SB 「日本SB vs 北米MMA対抗戦」会長挨拶&三原日出男の引退試合

肝心なところをド忘れする会長

10分の休憩後、会場内に「♪シぃ〜ザぁ〜、シぃ〜ザぁ〜」といつものテーマが流れ、シュートボクシング創始のシーザー武士会長がリングイン。お馴染み、会長の挨拶だ。


シーザー武士会長の挨拶

本日はお忙しい中、地元の花火大会があるにも関わらず、
お集まりいただき、誠にありがとうございますっ!

SBはこれから、SBを通して人生に立ち向かえる若者を育てるよう、頑張りますっ!
世の為、人の為になる人間を育てていきますっ!

この後、会長は会場内で新潟県中越沖地震の募金をやっている事を告知するも、「中越沖」の単語が出てこずに四苦八苦、観客の笑いを誘っていたが、それでも最後は「私はSBに命を賭けて頑張りますっ!」と力強く挨拶、観客の拍手を浴びた。

第八試合 どんなに道は険しくとも、笑いながら歩いていこうぜ!

60kg契約 三原日出男引退試合 エキスパートクラス特別ルール 3分3R + 延長3分無制限R
○及川知浩(164cm/59.55kg/及川道場/SB日本スーパーフェザー級 王者)
●三原日出男(170cm/59.50kg/シーザージム/SB日本スーパーフェザー級 四位)
[1R 終了時 TKO]
※三原が前頭部を負傷

休憩も明け、いよいよ「日本SB vs 北米MMA対抗戦」が開幕するかと思えば、さにあらず。その前に、長年SBで活躍した三原日出男の引退試合が行なわれるのだ。


今年で37歳になる三原、これまでの戦績は23戦13勝9敗1分8KO。年齢の割には試合数は少ないと言えるが、それでも彼がSBで頑張ってきた歴史は15年に及ぶという。

僕が三原の試合で思い出すのは…、ナグランチューンマーサM16と対戦した時、ナグランが1Rに三原をボコボコにしながらも、右膝の負傷で三原が勝利を拾った試合だなぁ。自軍コーナーで椅子に座ったまま悔しがるナグラン選手を見て、三原は「もう一回、やらせて下さい!」とマイクアピール。恐らく三原も、こんな勝ち星では納得がいかなかったのだろう。観客も、その清々しい約束に惜しみのない拍手を贈っていたのだが…。残念ながら、この約束は果たされる事なく今日の引退の日を迎えてしまった。あの試合以降、ナグランがSBに出場していないところを見るにつけ、ナグランの負傷は深刻なものだったのだろう。

そんな三原が引退試合に指名したのは、そのナグランの実兄にしてSB日本スーパーフェザー級王者の及川知浩だ。

この試合は、及川にとっても大事な一戦である。S-CUP 2006以来、古傷の再発により第一線を離れていた及川だが、その欠場中に自らの名前を看板にした「及川道場」をオープン。、今日はその看板を背負っての第一戦となるのだ。大切なものは脳梗塞で倒れた父が必死にペンで書いた「いつも、ありがとう」という言葉と記念写真だという及川は、過去に石川剛司、竹村健一、大高一郎などを撃破している強豪。ハッキリいって三原には荷が重過ぎる相手。それでも三原は「最後だから胸を借りようとかじゃなくて、自分の全部をかけて最後に倒したい」と意気込む。

浜田省吾の「On the Load」をバックに大歓声と共に入場してきた三原、リングアナが「三原選手はこれが最後の試合となります!」と煽れば、その歓声は一層大きくなる。この辺の「さり気ない煽り」がSBの演出のいいところである。


だが、試合はあっさりと決着がついてしまった。

試合開始と同時に、及川は右ローを連発して三原に格の違いを誇示する。対する三原も右ローを数多く放って応戦するが…。中盤、両者の肘打ち合戦の最中、及川の肘が三原の額を切り裂く。元々、及川は肘打ちの名手である。三原はそれを知っていて、あえて打ち合いに挑んだものと思われるが…。

その傷はかなり深いらしく、リングドクターが総出で三原の様子を見る。引退試合という事もあり、三原の意向も考慮しているのだろう。やがて試合は再開、観客の大歓声の中で三原は左右のミドルや右ハイで及川を攻め立てるが、及川は無情の肘打ちで応戦。


こうして1Rは終了したが…、試合が2Rへ移行する事はなかった。やはり三原の傷は深く、ドクターストップが宣告されたのだ。試合前とは一転し、三原のあっけない幕切れに意気消沈する観客だったが…。

その空気を一転させたのは、他ならぬ三原自身だった。吹っ切れた表情を浮かべながら及川と肩を組み、記念撮影に挑む三原。その明るい表情を観た観客から、今度は怒涛のような惜しみない拍手が寄せられる。う〜ん、こんなところからも、三原の普段の人柄が伺えるなぁ。


三原日出男、引退のコメント(スポナビの記事より)

今日は本当にありがとうございました。
自分はチャンピオンになってないのに引退試合をやらせてもらっていいのかなと思いましたが、
いろんな人に支えてもらってここまでやってこれたので、
お礼の気持ちを言いたいと思ってこの試合を受けさせてもらいました。


まず、対戦を快く受けてくれた及川選手に。
次はジムで一緒に練習をしてくれたみんなにお礼を言いたいと思います。
みんなと一緒に練習してる時間が楽しくて、ついこの年までやってしまいました。


裏方として支えてくれた方々、ありがとうございました。
自分は平凡な男ですけど、すべてみなさんのおかげだと思っています。
お客さんに喜んでもらえる試合をしたいというのが自分のモチベーションでした。
この年まで大きなケガがなくやってこれて、
丈夫に生んでくれた両親にもお礼を言いたいと思います。


そして、こういう場を設けて頂いたシーザー会長、ありがとうございます。
ここまでやってこれたのはすべてシーザー会長のおかげです。
格闘経験のない自分にとって、ここまでのシュートボクシング人生は夢を見ているような時間でした。


自分がいなくなって代わりにできるこの場所で、
誰かが代わりに夢を見てくれたら。
ボクが見ることのできなかった夢の続きを見てもらえればと思います。
本当に、ありがとうございました。

シーザー会長のコメント(スポナビの記事より)

三原を15年間、支えて頂いて本当にありがとうございました。
三原っていう男はネームバリューもない男ですが、
ずっと裏方としてシュートボクシングを支えてくれました。
そのけじめをつけさせてやらねばと、自分が今日の試合を設けさせてもらいました。
名もない男でしたが、シュートボクシングには本当に宝物でした。ありがとうございました。

注:もちろん、上記は泣きながらのコメント


試合後の行動、引退コメントを見ても判るが…。恐らく、三原の性格は非常に控えめで、普段から色々な事に気を配る選手なのだろう。

正直、選手として芽が出たとは言い難いが…。彼の言動や人柄からは、シーザー会長が普段から口にする「SBを通して世の為、人の為になる人間を育てる」という言葉が体現されているように思う。確かに彼は、胸を張って「SBの宝物」と言い切れる「人財」だろう。彼の引退後の人生については、何も心配する事はないだろう。あの人柄の良さが、自ずと色々な人々や運を引き寄せていくと思うしね。


三原日出男の第二の人生に幸あれ。


三原日出男 2007年7月28日 引退
戦績 24戦13勝10敗1分8KO