12/17 長谷川穂積防衛戦 神戸WMH興行(地上波) 二試合のみ観戦記・改

Mask_Takakura2009-12-17

普通の人がこんな事を言ったら妄言です

「相手の呼吸の見てると、吐く息と吸う息の息遣いが聞こえてくる。攻撃の場合は息を吐く場合が多いので、息を吸った瞬間にパンチを放つと相手に効く」

「自分の頭がここにあれば、相手はこのパンチを打つ。そういう『罠』となる場所が自分の中に幾つかあって、相手をそこへ引き込めれば相手は七割の確立でパンチを打ってくる。そこにカウンターを合わせる」

「試合中に相手はいない。常に自分との勝負」


世間が亀田興毅内藤大助で盛り上がる裏で、日本人ボクサーとしては前人未到の領域に達しつつある長谷川穂積は、今回が通産十度目の防衛戦。日本人防衛記録では単独二位になれる記念すべき防衛戦なのに、テレビ中継枠が一時間しかないのは、最近の彼が短時間KOを重ねている事実と無関係ではないのだろう。いや〜、なんて言うか…強すぎだよねぇ。冒頭に書いた長谷川語録も、九度の防衛の末に言われたら説得力も凄味も増す、というかねぇ…。

頑張れ、粟生!王者と呼ばれるその日まで!

58.9kg契約 3分10R
粟生隆寛(168.4cm/58.8kg/帝拳ジム/WBC世界フェザー級 前王者&現三位)
●フェイデル・ビロリア(171.0cm/58.9kg/コロンビア)
[判定 3−0]

放送順は逆になったが、今回は長谷川の弟分にして、前回の防衛戦で王座を失った粟生隆寛の試合もテレビ放送された。といっても、9Rと10Rだけだけどさ。う〜ん、いくら放送枠の穴埋めだからといって、これを視聴者に見せて何をしろというの?


というワケで試合は9Rを迎えていたが、サウスポーの構えの粟生は積極的に前に出てプレッシャーを掛ける。対するビロリアもサウスポーの構えから粟生の動きに合わせてパンチを放つ。右ジャブ、左フック、そして右ボディを多用する両者、共にスタミナが凄いね。

迎えた10R、最終Rということもあって両者はより激しさを増して打ち合ったが、中盤に粟生の右フックが連続でヒット。喰らったビロリアの動きが緩慢になり、露骨に下がる場面が増える。粟生はこれまでよりもプレッシャーを強めてパンチを打ち続け、ビロリアをダウン寸前まで追い込むも、ここで試合終了のゴング。

判定の結果は3−0で粟生の勝利。


高校六冠王の肩書きも今は昔、粟生も25歳になった。かつては「東の粟生、西の亀田」と呼ばれていたが、なんだかんだで亀田が二階級制覇を成し遂げたのに対して、現在の粟生は無冠。まずは「世界王者」という肩書きだけでも、亀田と並んで欲しいところだね。一度は掴んだ王座だ、粟生ならきっとできるさ。

もう、強いんだか何だかわかりません!

WBC世界バンタム級 タイトルマッチ 3分12R
長谷川穂積(167.5cm/53.4kg/真正ジム/WBC世界バンタム級 王者)
●アルバロ・ペレス(170.0cm/53.0kg/ニカラグア/WBC世界バンタム級 九位)
[4R 2分38秒 TKO]
※左ストレート

今日の長谷川穂積の対戦相手となるアルバロ・ペレスは、アマチュアでは125戦の経験があり、プロ戦績は21戦18勝2敗1分3無効試合12KO。戦績自体は立派なものだが、ネットで下馬評を調べたところ「スピードに差があるので長谷川が圧倒的に有利」とのこと。「むしろの長谷川の最大の敵は『減量』だから、試合が長引くとヤバいかも」「ペレスは頭から突っ込むクセがあるので、長谷川の古傷が開かないかが心配」なんて意見も。古傷の件は確かに心配かも。


試合開始、構えはお互いにサウスポー。ペレスは序盤から右ジャブと、身体ごと突っ込む左のストレートを武器に積極的に攻めてくるも、長谷川は1R終盤にカウンターの左ストレートを入れる。2R中盤にペレスの左ストレートを喰らった長谷川は、すかさず左ストレートを多用して挽回を図る。左右のボディでペレスの体力を削った長谷川は、尚も前に出て積極的に攻めてくるペレスに対して3R終盤に左アッパー、カウンターの左フックを入れる。う〜ん、手数自体は互角だけど、クリーンヒットの数は長谷川の方が多いね。

迎えた4R、長谷川は果敢に攻めるペレスに対して中盤に右ジャブを何度もクリーンヒットさせると、終盤には左ストレートが入る。段々試合が有利に展開して行く中で長谷川は、ラウンド終了直前に左ストレートを叩き込み、ダメージのあるペレスに素早い左ストレートを連打してダウンを奪う。モロに喰らったペレスはうつ伏せに倒れたまま、立ち上がることができない。

観客の歓声の中、完璧な試合運びで王座を防衛に成功した長谷川は「最近はKOラウンドが早くてクレームが多いので、今日は4Rだからクレームも少ないだろうなぁ…と考えていた」と余裕のコメント。長谷川は何気に喋りも巧いね、引退したら各界に引っ張りダコだろうなぁ。


と、こう書けば、僕が試合の流れをしっかりと追いながらテレビ中継を見ていたように見えるが…。この観戦記は「録画した映像を後から見て書いている」から追えているだけで、実際のオンエアの時は、恥ずかしながら試合の流れもフィニッシュブローも、サッパリ理解ができなかった。「えっ!? 何で相手は倒れているのっ!? 長谷川って今、何かしたのっ!?」という感じだったなぁ…。

まあ、長谷川の左ストレートが要所でヒットしていたのはわかったけど、何せパンチが当たっても対戦相手のペレスがよく動いていたから「これは長期戦になるな」と思っていた。そうしたら、いきなりアレだからねぇ…。フィニッシュブローの映像を見て、そのパンチの素早さに唖然としちゃったよ(苦笑)。


ホント、長谷川の試合は素人殺しだなぁ。試合の流れとは関係なく「神の一撃」で相手を仕留める長谷川。冒頭に書いた語録が、ますます凄味を増すというかねぇ…。たいした日本人だ。

雑感

いやねぇ…雑感もなにも、試合内容もロクに理解できていない僕が感想なんて書けませんよ。もう本当に強すぎて、こっちの感覚が麻痺してくる、というかねぇ。ひょっとしたら、長谷川の強さって「はじめの一歩」の鷹村守の領域に入っているのかもしれんなぁ。

それはそれとして…。長谷川といえば、この防衛戦を機にフェザー級への転向が噂されているけど、階級を上げることでこの強さがどういう結果を残すことになるかは見てみたい気もするし、かと言って日本人の世界王座連続KO防衛記録(具志堅用高の6回)、日本人最長防衛記録(具志堅用高の13回)の壁を破って欲しい気持ちもあるし、難しいところだなぁ。

しかしまあ、強ければ強いほどに試合時間が短くなり、世間からの注目を集めにくくなるというのも皮肉な話だなぁ。辰吉丈一郎が二度挑戦して勝てなかった伝説の王者、ウィラポン・ナコンルアンプロモーションに二度勝利して話題になったのも今は昔の話。「今度こそ、長谷川最大の危機!」といわれるような、鳴り物入りの選手はいないものかなぁ…?


以上、お目汚し失礼。



「喰ったら寝るな、喰ったら動け!腹が減ったら寝よ、起きたら寝よ!」(大山倍達)

TBSで放送された「情熱大陸」によると、長谷川は今回の試合の計量では、計量前の二週間で12kg減量して、計量後の一日で6kg戻したのだそうだ。

いやはや、計量前の減量も激しいが、計量後の増量も激しすぎ。計量後の急激な増量については、UFCなんかでもよく聞く話ではあるけど…。バンタム級の身体で一日で6kgも増量するのって凄まじいよなぁ。

丈夫な胃袋を持つのも王者の条件、というワケか…。


以上、12/23に追加。