12/13 THE OUTSIDER ディファ有明興行 観戦記ver1.1

Mask_Takakura2009-12-13

「不良」の強さに憧れることはあっても、悪さに憧れることはなかったなぁ

本日はディファ有明THE OUTSIDERを観戦。


RINGS代表の前田日明が、不良達の更生の場として格闘技のリングを提供。「不良達ヨ、覚醒セヨ」というキャッチコピーの下、日本中の不良が集結して試合を行なう『不良の、不良による、不良のための大舞台』THE OUTSIDER。特異なジャンルの格闘技として、メディアからも注目を集めるこの大会は、同時にチケットが入手困難なことでも有名で、僕自身も前から「一回は、観戦してみたいなぁ」とは思っていたけどなかなか観戦できずにいた。そんな僕が今回、ようやくTHE OUTSIDERを観戦することができた。


では、僕はどうやってチケットを手に入れたのか?ズバリ言ってしまえば、出場選手からのチケットが巡りに巡って、僕のところに来たのだ。『不良の、不良による、不良のための大舞台』のチケットが何故、僕のところへ届いたのか?ズバリ言ってしまえば、それは僕がワルだからだ。「♪悪そな奴はぁ、だいたい友達ぃ」だからだ。友達に「コーラだ」と称して炭酸入りの醤油を飲ませるくらい、僕がワルだからだ。どうだ悪いだろ。

そもそも人生で、悪い奴が友達になったことがありません…それはウソかな?

僕のチケットは、不良たちの祭典であるTHE OUTSIDERに「プロレス好きのブロガー」として参戦する、いわばTHE OUTSIDERにとってアウトサイダーな存在の「リアル神代ユウ」こと佐野哲也選手(「スイミングアイ」http://ameblo.jp/swimmingeye/)から周って来たものである。どうだ健全だろ。


というわけで今回は、THE OUTSIDERにとってアウトサイダーな存在の佐野選手の、ちょっとだけインサイダーな話を書いていこうと思う。

学生の頃に「不良」じゃないのに悪い奴って、タチが悪かった印象があるなぁ

今回、佐野さんの応援団として駆けつけた中で、僕が知っている人は…ケットシー徐庶さん(id:caitseth)、くまさん(http://blog.livedoor.jp/neokumapage/)、アイアンマンさん(http://sadironman.seesaa.net/)、クワイさん(http://tsudureya.blog51.fc2.com/)、お馴染みグリフォンさん(id:gryphon)、どらちゃさん(http://doratea.blog113.fc2.com/、以降「どらちゃん」)、エージさん(id:eg_2)といった面々。その他にも、色々な人々が佐野さんの応援に駆けつけていたようだ。皆さん、挨拶できずにスイマセン。


そして、この観戦記の作成にあたって、発言は佐野さんの許可を頂き、写真はどらちゃんが撮影したものを許可を貰って使用しました。お二人とも、本当にありがとうございます。

不良マンガの中では「ゴリラーマン」が断トツで好きです

さて、ここからはようやく、THE OUTSIDERの観戦記の本題となるのだがれ…正直、今日の興行は二十四試合もあるので、イチイチ書いていてはキリがない。そこで今回は、エージさんのブログの記述方法にリスペクトを払いつつ、これを見習って淡々と書いていくことにする。

THE OUTSIDERの徒然なる感想、リング外編

▼チケット代は4500円。THE OUTSIDERに集まる批判の中に「集めている選手はアマチュアレベルなのに、チケット代はプロレベル」というのがあるんだけど、確かに「ちょっと高いなぁ」と感じたなぁ。「マナーさえ守れば、(ある程度は)安全に不良の喧嘩が二十四試合も観れる」と考えれば、許せる気になるかなぁ…イヤ、やっぱり2000円〜3000円が妥当だと思うなぁ。



▼会場への入場時、僕が愛用しているデジカメ「xacti」が検査に引っかかって没収。THE OUTSIDERは「試合中は、動画はおろか写真撮影も禁止」らしい(試合後の記念撮影はOK)。とりあえず事前にその話は聞いていたので、没収自体はノー問題。集めている選手や関係者の事を考えると、そういう処置になるのは仕方がないのかな。しかしまあ、「xacti」は見た目が思いっきり「動画撮影用カメラ」だから、このテのチェックに必ず引っかかっちゃうんだよなぁ。でも会場内では、試合中でも携帯のカメラや、デジカメで撮影している人も多かった。いいのかっ!?

ラウンドガールのメイクが妙にケバかった。他団体よりも化粧も濃かった気がするし、衣装も変に安っぽくて、それが逆にエロかった。こういうのって、前田代表の好みなのかなぁ?しかしまあグリフォンさん、いくら何でもラウンドガールを指して「あの娘、五味隆典に似てる」はないと思うよ。藤井惠を指して叫んだ「なんでここに佐藤光留がいるの?」発言といい、あなたは普段から女性をどういう目で見てるんだっ!?

▼噂には聞いていたけど、とにかく客は入っていた。椅子席ギッシリで立ち見もギッシリ。正直、ディファ有明が超満員で埋まるのを久々に見たよ。しかも、試合開始後も客はドンドン増えていたように思う。賛否両論のTHE OUTSIDERだけど、商売としては成功しているんじゃないの?

▼試合開始前には前田代表がリングインして挨拶。久々に前田を生で観たけど…太ったなぁ。まあ年齢は50歳を過ぎたし、もう現役選手じゃないんだから、太る事自体は仕方がないように思うが、ちょっと歩きにくそうに見えたのが引っかかった。体重を膝で支えられない感じだったので、この先が心配だ。ちなみに挨拶自体は月並みな内容。U.W.F.時代のように、妙に難解な言葉を使うようなことはなかった。「選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり」の台詞も今は昔。

▼前田代表の入場曲「キャプチャード」は相変わらずカッコ良い。ボカァ正直、現役時代の前田にはそこまで思い入れはないんだけど、この曲だけはどうしてもダメなのだ。イントロやサックスの音色が、記憶の片隅にガッチリと刷り込まれちゃってるんだよなぁ。ああ、U-COSMOSも20年前の話か…。


CAMEL「CAPTURED」
■URL■http://www.youtube.com/watch?v=rpAuQBJsHZM



▼団体の方向性や客層から考えるにつけ、会場の雰囲気はもっと荒れているものと思ったが、実際は意外と大人しかった。確かに見た目が物騒な人も多かったけど、悪質な野次は少なかった。出てくる言葉は多少汚くても、みんな素直に選手を応援していたと思う。ぶっちゃけプロのリングには、もっと性質(たち)の悪い客層が集まるリングもあるからね。応援のアイテムにしても、芯を抜いていない紙テープが投げられるだけで、クラッカーや風船は使われていなかった。某団体でスタンガンを鳴り物代わりに使う人を見た事があるけど、そういうのもなかった。これに関しては応援する側にノウハウがないだけだと思うけどさ。

▼そういえば「CAPTAIN GROUND BOUNCER」とかいうサッパリわからん肩書きで、村上和成がリングに上がっていたっけ。「最近、観かけなくなったなぁ」と思っていたら、こんなところにいたとはねぇ。

THE OUTSIDERの徒然なる感想、リング内編

▼試合形式に関しては、通常の総合と比べると以下のようなところが違う。
 ・3分2R、2ダウン制。短いねぇ。
 ・膠着ブレイクが早い(かつてのRINGS、今のZSTみたいな感じ)
 ・バスター系の技は禁止
 ・後ろへのスープレックスは禁止
 ・グラウンドでの、バックからのパンチを禁止
 ・スタンドでのダウンの扱いが早い。クリーンヒットが一発でも出るとダウン。
 ・グラウンドの相手に対する蹴りは禁止。
基本的にはアマチュアのルール。



▼上記のように、出場選手の安全性を優先して作られているTHE OUTSIDERのルール。だが結局は、レフェリーによってルールの裁定がバラバラなのが気になった。特にスタンドダウンの判断基準がひどくって、選手の目が完全に飛んでいるのに試合を続行したりしてた。ひっでぇなぁ、何かあっても知らんぞ。

▼興行の性質上こうなるのは分かっていたけど、やっぱり全身に刺青を入れている選手が多かった。いわゆるタトゥーじゃなくて刺青、銭湯には絶対に入れないレベルの人ばっかり。これではTHE OUTSIDERの試合の模様を、地上波で扱うのは難しいだろうなぁ。

▼試合数が多いから、興行は六時間の長丁場だったけど…進行が異様にスムースなので、ストレスはまったく溜まらなかった。「選手入場→試合→試合終了後の記念撮影→勝った選手から一言→退場」、この一連の流れがベルトコンベアのように流れていった感じ。長いこと椅子に座っていたから身体は疲れたけど、内容で疲れたとかいうのはなかったなぁ。

▼「勝った選手全員に、マイクを持たせるのは良くない」という意見もあるみたいだけど、THE OUTSIDERの方向性を考えると、勝った選手に何か言わせた方が「場が大人しくなる」と思うので、僕は持たせた方がいいと思う。全員が等しくマイクを握れるのって、逆にアマチュアっぽくない?

▼興行の方向性が方向性なだけに、出てくる選手の肩書きはやたらと物騒なのが多い。「川口連合第十代総長」「北関東最強暴走族 魔璃闇薔薇元総長」「横濱地獄族第二十四代総長」「薩摩極悪暴走族 寿護割第十二代総長」「茅ヶ崎連合第十二代総長」「関東CRS連合 東京八王子万吉スペクター 二十一代元総長」以上、THE OUTSIDER冬の総長コレクションでした。プロ格闘家の中にも、表に出ないだけで実際には立派な「肩書き」の持ち主はいるけど、ここまで並ぶと壮観だ。

THE OUTSIDERの徒然なる感想、試合編

▼第二試合の「天下無双の18歳 ノンストップレオパルド」小澤彪人 vs 「過剰正当防衛執行部 闇金上がりのギャングスター」魔王超狼で珍事が。試合開始後、魔王は小澤は逃げるまわるばかりで、まるで手を出そうとしない。背を向けて逃げ回り、一度ラッシュを浴びてダウンを宣告された後も逃げ回りまくり。あんまり逃げ回るあまり、ついに前田代表がタオルを投入して試合は終了。スタミナを切れさせてからの2R勝負だったのかもしれないが…、あの内容じゃあ試合後の小澤のキレッぷりも無理はない。



▼ちなみに前に書いた試合のミソは、セコンドではなく前田代表がタオルを投入した事。正直僕は知らなかったんだけど、過去のRINGSではドクターがタオルを持っていて、選手が試合続行不能だと判断した場合はタオルを投入していたらしい。「あれは、正しくRINGSだっ!」とはエージさんの弁。う〜ん、そうなのかぁ。ボカァ映像では見ていたけど、生のRINGSには殆ど間に合わなかったクチだからなぁ…。

▼第三試合の「和製ヴァンダレイ 鋼の喧嘩術師」友田隆志のセコンドとして、藤原祭に出場したばかりの高瀬大樹の姿が。これを見たどらちゃん&エージさんが突撃リポート。聞いた話によると、先日の寒川直喜戦は、高瀬自身はドローだと思っているらしい。尚、友田は見事に1R、「アウトローのカリスマ撃破 頑固一徹 北海のローンウルフ」大谷匡弘から2回のダウンを奪ってTKO勝利を飾った。

▼第二十三試合(セミファイナル)には、そのボクシングセンスは前田代表も一目置きながらも、絶対に練習しないという「濱の勇二」高垣勇二が登場。その応援団はかなり物騒な雰囲気だったが、試合では「拳の危険度フェーズ6 東久留米の武将龍」樋口武大を相手に2R、スリーパーホールドで完敗。ふ〜む、この試合ではスタンドでもグラウンドでも完敗だったなぁ。ぶっちゃけ「前田代表が一目置いている」といっても、前田は過去に高田浩也を売り出そうとした時、当て馬としてたまたまエメリヤーエンコ・ヒョードルを初来日させた人だからねぇ…。

▼試合後、勝った樋口をしつこく挑発し続ける高垣応援団に対し、マイクを握った樋口はリング上から「うっせぇボケ!入って来いっ!」と逆挑発。これに対して高垣応援団も更に逆上…って事があった。これが今日一番、みんながイメージしているTHE OUTSIDERっぽい場面だった。

不良の祭典に所属名「スイミングアイ」で参戦するのは「特攻の拓」みたいなイメージかな?

さて、ここからはいつもの形式に戻って、佐野さんのTHE OUTSIDERでの闘いぶりを書いていこうと思う。


僕と佐野さんは今まで何度か顔を合わせた事はあったけど、今まで言葉を交わしたことはなかった。「正直、最近の僕は人見知りが激しくてイカンなぁ」と反省していた事もあって、今回は試合を観ながら少しだけ談笑させてもらったんだけど、僕の印象だと佐野さんは「好青年」の一言だね。物腰も柔らかくて、技の説明も丁寧だし。試合前にみんなが冷やかしても、怒らなかったし。まあ、そんな余裕がなかったダケかもしれないけど。


いよいよ自分の試合が近づき、佐野さんが控え室へと戻っていく。既にTHE OUTSIDERで何試合もやっているだけあって、試合直前でも佐野応援団は落ち着いたものではあったが…懸念がないかと言われれば、それはウソになる。今回、佐野さんは怪我をしていたのだ。本人曰く「練習中に、腹斜筋かどこかの筋を痛めた」との事。う〜ん、選手は必ずしも五体満足でリングに上がるワケではないのは知っているつもりだったが、いざ近しい人がそういう状況で試合をするとなると、心配になるモンだなぁ。

ちなみに、僕が試合前にこの話を聞いた時には…どこで尾ヒレがついたのか「佐野さんは肋骨を骨折していて、患部をちょっと触っただけで悶絶する」という事になっていた。そりゃ、こんな事を聞かされたら僕だって本気で心配するわいっ!

試合前にくまさんと柔道技を掛け合っていたどらちゃんも「私が柔道やってた頃は、肋骨くらい折れても試合に出てましたよっ!(`・ω・´)」とは豪語しつつも、「それで佐野さんの肋骨は大丈夫なんですか?(´・ω・`)」と心配そう。徐庶さんは「全然、大丈夫だよ」とサラリと応えるも、口元に人差し指を当てて「シーッ!」のポーズ。どうやらこの話は、会場内ではタブーのようだ。

第十試合 まずはよしっ!

THE OUTSIDER 65-70kgトーナメントマッチ 準決勝戦 3分2R(1ダウン制)
○佐野哲也(177cm/65kg〜70kg/第4回大会MVP リアル神代ユウ)
●野村剛史(172cm/65kg〜70kg/第8回大会MVP 天下一武闘会大目付)
[1R 2分57秒 TKO]
※グラウンドでのパンチ連打

「子供の頃から喧嘩実践ゼロ、『からまれたことしかありません』」(パンフレットより)という佐野さんの相手は、北九州を震え上がらせたストリートファイターの帝王。う〜ん、もしそんな相手が目の前にいたら、彼が右ストレートを出す寸前に土下座する自信があるな(キッパリ)。それにしても、さっきまで談笑していた青年がリングに上がっているんだもんなぁ、怪我してるのにさ。頭が下がるよ、ホント。


佐野さんの名前がコールされた時、リング上にはあらゆる色の紙テープが大量に投げ込まれる。そのあまりの量に観客がドッと沸く。実はこの紙テープは「佐野さんの応援にっ!」と、どらちゃんが友達・知り合い・初対面の人・その他大勢を総動員し、何週間も掛けて巻き続けたテープなのである。これをどらちゃんは、リングサイドにいる強面の人達に「第十試合になったら、これを投げて下さいっ!(>w<)」とお願いして周っていたのだ。その努力の結晶がこの光景。う〜ん、なかなか「いい話だーッ!」という感じではあるが、同時にTHE OUTSIDERっぽくないエピソードでもある(笑)。



(写真はこの試合ではなく、決勝戦での紙テープ)

いよいよ試合開始なんだけど、試合中は冗長になるので敬称略で。

まずは距離を置く両者、先に動いたのは野村。佐野に組み付き、テイクダウンを奪うとハーフマウントの体勢に。だが佐野はリバースを決めると、観客の歓声の中で得意のパンチを落としていく。更には半立ちになってパンチを落とすなどで、試合を有利に進めていた佐野だが、ここに落とし穴が。野村が一瞬の隙を突いて、ラバーガードから三角絞めを極めたのだ。

大ピンチの佐野だったが、徐庶さんとくまさんの声援は「大丈夫、大丈夫!」と冷静なもの。「う〜ん、傍目にはガッチリ極まっているように見えるんだけどなぁ」なんてハラハラしていたが、佐野は少々手こずりながらも冷静に三角を脱出、その後はパンチの連打連打。反撃できない野村の様子を見たレフェリーが試合を止めた。


勝った佐野さんは「三角絞めにはビックリしました。でも、こんなんで引退なんてないですよね?」と、リングを去っていく野村選手にエールを贈った。う〜ん、どこまでもいい青年だなぁ。とてもTHE OUTSIDERの選手だとは思えん(笑)。

それにしても途中の三角絞めは危なかった。後でくまさんに話を聞くと「アレは危なかったですねぇ」だって。そうか、さっきの「大丈夫、大丈夫!」はブラフだったのか。選手の関係者ともなると声援も虚々実々だ。

第十一試合 やばいかもっ!

THE OUTSIDER 65-70kgトーナメントマッチ 準決勝戦 3分2R(1ダウン制)
○吉永啓之輔(181cm/65kg〜70kg/北関東最強暴走族 魔璃闇薔薇元総長 格闘彫師)
●武井勇輝(170cm/65kg〜70kg/川口連合第十代総長)
[1R 37秒 KO]
※左膝蹴り

すっかり書き忘れていたが、佐野さんが出場した第十試合とこの試合は65-70kgトーナメントの準決勝戦。つまりこの試合で勝った方の選手が、決勝戦で佐野さんと対戦するワケだ。

「う〜ん、佐野さんはこの試合の結果がどうあれ、「総長」と呼ばれる人と闘うことになるのね。究極の選択だなぁ…」なんて事を考えていたら、試合を終えた佐野さんが現われた。応援団から「お疲れ様ですっ!」「いや〜っ、危なかったねぇ!」なんて声が飛ぶ中で試合は開始。「佐野さんとの相性で言えば、武井選手の方がいいから…ここは武井選手を応援しようっ!」なんてことを、佐野応援団が語りあっている矢先…。


吉永がワンツーで武井をロープ際へと追い込み、左の膝蹴り一発で武井を完全KO。


見事な一撃KOに沸き返る観客達とは裏腹に、佐野さんのテンションは下がりまくり。まったくのノーダメージでリングを降りる吉永選手を見て「マ、マジかよぉ…」と肩を落とす佐野さんだが、応援団は次々に「ま、頑張ってねっ♪」と軽薄に声を掛けていく。

応援団に励まされた佐野さんが「みんな、他人事だと思って…」とボヤきながら控え室へと戻っていく。リングで闘う選手はいつだって孤独だ…っていうか、みんなヒデェ(苦笑)。

第二十四試合 無題

THE OUTSIDER 65-70kgトーナメントマッチ 決勝戦 3分2R + 延長3分1R
○吉永啓之輔(181cm/65kg〜70kg/北関東最強暴走族 魔璃闇薔薇元総長 格闘彫師)
●佐野哲也(177cm/65kg〜70kg/第4回大会MVP リアル神代ユウ)
[2R 36秒 TKO]
※2ダウン

本日のメインイベントは、65-70kgトーナメントの決勝戦。佐野さんの前に立ち塞がるのは、元総長の吉永選手だ。う〜ん、もし僕の前に吉永選手がいたら、彼が右ストレートを出す寸前に失禁する自信があるな(キッパリ)。


さてさて、前の試合で僕は「佐野さんとの相性で言えば、武井選手の方がいい」と書いたが、これには理由がある。まあ単純に「リーチの差を活かせるから」というのもあるのだが…。

実は佐野さんは、吉永選手と第4回大会で対戦していて、この時は「判定になれば吉永選手の勝ち」という圧倒的に不利な展開の中で、佐野さんが試合時間残り1秒というところで大逆転勝ちを果たしているのだ。この時の試合を見た前田代表は「プロの試合も含めて、この5年ぐらい見た中で一番いい試合だった」と感激し、それが佐野さんがMVPを獲得した理由にもなっているのだが…。

逆に言えばこの二人は、それだけ実力が拮抗しているのだ。そうなってくると、準決勝で三角絞めを極められそうになり、体力を消耗した佐野さんよりも…。一撃で相手を葬った吉永選手の方が俄然有利。その上、今日の佐野さんには負傷という弱点がある。う〜ん、これは厳しい局面を迎えたな。


そんなこんなで行なわれた決勝戦。リング上には前田代表が現われて、優勝者への目録を説明。優勝賞金は100万円とベルトを贈呈…と、ここまでは良かったのだが。

その次が非常に重要。前田代表はRINGSの王者の証、ウィニング・ローレルを出して来たのだ。前田日明田村潔司クリス・ドールマン、ディック・フライ、ヴォルク・ハンダン・ヘンダーソン、アントニオ・ホドリコ・ノゲイラエメリヤーエンコ・ヒョードル…。歴代のRINGSの猛者たちが身につけた栄光の結晶、ウィニング・ローレル。「これを佐野さんが、次に被るという神展開!」(くまさん)、「もう100万円はいいから、それだけでも持って帰ってきてくれっ!」(高倉)。明らかに、佐野応援団は他の客層と違うと思う。


1R、佐野はボディと左ミドルで牽制するも、吉永はワンツーで前に出る。佐野は吉永の蹴り足を取ってグラウンドへ移行し、上からパンチを落とす。だが吉永は下から腕を掴んで極めに来る。吉永応援団の歓声の中、極めに拘る吉永に対して佐野は顔面にパンチを連打して脱出、ここでブレイクが掛かる。う〜ん、気が抜けない。

両者スタンドとなったが、「グラウンドなら俺の方が強い」と見たのか、吉永はワンツーを繰り出しつつ佐野に組み付いて引き込むと、再び下から関節技を仕掛けてくる。今度は三角絞め、危険と見た佐野はこれを脱出、再びブレイクが掛かる。再び吉永が引き込んだところで1Rは終了。う〜ん、吉永選手はグラウンドに自信を持っている感じだなぁ。流れが悪い…。


2R、スタンドで勝負したい佐野がワンツー〜テンカオで前に出る。一気に勝負を決めたいところだったが、吉永は逆にワンツーで対応すると、ボディへ膝蹴りを入れる。ああ、そこはダメだぁ…。

喰らった佐野がダウンを喫すれば、吉永応援団は大歓声でこれを支持。反対に佐野応援団は「立てーっ!」と叫びまくる。声援に応えて立ち上がる佐野、だがダメージは大きい様子。勝負に出た吉永は、ワンツーの連打に左のハイキックを当てると、またしてもボディへ膝蹴り一閃。モロに喰らった佐野は、アッサリと二回目のダウンを喫してしまった。

尚、致命傷となった二発の膝蹴りについては本人曰く、負傷箇所には入っておらず「素直にいいところに入ってしまった」とのこと。


打ち鳴らされる試合終了のゴング。勝った吉永選手はガッツポーズで喜びを表現、応援団は大歓声を上げて勝者の待つリングへ向かう。「リングに入ったら負けにしますよっ!」と動きを制止する場内アナウンス、なれど鳴り止まぬ大歓声。マイクを握った吉永選手は「優勝しちゃいましたっ!応援してくれた仲間、ファン(の皆さん)ありがとうございますっ!」と感謝の意を現わし、最後は「THE OUTSIDER、最高っ!」と叫んで、観客の大歓声を浴びた。



そんな吉永選手を自軍コーナーに座り込みながらジーッと見つめ続け、時折拍手で称える佐野さん。そうかぁ…、佐野さんは負けたんだなぁ…。



前田代表と一緒に写真を撮っている時も、準優勝の賞金20万円を手にした後も、なんとも言えない顔をする佐野さん。当たり前だけど、勝ちたかっただろうなぁ…。



それでも気丈に、大好きなジョシュ・バーネットと同じポーズで、闘ったばかり吉永選手との記念撮影に何度も応じる姿には「ああ、本当に心根のいい青年なんだなぁ」と感じさせるモノがあった。



佐野さん、本当にお疲れ様でした。

最近の不良マンガって、酒を飲むシーンとかってあるのかな?

会場を後にする際、リングに上がった角川春樹に声援を贈ったり、菊地成孔が来場していないか確認していたエージくんに「前田のカミさんを探しましょう!」と声を掛けられて、勇んで探してみるも…残念ながら見掛ける事はなかった。撤収ギリギリまで粘れば、必ず来るらしいよ。


その後、有明を出た我々は大井町へと移動し、ここで「佐野さんのお疲れ会」を開催。くまさん曰く「100万円を獲ったら、全額佐野さんの奢りだったんだけど、今回は残念ながら20万円なので」という事で、佐野さんの分は全員で負担。今日の主役だしね。

だが、いざ飲み会が始まると…佐野応援団は主役を出汁にやりたい放題だ。

くまさんは、この場にウィニング・ローレルがない事がよっぽど悔しかったのか、佐野さんの『リアル神代ユウ』に代わるミドルネームとして『天下を取り損ねた男』という名前を提案する。それじゃあ『リアル永田祐志』じゃないか、イヤ永田さんはリアルな存在だけど(笑)。

今度はグリフォンさんが突然、まったく意味のない「『スイ!ミング!アイ!』ポーズ」を披露して酒の場を大混乱へと陥れる。う〜ん、僕は見慣れている光景だけど、グリフォンさんのこの姿を見たら「こ、これが『カリスマブロガー』と呼ばれた男の真の姿なのかっ!?」と驚く人も多いだろうなぁ。

そんな中、今日の主役である佐野さんは最初こそ自身の試合を振り返って解説などをしていたが、段々と試合の疲れが出てきたのか、後半は隅の席でグッタリ。そんな佐野さんに「大丈夫かい?イザとなったら車で送るよ!」と気を使う徐庶さん。やさしいね。


ちなみに、この佐野さんの『グッタリ状態』が、疲れではなく新型インフルエンザが原因だと判明したのは翌日の事だった。シャレにならんな。徐庶さん、車で送らずによかったね(笑)。



ともあれ皆さん、お疲れ様でした。佐野さん、本当にありがとうございます、そしてお大事に。


以上、長文失礼。