9/5 PANCRASE 後楽園ホール興行 観戦記

Mask_Takakura2007-09-05

今日のPANCRASEは「明るい未来」が揃いました

本日は後楽園ホールPANCRASEを観戦。


今日の興行の目玉は川村亮前田吉朗北岡悟の揃い踏みだろう。最近は負けが込んでいるPANCRASE勢の中にあって、確実に白星を伸ばしている若手の三人。「PANCRASE『明るい未来』」そのものである彼らは、この興行でどんな結果を残すのだろう?特にメインイベントに出場する北岡は先日の「船木誠勝(PANCRASE創始者)への挑戦状」騒動で、色々な意味で話題になったばかり。彼の試合ぶりには、ファンならずとも注目すべきだろう。


ってなワケで、いつものようにチケットを購入、5500円で相変わらず高い。観客の入りは約七割でいつもとあまり変わりなし。この光景にも慣れちゃったなぁ…。

第二試合 渡辺の「明るい未来」が見えないなぁ

ミドル級 5分2R
ガジエフ・アワウディン(184cm/84.0kg/ロシア/SKアブソリュート ロシア)
渡辺大介(180cm/85.4kg/PANCRASE ism)
[2R 32秒 判定 3−0]
※2R、両者の頭がバッティング、渡辺は右眉尻から流血し試合続行不能

1R終盤から観戦したが…、この時点で既にガジエフ・アワウディンが圧倒。

アワウディンはストレートで渡辺からフラッシュダウンを奪うと、この時点で渡辺は足元がフラフラの状態だ。2Rに入ると渡辺は、いきなり左ハイを繰り出して応戦したが…この後、頭から突進するアワウディンと体勢を低くした渡辺の頭がバッティング。これで渡辺は大流血に見舞われる。

ここでドクターチェックが入ったが…渡辺の流血は激しく、結局は試合続行不能と判断された。2R序盤までの試合経過で判定が行われ、その結果3−0でアワウディンが勝利した。


「泣きっ面に蜂」というか。今日の渡辺は実力はおろか、運でもアワウディンに負けてしまった印象。大ベテランの渡辺の残り時間は少ないのに、こんな負け方をするとはねぇ…。せめて晩年に一花、咲かして欲しいところだが…今日の試合を見る限りでは、それは難しいかな…。

第三試合 吉本の「明るい未来」がどうにもこうにも…

フェザー級 5分3R
吉本光志(171cm/65.0kg/AJジム/NEO BLOOD TOURNAMENT 2007 フェザー級優勝)
砂辺光久(172cm/61.0kg/P's REAL/PANCRASEフェザー級 四位)
[判定 1−0]

今年のフェザー級NEO BLOOD TOURNAMENTを制覇した吉本光志が、念願だった上位ランカーとの対戦に挑む。今日の相手は古くからPANCRASEの軽量級戦線を賑わせてきた古豪、砂辺光久レスリングをベースに持つ砂辺に対して、キックボクシングの東洋王者である吉本の打撃はヒットするのか?


とりあえず、試合の模様はダイジェストで。試合全般において、レスリング出身の砂辺は再三再四タックルを仕掛け、吉本をテイクダウンしてはバックをとってスリーパーを狙っていった。防戦一方の吉本、時折は砂辺のタックルをロープ際でガブったりしたのだが、砂辺は強引に吉本を押し込んで積極的にテイクダウンを狙っていく。砂辺の強引な攻めに押され気味の吉本は、ドサクサ紛れに何度も場外へ逃げようとしてしまう。露骨な反則行為に対して、レフェリーは吉本にイエローカードを提示。う〜ん、よろしくないねぇ。

そんなこんなで迎えた3R。1R〜2Rの強引な攻めが祟ったのか…砂辺の動きが鈍る。これを見た吉本は反撃を開始。単発ながらも得意のストレートとローで砂辺を追い詰めていく。だが砂辺のレスリングを警戒する吉本は、今一つ踏み込んでの打撃を繰り出すことができない。結局、これまでの展開を覆すような決定打は出ないまま試合は終了。

判定。1R〜2Rの試合内容、そして2Rに出されたイエローカードの事を考えても、僕は砂辺の勝利は鉄板だろうと考えていた。ところが実際の判定結果は吉本の1−0でドローだというではないか。オイオイ、この試合を「吉本の勝利」と見た和田良覚氏は一体この試合の何を見ていたんだよっ!ひどすぎる…。


それはさておき。試合を冷静に振り返ってみても、今日の吉本はまるで良いところがなかったね(キッパリ)。砂辺のタックルを捌くことはできなかった上、「場外に逃げる」という反則を連発しても尚、自分のペースを掴むことができないとはねぇ…。打撃系の選手でありながら、タックルを捌く技術には定評のある吉本だったけど…今日の試合ぶりを見るにつけ、その考えも改めなきゃならんな。

第四試合 星野は「明るい未来」に向けて一直線だな

ライト級 5分3R
星野勇二(170cm/77.0kg/和術慧舟會GODS)
●松田恵理也(174cm/76.0kg/TEAM坂口道場/PANCRASEライト級 三位)
[1R 28秒 アキレス腱固め]

昨年九月にPANCRASEに復帰して以来バッチリ好調をキープしている星野勇二が、この日は鮮やかな一本勝ちを修めた。


試合開始早々、星野はテイクダウンを決めて足関節を狙い、あれよあれよとアキレス腱固めを極めてしまった。応援団の歓声の中、やがて松田がタップして試合終了。星野は「年内にライト級王者になる」と高らかに宣言し、観客の歓声を浴びた。


ふむ。普段は「安定したレスリング技術、だが極めっ気は低い」星野だけど、今日は見事な秒殺劇。こんな試合を連発するなら是非、ライト級王座を射止めて欲しいね。ま、星野がこういう試合を連発するのは無理だと思うけどさ(苦笑)。

第五試合 川村の「明るい未来」は今日から再スタート

ライトヘビー級 5分3R
川村亮(180cm/93.0kg/PANCRASE ism/PANCRASEライトヘビー級 三位)
●ジェーミー・フレッチャー(182cm/93.0kg/アメリカ/ザ シャーク タンク)
[1R 1分36秒 KO]
サッカーボールキック

5/30の興行でシュートボクセ・アカデミーからの刺客、ファビオ・シウバを序盤で追い詰めながら、徐々に逆転を許した末に最後は左右のフックで轟沈し初黒星を喫した川村亮が、たった三ヶ月で復帰戦に挑む。初来日のジェーミー・フレッチャーを相手に、鮮やかな勝利を飾れるのか?


試合開始、川村はこれまでと同じく「決して後ろに引かないスタイル」でフレッチャーにプレッシャーを掛ける。対するフレッチャーは大振りなパンチでこれに応戦。二人の間に緊張感が走る中、不意に放った川村の右フックがフレッチャーの顔面を捉えた。フラッシュダウンを喫するフレッチャー、川村はすかさずサッカーボールキックで追い討ち。観客の歓声の中、モロに喰らったフレッチャーはグッタリ。これを見たレフェリーが試合を止めた。


う〜む。初敗北によるショックが心配された川村だけど…今日の試合を見る限り、メンタル面の心配はなさそうだな。新たなるスタートを切った『PANCRASEの新エース』の活躍に、今日からまた大いに期待したいね。

第六試合 竹内が「明るい未来」を苦戦しつつもシッカリ掴む

ミドル級 King of PANCRASE 次期挑戦者決定戦 5分3R
竹内出(180cm/81.9kg/SKアブソリュート/PANCRASEミドル級 一位)
●ブライアン・ラフィーク(175cm/82.0kg/フランス/ジュカオ アシル チーム/bodog/PANCRASEミドル級 二位)
[判定 3−0]
※ラフィークは2R、ロープを掴む行為によりイエローカード

第六試合は、現在は中西裕一が持つミドル級王座の次期挑戦者決定戦となった。

挑戦権を争そうのは、実力はありながらも同王座に縁のない竹内出と、MARS WORLD FIGHTING GP ミドル級トーナメントのAブロックで準優勝を果たしているブライアン・ラフィークだ。う〜ん、MARSのトーナメントで準優勝ねぇ。なんとも微妙な肩書きだな(笑)。しかしまあ…竹内はともかくとして、ラフィークがどういう経緯でKing of PANCRASEの次期挑戦者決定戦に出場できる事になったのか、誰か詳しく説明してくれ(笑)。


さてさて。僕はこの試合に関して「いつも通りに竹内の『ねちっこいグラウンド』が爆発して、いつも通りに竹内が判定で勝利するのだろう」と思っていた。だから、この試合で竹内が大苦戦したのは非常に意外だった。


試合全般において、ラフィークは打撃戦で主導権を握った。MARSのトーナメントは寝技で勝ち上がったラフィークだが、この試合では大振りなパンチを連発し、竹内にプレッシャーを掛けていく。対する竹内、ラフィークの乱暴な打撃に気圧されながらも、隙を見ては組み付いてテイクダウンを狙う。だがラフィークは、ロープを掴む等の細かい反則を繰り返して倒れる事を拒む。得意のグラウンドに持ち込めず、次々にブレイクされてしまう竹内。1R終盤、やっと竹内はテイクダウンに成功したが…ラフィークは竹内の両腕を抱える等で何もさせない。う〜ん竹内、今日は大苦戦だなぁ。


ラフィークはこの後も「色々な意味で」試合のペースを握っていく。相変わらず細かい反則を繰り返して竹内のタックルを堪えると、2Rと3Rで一回づつ金的に膝蹴りを入れて試合を中断させてしまう。だがラフィークは反則ばかりではない。スタンドではローを連発して竹内の動きを止めたラフィークは、要所で左フックを竹内の顔面に叩き込んでダメージを与えていく。う〜ん、優位に試合を運んでいるのはラフィークなんだけど…なにせチョコチョコと反則が混じっているもんだから、観ていてあまり良い印象は持てないねぇ。

これに対して竹内は時折、タックルを仕掛けてラフィークをコーナー際に押し込んでいったが…ラフィークの反則もあって、今日はここからテイクダウンを奪うことができない。う〜ん、いつも対戦相手からアッサリとテイクダウンを奪う光景を何度も見ているだけに…この『らしくない展開』は何とも意外だ。本当に今日は大苦戦だなぁ。


そして試合は終了。試合内容は混沌としていたが、判定の結果は明白だった。ロープを掴む行為を繰り返したラフィークにはイエローカードが提示されていたのだ。これが大きな差となり3−0で竹内が勝利したが…当の本人は不機嫌そうにリングを降りていった。


ぬぬぅ、今日は勝ち星を拾った竹内ではあるけれど…今日はまったく良いところがなかったなぁ。今日は相手の反則もあったし…こんな展開になったのは仕方がないのかなぁ。まあ形はどうあれ挑戦権は獲得したのだから、気持ちを切り替えて王座に挑んで欲しいねぇ。

第七試合 前田の「明るい未来」、危ういながらもシッカリと掴む

フェザー級 5分3R
前田吉朗(170cm/64.0kg/PANCRASE稲垣組/PANCRASEフェザー級 王者)
●ジョニー・フラシェ(172cm/64.0kg/フランス/ジュカオ アシル チーム/bodog)
[1R 3分38秒 KO]
※グラウンドパンチ

PANCRASEの軽量級エース」となった前田吉朗は4/27のダニー・バッテン戦に引き続き、今日もbodogからの刺客を迎え撃つ。試合前、前田は対戦相手のジョニー・フラシェを睨みつける。前回は判定ながらも完勝した前田だが、今日は快勝することができるのか?


試合開始。まずはサウスポーに構えた前田が小気味よくワンツーやキックを連発したが、フラシェはいきなり右ハイを叩き込んで前田をダウンさせると、すかさずバックを奪ってスリーパーを狙っていく。前田のピンチを目の当たりにした観客が騒然となったが…。

当の前田だけは、冷静にフラシェの仕掛けにシッカリと対処して試合をスタンドへ戻す、観客が安堵の歓声を上げる中、尚も前に出てくるフラシェに対して、前田はカウンターの左ミドルを繰り出せば、その膝がフラシェの腹を直撃。マットに倒れて悶絶するフラシェ、前田はグラウンドでパンチを繰り出して追撃。観客の大歓声の中、この様子を見たレフェリーが慌てて試合を止めた。

勝った前田は興奮しながら「いや〜っ、危なかった!今日は気分がいいねっ!」と語ると、「今日のメインは北岡さんがキッチリ締める」と宣言。観客の歓声の中、綺麗な形でメインイベントへとバトンを渡した。


う〜ん。最初はピンチを迎えた前田だけど…終わってみれば「流石はフェザー級王者っ!」といわざるを得ない結果だねぇ。今日はキッチリと結果を残した前田、来年あたりはもう一度「他団体での活躍」を期待したいね。

第八試合 北岡の「明るい未来」は何処へ…

ウェルター級 5分3R
北岡悟(168cm/76.0kg/PANCRASE ism/PANCRASEウェルター級 一位)
●ジェイソン・パラチオス(168cm/76.0kg/アメリカ/チーム ヤスダ)
[判定 2−1]

他団体であるDEEPの舞台でPRIDEライト級GPへの出場権を得ながらも…PRIDEが事実上の終了を迎えたことで、PANCRASEにおける立場が浮いてしまったのが北岡悟という男である。

その北岡が突如、謎の行動に出た。この度、現役への復帰を表明した「PANCRASE創始者船木誠勝へ挑戦状を叩き付けたのだ。「プロから逃げた選手が、ヌケヌケと戻ってくるなっ!」「今の総合を舐めるなっ!」等の過激な言葉でその姿勢を批判し、更には「俺が最初にボコボコにしたい」と発言。この日のPANCRASEのリングサイド席のチケットを郵送するパフォーマンスまで見せる。う〜ん、北岡の中に一体、何が起きたのやら。

これに対して、船木の方は「自分をボコボコにする選手は他にいる」とし、桜庭和志への挑戦を表明するのと同時に、北岡との対戦をキッパリと拒否。これに対して北岡は「やっぱり船木さんは逃げたか。そんなもんか」とバッサリ切るのと同時に「言いたいことは言えた」と、アッサリとこの問題の終了を宣言。

う〜ん…色々と唐突すぎて、こちらは呆気にとられるばかりだなぁ。結局、北岡は何がしたいんだろ?船木を倒して、より大きな舞台に上がるための手土産にするつもりだったのかな?それとも純粋に、古巣であるPANCRASEを顧みない船木の態度に激怒したのかなぁ?まあ正直、後者の方は僕も納得がいかないんだけどね。


ってなワケで、非常に混沌とした状態で迎えた今日のメインイベント。大風呂敷を広げた以上、北岡は絶対に一本勝ちしなくてはならない一戦だといえるだろう。前田から渡されたバトンと観客の期待に、キッチリと応える事はできたのか?


1R、北岡はいきなりパラチオスのワンツーを喰らってダウンを喫してしまう。観客は騒然となったが…トドメを刺すべくグラウンドへ潜り込んできたパラチオスに対して、北岡は下から腕を捕って腕十字を仕掛ける。これは外されてしまったが、北岡はこれにめげずに足を取ってアキレス腱を極めに行く。これも極まることはなかったが、試合のペース自体は完全に取り戻す事に成功。うむ、ここまではいい感じだね。

迎えた2R序盤。試合の流れを掴んだ北岡は一気に勝負を決めるべく、スタンドで得意技であるフロントチョークを強引に極めようとする。


そして、これがマズかった。一般に「極まらないと体力を消耗する技」だと言われているフロントチョーク。これをパラチオスに外されると…以降の北岡はスタミナ切れの状態に。2R中盤以降、北岡はパラチオスをテイクダウンすると、ハーフマウントの体勢から…何もせずに休憩する。迎えた3R、北岡は2Rと同じくハーフマウントになって休むばかり。う〜ん、疲れたのは判るけど、ちょっと露骨に休みすぎなんじゃないの?

観客はこの光景を、醒めた視線で試合を見守っていた。中には我慢できずに厳しい野次を飛ばす人もいたが、殆どの人は「呆れて物が言えん」ってな感じの反応だ。なんとも重苦しい空気が会場を包む中、時間だけが淡々と流れていった。


試合終了。判定の結果は2−1のスプリットながらも北岡の勝利。勝った北岡は、ふがいない試合内容なった事に涙を流しつつも、挑戦状を無視した船木との決別を改めて宣言すると、今後はUFCへの進出を目指すことを表明した。


ぬぬぅ。こんなに不甲斐ない試合をしておきながら、尚もマイクを持ちたがるとは情けないな。恐らく今の北岡は、色々なことが重なって感情が安定しない状態なんだろうけど…。観客からお金をとっている『プロ』という立場なら、我慢するところは我慢しなきゃダメだろ。こんな試合展開でありながらも、尚も自己主張してしまうのは単なる駄々っ子の我侭としか言いようがないよ。論外だよ、論外。


正直、今日はこの一戦で随分ケチがついちゃったなぁ…。

雑感

う〜ん、なんだか今日は『玉石混合』って感じだなぁ。良かったのは星野、川村、前田の三人。ダメだったのは渡辺、吉本、竹内、北岡か。なんだ、ダメな方が多いじゃないか。全体的な印象としては「つまらなくはないけれど、今一つ」という感じかなぁ。

それにしても今日の北岡は、川村&前田の勝利で沸いた観客の熱気を一気に奪っちゃったなぁ。ま、今日の試合は相当なプレッシャーの中で挑んだのだろうけど…、やっぱりキッチリと結果を残せなかった人間が自己主張しちゃイカンよなぁ。


「最近の格闘家は簡単にマイクを握りすぎだよ」。そんなことを考えさせられたPANCRASE観戦だった。


以上、長文失礼。