4/30 ボクシング 西岡利晃&長谷川穂積防衛戦 日本武道館興行 観戦記

Mask_Takakura2010-04-30

勝負に「絶対」の二文字はない

先に感想を書いてしまって申し訳ないが、「う〜む、ついにこの日が来てしまったか…」という印象。僕としては、長谷川穂積はこれからももっと防衛記録を伸ばして、具志堅用高が持つ連続防衛記録を遥かに超える防衛記録を樹立するものだと思っていたし、僕と同じように考えていた人も多いと思うんだけどね。ま、相手のフェルナンド・モンティエルも強かったよ、実際。


で、ついでに先に文句も書いてしまうのだが…。とりあえず中継を放送した日テレに言いたいのは「放送順を逆にするな!」という事だ。いつもドン尻に放送される長谷川の試合が先に放送されたら、いつも放送を観ている人間からしてみたら「あ!ひょっとして長谷川に何かあったのかっ!?」と思っちゃうだろ!ネタバレもいい加減にしろ!


ま、煽り映像とかはカッコ良かったけどね…。


※5/1 追記
…というのは、僕の勝手な早合点。世界戦当日になって日テレは、メインの長谷川穂積の試合をリアルタイムで放送するために急遽、試合の放送順を入れ替えたのだそうな。う〜ん、テレビ放送を見ながら僕は勝手に「ネタバレだ!」と思い込んでいたワケか。恥ずかしいというよりは、何か物凄くもったいない観戦の仕方をしていたのね。反省。

『一撃』が明暗を分ける世界…

WBC世界バンタム級タイトルマッチ 3分12R
フェルナンド・モンティエル(163cm/53.5kg/メキシコ/WBO世界バンタム級 王者)
長谷川穂積(168cm/53.4kg/真正ボクシングジム/WBC世界バンタム級 王者)
[4R2分59秒 TKO]
※レフェリーストップ(パンチの連打)/モンティエルが統一王者に

今日の長谷川の対戦相手であるフェルナンド・モンティエルは、日本では認可されていない団体であるWBOの三階級王者。今回のベルト奪取に賭ける意気込みは並々ならぬものがあり、19日から来日して調整を行っていたようだ。う〜む、正直ボクシングに関しては無知なのでどんな選手かは知らないけれど、44戦40勝2敗2分30KOという数字には、かなりの迫力がある。

だが、こういった強豪をあっさりとKOすることで、最強を証明してきたのが長谷川穂積という男。今回もまた、素人には到底理解できない強さを発揮してKOをするのだろう、と期待していたのだが…。


1R、サウスポーの構えから前に出て、積極的に右のジャブを伸ばしてプレッシャーを掛ける長谷川。序盤からジャブの間に左ボディ、左ストレート、左フックを織り交ぜて攻めていく。中盤に右フックをクリーンヒットさせた長谷川は、終盤にも左ボディ〜右フック〜左フックのコンビネーションを見せる。対するモンティエロ、長谷川のパンチを潜りながらかわしてカウンターを狙うも、全体的には長谷川のプレッシャーに押され気味。このラウンドは長谷川が獲ったね。

2R、やはり右のジャブを伸ばしてプレッシャーを掛ける長谷川、モンティエルはオーソドックスの構えから左のジャブを合わせる。このラウンドはモンティエルも出て左右のフック、左右のアッパー、右ボディを繰り出すも大振り過ぎて当たらない。対する長谷川は中盤にワンツーを入れると、右のボディストレートを伸ばしていく。モンティエルはカウンターを狙うと、ラウンド終了直前には大きな左右のフックを繰り出して観客を驚かせる。基本的にモンティエルのパンチはヒットしていないので、このラウンドも長谷川が獲ったとは思うが、長谷川にプレッシャーを掛けられても自分のボクシングを貫き通しているのが不気味だ。

3R、序盤にモンティエルが素早い左のジャブから右フックを振るのに対して、長谷川は左ボディストレート〜左ストレートのコンビネーションで攻め込むと、モンティエルが前に出たところに右フックのカウンターを当てる。ここから長谷川は左ストレートを積極的に伸ばして攻め込んでいき、終盤にはワンツーをヒットさせる。このラウンドも長谷川が獲っただろう。だが、長谷川のダッキングに合わせて、モンティエルがカウンターのアッパーを多用しているのが気になる。モンティエルは一発が強そうだからなぁ…。


4R、長谷川がこれまでと変わらず右のジャブを伸ばしてプレッシャーを掛けると、序盤に左のボディを入れる。モンティエルが左のジャブを合わせる中、中盤にはモンティエルが潜ったところに左フックを入れる。モンティエルのパンチをスウェーやダッキングでかわす長谷川、終盤にも潜るモンティエルに左フックを合わせるなど、モンティエルの行動パターンが読めてきた様子。このラウンドも長谷川が獲ったね。

…と思っていたら、残り試合時間が10秒を切ったところで、突如モンティエルが前に出る。不意を突かれた長谷川は左フックを返そうとするも、まず後の先でモンティエルの左フックがヒット。長谷川はそのまま左フックを振るうも、ダメージのためか軌道は完全に逸れてしまう。そしてガラ空きになった長谷川の顔面に、モンティエルの強烈な左フックの追い撃ちがハードヒット!この一撃が効いてしまった長谷川はヨロヨロとロープ際まで下がり、これを見たモンティエルは機を逃がさずにラッシュ仕掛けた。頭を上げれば左ストレート、頭を下げれば左アッパーがヒット。長谷川の意識は完全に飛んでいる。ラウンドの残り時間は数秒という事もあり、僕は「何とかゴングに救わて欲しい」と願ったものの…残念ながらレフリーは、試合を止める事を選択してしまった。


まぁ、あれだけのパンチの連打を喰らったのであればKO負けの宣告も仕方がないよなぁ。グロッキーになった長谷川の右腕がロープに絡んでダウンできなったのも不運といえば不運だが、例えダウンできたとしても、あの後で立ち上がれたのかどうか。そして試合ができたかどうか…。試合自体は長谷川ペースで進んでいたと思うが、モンティエルはペースには呑まれてはいなかった。そして最後のモンティエルが攻めシーンでは、長谷川の反応は完全に遅れていた。長谷川、完敗である。

いや〜っ、あの展開を一発でひっくり返すんだからモンティエルは強いなぁ。40勝30KOの試合経験、そして三階級王者の肩書きは伊達じゃなかった!というかねぇ。いかに長谷川ファンの僕であれど、今日ばっかりはグゥの音も出ませんよ、ええ。

『一撃』が明暗を分ける世界!

WBC世界スーパー・バンタム級タイトルマッチ 3分12R
西岡利晃(169cm/55.3kg/帝拳ジム/WBC世界スーパー・バンタム級 王者)
●バルウェグ・バンゴヤン(165.8cm/55.3kg/フィリピン/WBC世界スーパー・バンタム級 十位)
[5R 1分14秒 TKO]
※レフェリーストップ(パンチの連打)/西岡が防衛に成功

苦労人の西岡利晃は、かつて絶対王者と言われたウィラポン・ナコンルアンプロモーションが持つWBC世界バンタム級王座に四度に渡って挑戦。だが西岡は敗北や引き分けなどを繰り返し、ついにウィラポンから王座を奪取することはできなかった(ちなみに、そのウィラポンから王座を奪取したのが長谷川穂積)。周囲は引退を勧告したらしいが、それでも世界王座に拘る西岡は階級を上げて試合を続け、ついにWBC世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦でナパーポン・キャッティサクチョーチャイを相手に判定勝利を修めて王者となった。

この後、正規王者のイスラエル・バスケス網膜剥離により一線を退いたことで、晴れて同級の正規王者となった西岡は、昨年5月23日に海外での指名試合を行ない、対戦相手のジョニー・ゴンザレスを左ストレートでKO。当時、「西岡が海外で防衛戦」と聞いた僕は勝手に「ああ、西岡も王座陥落か…」と思っていたので、逆に「KOで西岡が勝利した」と聞いた時は結構ビックリしたのを思い出すなぁ。そして西岡はこの試合で年間最高試合を獲得したのだから、ボクシング界の驚きはそれ以上だったんだろうね。

そんな西岡の対戦相手はフィリピンの新鋭、バルウェグ・バンゴヤン。これまで15戦して無敗らしい。う〜む、これは例えランキングが十位だとしても、西岡にとっては気の抜けない相手ではあるな。


1R、サウスポーの西岡は右のジャブを伸ばしてプレッシャーを掛ける。対するバンゴヤンはオーソドックスの構えからリングを反時計回りに周りながらガードを固めつつ時折、左のジャブを伸ばして応戦。中盤、西岡は得意の左ストレートをヒットさせて攻勢。バンゴヤンも右のボディストレートや二連続の右フックを返すも当たりは浅い。このラウンドは西岡が獲ったかな。

2R、1Rとは一転して頭を下げて前に出るバンゴヤンに対し、西岡も引くことなく右のジャブを伸ばしてプレッシャーを掛ける。両者のボディブローやジャブが交差する中で迎えた終盤、西岡が右のジャブを伸ばしたところにバンゴヤンの右ストレートがカウンターでヒット。苦しくなった西岡はクリンチで難を逃れるも、自信をつけたバンゴヤンが積極的に攻めていく。ラウンド終了直前、西岡は右のストレートとボディで反撃し、回復をアピール。このラウンドはバンゴヤンに獲られたが、ダメージが抜けたのは幸いだね。

3R、2Rに流れを掴んだバンゴヤンは、これまで以上にプレッシャーを強めて左右のボディフック振るいながら前に出てくる。対する西岡は左ジャブ、右ストレート、左ボディでこれを迎え撃つ。左右のボディフックや右のジャブで攻め、時折右ストレートを伸ばすバンゴヤンに対して、西岡も左ボディストレートをバシバシと当てて応戦すると、左ジャブには左ストレートを合わせる。このラウンドは…。難しいけど、クリーンヒットの多かった西岡かな。

4R、リングの中心でプレッシャーを掛けるバンゴヤンに対して、西岡はリングを反時計回りに周って様子見。序盤、バンゴヤンの左ジャブに合わせて左ストレートを返した西岡は、尚も積極的に左右のパンチを伸ばすバンゴヤンに対して右のパンチを伸ばして応戦。中盤、バンゴヤンのボディブローがローブローとなり減点1。それでも前に出てくるバンゴヤンに対して、西岡は終盤に左ストレートをヒットさせたが、若いバンゴヤンは尚も右ストレートや右ボディで果敢に攻めてくる。このラウンドは西岡だね。

というわけで序盤戦が終了。今のところの僕の裁定は39-36で西岡。そしてジャッジ三名の裁定は40-35、39-36、38-37でいずれも西岡を支持。う〜ん、随分と採点にバラつきがあるのが気になるなぁ。いくらなんでも、40-35っていうのはない展開だと思うんだけどねぇ。


5R、尚も積極的に前に出るバンコランに対して、西岡は右のジャブを伸ばして距離を離そうとする。そしてボディのフックを連打するあまりガードが甘くなったバンコランの顔面に、西岡の得意技である左ストレートがモロにヒット!この一撃でバンコランは大の字になってダウン。派手に倒れたバンコランを目の当たりにした観客が大歓声を上げる中、バンコランはどうにか立ち上がるもダメージは大きい様子。

この一撃で勝負あり。西岡はこの機を逃さずにラッシュを仕掛けると、バンコランは体勢を低くしてクリンチをするのが精一杯の状態。反撃もままならないバンコランが二度目のクリンチに逃れたところでレフリーが試合を止めた。

勝った西岡は、謎の発熱で会場に来られなくなった愛娘に「姫ちゃん!勝ったよ!」と声を掛け、観客の爆笑を誘っていた。朴訥とした人柄が伝わってくる、いいコメントだなぁ。


いや〜っ、それにしてもなかなか凄いものを見たなぁ。直接のフィニッシュではないけれど、事実上にフィニッシュブローとなった左ストレートは強烈そのものだった。あれだけ綺麗に入ったのに、よくもまあバンコランは立ち上がれたモンだよ、ホント。僕はあんまり、西岡のことは認識がなかったんだけど…。この試合で強烈に頭に焼きつきました。僕も西岡の左ストレートには気をつけてないと(?)。

雑感

衝撃の敗戦を喫した長谷川穂積。試合終了時点ではアナウンサーが勝手に階級アップを匂わせる発言をしていたが、長谷川は「バンタム級に残り、モンティエルとの再戦を目指していく」と発言。この先、仮に長谷川が階級をアップするにしても、この一戦のリベンジは避けて通れないものになるだろうし、今は何より本人が一番望むところなのだろう。何はともあれ、僕はこの五年間王座を防衛し続けた事に対して「お疲れ様でした」と言いたいし、必ず再び世界王座を奪取するものだと信じている。

長谷川選手!頑張ってください!

そして西岡利晃の次の対戦相手については…正直、よくわからない(苦笑)。そこでネットでちょっと調べたんだけど…現在、同級一位でイギリス出身のランドル・マンローなる選手との指名試合になるようだ。しかも、マンローの母国であるイギリスでの防衛戦になる上、同級一位についているだけあって強豪のようだ。勝てば西岡の名前は更に上がるんだろうけど、さて…。


以上、お目汚し失礼。