6/6 SB 後楽園ホール興行 観戦記 ver1.0

今、格闘技界でもっともコストパフォーマンスがいいのは、間違いなくSBだと思う

本日は後楽園ホールSBを観戦。


前回4/11の興行で、ボーウィー・ソーウドムソン vs 梅野孝明という年間ベストバウト候補を生み出したSBではあるが…。さすがに激戦のダメージは大きく、梅野は今回の興行を欠場。うん、その方が良い。しっかり休んで、また凄い試合を見せてくれ。


で、その梅野の穴を埋めるべく宍戸大樹が立ち上がった。このところは梅野にメインイベントの座を譲っていた宍戸が久々にメインに登場し、K-1 MAXで活躍していたヴァージル・カラコダを迎え撃つ。おお、これは中々良いカードじゃないの。またセミファイナルでは、前回の興行で宍戸を相手に苦い思いをした、元プロボクシング日本ミドル級王者の鈴木悟が再び来襲し、前SB日本スーパーウェルター級王者の金井健治と激突する。おっと、これも何気に良いカードだなぁ。

今日はその他にも、SBの女子TOP3(渡辺久江、V一、RENA)が揃い踏みを果たしたり、YOUNG CAESARS TOURMENT55の準決勝〜決勝が行われるなど、なかなか内容は盛り沢山。来るべきGirls S-CUP 2010に向けて、女子TOP3は良い勝ち方が出来るだろうか?トーナメントについては、優勝候補は「K-1甲子園からの刺客」日下部竜也だと思うが、外様の優勝を彼を止める選手がSBから出てくるのか?こちらも楽しみだな。

う〜ん、今日のSBはバラエティに富んでいるね。去年は何かと地味な興行が続いた印象のあるSBだけど、今年はローカル局での放送を開始したせいか、興行に力が入っている印象があるなぁ。


そんなこんなでチケットを購入したのだが、B席3000円が売り切れていたのでA席5000円を購入。あら、売れ行きが好調じゃないですか。まぁ、5000円くらいなら普通に払えるしね。観客の入りは満員。まぁ、満員じゃなきゃ「何で、3000円の席を売ってないのっ!?」って事になるしねぇ。

第一試合 アッサリと決着がついちゃった

スーパーフェザー級 3分3R + 無制限延長R
○菅原悠次(172cm/59.9kg/シーザー力道場)
●ベン・ヘンリー(173cm/59.7kg/英国/AACC)
[1R 1分52秒 TKO]
※3ダウン

本日の第一試合、菅原悠次もベン・ヘンリーも観た目にはヒョロヒョロの身体で「まともな試合になるのかなぁ?」なんて思っていたのだが…。ちなみに菅原の戦績は5戦4勝1敗1KO、ヘンリーの戦績は6戦1勝2敗3分。ふむ、体格は似ていても戦績には差があるね。




試合開始、まずは様子を見る両者。菅原はワンツー〜右ローで攻め、ヘンリーもローを返したが…。菅原が圧力を掛けて前にでると、右のパンチがヒット。大きく怯むヘンリーに菅原はラッシュを掛けて、パンチの連打であっという間に3ダウンを奪ってしまった。




ふ〜む。ヘンリーは打撃ルールというよりは、プロの場そのものに慣れてない感じだったなぁ。


第二試合 シーザー力道場の新星が決勝戦へと進出

YOUNG CAESARS TOURMENT55 準決勝戦 3分3R + 無制限延長R
○伏見和之(162cm/55.0kg/シーザー力道場/SB日本スーパーバンタム級 三位)
●元貴(170cm/55.0kg/立志会館/SB日本フェザー級 四位)
[判定 3−0]

ここからは、YOUNG CAESARS TOURMENT55の準決勝戦が二試合。一回戦では蹴りで勝利を飾った伏見和之だが、元々はプロボクシングのA級ライセンスを持つ選手。元貴は打撃のバランスが良い選手という印象があるが、二人が闘えば伏見が勝つのではないかと予想。




1R、伏見が攻める。ワンツー〜左ボディのコンビネーションで元貴に入れると、ワンツー〜左フックがヒット。元気もパンチを返すが、プロボクシングのライセンスを持つ伏見はかわしてフック、左ボディ、フックと返していく。パンチの冴える伏見に対して、攻めが後手に回る元貴は右ローを放ち、ワンツーと続けるも伏見はしっかりガード。元気の左ボディに対して、伏見も左ボディを返す。ここまでは伏見がリード。



2R、伏見の攻撃を前に下がりがちな元貴に対して、伏見は前に出て右ロー、左ボディ、左右のミドル、テンカオと様々な打撃で圧倒。元貴も右ローを返したが、これはローブローに。「あぅ!」という声と共に伏見は悶絶して試合は中断。

再開後、元貴はパンチの連打で一気に攻め込むも、伏見はワンツー〜ハイで応戦。お互いに積極的にパンチを交換する展開の中、伏見のボディへの膝蹴りが効いてきたのか、元貴の動きが鈍っていく。




3R、両者のパンチが交差する中、伏見が裏拳を放てば、二発目がクリーンヒット。怯む元貴に、伏見は一気にラッシュを仕掛ける。ワンツーの連打、そして膝蹴りを武器にガンガン前へ出る伏見。右アッパーと左ボディも駆使して攻め込む伏見を前に、元貴は下がり続ける一方だったが、残り30秒の時点でようやくパンチを返し始める。だが、一度火のついた伏見の勢いは最後まで止まらなかった。



ここで試合は終了。判定の結果、3−0で伏見が勝利。


うむ、伏見は前回の試合とは一転、今回は得意のパンチで勝利を飾ったね。決勝戦での闘いぶりにも注目しよう。



第三試合 優勝候補が圧倒的な力で決勝戦へ進出

YOUNG CAESARS TOURMENT55 準決勝戦 3分3R + 無制限延長R
日下部竜也(163cm/54.85kg/大石道場/K-1甲子園2008 第三位)
●尹戸雅教(163cm/54.85kg/立志會館/SB日本スーパーバンタム級 四位)
[3R 2分41秒 TKO]
※尹戸は3Rにダウン2、二度目のダウンでTKO

YOUNG CAESARS TOURMENT55の準決勝戦、第二試合には優勝候補の日下部竜也が登場。トーナメントの一回戦で強烈な左ボディと、突き刺すようなソバットでリングの中を大暴れした日下部、その闘いぶりは多くのファンの脳裏に焼きついた事だろう。対する尹戸雅教の一回戦は、終始クリンチからの膝蹴りが繰り返されるという不本意な内容に。対戦相手の減量失敗による減点で準決勝に進出したが、ここは一回戦の分を取り戻すような活躍を期待したいところだ。




1R、日下部がサークリングで尹戸の出方を見る。時折、お互いのローが交差するも、静かな展開が続く。先に動いたのは日下部、ワンツーを二連発してから右ローを放つ。対する尹戸は左ストレートと左ボディを返すと、日下部の蹴り足を掴んで動きを封じる。お互いに攻撃を繰り出して行く中、日下部は要所で左テンカオを尹戸の腹に入れて体力を削って行く。



2R、尹戸がワンツーを放ち、日下部は強烈な左ボディを返す。日下部の蹴り足を掴んでドラゴンスクリューを狙う尹戸、日下部は右アッパーとダッシュ右ストレートで応戦し、左前蹴りで突き放して左ミドルを放ち、左ロー、右ストレート、右ミドルと次々に打撃を繰り出して攻め込む。劣勢の尹戸は投げによる逆転を狙うも不発。段々と一方的になってきたなぁ。



3R、日下部は左ハイ、左前蹴り、左ミドル、右ローと蹴り技を駆使して前へ出る。自分の間合いで闘えない尹戸は前蹴りで日下部を突き放し、近距離戦はクリンチで逃れる。だが日下部の勢いは止まらない。強烈な左ボディを叩き込めば、喰らった尹戸がダウンを喫した。う〜ん、恐るべき高校生だ。

勝機を得た日下部がラッシュを仕掛ける。ワンツーに加えて廻し蹴りや飛び膝蹴りといった派手な技で一方的に攻める日下部は、再び左ボディを効かせてラッシュを継続。防戦一方でロクな反撃ができない尹戸の様子を見たレフリーが試合を止めた。




う〜ん、やっぱり日下部は強いなぁ。特に左ボディはとても高校生が放つ一撃には見えない、というかねぇ。そして決勝戦の相手はプロボクシングのA級ライセンスの持ち主か。うん、これはいい打ち合いを期待できそうだなぁ。


第四試合 SBの軽量級戦線の明日を占う一戦は大激闘に

59kg契約 3分3R + 無制限延長R
○島田洸也(172cm/58.9kg/シーザー力道場/SB日本スーパーフェザー級 四位)
●崎村暁東(164cm/58.85kg/グラップリングシュートボクサーズ(GSB)/SB日本フェザー級 二位)
[延長判定 3−0]
※本戦判定 1−0

名古屋のジムであるGSB所属の崎村暁東は過去二回、スーパーバンタム級の王座に挑戦しているが、未だに王座は戴冠していない。だが、過去には修斗からの刺客である井口摂やマモルを撃破している実力者である。対する島田洸也はここ最近、鈴木博昭や石川剛司、歌川暁文といったSBフェザー級のトップどころに敗北してスランプに陥っている印象。そんな両者の対戦は、SBの軽量級戦線の明日を占う一戦と言えるだろう。




1R、序盤から積極的に打撃を交換する両者、崎村はワンツー〜左ロー〜膝蹴り、島田はワンツー〜右ロー。お互いに休むことなく打撃を交換、島田は右ロー、膝蹴り、ワンツーといった打撃を駆使し、崎村はパンチや左ローを返す。そして接近すれば投げ狙う両者。1R終了、手数の多い島田が右ローで僅かにリードか。



2R、島田は変わらずワンツー〜右ローで攻め込み、崎村も変わらずパンチと左ローを返す。中盤に差し掛かると、両者は近距離で殴り合うように。お互いにロクにガードも固めずに打撃を交換すれば、派手な展開に観客からは歓声が沸く。

この打ち合いでも若干優勢だったのは島田、崎村のパンチをかわして左ボディを叩き込む。対する崎村は島田を持ち上げてからの叩き付け技で応戦、尚も打ち合う両者に観客からの歓声が止まらない。




3R、尚も続く二人の打ち合いだったが、優位に立ったのは崎村の方。島田の左ボディに対して、崎村はワンツーの連打からの左ミドルの猛攻。島田がワンツー〜膝蹴りを繰り出せば、崎村は足を止めてワンツー〜左ローを返していく。共に一歩も譲らない両者の殴り合いが展開されたが、序盤の攻め疲れも手伝って島田には疲労の色が見える。

これを見た崎村はソバットで追い討ちを掛けるも、島田は終盤にカウンターの右ストレートを叩き込んで挽回。最後はやっぱりボッコボコの殴り合い、試合終了時には両者に大きな拍手が起きた。




判定の結果は、島田がジャッジ一人の支持を受けるも、残り二人は差をつけずにドローで延長戦へと突入。観客は好勝負のボーナストラックに歓声を上げる。



んで、延長Rになっても、やっぱり続く殴り合い。両者のパンチが交差する中でも島田は右ロー、崎村は左ローを放っていく。崎村は投げで島田を崩すも、中盤に島田の右の拳がヒット。崎村はソバットで応戦したが、島田は崎村をコーナーへと追い詰めてパンチを連打する。

観客の歓声の中、劣勢となった崎村もパンチを返し、ワンツー〜左ミドルで押し返すと、終盤にはワンツーをヒットさせて挽回。だが島田もワンツーを返し、最後はやっぱり至近距離でのボッコボコの殴り合い。試合が終われば、観客は拍手と歓声で両者の健闘を讃えた。




延長判定の結果、中盤のラッシュが功を奏して島田が3−0で勝利した。



う〜む、なかなかの大激闘だったけど、最後は島田が若さで押し切った感じになったなぁ。島田はこれを契機に再浮上できるといいね。ただ、崎村は本来はスーパーバンタム級の選手だから、本来はもう少しキッチリと勝たないとダメな気もするけどねぇ。


第五試合 蘇ったDEEP女子部のエースだが、Girls S-CUP 2010に向けては課題が残った

女子48kg契約 2分3R + 延長2分2R
渡辺久江(160cm/47.9kg/池袋BLUE DOG GYM/元DEEP女子ライト級 王者)
●山田純琴(155cm/47.8kg/y-park/NJKF BONITA BOXEOアトム級 一位 & J-GIRLSアトム級 一位)
[判定 3−0]

ここからはSBの女子TOP3が揃い踏みし、Girls S-CUP 2010に向けた闘いに挑む。


そのトップバッターとして、前回の4月の興行で格闘技界への復帰を果たした渡辺久江が登場。「復帰後は全部KO!」だと豪語する渡辺は、その公約通り復帰第一戦をKOで勝利。そんな渡辺の今日の対戦相手は、2002年11月にSMACK GIRLの舞台で対戦した山田純琴。この時は渡辺がKO勝利を飾っているが、今回は山田の本業である立ち技の舞台。山田としては、リベンジを果たしたいところだ。




1R、山田はサークリングをしながらヒット&アウェイで渡辺を攻め込む。出入りを繰り返しながら右ローや右ボディを放つ山田に対して、渡辺はじっくりと様子見。時折、渡辺は左ミドルを放つも、山田は渡辺の蹴りにパンチ合わせていく。このラウンドは互角。



2R、1Rに様子を見た渡辺が前に出るようになる。山田もまたフットワークを駆使しながらワンツーを連打。散発的に打ち合いは発生していたが、渡辺は中盤に首投げを決めてシュートポイントを1p獲得。だが山田はこれにめげずワンツーを連打。右のパンチが次々にヒットしたが、渡辺もカウンターのパンチで反撃。



3R、渡辺は左ミドルと左ローで牽制するも、勝利へ執念を燃やす山田はワンツーを繰り出しつつ前に出る。中盤、山田のワンツーがヒットすると、慌てた渡辺が打ち合いに挑む。だが、これ以降も山田の右フックが何回かヒットしたが、渡辺はカウンターのパンチで反撃。う〜ん、渡辺の攻撃が後手に回っているのが気になる…。



ここで試合は終了。判定の結果、2Rにシュートポイントを奪っていたのが功を奏して渡辺が勝利するも、渡辺は「連続KOとか、調子いいこと言ってすみませんでした…。また1から、連続KO目指して頑張ります…」と自信なさげに挨拶して、そそくさと退場していった。



う〜ん、渡辺にとっては課題の多い一戦だったなぁ。山田の体格を観るに付け、本来は45kg〜46kgが適正体重の選手だと思うのだが、今回はリーチの差を活かすことができなかった印象。正直、2Rのシュートポイントを考慮しても、本来ならドローくらいの内容だと思う。つまり、打撃だけなら渡辺は負けていたと思うんだよね。本来は階級が下の選手にこの内容というのは、やっぱりヤバい印象が強くなっちゃうよなぁ。

まぁ、華のある選手だとは思うからGirls S-CUP 2010では頑張って欲しいのだが…正直、今のままでだと、自身の優勝には赤信号が灯ったように感じたなぁ。



第六試合 VALKYRIEのエースだが、Girls S-CUP 2010に向けては課題が残った

女子52kg契約 2分3R + 延長2分2R
○V一(153cm/51.6kg/Max柔術アカデミー & Yogaスタジオ/VALKYRIEフェザー級 王者)
●谷村郁江(161cm/51.7kg/リアルディール/J-GIRLSバンタム級 八位)
[判定 3−0]

SB女子TOP3揃い踏みの二番手として出場するのはV一、VALKIRIEの舞台で辻結花に勝利した事で注目を浴びている選手である。打撃技をシーザージムで練習しているVであるが、真に恐ろしいのはGirls S-CUP 2009で自身を準優勝へと導いた投げ技だ。今年は本気で優勝を狙っているというV、VALKYRIE王座との二冠王達成の為にも、今日の試合は負けられない。対戦相手はK-1 MAX -63kg級にも出場した裕樹を排出した博多発の格闘技リアルディールからの刺客、谷村郁江。東京へは初進出だという。




1R、お互いに積極的に打撃を交換する中、Vは早速の腰投げでシュートポイントを1p獲得すると、尚も組み付いての投げを狙う。終盤、Vは右ストレートをヒットさせると、再び腰投げでシュートポイントをもう1p獲得。ふ〜む、とりあえずこの時点でポイント的には勝負アリだな。あとは、この試合でVが何を見せるかだな。



2R、1Rの失点を挽回すべく谷村が動く。身長差を活かし、Vのリーチの外から積極的にワンツーを放つ。Vは腰投げで反撃するも、ポイントには至らず。谷村は尚も右ストレートで攻め込み、Vの組み付きには膝蹴りで対応。Vがスタンドでバックを奪えば、投げられまいとしゃがんで防御。これは反則なので谷村にイエローカードが提示されるも、Vは1Rと比べると苦戦しているなぁ。谷村が自分のペースを取り戻した、とも言えるかな?



3R、2Rの闘いぶりで自信をつけた谷村がガンガン前に出て攻め込む。Vに接近してパンチを放てば、アッパーやストレートがヒット。打撃では劣勢のVは組み付きに行くが、谷村は膝蹴りで反撃し、ブレイクの後で距離が開けば左ストレートを叩き込む。Vは終盤、積極的に組み付いては腰投げを狙っていくも、谷村は投げられまいと抵抗し続けた。う〜ん、相手にこういう闘い方をされるとVは苦しいねぇ。



試合終了。判定の結果、1Rに奪ったシュートポイントが大きく物を言い、3−0でVが勝利。



う〜む、今日のVは勝ったとは言え、試合内容は決して良い出来とは言い難いなぁ。相手に投げ技を粘られてしまうと、体格的には恵まれていないVは遠距離から相手に一方的に攻撃されてしまう、というかねぇ。

今年のGirls S-CUP 2009には世界から色々な選手が出場すると聞いてるし、そうなると体格的にも大きい選手と闘う事になるだろうしねぇ。まぁ、投げに免疫のない選手であれば圧勝できるんだろうけど、首相撲や膝蹴りが出来る相手には勝てないんじゃないかなぁ?

僕としては、Vの優勝には赤信号が灯ったように感じたなぁ。



第七試合 SB女子部のエースだが、Girls S-CUP 2010に向けては課題が残った

女子50kg契約 2分3R + 延長2分2R
○RENA(160cm/50.0kg/及川道場/Girls S-CUP 2009 王者)
●☆MIKA☆(155cm/49.8kg/ワイルドシーサー群馬)
[判定 3−0]

SB女子TOP3揃い踏み、そのトリを飾るのは「SB女子部のエース」RENA。前回の興行では怪我のために渡辺久江との対戦が流れてしまったRENAだが、このところは精力的に試合をこなしていた事を考えると、いい休みになったかもしれない。Girls S-CUP 2009では吉田正子、石岡沙織、そしてV一という錚々たる面々を破って王者となったRENAの今日の対戦相手は、ムエタイの選手である☆MIKA☆。これでドゥオンダーオ・ミカって読むらしい。ちなみにドゥオンダーオはタイ語で星という意味らしい。へ〜っ。




1R、お互いに様子を見る静かな立ち上がりだったが、RENAは右ローと右ミドルでMIKAを牽制すると、いきなり組み付いての首投げを決めてシュートポイントを1p獲得。尚も右ストレートや前蹴りで攻めるRENAに対して、MIKAはムエタイ選手らしく組み付いての膝蹴りで応戦。だがRENAは尚も右ミドルや右ローでMIKAを牽制し、ワンツー〜右ミドルで攻め込んでいく。



2R、1Rで流れを掴んだRENAが、前に出て重い右ローを放つ。更には積極的に組み付いて投げを狙うRENAに対して、MIKAは膝蹴りで応戦していく。徐々にMIKAの方から組み付く機会が増えていく中、RENAはMIKAを外掛けで押し倒して抵抗するも、MIKAのしつこい組み付きを前に、思うように攻め込む事が出来ない。



3R、2Rの流れで自信を得たMIKAが、積極的に前に出てRENAに組み付いて膝蹴りを狙う。RENAは距離が離れればワンツー〜右ミドルで反撃するも、MIKAはお構いなしにRENAに接近。こうして完全に攻めあぐねてしまったRENAだが、終盤に腰投げを決めてシュートポイントを1p獲得。だが、最後まで前に出てくるMIKAを前に手を焼いてしまった。



試合終了。判定の結果、シュートポイントの差で3−0でRENAが勝利。勝ったRENAは観客席に自身のTシャツを投げ込むファンサービスで、観客から喝采を浴びていた。



ぬぬぅ。渡辺やVに続いて、今日はRENAまでも内容がイマイチだなぁ。SBの選手としては、打撃と投げのバランスの良いトータルファイターという印象のRENAだけど…今日はMIKAの組み付きを捌けず、自分のペースで試合が出来なかったね。

元々、打撃に破壊力があるタイプの選手ではないRENAだけに、どんな相手にでも自分のペースを貫いて闘うことが重要と言えるだろう。それだけに、相手のペースに呑まれてしまった今日の内容だと、RENAの優勝には赤信号が灯ったと思うなぁ。



第八試合 すっかり影の薄くなった「SBの絞首刑人」

スーパーフェザー級 3分3R + 無制限延長R
○石川剛司(170cm/60.0kg/シーザージム/SB日本スーパーフェザー級 三位)
●テイラー "NINJA" マコーリストン(162cm/60.0kg/米国/ハウフ・グレイシー柔術アカデミー)
[判定 3−0]

ここからは、SB総合格闘技の試合が二試合。


スーパーフェザー級の主役争いで、鈴木博昭に出遅れた感のある石川剛司。シーザージム所属の恩恵でコンスタントに試合を消化している石川だが、猛威を奮ったスタンディング・スリーパーも今は昔、このところは勝っても負けても印象に残らない試合が続いているだけに、この辺りで存在感を再アピールしたいところだろう。

今日の対戦相手はハウフ・グレイシー柔術アカデミーの所属で、ダレン・ウエノヤマを師匠に持つ柔術戦士、テイラー "NINJA" マコーリストン。ムエタイの練習も重ねており、戦績は少ないながらもMMA及びムエタイの試合で無敗という逸材なのだそうな。だが、戦績が浅い事を考慮すれば、石川としてはキッチリと勝ちたいところだろう。




1R、テイラーは序盤から左ローとワンツーで石川を攻め込むと、鋭いタックルを敢行。このタックルが中々強烈で、投げられまいと粘る石川は思わずロープを掴んでしまって、レフェリーから注意を受ける。再開後、テイラーはサークリングで石川の様子を見つつ打撃を放ち、ジワジワと石川をロープ際へと追い込む。う〜む、不気味だ。

だが石川は前に出るテイラーを相手にロープ際でクルリと入れ替ってワンツーを放つ妙技を見せると、ここからは積極的にフックを放って攻め込む。組み付いて来るテイラーは外掛けで倒す石川、尚も投げを狙ってタックルを仕掛けるテイラーだったが、ラウンド終了直前に石川の左ボディがクリーンヒット。




2R、序盤から組み付いてくるテイラーを外掛けで倒す石川は、逆に右ミドルを連発してダメージを与えていく。頼りにしていたタックルが通用しないテイラーは、ワンツー〜右ミドルや飛び膝蹴りといった打撃技で攻めるも、本命の投げは石川が相撲からの投げや外掛けで応戦。徐々に石川のプレッシャーが強くなってきた。

中盤以降、益々両者の組み付きは増えたが、石川は左右のボディと組み付いての膝蹴りを連打してテイラーの体力を削っていく。こりゃ、勝負ありだな。あとは石川がKOできるかどうか、だが…。




3R、石川はプレッシャーを掛けて前に出る。右ミドルを放つ石川に対して、テイラーは組み付いての投げを狙う。バックに回ってバックドロップを狙う場面もあったが、この時点でテイラーは完全に勢いを失っていた。う〜ん、自分の土俵である投げ技が通用しないんじゃ、そりゃ気力も萎えるわな。といっても、総合格闘技の選手がSBルールで投げ技を狙い過ぎるあまり、勝手に体力を消耗していくのは「よくあるシーン」なんだけどね。

そんなテイラーに対して石川はコーナーでパンチを入れると、一気にラッシュを仕掛ける。苦しくなったテイラーはタックルで逃れるも、石川は左ボディからのパンチ連打で更に攻め込む。テイラーは再びタックルに逃げる中、最後は組み付いての投げの打ち合いとなった。う〜ん、倒しきれなかったかぁ。




判定の結果、2−0で石川が勝利。なんで2−0なんだろ?試合内容自体は石川の勝ちで問題ないでしょ。



とはいえ石川、試合も勝利こそしたものの、終わってみれば今日もまた「印象に残らない試合」だったような。う〜ん、戦績自体は三連勝なわけだし、そろそろ格上の選手との一戦が観てみたいのだが…。


第九試合 SB vs 修斗は壮絶な打ち合いに!

スーパーライト級 3分3R + 無制限延長R
○鈴木博昭(167cm/65.0kg/ストライキングジムAres/SB日本スーパーフェザー級 一位)
●不死身夜天慶(173cm/65.0kg/シューティングジム横浜/修斗ライト級 環太平洋九位)
[延長判定 2−1]
※本戦判定 0−1

このところ、SB軽量級の主役の座に君臨しているのが鈴木博昭。石川剛司を秒殺KOし、歌川暁文には二連勝、そして及川知浩とは1勝1敗と、SB軽量級のトップどころを総ナメにしていることもさることながら、年齢が25歳と唯一の20代である事も大きな武器だと言えよう。SB軽量級に新時代をもたらす選手に成長した鈴木、今日は修斗からの刺客との対戦のために、いつもよりも5kg重い体重で試合に挑む。

鋭いパンチを武器に修斗で活躍してきた不死身夜天慶は、修斗はビッグマッチ以外は観戦しない僕でも知っている名前だが、実は2007年2月に田村彰敏に敗れて以来、修斗の舞台で五連敗を喫している。そういう意味では、今日の試合は彼にとっては「修斗で再び勝利するための『最終調整』」的な意味合いが強いのだろう。同門のマモルはSBで活躍中したが、不死身夜は「SB軽量級の主役」を相手にどのような試合を展開するのか?




1R、鈴木は挨拶代わりの左ミドルで不死身夜を転倒させる。観客から驚きの声が沸いた後、両者のローが淡々と交差する展開となる。不死身夜は右ローで鈴木は左ローだ。やがて不死身夜は右ローに加えてワンツーを武器に前に出ると、鈴木は左ローに加えて右ハイや左ストレートと、打撃を上下に散らして真っ向から応戦。この打ち合いは互角、早くも観客からは歓声が沸く。



2R、不死身夜はプレッシャーを掛けつつ左ボディ、左フック、右アッパー、右ストレートとパンチで攻め立てる。対する鈴木もパンチで応戦し、前蹴りで不死身夜を突き放して左ローを放つ。だが体格に優る不死身夜の圧力は非常に強く、再び前に出て右フックと左ボディを放ってくる。普段は下がることがない鈴木が、ジリジリと下がっているのが印象的だ。

だが鈴木は終盤にワンツーを入れると、前蹴りで突き放して右ハイをヒットさせる猛攻。これが効いた不死身夜は後ろに下がったものの、前に出る鈴木に右フック〜左ボディを叩き込んで応戦、ここからはラウンド終了まで両者は激しい打ち合いを展開。勢いよく殴り合う両者に、観客からは歓声が上がる。




3R、2Rに流れを掴みかけた鈴木がプレッシャーを掛けて前に出る。左ミドルを放ち、不死身夜のガードの上に左ハイを連発する鈴木。対する不死身夜はこれまでと変わらず左右フックとボディで応戦。鈴木は右のボディストレートを入れるも、不死身夜は右ストレート、ワンツーを返して応戦、終盤は両者による壮絶な殴り合いを展開。両者のフックが入るたびに、観客からは大歓声が沸いた。う〜ん、壮絶な試合だ。




ここで試合は終了。判定の結果はジャッジ一人が不死身夜を支持するも、残り二人はドロー裁定。試合は延長戦へと突入だ。壮絶な試合のボーナストラックに、観客からは歓声が沸く。



延長R、再び両者のローする中で、鈴木は左ミドルと右ハイ、不死身夜は右フックと左ボディで応戦。壮絶な打ち合いは尚も続いたが、中盤に鈴木が左ローを連打すると、不死身夜の動きが鈍ってしまう。左ボディでカバーする不死身夜に対して、鈴木は尚も左ローを連打して嫌がらせ、意識が下半身に移った不死身夜に右ストレートを叩き込む。ついに両者の均衡は破れたが、不死身夜は終盤、失点を挽回すべく前に出てパンチを連打。だが鈴木も、不死身夜が攻め終わったところにパンチを返して行った。再び繰り広げられた壮絶な打撃戦に、観客からは大きな歓声が沸いた。



判定の結果、左ローの連打が決め手になり、2−1で鈴木が勝利。観客からは両者に大きな拍手が。



う〜ん、いつもよりも5kg重い試合だったせいか、不死身夜の打撃が思ったよりも重かったせいか、今日の鈴木は結構、慎重だったなぁ。それでも打ち合いを展開した末にキッチリと勝利を飾るんだから大したモンだ。「一発の打撃が重い」という、SB軽量級にはいないタイプとの闘いを制したしたのは、本人にとっても良い経験になっただろう。

そして不死身夜もまた、正面から堂々と闘ったね。パンチの切れ味はかなりのモノで、鈴木は何度も危ない場面があったしなぁ。今日は敗れてしまったけど、ここでの経験が修斗総合格闘技での闘いに活かされると良いなぁ、と素直に思ったね。

いやいや、ホントに良い試合でした。



第十試合 若い二人による決勝戦は、想像以上の大激闘に!

YOUNG CAESARS TOURMENT55 決勝戦 3分3R + 無制限延長R
日下部竜也(164cm/54.85kg/大石道場/K-1甲子園2008 第三位)
●伏見和之(162cm/55.0kg/シーザー力道場/SB日本スーパーバンタム級 三位)
[3R 1分35秒 KO]
※左ボディブロー

現在はファントム進也が持つ、SB日本スーパーバンタム級王座。その次期挑戦者を決定すべく行なわれているYOUNG CAESARS TOURMENT55も、いよいよ決勝戦。勝ち上がったのは、プロボクシングのA級ライセンスを持つ伏見和之と、K-1甲子園2008で第三位の実績を残した日下部竜也の二人だ。驚くべきはこの二人の若さ、日下部は17歳、伏見は19歳だという。YOUNG CAESARSの名前通りの若さを持つ二人の対戦は、SBの未来を占う一戦とも言えるだろう。




1R、日下部は準決勝と同じく、まずはサークリングで様子を伺う。両者ともにローで牽制する中、先に動いたのは日下部、ワンツー〜右ロー、アッパー等で攻め立てる。伏見はボディストレートで応戦したが、日下部は得意の左ボディを叩き込む。大きな軌道を描く、強烈な日下部の左ボディ。「ドスッ!」という、鈍くて大きな音が響けば、観客が驚きの声を上げる。

しかし伏見もワンツーや左ミドルで反撃、終盤には左フックをヒットさせる。日下部は各種パンチや左ローで応戦、ここから両者は休むことのない打ち合いを展開。ラウンドが終了すれば、観客からは大きな拍手と歓声が沸いた。




2R、日下部は右ロー〜左ボディで攻め込めば、伏見もパンチで応じ、試合は再び打ち合いに発展。観客から歓声が沸く中、パンチを得意とする伏見のワンツーがヒット。日下部は右ローで応戦するも、伏見が再びワンツー〜右ローを返していく。若い二人の意地の張り合い、凄いなぁ。

日下部は裏拳や左ハイで奇襲を掛けると、伏見は左フックで応戦。気がつけば、再び真正面からの打ち合いを展開する両者。観客の歓声の中、伏見は右フック〜左ボディで攻め込むも、日下部は終盤に得意のバックスピンキックを浴びせると、モロに喰らった伏見が下がる。これを見た日下部は一気にラッシュを仕掛けてダウンを奪った。観客の歓声の中、立ち上がった伏見に日下部がラッシュを仕掛けるも、伏見は打撃を打ち返して応戦し、連続ダウンを逃れる。う〜ん、伏見は死んでないね。素晴らしい。




3R、2Rの流れで勢いに乗った日下部が勝負に出る。リングを廻りながら左ハイ〜パンチで攻め、失点を挽回すべく追ってくる伏見を前蹴りで突き放すと、一気に前に出て大振りのフックと左ボディを打ち込む。怯む伏見に日下部がワンツーの連打を叩き込み、その締めは得意の左ボディ。観客の歓声の中で再び伏見がダウンを喫し、立ち上がった後も動きが鈍い。この様子を見たレフェリーが試合を止めた。



準決勝戦、そして決勝戦を見事な闘いぶりで勝利を飾った日下部には大きな歓声が沸き、そして決勝戦で敗れた伏見にも大きな拍手が起きた。



いや〜、凄い試合だったなぁ。二人の打撃はかなりの重さで、とても55kg級の試合には見えなかったし、それ以上に二人とも十代というのが信じられないような内容だった。こりゃ、日本のキック界の将来は明るいねぇ!マジで。…っていうか、日下部がまたSBに出てくれるか、ちょっと心配だったりするんだけどさ(苦笑)。それにしても、本当に素晴らしい試合だった!


第十一試合 「パンチ vs ロー」という構図は、立ち技格闘技の永遠のテーマです

スーパーウェルター級 3分3R + 無制限延長R
鈴木悟(183cm/69.85kg/バンゲリングベイ・スピリット/UNIT-K/元プロボクシング日本ミドル級 王者)
●金井健治(172cm/69.8kg/ライトニングジム/SB日本スーパーウェルター級 一位)
[判定 3−0]

この試合は、今年行なわれるであろうS-CUP 2010に向けての重要な一戦である。


前回4月の興行に初出場、元プロボクシング王者でありながら宍戸大樹にバックドロップを決めた鈴木悟。セコンドに大野崇を従えた鈴木はSBルールへの高い適応力を見せ付けたが、最後は宍戸にフロント・スリーパーを極められてしまい敗北。だが試合自体は終始、鈴木ペースだった上に最後の絞めもブレイク後にファイティング・ポーズをシッカリと取っていただけに、鈴木としては「俺は負けていない!」という意識が強いだろう。今日は右ローを得意とする相手なだけに苦戦も予想されるが、S-CUP 2010への出場を考えると「負けられない一戦」だと言えるだろう。


そんな鈴木と対戦するのは…。苦労に苦労を重ねた末に、どうにかS-CUP 2008への出場を果たした経験を持つ金井健治。「SBの魂」緒形健一や「東洋のハルク」梅野孝明と比べると実力が一枚落ちる印象のある金井ではあるが、実際には梅野を相手にあと一歩のところまで追い詰めるだけの実力の持ち主なのだ。前回はフィジカルの高いイ・スンファンを相手に交通事故のような敗北を喫した金井だが、今日はS-CUPへの連続出場を掛けて元プロボクシング日本王者に挑む。




1R、まずは金井が得意の右ローで様子を伺い、元プロボクシング王者の鈴木はワンツーで応戦。序盤は静かな展開だったが…。ここで鈴木が不意に放った右ストレートがクリーンヒット、モロに喰らった金井がダウンを喫した。

観客が騒然とする中、なんとか立ち上がった金井は右ローで反撃するも、尚も鈴木のパンチが伸びる。前に出てプレッシャーを掛けつつ、腕の長いリーチを活かして遠距離からワンツーを放つ鈴木に対し、金井は右ローを放って応戦すれば、鈴木は早くも左脚を気にし始める。こうしてジワジワと自分のペースを取り戻した金井は、左のフックで鈴木を攻めていく。




2R、鈴木はリーチの長い左ジャブを連打して金井を遠ざけるも、金井は右ローと左インローで鈴木の左脚を集中攻撃。更に腰投げを放った金井は、右ローのダメージで意識が下に向いている鈴木に左フックを叩き込む。

尚も右ローと左フックを武器に攻め込む金井、左ミドルもヒットした。鈴木はワンツー〜左ボディのコンビネーションで挽回を図ると、積極的にバックドロップを狙ったり、アッパーやフックを駆使したり、左ジャブ〜右ストレートを入れたりで反撃するも、終盤に前に出た金井が再び左フックを鈴木の顔面に叩き込んだ。ぬう、ポイントでは負けているけど、試合の流れ自体は完全に金井のペースだな。




3R、やはり鈴木は左ジャブを伸ばして距離を置こうとするも、そこへ金井の左フックがヒット。怯む鈴木のバックに回る金井、鈴木は何とか堪える。鈴木に注意が与えられた後、リーチの長い鈴木の左ボディが金井を襲い、更には右ローを連打。1Rのアドバンテージを活かすべく、鈴木も必死なのだ。

だが金井は中盤に膝蹴りと左フックを入れると、これみよがしに右ローを連発。左脚のダメージが大きく動けない鈴木、金井は再び左フックを叩き込むと、怯む鈴木に右ローを放つ。試合の流れを完全に掴んだ金井は、ポイントを挽回すべく投げを狙うが、必死になった鈴木は思わずしゃがんで防御。これは反則、レフェリーは鈴木にイエローカードを提示。

残り時間はあと僅か。金井の猛チャージに対して、鈴木はワンツーを連打して逃げ切りを図る。だが、もう後がない金井は元プロボクシング王者を相手に真正面から殴り合いを挑んでいく。観客の歓声の中、打ち勝っていたのは金井の方。右ローと左フックが何回も鈴木の顔面にヒットすれば、観客も歓声で金井の攻撃を支持した。




観客の歓声の中で試合は終了。僕としては1Rは鈴木の10-8、2Rは金井の10-9、3Rも金井の10-9でドローになるといいなぁ、なんて思いながら判定結果を待ったが、その結果はジャッジ三名が全員29-28、3−0で鈴木の勝利に。そうかぁ、みんな2Rはドローと見たかぁ、確かにその見方もアリだよなぁ…。



う〜ん、試合のペース自体は完全に金井のモノだったし、延長になれば金井が確実に勝てる試合展開だっただけに、最初のダウン&試合中にポイントに繋がる技が無いのが痛いなぁ。金井が決して弱い選手ではない事は、SBを長年観戦してきた人なら誰もが知っているだけに、この一戦は勝って欲しかったんだけどなぁ…。無念。


第十二試合 宍戸の魅力と強さがギッシリと凝縮された試合

スーパーウェルター級 3分5R + 無制限延長R
宍戸大樹(174cm/70.0kg/シーザージム/SB東洋太平洋ウェルター級 王者)
ヴァージル・カラコダ(178cm/70.0kg/南アフリカ/FBIジム)
[3R 2分15秒 KO]
※左フック

メインイベントの座に、「SBの日本人エース」宍戸大樹が久々の登場だ。


このところは「東洋のハルク」梅野孝明にメインの座を譲っていた宍戸大樹だが、梅野が欠場した今回、久々にメインに出場。昨年はシュートボクセ・アカデミーのルイス・アゼレードに完勝するなどで強さを見せ付けた宍戸だが、「ムエタイの壊し屋」ボーウィー・ソーウドンソンに敗れて以来、長年務めていたメインイベントの座を梅野に譲っていたのだ。今回は久々に有名選手との一戦に挑む宍戸、ここはキッチリと勝利して存在感を再アピールしたいところだ。


そんな宍戸の対戦相手とは、K-1 MAXでお馴染みヴァージル・カラコダ。かつてK-1で活躍したマイク・ベルナルドを育てた名伯楽として知られるスティーブ・カラコダを父に持つヴァージルはS-CUP 2006への出場経験も持っていたが、この時は強豪ダニエル・ドーソンを前に、ほぼ何もできずに敗北。K-1 MAXでも敗北がかさみ、出場機会が減ってしまっているカラコダだが、ここは宍戸にキッチリと勝ってK-1に再アピールしたいところ。しかし、調整不足を感じさせるお腹の肉がちょっと気になるねぇ。


ちなみにこの試合の煽り映像では、泉谷しげるの名曲「春夏秋冬」が流れていた。成程、色々なことがあった両者だけど…今日ですべてが終わり、今日ですべてが変わり、今日ですべてが報われて、今日ですべてが始まるワケか。いいねぇ。




1R、宍戸はサークリングでカラコダの様子を伺いつつ、右ローと左ミドルで蹴って行く。対するカラコダは宍戸を追って行くが、その追い方にプレッシャーが感じられない。そんなカラコダに、宍戸は左ミドルと右ローを次々に重ねて行く。ぬぅ、カラコダは露骨に調整不足な上、大した作戦もないようだなぁ。

ここまで攻撃らしいものがないカラコダだが、宍戸に何とか接近すると右ストレートと左ボディを放つ。特に左ボディは流石の鋭さで観客からは驚きの声が上げたが、宍戸は裏拳、ソバット、右ハイといった大技を連発。宍戸の試合ぶりからは余裕を感じる。そんな宍戸にカラコダはワンツーで反撃するも、宍戸はワンツー〜右ローのコンビネーションで応戦。気が付けばカラコダは顔面から流血した上、右目が大きく腫れている。宍戸のパンチを喰らってのものだろう。




2R、このラウンドも宍戸は右ローと左ミドルが攻撃の中心で、合間に裏拳、ソバット、前蹴りを放ってカラコダを撹乱。自分の距離を作った上で左ストレートを叩き込み、カラコダからダウンを奪う。うん!あらゆる打撃で相手のペースを乱した上で、自分の打撃で相手を仕留める!これぞ宍戸の攻めの真骨頂だ!

立ち上がるカラコダ、ダメージはなさそうだ。再開後、カラコダの様子を見た宍戸はラッシュを仕掛けない。逆に失点を挽回すべく前に出てパンチを振るうカラコダを前蹴りで突き放し、ジワジワと間合いを詰めて左ミドル、テンカオ、前蹴り、ソバットと多彩な技で困惑させる。カラコダは距離を詰めてのパンチで反撃するも、宍戸は組み付けば膝蹴りを放ち、離れれば左ミドルでカラコダに付け入る隙を与えない。う〜ん、この時点で勝負アリだな。




3R、もはや試合は一方的。まったく自分の試合が出来ないカラコダは、宍戸が攻めるのを待ちながらカウンターを狙う作戦に出る。そんなカラコダを、宍戸はこれまでと変わらず左ミドルと右ロー、そしてサイドキックで蹴り続ける。更には左ボディや右ハイも放つ宍戸、打撃を上中下へと分ける攻めは宍戸の真骨頂だ。



すっかり自分を見失ったカラコダはワンツーで反撃するも、宍戸は左ミドルとサイドキックで自分の距離を作り直して左ストレートを叩き込む。この一撃を喰らったカラコダはヨロヨロと後ろへと下がってしまう。リング外へと落ちそうになるカラコダ、この様子を見たレフェリーが試合を止めた。



うん!久々に宍戸の「宍戸らしい試合」を観た!正直、カラコダはかなりの調整不足で、今日の宍戸にとってはイージーな相手だったとは思うが…。それ以上に、宍戸が「自分らしい試合」でKO勝利を飾ったのが大きいね。豊富なスタミナをベースに、あらゆる種類の打撃を駆使して相手を混乱させた上で、地味な技で相手の体力や機動力をジワジワと奪いつつ、タイミングの良い打撃で相手をKOするという。今日はそんな宍戸の闘い方がすべて出た試合だと思う。

試合後のマイクアピールではS-CUP 2010の制覇と、二敗しているアンディ・サワーへのリベンジを目標に掲げた宍戸。今日の試合ぶりをサワーを相手に出すことができれば、その目標もアッサリと実現できるだろう。…多分(苦笑)。



雑感

うん!面白かった!


興行全体を通して「実力拮抗の接戦」も多かったしね。熱い試合が続いた良い興行だったと思う。島田洸也vs崎村暁東、鈴木博昭vs不死身夜天慶、鈴木悟vs金井健治と好勝負が続いたけれど…。出色なのは、何といってもYOUNG CAESARS TOURMENT55の決勝戦日下部竜也vs伏見和之だよね。とても十代同士の試合には見えない程に洗練された試合で驚いたよ、ホント。いやいや、二人とも末恐ろしいね。


あとは…。メインイベントにおける宍戸大樹の闘いっぷりだね。まあカラコダはイマイチだったけど、宍戸が自分のスタイルを貫いて勝利したのって地味に久しぶりなんじゃないかなぁ。マイクアピール時の満面の笑みは、本人にとっても会心の勝利だった事を如実に現わしていた、というか。うん、宍戸は完全復活だね!


以上、長文失礼。