6/19 VALKYRIE ディファ有明興行 観戦記 Ver1.0

中井りんはもっと注目されてもいい選手かな?

本日はディファ有明VALKYRIEを観戦。


今日は全五試合、非常にコンパクトサイズなVALKYRIEだが、セミファイナルに組まれた藪下めぐみvs中井りんはファン注目の一戦と言えるだろう。柔道での実績をバックに、長い間女子格闘技のトップ戦線を走ってきた薮下。そして海外進出を見据えて、周りが心配になるような肉体改造を続ける中井。辻結花vsV一から続く「世代交代マッチ」とも言えるこの一戦。下馬評は中井が有利だが、藪下は覆すことができるのか?

またメインイベントでは、VALKYRIE女子フライ級の初代王者決定トーナメントの決勝戦として玉田育子と大室奈緒子が激突。世界でも珍しい階級である-45.4kg級の最強を決める一戦、両者ともにグラウンドを得意としているが、一本勝ちは見れるのか?


というわけでチケットを購入、4500円。全五試合の割にはちょっと高い。観客の入りは…かなり厳しい。ディファ有明のBバージョンにして約四割程度かなぁ。正直、この入りはかなり厳しいねぇ。

第一試合 3分2Rって言われると、新日本キックを思い出すかな?

ノーヴィスルール 女子フェザー級 3分2R
○バタフライナイフユカ(MMA/修斗ジム BLOWS)
●sakura(和術慧舟會東京本部)
[判定 3−0]

第一試合は、みんなが忘れかけていたノーヴィスルール(グラウンドでの顔面パンチはナシ)による一戦。パンフレットでsakuraは「少しでも楽しんでもらえるように頑張ります」、バタフライナイフユカは「切り刻んでやるぜぇ〜(照)」とコメント。ふ〜む、照れるのに何でバタフライナイフなんて名乗ってるんだろ(笑)。




1R、スタンドでの打撃戦の中で、ユカがテイクダウンを奪い金網際でハーフマウントになるも、試合は膠着しブレイク。再びスタンドになるも、ユカはパンチを武器に前に出て、sakuraを金網際へと押し込みつつ腿への膝蹴りと肩パンチを連発。sakuraも差し替えて攻め込むも、試合に進展はなくブレイク。ここで1Rは終了。う〜ん、展開が乏しいのぉ。



2R、ユカは左ジャブで牽制すると、前に出るsakuraにタイミングよく左ジャブを当ててダウンを奪い、そのまま上になってサイドから腕十字を狙うも、これはsakuraにリバースされてしまう。チャンスを得たsakuraだが何もできずにブレイク、ユカはパンチを出しながら前に出てsakuraを金網へと押し込んだが、ここで試合は終了。あっという間だったなぁ。



判定の結果、3−0でユカが勝利。



う〜む、全体的に実力差はなかったように感じるけど、試合のポイントを切り取ると文句なくユカの勝利になる、という感じだなぁ。しかしまあ、グラウンド中心の展開だと3分2Rって本当に短く感じるなぁ。


第二試合 コスチュームがソックリなのって避けられないのかな?

女子バンタム級 3分3R
スギロック(和術慧舟會A-3)
森岡恵(和術慧舟會岩手支部)
[2R 2分20秒 TKO]
※バックマウントパンチ連打

この試合ではスギロック森岡恵も、ほぼ同じコスチュームで入場。ふ〜む、見分けがつかなくなるなぁ。パンフレットにて、岩手出身の森岡は「田舎者が一生懸命闘うところを観て下さい!」とアピール。可愛いね。対するスギロックは前回の試合で鰻を食べたら勝ったので、また鰻を食べるそうな。そういえば、もうすぐ丑の日だな。神田「きくかわ」の鰻は旨い。




1R、森岡は右ロー主体の攻撃で、スギロックはこれにワンツーを返す。そして森岡はタックルを敢行するも、スギロックはアッサリと切ってしまう。今度がスギロックのワンツー〜右ローを武器に前に出ると、森岡は再び胴タックルを敢行。金網際での主導権争いが続いたが、離れた後はスギロックがキレのある右ロー重ねる。



2R、スギロックが更に右ローを重ねていくと、森岡は前に出られなくなる。それでも片足タックルを敢行したが…。



スギロックはタックルを切り、森岡を亀にするとバックマウントを奪ってパンチを落としていく。盛岡の身体が完全に伸びた状態になってもスギロックはパンチを落とし続け、これを見たレフェリーが試合を止めた。



ふむ、両者の右ローの切れ味の差で決着がついた感じだねぇ。前回は判定決着で勝利しつつも西村広和代表には怒られたというスギロック。今回は文句なしの一本勝ちだから、とりあえずは怒られずに済みそうだ。


第三試合 葛西は前回は格上の藪下めぐみ戦だったけど、今回は実力を発揮できたかな?

女子ライト級 3分3R
○あやめ(和術慧舟會RJW/HTW)
●葛西むつみ(パラエストラ東京)
[判定 3−0]

あやめはPerfumeの「One Room Disco」に合わせてダンスを踊りながら入場。う〜ん、僕はPerfumeのPVはけっこう観る方なんだけど、彼女達のダンスってもはやアスリートの領域だよなぁ。対する葛西の入場曲がメチャクチャカッコ良くて驚いた。何というアーティストの曲なんだろうか?



■ではPerfumeの「One Room Disco」を…誰だお前らっ!?


1R、葛西は前に出てパンチ〜右ローを放てば、受けて立つあやめもパンチを返していく。やがて葛西が胴タックルを敢行するも、あやめはこれをスタンドでガブって顔面にパンチを連打。それでも葛西は強引に金網へと押し込んでいく。展開なくブレイク、再びあやめは前に出ると、葛西に組み付いて腰投げを放ってテイクダウンを奪うと、金網際でサイドを奪って顔面にパンチを入れ、立ち上がった後もパンチを落としていく。1Rはあやめのペースだね。




2R、お互いに距離を置いて相手の出方を警戒する中、葛西が片足タックルを敢行。しかし、あやめは再び腰投げを放ってテイクダウンを奪ってしまう。それでも葛西は組み付いたまま立ち上がり、尚もしつこくあやめを崩しに掛かる。そして、ついにテイクダウンを奪うとインサイドからパンチを落としていく。だが、あやめは直ぐに立ち上がると、再び葛西に投げを放つ。と、ここで葛西は下から腕十字を仕掛ける。極まれば逆転勝利、というところだったが、ここで2Rは終了。葛西が一矢、報いたね。



3R、あやめは序盤に腰投げを放ってテイクダウンに成功すると、亀になって防御する葛西の上になってパンチを入れる。葛西はあやめの腕を巻き込んで防御するも、あやめは横からボディへ膝蹴りを入れる。それでも葛西は捕った腕を下から極めようとすると、あやめが警戒して立ち上がる。葛西はグラウンドから組み付いてあやめを金網際へと押し込み、強引に投げを放つも失敗。労せずグラウンドで上になったあやめは、試合終了まで葛西の頭部に強引にパンチを落とし続けた。



ここで試合は終了。判定の結果、3−0であやめが勝利。



ふ〜む、全体的に金網際での攻防が続き、あやめが腰投げを決めまくって勝った…ってな感じだね。葛西も極める姿勢を見せて見せ場は作ったが、あやめのポジショニングに苦戦したのは痛かった。


なんかこの企画、手作り感があって良かったかな?

今日は全五試合という短い興行ということもあり、今回は休憩前のタイミングでミニトークショーが開催された。登場したのはV一、WINDY智美、そしてプロデューサーでもある茂木康子の三名。まずはVが6月6日のSBで、谷村郁江を相手に判定勝利した事を報告。続いてWINDY姐さんが、イタリアで開催された総合格闘技「XC-1」でマリア・エリザベート・デ・シルバ・タバレス(長い名前だ)を相手に逆転勝利したことを報告。

VはSBでの勝利よりも辻の勝利の影響が大きく、プレゼント攻めのせいで太ってしまったそうな(笑)。WINDY姐さんのイタリアでの試合は1Rは肩固めを極められ、2Rも劣勢という苦しい展開だったが、3Rにハイキックを決めてKO勝ちだったという。おお!素晴らしい!




この後、三人による「リングと金網の違い」についてのトークが行われ(全員「ケージはいい!」という結論)、最後は今後の予定についての告知。VはGirls S-CUP 2010への出場が決まっているが、本人曰く「Girls S-CUPは『ツヨカワ』がテーマだそうなので、私も茶道とか習って女らしくする」と宣言し観客の笑いを取っていた。続いては、打撃系でありながらGirls S-CUP 2010には呼ばれていないWINDY姐さん(苦笑)。次の試合はPANCRASEで決まっているようだが、それ以降は再びVALKYRIEに参戦するとの事。

最後は茂木プロデューサー。今年はちょっと難しそうだが、来年にはVとWINDY姐さんの試合を組みたいとの事。おお、それは楽しみだが…まずはそれまでにWINDY姐さんは寝技対策をバッチリやらないとね(笑)。



第四試合 思った以上に一方的だったかな?

女子ウェルター級 3分3R
中井りん(修斗道場四国)
藪下めぐみ(FIGHT CHIX)
[判定 3−0]

本日のセミファイナルは、女子格闘技ファン注目の一戦。女子格闘技のパイオニアである藪下めぐみに、期待のホープである中井りんが挑む一戦だ。


女子格闘技の門戸を開いた存在とも言える藪下めぐみ。2000年12月に行われたReMix WORLD CUP 2000にて、巨体の強豪グンダレンコ・スベトラーナに勝利した藪下は、その後も所属団体であるJd'、全日本女子プロレスSMACK GIRLG-SHOOTO、K-GRACEと様々なプロレス団体、そして女子格闘技団体で総合の試合をこなしてきた。最近は負ける事も多くなったが、36戦19勝17敗1KO10SKOの戦績は立派なものだろう。今も尚、女子総合格闘技のトップ戦線を走り続ける彼女に、今日は「リアル美獣」が闘いを挑む。

前回のVALKYRIEで、日本人女性離れした筋肉を披露した中井りん。立って良し&寝て良しの闘いぶりに加えて、試合後には側転&バク転を決めるという運動神経&サービスの良さも手伝って、女子格闘技界の台風の目となっている中井。既婚者&四国在住という事もあり、なかなか試合ができないのが難点ではあるものの、これまでの戦績は6戦6勝無敗2KO2SKOという完璧なもの。今日は格上の相手に挑む中井、V一に続く「女子格闘技の世代交代」を実現できるか?




1R、いつも通りに中井は金網の中をサークリング。藪下が様子を見る中、中井の放つパンチが異様な切れ味を見せる。そして強烈なワンツーの連打を見せると、この時点で藪下の表情が強張ってしまった。正直、この時点でこの勝負は「見えてしまった」が、中井は接近戦で藪下に組み付くと、パワーにまかせて強引に押さえ込んで藪下を崩してパンチを連打。その過程で中井が金網を掴んだせいでブレイクとなるが、この後も中井は藪下の一本背負いを潰し、グラウンドでは腕十字を仕掛けるなどで優位を保つ。う〜む、柔道の猛者としても知られる藪下に腕十字を仕掛けるとはなぁ…。



2R、藪下は開始直後に裏拳を放って状況の打開を図るも、中井は再び藪下に組み付いて潰しに掛かる。亀になって防御する藪下の上になった中井は顔面にパンチを入れると、バックマウントを奪って腕十字を狙う。



藪下はこれを外し始めてグラウンドで上になると、金網際のサイドからパンチを入れていく。だが中井は脚を捕ってリバースを決めると、逆にパンチを落としていく。ぬぅ、ここまでは一方的だし、多分3Rも同じような内容になるな…。



3R、中井はスタンドでラッシュを仕掛けると、左ボディを藪下に浴びせていく。さらには首相撲から顔面へ膝蹴りを放ち、上からガブって顔面にパンチを入れていく。藪下は亀になって防御するも、中井はバックからパンチを浴びせる。嫌がる藪下がガードポジションに移行しても、中井は上からパンチを連打。どの体勢になっても殴られてしまう藪下はどうにかグラウンドから脱出するも、中井はスタンドでもバックから組み付いてパンチを浴びせる。苦しくなった藪下は浴びせ蹴りで観客を沸かすも、結局は中井に反撃できないまま試合を終える事となった。



判定の結果、3−0で中井が勝利。中井は退場際に得意の側転&バク転を披露して観客を沸かせた。こんなに筋肉を付けても、まだこういう事を軽々とこなすのね。いやはや、凄い人だ。



う〜ん。藪下はもう少し何かできると思っていたんだけど…スタンドでは中井の打撃にビビっちゃって、グラウンドでは亀になって動けなくなるという。藪下は柔道出身なだけに、この体勢になると動けなくなるんだねぇ。

そして中井も、もっと圧倒的な力の差を見せ付けると思っていたんだがねぇ。肉体改造しただけあって今日はパワーで藪下を圧倒したけど、なんかその分だけ戦略性とか技術的なモノとかが落ちているように感じるね。正直、魅力が半減しちゃったかも。全体を通して見ると、決して期待外れだったワケじゃないけど「…こんなものかねぇ?」という感が否めないなぁ。




ちなみに中井の私服はこんな感じ。個性的だったので思わず撮っちまったい。


第五試合 意外と一方的だったかな?

VALKYRIE女子フライ級 初代王者決定トーナメント決勝 5分3R
○玉田育子(AACC)
●大室奈緒子(和術慧舟會東京本部)
[判定 3−0]

本日のメインイベントは、VALKYRIE女子フライ級 初代王者決定トーナメントの決勝戦。一回戦でハッピー福子を破った玉田育子と、同じく一回戦で高木佑子を破った大室奈緒子による一戦だ。お互いにグラップリングを得意としながらも玉田はレスリングがベース、大室は柔術がベースとバックボーンはまったく違う。またリーチは玉田が圧倒的に優位ながらも、大室も打撃では臆するところがない。世界でも珍しい-45.4kg級の最強を決める一戦は、同時にVALKYRIEの旗揚げ戦では引き分けだった二人の決着戦でもあるのだ。勝つのはどちらか?




1R、玉田はワンツー〜右ローで牽制すると、胴タックルで大室に組み付きテイクダウンを奪う。ハーフマウントの体勢になった玉田は、大室の顔面にパンチを入れる。下から足を挟んで防御する大室に対して、玉田は尚も顔面にパンチを落としつつジックリとパスガードを狙う。やがてパスに成功した玉田は、サイドに回って尚もパンチを続ける。大室は亀になって防御するも、これを崩した玉田はマウントへ移行。嫌がる大室が背を向けると、玉田はスリーパーを狙っていく。ここで1Rは終了、ここまでは完全に玉田のペースだねぇ。



2R、1Rの展開で自信を持った玉田は、再びタックルで大室を金網際へと押し付けて大室の体勢を崩していく。大室を金網に押し付けつつバックマウントをガッチリと奪った玉田、大室は必死に逃れてハーフガードの体勢に戻すも、玉田はこの体勢からパンチを落としつつ尚も逃げようとする大室を逃さない。それでも立ち上がった大室だが、玉田はしつこく崩しに掛かりつつ首相撲からボディへ膝蹴りを入れる。

だが、この間にスタンドで良い体勢になった大室は逆に玉田を崩そうとする。玉田は金網際で粘ったが、大室はついにテイクダウンに成功。大室応援団の歓声の中、大室はインサイドからパンチを落としていく。だが、ここで2Rは終了。ようやく大室が一矢、報いたなぁ。




3R、序盤はスタンドでの打撃戦となったが、これまでの流れでグラウンドに自信を付けている玉田が自らタックルを仕掛けてテイクダウンを奪う。ハーフマウントの体勢になった玉田は、今回は比較的あっさりとパスガードを決めてサイドへ移行するとボディへ膝蹴りを入れ、大室の隙を見て腕十字を仕掛ける。だが大室はこれを逃れると、反対に洗濯挟みで玉田の首を絞めつけた。

思わぬ裏技に観客の一部が驚いたが、玉田はこれを外すと再びサイドを奪って肩固めの体勢へ。そして、これは極まらないと見るや再び膝蹴りをボディへ入れる。大室は再び洗濯挟みを仕掛けたが、これを外した玉田は再び膝を入れつつ腕十字を仕掛ける。大室は必死に逃れるも、玉田はバックマウントを奪った。ピンチの連続となった大室は必死に逃れ、どうにかスタンドに戻ったが、玉田は最後までパンチや蹴りで大室にプレッシャーを掛け続けた。




試合は終了。判定の結果は3−0で玉田の勝利。これにより、玉田はVALKYRIE女子フライ級王者となった。玉田は喜びながらフジメグを始めとしたAACCのチームメイト達と抱き合っていた。うむ、いい風景だ。



それにしても、僕は勝手に「大室が圧倒する」と思っていたんだけど…。結果としては玉田が終始圧倒しちゃったなぁ。まあ、最近の玉田の身体は割とバキバキだし、そういう意味では運動能力の差が出ちゃった感はあるねぇ。正直、今のままでは大室では玉田には勝てないだろうなぁ。個人的に大室はいい選手だと思うので、今回の敗北をバネにまた立ち上がって欲しいなぁ。


雑感

う〜ん…。苦しいなぁ、と。


正直な話をしてしまうと、やっぱり全五試合で、基本は3分3Rっていうのは、やっぱり短いよなぁ。期待していた藪下vs中井、そして大室vs玉田が一方的な試合ながらも判定になった事で、今日の興行の印象はますます薄まってしまった感があるねぇ。引っかかりのない興行だった、というか。


どうもV一vs辻結花を終えてからのVALKYRIEは、興行全体が「燃え尽き症候群」に陥っているように見えてしまうなぁ。選手の陣容が少ないのは重々承知しているつもりだが、やっぱりそれなりの料金を取っているのであれば、試合数はもう少し増やして欲しいなぁ、というのが本音だよなぁ…と、今日の客入りを見ながら考えさせられたのだった。




以上、長文失礼。