/koubudotv にて毎週月曜日 深夜0:00より 好評放送中!)の視聴者である。




んで、普段は彼らの番組をタダで楽しんでいる僕が、このお二人が主催する大会を「場所が遠いから」という理由で観戦しないのは「重大な裏切り行為」のように感じたのが今回の生観戦の理由である。うん、いい視聴者だな僕は。まあ、名古屋には小さい頃に行った記憶しかなかったし、旅に出るという意味でも、手頃だったのもあるんだけどね(苦笑)。

公武堂TV』で出る佐伯社長のエピソードは、かなり鉄板の話が多いです

僕が『公武堂TV』を見るようになったきっかけは、この番組をやたら宣伝するグリフォン先生に釣られたダケの事なんだけど、いざ視聴してみるとこれが意外に面白い。ネットの格闘技番組といえば、メジャー団体の発表や動向を「あーでもない、こーでもない」と語ったり、有名選手をゲストに迎えてプライベートな話をする番組が多い中、この番組は主催する側の赤裸々な苦労話や裏話、地方から見た中央についての率直な意見や提言、そして格闘技という世界で生きていく信念を感じさせるコメントが多かったのが大きい。


格闘技とはまったく関係のないバカ話も多い番組ではあるが(笑)、そんな会話の中でも「ブレない芯」を感じる事が多かったのが、僕がこの番組の常連になろうと思った理由である。イヤ、これホント。


「地方発、東京へ」という、プロレス界ではスタンダードな形となった形態でありながら、現在の格闘技界では意外に行われていない事を実践する公武堂ファイトK-1 63kg級で優勝した大和哲也が、一夜明けの記者会見で「ナゴヤキック」の名前を口にした今、名古屋の格闘技の存在は、中央の格闘技界も無視できない存在になっている、と言えるだろう。今日は金網での興行となるDEEP公武堂ファイト、僕は総合格闘技を観るならリングより金網の方が好きだなぁ。


ということで、チケット代を購入、5000円 + ドリンク代500円。会場の雰囲気は…そうさなぁ、東京近郊の会場だと、施設自体はZepp Tokyoと同じでDJブースとかもあるんだけど、作りとしては少し大きめの新宿FACEに、二階に観客席をつけた感じが一番近いかな?一応、満員だと750人ほど入るらしい。んで、今日の観客の入りは八割程度。うん、結構入った方じゃないかなぁ。




※体重はパンフレットに記述されたもので、計量時の体重ではありません。あしからず。

第一試合 なんで寒天なんでしょうなぁ?本名は「春日井健士」らしいのですが…

62kg契約 5分2R
○寒天タケシ(169cm/60.0kg/GSB)
●加藤直之(167cm/62.0kg/スプラッシュ)
[判定 3−0]

あんまり知らない選手の事を書くときに便利なのが、パンフレットの存在だ。オールカラーなのに無料で配られていたパンフの内容を確認したところ、この二人はNEX大須道場で何度も練習した仲らしい。アマチュアからの叩き上げである加藤直之は打撃が得意で、最近プロシューターになった寒天タケシはオールラウンダーのようだ。ふ〜む、寝技になれば寒天が有利で、スタンドなら加藤が有利なのね。




1R、まずは寒天が胴タックルを仕掛けて金網際へと押し込んで膝蹴りを入れる。加藤は金網際で体勢を入れ替えて崩しに入るも、寒天は崩れずに逆にバックを奪うと、一度ポジションを奪い直してからスリーパーを仕掛ける。ピンチに陥った加藤はどうにかしのいで亀の体勢に。寒天は崩しに掛かるも、加藤は逃れつつリバースしてグラウンドで上に。寒天は立ち上がって逃れる。

この後も、加藤がテイクダウンを奪って首を捕ったり、寒天のパンチで加藤がダウンしつつも加藤が持ち上げるなどで、二人は互角の闘いを演じる。




2R、スタンドでは加藤の右のパンチがヒットするも、寒天は左ローで応戦。加藤が組み付いて金網へと押し込み、金網際の攻防へ。テイクダウンを奪ったのは寒天で、ハーフマウントから加藤を金網へと押し付けつつパンチを入れ、パスガードを狙う。

やがてパスガードを決めた寒天はサイドからバックを奪うも、加藤は立ち上がってグラウンドを逃れてパンチを入れる。だが寒天はスタンドからするりとバックを奪うと、体勢を崩して一気にスリーパーを極めに行き、これがダメと見るや試合終了までパンチを落としていった。




試合終了、判定の結果3−0で寒天が勝利。


う〜む、『公武堂TV』では練習の時はいつも弱音ばかり吐いているという話を聴いた事がある寒天だが…。なんのなんの、闘ってみれば随分と強いじゃないですか。特に2R終盤のスタンドからバックをスルリと奪った場面なんかは、かなり目を奪われたなぁ。



第二試合 闘え赤尾!師匠の仇を取る、その日まで!

バンタム級 5分2R
赤尾セイジ(163cm/60.0kg/NEX-SPORTS)
●薩摩竜仁(165cm/63.0kg/BLUE DOG GYM)
[判定 3−0]

パンフによると、赤尾セイジは2008年1月に行われたDEEPフューチャーキング トーナメントで優勝している選手で、レスリング出身なのだそうだ。対する薩摩竜仁は柔道三段の実力を誇るも、両者ともに打撃を持さないスタイルらしい。

それにしても、赤尾はパンフの中では、まるで野獣扱いだなぁ。「筋骨隆々な肉体から相手が壊れるまで狂ったようにパンチを振り回し、試合が終われば発狂したかのように悲鳴のような雄叫びをあげてマウスピースをマットに投げ付けるなどの理性のブッ飛んだ行動まで取ってしまう」って、やたら凶暴なイメージが掻き立てられるよ。まあ、冷静になって読んでみると、実は格闘技界ではよくある光景だったりするんだけどね(笑)。




1R、序盤に鋭い打撃を繰り出す薩摩、左ミドルもストレートもスジがいい。対する赤尾は右ローを放って様子を伺う。なかなか両者の拮抗が破れない中、赤尾が組みついて金網へと押し込むも、薩摩は差し返した後で離れる。再び静かな展開となったが、赤尾は突然の飛び蹴りで観客を驚かせる。しかし飛び蹴りは空振り、バランスを崩した赤尾に薩摩が組み付き、金網際でボディへ膝蹴りを入れていく。両者は一旦離れるも、再び薩摩の打撃がヒット。赤尾がバランスを崩せば、薩摩はすかさず接近して金網へと押し付ける。

と、ここまではわずかに薩摩のペースで進んだが、赤尾は薩摩と離れると右ミドルを放ち、組み付いてテイクダウンを奪い、ハーフマウントからパンチを落としていく。薩摩はラバーガードで切り返すも、1Rはここで終了。最後に赤尾が一矢、報いたね。




2R、一度テイクダウンを奪って自信をつけたのか、今度は赤尾が距離を詰めるようになる。薩摩は打撃で距離を離したり、タックルを切ったりするも、赤尾は強引に薩摩を金網へと押し付けてパンチを連打。何発か喰らった薩摩は崩れるように倒れると、赤尾はハーフマウントからパンチをドカドカと落としていく。おお、ここに来て赤尾の凶暴さが剥き出しになったね。

ピンチに陥った薩摩は必死にグラウンドから逃れるも、赤尾はこれを逃がさずにハーフマウントを奪い直すと、半立ちの状態からパンチを落としたり、立ち上がって薩摩の顔面を踏み付けたりする。更には肘打ちを駆使するなどで、終盤は赤尾が一方的に薩摩を攻め込んだ。う〜ん、最後まで攻め続けたな。




ここで試合は終了、判定の結果、3−0で赤尾が勝利。勝った赤尾はマイクを持ち、師匠である梅村氏の仇、現DEEPバンタム級王者の今成正和へ挑戦を表明。おお、これは言い切ったねぇ!カッコいいな!


1Rは実力拮抗という感じだったけど、2Rになってからは赤尾が一方的に攻め込んだねぇ。2Rにおけるグラウンドでのエゲつなさは中々凄かったなぁ。師匠の仇である今成はDEEP、DREAM、そしてCAGE RAGEと国内・国外を問わずに活躍。目指す先はまだ遠いかもしれないが、赤尾には頑張って欲しいねぇ。



第三試合 木部は僕より年下なのに独立しているのか、立派だ

バンタム級 5分2R
○木部亮(168cm/64.0kg/スプラッシュ)
●渡辺智史(173cm/70.0kg/CB IMPACT)
[判定 3−0]

パンフによると、木部亮は昨年3月に自らの道場である「スプラッシュ」を開いた道場長で、柔術黒帯の実力を持つ選手なのだそうな。対する渡辺智史はPANCRASE、DEEP、DREAMなどで活躍する選手で、レスリングが得意なのだそうな。ちなみにこの二人、2年前にもグラップリングマッチで対戦し、この時は木部がアキレス腱固めで秒殺勝利しているそうだ。渡辺にとってはリベンジ戦となるが、道場長の立場となった木部もそう簡単に負けるわけには行かない。




1R、試合開始早々、いきなり渡辺のパンチを喰らった木部がダウンを喫する。観客の驚きの声の中、秒殺リベンジを果たしたい渡辺は木部の上になって追い撃ちを掛けるも、木部はなんとかピンチをしのぐと逆にテイクダウンを奪ってバックに回る。

一転して劣勢になった渡辺は身体を反転させるも、木部はハーフマウントからパンチと肘打ちを連発。特に肘打ちは、いわゆる「肘グリ」なども駆使したかなりエゲつないもので、渡辺は必死に逃げようとしたが、木部はしつこくポジションをキープし、尚も肘打ちを落とす。終盤、渡辺は下からの腕十字で逆襲するも、木部は尚も肘打ちを連打。う〜む、木部の攻めはねちっこくていいねぇ。




2R、両者が距離をあける。そんな中、まずは渡辺のパンチがヒットするも、木部もパンチを入れ返すと、渡辺を金網際へと押し込み、スタンドでバックを奪いボディへ膝蹴りを入れる。一旦離れた木部はバックを奪い直して渡辺の体勢を崩しに行くも、渡辺は金網際で粘り続ける。だが木部は正面から組み付くと、足を掛けてテイクダウンを奪った。

グラウンドでべったりくっつきながらハーフマウントの体勢になった木部は、立ち上がってからの膝蹴りでダメージを与える。ブレイク後、木部は渡辺のパンチに合わせてタックルを敢行、一度は渡辺に立たれるも、木部はすかさず再度タックルを行ないテイクダウンを奪った。




ここで試合は終了。判定の結果、3−0で木部が勝利。


ふむ、試合開始早々こそ危なかったけど、それ以外は木部が一方的に攻め込んだねぇ。特に要所で使っていた肘打ちは凄くエゲつなかったなぁ。それにしても今日は、心なしか他の興行よりも「グラウンドでの肘打ち」を打つ場面を見ることが多いような。名古屋の総合格闘技の特色なのかなぁ?まぁ、僕が普段見ている総合格闘技団体で肘打ちを解禁しているところは少ないから、そのせいかな?う〜ん、それだけではない気もするけどなぁ…。



第四試合 GSB所属なので、梶田は打撃が得意なのかと思いきや…

ライト級 5分2R
梶田高裕(173cm/70.0kg/GSB)
●トリスタン・コンリー(175cm/70.0kg/AACC)
[判定 3−0]

パンフによると、梶田高裕はGSB(グラップリング・シュートボクサーズの略)所属のストライカーで、トリスタン・コンリーは…、カナダの総合格闘技の興行でチョークスリーパーで一本勝ちした以外は謎の選手なのだそうな。ふ〜む、AACCで練習しているのであればレスリングが得意な印象があるけど、アントニオ・カルバーリョみたいな選手もAACCで練習したりするから、なんとも言えないか。




1R、まずは梶田が組み付いて金網際へと押し込むも、コンリーが差し返す。梶田はボディへ膝蹴りを入れて抵抗するも、コンリーは金網際へと押し込むと、梶田を抱え上げて豪快なテイクダウンを奪う。梶田はすかさず逃げて亀の体勢になり、コンリーはガブリの体勢からパンチを入れるも、梶田は押し込んでテイクダウンを奪い返す。

コンリーはクロスガードで防御すると、梶田は何もできずに苦戦したが、コンリーが足を使ってのラバーガードで逆襲に出ると、梶田はこのタイミングで肘打ちを敢行。嫌がるコンリーはラバーを諦めて逃げようとしたが、梶田は上半身を起こしてのパンチを入れていく。コンリーは一度ガードポジションへと戻し、再びラバーを仕掛けたが、梶田は尚も肘打ちで追い詰める。




2R、序盤は1Rとは一転しての打撃戦、梶田は左ミドル、コンリーは右ハイを放つ。そんな中、梶田はコンリーを首相撲に捕らえて膝蹴りを放つと、小手を極めて投げを放ちグランウンドで上になる。ハーフマウントから肘打ちを放ちつつ、梅村氏の「殴れよ!殴れよ!」の声を無視して肩固めを敢行。これは極まらなかったが、尚も梶田は梅村氏の「ハーフでいいから殴れ!」の声を無視してパスガードを狙う。コンリーはガードポジションへと戻すと、梶田は立ち上がってローキックを放つと、コンリーもタイミングを見て立ち上がる。

だが梶田はすかさずバックを奪い一気にスリーパーの体勢へと移行。これも極まることはなく、グラウンドでコンリーは身体を反転して上になったが、梶田は腕十字を極めに行く。コンリーは腕を抜いて脱出したが、梶田はサイドを奪って攻勢をキープし続けた。う〜ん、隙あらば一本を奪いに行く姿勢がいいね。




ここで試合は終了。判定の結果、3−0で梶田が勝利。


う〜ん、結局コンリーが何が得意な選手かわからなかったなぁ。下からラバーガードを仕掛けたりするくらいだから、柔術の練習とかもしているんだろうけど…。まぁ、試合自体は梶田の完勝だったからなぁ。それにしても、パンフにはストライカーって書いてあったのに、梶田はグラウンドでも強かったなぁ。

それにしても、第一試合に出た寒天にしてもそうだけど、シュートボクシングから寝技も出来る選手を輩出するジムが生まれるとはなぁ…。



この二人の姿勢に、他団体も見習うところも多いのでは?

休憩中には公武堂が誇るラウンドガール、玲ちゃん(水希玲子 http://ameblo.jp/mizuki015/)&みさとっち(相沢美里 http://ameblo.jp/misato0816/)による撮影会が行われていた。実はこの二人、公武堂TVにも準レギュラーとして参加していて、僕もチャット上では何度かやり取りをしたことのある仲だったりするのであるのだが、それはまた別の話。




んで、普通この手の撮影会というと「ラウンドガールが勝手にポーズを取って、カメラ小僧が勝手に撮影する」というのがスタンダードな図式なのだが…。この二人は、お客さんの手を積極的に引っ張って、積極的に撮影会への参加を促していた。子供には子供の目線で接し、お客さんに肩を抱かれても嫌な顔一つしない。撮影が終われば、自分達の顔写真の入ったチロルチョコをプレゼント。前回の興行では撤収作業も手伝ったのだというから驚きである。

正直、僕はここまで「興行に溶け込んでいるラウンドガール」というのを他に知らない。この二人の「親しみやすい雰囲気」は、間違いなく公武堂ファイトの雰囲気作りに一役買っていると思う。間違いなくね。この二人の性格の良さが伝わってくるのが良いんだよねぇ。あ、軽くデレッとしているな俺(苦笑)。




また、会場内では「とんむす」なるおにぎりが売られていた(「とんむす本舗」http://www.tonmusu.com/)。薄い豚肉で巻いたおにぎりである。会場で会った犬一さん(http://twitter.com/inuichi @inuichi)に一ついただいて食べてみたが、結構旨い上に腹にも溜まっていい感じ。ああ、これ書いてたらまた食いたくなった…。

第五試合 両者ともに再起を掛けた一戦は、一発のパンチで明暗を分けた

ライト級 5分2R
○松下直揮(169cm/70.0kg/MB3z)
●大杉ジャカレ優也(171cm/75.0kg/クラブバーバリアン)
[1R 2分58秒 KO]
※グラウンドパンチ連打

かつては修斗で活躍し、現在はDEEPのリングで闘い続ける松下直揮。名古屋出身の松下は柔道をベースにしながらも、一撃必殺のパンチを得意とする選手である。その松下は一ヶ月前となる6月6日に、DEEPのケージマッチで池本誠知に敗れたばかりで、この試合は「金網での試合」という意味でのリベンジ戦となるのだ。

そして対戦相手の大杉ジャカレ優也もまた、二ヶ月前の5月16日に行われたDEEPのクラブバーバリアン主催興行で、先日引退した五十里祐一に敗北したばかり。この試合は、両者ともに再起を掛けた大事な一戦と言えるだろう。




1R、打撃を得意とする松下が右ロー〜ワンツーを放つ。圧力を強めて前に出る松下に対して、大杉はワンツーを返して応戦。そんな中、松下はスジの良い右ストレートを放ち、組み付いて松下を崩してテイクダウンを奪うと、パスガードを決めてサイドにつくも、大杉は下からブリッジを作ってグラウンドを脱出。試合は再びスタンドへと戻る。

決着は一瞬のことだった。ラウンド終了前、松下の放った右ストレートがモロにヒット、観客の歓声の中で大杉はダウン。勝機と見た松下は、大杉の上になって一気にパンチの連打を浴びせる。大杉は立ち上がって難を逃れようとするも、松下は再び体勢を崩してパンチの連打を浴びせる。金網際でうずくまる大杉、尚もパンチを連打する松下、ここでレフェリーが試合を止めた。




勝った松下は「こんなに僕を応援してくれる状況の中で戦える機械は少ないんですが、皆さんの応援でこの結果がでました!」とコメント。ふ〜む、ホームで戦える喜びが伺えるコメントだなぁ。


逆に言えば、東京をベースに活動して東京で闘い続けるというのは、それだけで大きなアドバンテージになる、という事も言えるのだろう。さらに話を大きくすれば、総合格闘技の中心が日本からアメリカへと遷移した今、大舞台がホームとは成り得なくなっている。

そう考えると「海外での白星というのは、たとえ相手がどんな選手であろうとも評価をするべきなのだろうなぁ」なんて事を、松下の勝利から考えさせられた。ともあれ松下選手、お見事でした。



第六試合 マスト判定はいつだって非情

ライトヘビー級 5分2R
○井上俊介(175cm/98.0kg/吉田道場)
●増田祐介(178cm/90.0kg/AACC)
[判定 2−1]

昨年12月6日、PANCRASEの舞台で川村亮と大激闘を演じた井上俊介。柔道ではインターハイ100kg超級で優勝という輝かしい実績を誇る井上だが、シーザージムに通い詰め、打撃系格闘技であるSBで敗北を重ねながら会得した打撃も侮れない。総合格闘技でデビューしてからの二年半で15試合もこなした井上は(戦績15戦8勝5敗2分4KO2SKO)、ここ最近はタイトルマッチを経験するなどで、徐々にステータスを上げつつある選手である。

そんな井上に対するのは…かつてはZSTで活躍し、韓国、アメリカ、ブラジル、ポーランドなど海外での闘いも経験した増田祐介。レスリングをベースとしている増田、戦績は敗北が先行してものの(戦績12戦2勝7敗3分2KO)、パンフによると派手な打ち合いも持さないようだ。今日は地元での闘いとなる井上にとっては、侮れない相手と言えるだろう。




1R、柔道がベースの井上に対してレスリングがベースの増田がいきなりタックルを仕掛け、金網際へと押し込んでテイクダウンを奪う。インサイドの増田に対して、井上は体勢をズラして下からの蹴り上げで応戦すると、立ち上がって増田を後ろから金網際へと押し込む。増田もバックについた井上の腕を捕らえて粘るも、両者ともに動かずブレイクに。

両者スタンド、井上はシーザージム仕込みの重い左ミドルを放つと、右ストレートを顔面に叩き込む。観客からは歓声が沸いたが、これで井上の打撃を警戒した増田が再びタックルを敢行。井上は尻で立つなどで抵抗するも、増田の押し込みを堪え切れずにテイクダウンを許してしまう。




しかし、グラウンドで上になったのはいいが、コツコツとパンチを入れる以外の攻撃が出ない増田。立ち上がってのパスガードを狙うも、これは井上の蹴り上げに抵抗されてしまう。逆に下から組み付いた井上は、立ち上がって増田のボディへ膝蹴りを入れていく。ブレイク後も、井上は組み付いての膝蹴りで攻め込む。更に井上は、ラウンド終了直前の増田のタックルをガブってパンチを入れていく。ここで1Rは終了、ここまではタックルにこそ手を焼いているが、与えているダメージは上と見るべきかな。



2R、井上は右のハイキックで牽制するも、やはり増田はタックルを敢行。捌いた井上はパンチを連打して何発かヒットするも、増田は尚もタックルに拘りテイクダウンを奪う。インサイドから鉄槌を入れる増田、しばらくこの状態が続いたが、井上は体勢をズラしての蹴り上げでグラウンドを脱出。



今度はなんと井上がタックルを敢行。増田は腕を捕らえて上になろうとするも、井上はこれを返してサイド〜上四方の体勢へと移行。グラウンドで劣勢となった増田はどうにか脱出して立ち上がるも、井上はバックから増田を崩してテイクダウンを奪いスリーパーを極めに行き、これがダメだと見るや腕十字を仕掛ける。だが増田は井上の腕十字狙いを返して上になり、蹴り上げで抵抗する井上をガブってパンチを入れていった。



ここで試合終了、勝敗は判定に委ねられた。う〜ん、難しい。リング・ゼネラルシップで言えば、タックル&レスリングで長時間支配していた増田が優位だと思うし、ダメージ度でも長時間コツコツとパンチを入れていた増田の方が若干上だと思う。ただ、要所で見せた井上のアグレッシブな攻めも評価すべきだと思うし、本当はドローが妥当だと思うんだけどなぁ…なんて思っていたら、結果は2−1で井上が勝利。

増田は自分が負けたと知るや否や、その場にひっくり返ってしまった。正直、この内容で敗北するのは気の毒だよなぁ…。勝った井上は「本当はKOしたかったです。来年はこの舞台でメインを張れるよう、また東京で頑張ります」と宣言、観客の歓声を浴びていた。


う〜む、僕はこの試合はスタンドでの打ち合いになると思ったんだけど、意外にもグラウンドが中心になったなぁ。僕は井上の打撃センスは吉田道場の所属選手の中では随一だと思っているんだけど、今日は増田のレスリングの前に封印されちゃったねぇ。ちょっと残念だなぁ。



第七試合 う〜ん、こういう試合は切なく感じるんだよなぁ…

ライト級 5分2R
○LUIZ(180cm/70.0kg/禅道会/ブラジル)
坪井淳浩(167cm/70.0kg/GSB)
[判定 3−0]

かつてはシュートボクシングで活躍し、初期のZSTにも参戦。現在は名古屋でGSBを主宰する坪井淳浩。NEX代表の梅村寛氏とは10代の頃からの盟友で、梅村氏が一線を退いた今でも坪井は現役として試合を続けている。SB時代には名選手として知られ、所英男が対戦を熱望した前田辰也にも勝利した実績を持つ坪井。37歳の大ベテランは今日、公武堂ファイトのメインの舞台に立つ。

その坪井の対戦相手は、DEEPの舞台で頭角を現わしてきている禅道会のLUIZ。その戦績である11勝8敗3分4KO6SKOが示すとおり、勝つ時はKOか一本を奪う選手である。空手がベースである禅道会の所属でありながら、NTT(ニッポントップチーム)で寝技も学ぶLUIZ。ブラジル人なのに日本語が達者で、トランクスにも日本語でメッセージが書かれている(「ボクはチキン。本当に」)のも特徴的だ。今日は強豪を迎え撃つ坪井、地元のメインで勝利を飾れるか?




1R、これまでの試合とは一転しての打撃戦に。LUIZは若さに任せて重い右ミドルを放って観客を驚かせるが、坪井は右ローと左ミドルを返す。プレッシャーを掛けて出るLUIZ、坪井を金網際へと押し付けるが、坪井はここで崩れずにスタンドをキープ、両者の距離が離れれば観客からは歓声が沸く。



しかし、尚もプレッシャーを掛けて前に出てくるLUIZ。パンチが交差する中で、坪井は右ローを連発してLUIZを崩しに掛かる。コツコツと左脚にダメージを与えていく坪井に対して、LUIZは左ハイ〜ワンツーのコンビネーションで逆襲、それでも右ローを連発する坪井を、LUIZはラウンド終了直前にパンチの連打で金網際へと追い詰めていく。

ここで1Rは終了。う〜ん、坪井はよくやっているんだけど、LUIZのプレッシャーが中々弱まらないなぁ。切ない…。




2R、坪井はこのラウンドも右ローをコツコツと当てて行くが、ここに来てLUIZがプレッシャーを増す。前蹴りで距離を離してフックで襲い掛かるLUIZは、右ミドルを放ちつつ坪井に組み付き、ついにテイクダウンを奪う。観客の悲鳴の中、サイドからニー・オン・ザ・ベリーの体勢からパンチを落とすLUIZだが、坪井はなんとかグラウンドを脱出。一転して観客からは歓声が沸く。



前に出る坪井にワンツーを放つLUIZだが、ここに来て微妙に疲れの色が見える。だがLUIZはプレッシャーを弱めることはなく、距離を詰めようとする坪井に右ローや前蹴りを放つ。坪井は左ミドル&左ストレートで応戦、LUIZはワンツーを連発して対抗。試合が再び打撃戦に戻る中、坪井の放った左ストレートがヒット。

怯むLUIZにワンツーを放ちながら組み付いた坪井だが、ここは逆にLUIZがテイクダウンを奪ってしまった。一度立ち上がってインサイドに潜り込んだLUIZは、坪井の顔面に鉄槌を落としていく。坪井はグラウンドからの脱出を試みるもLUIZは逃がさず、試合終了までの約一分間パンチと鉄槌を落としていった。




ここで試合は終了。判定の結果3−0でLUIZが勝利したが、金網を去っていく坪井にも大きな拍手が寄せられた。勝ったLUIZも「気持ちでは、坪井選手に負けていた」と坪井の闘いぶりを認めるも、最後は「昨年9月に松下選手に負けて、一杯練習してきたんですが…。次は絶対に倒して勝ちます!スイマセン、頑張ります!」と宣言。LUIZの気持ちはすでに次戦に向いていた。


う〜ん、坪井は頑張ったんだけどなぁ…。実力差がある中で、自分のやるべきことをやって、それでも負けてしまう選手を見るのは切ないなぁ。LUIZが認めている通り、押している場面もあっただけに残念だ…。こんな事を書いてもしょうがないけど…。せめて僕から「今日のMVPは坪井選手」と書かせてもらいます。



雑感

正直、対戦カードも判らないまま名古屋まできて観戦した今回の公武堂ファイト。しかし松下直揮、井上俊介、LUIZ、坪井淳浩といった僕にも馴染みの深い選手が多数出場していたためなのか…、それともZepp Nagoyaの雰囲気がオシャレだからなのか…、思ったよりも「地方興行」という雰囲気は感じなかったなぁ。泥臭さや胡散臭い感じがなくて洗練されている、というかねぇ。


でも、この日は無料で配られたオールカラーのパンフレット、店内で売られていた「とんむす」、そしてラウンドガール二人による、積極的にお客さんに触れての撮影会&チョコのプレゼントなど、東京の興行では見られない「興行を成功させるための努力」を感じて、凄く好感を持ったなぁ。興行に来ていて「ああ、興行って『祭り』なんだよなぁ」と感じたのは本当に久しぶりの事だったなぁ。しかも格闘技の興行でそれを感じたのは、ちょっと記憶にないよなぁ…。


う〜ん、このパッケージのまま新宿FACEあたりで興行が見たいなぁ、と思ってしまったよ。まあ、こういう風に思っちゃうのは、都心に住んでいる者の贅沢と傲慢なんだろうけどさ(苦笑)。



皆さん、良い興行をありがとうございます。

では最後に、今日の興行の功労者達をアップで。左が公武堂の長谷川匡紀社長、右の真ん中でマイクを握っているのがNEX代表の梅村寛氏。二人とも、今日はご苦労さまでした。




そしてラウンドガールの二人も、もう一度紹介。左が玲ちゃん(水希玲子)で、右がみさとっち(相沢美里)。二人もお疲れ様でした。チョコレートも食べましたよ!(笑)



以上、長文失礼。