3/18 PANCRASE 後楽園ホール興行 観戦記

Mask_Takakura2007-03-18

なんだか本当に懐かしい名前がズラリ

本日は後楽園ホールにてPANCRASEを観戦。


今日のPANCRASEはヒドい。なんといっても本来、この興行のウリは「日本 vs 元スペツナズ 三対三 対抗戦」であったハズなのだ。ところが…開催直前になって、元スペツナズ三名のうち二名の欠場が発表されてしまう。なんでも、ビザの取得に失敗したんだそうな。う〜ん、お粗末。もっと早い段階で、元スペツナズ勢の来日の中止を発表する事はできるハズだと思うんだが…。

ところが、この「日本 vs 元スペツナズ」が崩れた事により、今日の興行の「もう一つの顔」が浮かび上がった。全六試合中、五試合が「ベテランvs 若手」の試合となったこの興行、かつてPANCRASEや他団体で活躍した懐かしい名前がズラリと揃った。中には試合そのものが久しぶりの選手もいるベテラン勢、果たして「古豪健在!」をアピールする事はできるのか。


というワケでチケットを購入、一番安い席で5500円。高いなぁ、最近のPANCRASEは非常に高いなぁ。観客の入りは…、リングサイド席を一列にして、約6割〜7割程度かな。相変わらず大苦戦しているねぇ。何をすれば、客入りが復活するんだろうか…。

第一試合 梁正基 PANCRASEにて 引き分ける

ウェルター級 5分2R
△本田朝樹(171cm/74.8kg/PANCRASE P's LAB横浜/NEOBLOOD TOURNAMENT 2006 ウェルター級 優勝)
△梁正基(183cm/74.2kg/スタンド)
[判定 1−0]

早速始まる「ベテラン vs 新鋭」。この試合に出場するベテランは、かつてPANCRASEの常連だった梁正基、打撃を得意とする選手だ。対する若手側は、昨年のNEOBLOOD TOURNAMENTの覇者・本田朝樹、P's LAB横浜所属の選手である。


1R、本田はスタンドでは距離を詰めてプレッシャーを掛けるも、梁は逆にテイクダウンを奪い、上からパンチを落とす。本田は下から腕十字を仕掛けて抵抗、だが梁はしのいでマウントを奪うと更なるパンチを落とす。

2R、序盤にカニ挟みを仕掛けた本田だが失敗。上になった梁がパンチを入れると、本田は下から三角絞めを狙ったり蹴り上げたり。中盤、本田がリバースに成功、バックからスリーパーを仕掛ける。だが終盤、梁はこれをリバース、試合終了まで上からパンチを落とす。

試合終了。全体的に試合を支配していたのは梁だったが…、判定の結果は何故か本田の1−0でドロー。


う〜ん、いかにもPANCRASEらしい、身びいきの激しい判定だな。のっけから「なんだかなぁ」と思わされてしまった。それにしても久々にPANCRASE参戦を果たした梁だが、今日の試合を観る限りでは「まだまだ現役!」って感じだね。

第二試合 打撃戦 昇侍が負けた こりゃ意外

ライト級 5分2R
星野勇二(170cm/68.6kg/和術慧舟會GODS)
昇侍(171cm/68.6kg/K.I.B.A.)
[判定 3−0]

第二試合に出場するベテランは、最近PANCRASEマットに復帰を果たした星野勇二レスリングをベースに持ちながらも打撃を得意とする選手だ。対する若手は…デビュー三戦目ながら、その勝ちっぷりでインパクト(デビュー戦は飛び膝蹴りで3秒殺、第二戦は顔面への踏みつけ一発で相手をKO)を残している男、昇侍だ。


昇侍の鋭い打撃に真っ向から立ち向かう星野、1R中盤にワンツーで昇侍をグラつかせると一気にテイクダウンを奪う。バランスの良い昇侍はすぐに立ち上がったが、星野はリングを回りながらのヒット&アウェイで昇侍を翻弄。終盤には右フックを叩き込む等で試合を優位に進める。

2R、星野はタックルで昇侍の上になると、サイドから鉄槌を落とす。昇侍ガードポジションに戻すも額から流血。星野が立ち上がってスタンドを望む。両者スタンド、組み付いて持ち上げる星野だが昇侍が粘る、ブレイク。

中盤からはスタンドでの打撃戦に突入、リードしたのは昇侍。ワンツーがコツコツとヒットすれば、星野はスタミナ切れを起こしたのか組み付いてブレイクを待つ事が増える。それでも今日の星野は終盤にワンツーをヒットさせる等、最後まで主導権を完全に渡す事はなかった。

試合終了、判定の結果3−0で星野が勝利。


星野がベテランの意地を見せた試合ではあるが、僕としては「第一試合がドローなら、この試合もドローじゃないの?」と思う内容でもあった。いや、この試合における星野の勝ち自体は明白だけど、だったら第一試合も梁の勝ちなんじゃないの?って意味ね。まったく、PANCRASEの判定基準はよくわからんよ。

第三試合 ヤノタクが 秒殺負けとは 珍しい(字あまり)

ライト級 5分2R
○松田恵理也(174cm/68.3kg/TEAM坂口道場/NEOBLOOD TOURNAMENT 2006 ライト級 優勝)
矢野卓見(171cm/67.5kg/烏合会/PANCRASEライト級 一位)
[1R 1分30秒 KO]
※右膝蹴り

第三試合に出場するベテランは…なんだかんだでPANCRASEでは無敗、PANCARSEライト級の一位にランキングされている矢野卓見。う〜ん、何かが間違っている気がする。以前、マニアの間で話題となった「うっすら筋肉」もすっかり削ぎ落ちてしまったヤノタクの相手は…坂口道場の新鋭、松田恵理也。


試合開始と同時に半身の構えを見せるヤノタク、ずるずると松田をグラウンドに誘い込もうとするも、松田は付き合わない。会場を泥試合ムードが包む中、それを打ち破ったのは松田は右の膝蹴り。顔面に喰らったヤノタクは一発で失神。観客が騒然とする中、ヤノタクは担架で運ばれるハメに。


おおっと、前回の試合で伊藤崇文に負けた松田がこんな勝ち方をすると思っていなかったし、同時にヤノタクがこんな負け方をするとも思わなかった。というか、ヤノタクが若手を相手にこんな惨敗をするところを今まで見た事がない。う〜ん、妙に月日の流れを感じるなぁ…。

第四試合 DJ.taiki 返り討ちとは こりゃ強い(字あまり)

フェザー級 5分2R
DJ.taiki(172cm/63.5kg/K.I.B.A./PANCRASEフェザー級 一位)
今泉堅太郎(175cm/63.9kg/SKアブソリュート)
[判定 2−0]

第四試合に出場するベテランは…かつては修斗のランカーだった今泉堅太郎レスリングと打撃を得意とする選手だ。今回は本来出場する予定だった元スペツナズの選手が来日不可能になった事を受けての緊急スクランブルとなった今泉が、本日はリベンジ戦に挑む。

この試合に登場する若手はDJ.taiki。2005年7月、当時は無名だったtaikiは、修斗で強豪として名を馳せた今泉と対戦。誰もが今泉の勝利を予想する中、蓋を開ければtaikiが打撃で今泉を圧倒して完勝。この番狂わせで、DJ.taikiの名前はPANCRASEファンの間に一気に広がった。

あれから一年半以上の月日が流れ、taikiはPANCRASEフェザー級では最強の一角を担う程に成長。今年1月にはNJKFでキックの試合を経験し、若手有望株の健太を判定で下しているtaikiが、復讐に燃えるベテランを返り討ちにする。


1R、リング内を左回りに動きながら距離を取る今泉、対するtaikiが追う。距離が詰まればミドルやストレートを放つtaiki、だが今泉は前蹴り等を使って距離を離す。こうしてスタンドでの膠着状態が続いたが…終盤、ついに両者が組み合う。得意の首相撲を使おうとするtaikiだが、今泉はこれをスタンド・レスリングを駆使して引き離し、右フックを叩き込む。更には胴タックルからテイクダウンを奪う今泉、ここまでは「古豪健在!」といったところだな。

2R、このラウンドはtaikiが巻き返しを図る。リング全体を使って回る今泉との距離を縮めたtaikiは、このラウンドは積極的にワンツーを繰り出す。ハイや膝蹴り等も駆使するtaiki、中盤にテイクダウンを奪うと中腰になってパンチを落としていく。1Rとは一転して不利な展開となった今泉、taikiの右ストレートを次々に喰らう等で大苦戦。ファイトスタイルを消極的と見なされてイエローカードまで出された今泉、終了間際にテイクダウンを奪うも…時すでに遅し。

試合終了。判定の結果は2−0でDJ.taikiが勝利。


う〜ん、今回はあまりにも急に決まったリベンジ戦だし、元々今泉が勝つ可能性は低かったように感じるのだが…、蓋を開ければ、意外に健闘したように思うね。これはキッチリと調整させた上で、三回目の対戦があってもいいんじゃないかなぁ。

第五試合 アワウディン その名前は 覚えよう(字足らず)

ミドル級 5分2R
ガジエフ・アワウディン(184cm/81.8kg/ロシア/SKアブソリュート ロシア)
金井一朗(174cm/81.6kg/PANCRASE ism)
[1R 1分5秒 KO]
※左フック

本来であれば三対三で行われる予定だった「日本 vs 元スペツナズ 対抗戦」だが、実際に行われるのはこの一試合のみ。その対抗戦にPANCRASEを代表して出場するのは…、現在は伸び悩みに苦しんでいる金井一朗。対する元スペツナズ代表は、これが初参戦となるガジエフ・アワウディン。金井としては、この試合に勝利して今後の弾みにしたいところだが…、アワウディンの腕回りや足回りの太さを見る限り、勝つのは難しそうだなぁ。


んで、試合は…あっという間に決着がついた。

試合開始直後から、アワウディンは体格の違いを活かして金井を圧倒。いきなり重いローキックで先制したアワウディン、タックルを決めると金井の首を捕ってスタンドでネックロックを極める。観客が驚きの声を上げる中、金井はどうにか首を抜いたが…。

尚も続くアワウディンの攻勢、今度はシャープなワンツーが金井の顔面を捉える。最後は左フックがモロにヒット、身体が棒のような状態になって倒れる金井。アワウディンが追撃しようとしたところをレフェリーが止めた。


この間、わずかに65秒。あまりにも一方的な展開で言葉も出ない、というか。正直、同門の竹内出を含めて、PANCRASEミドル級にアワウディンに勝てる選手などいるのだろうか?と思わせるくらいに一方的な展開だったなぁ。ウマハノフ・アルトゥールといい、このアワウディンといい…、PANCRASEが元スペツナズに占拠されるのも時間の問題だな(苦笑)。

第六試合 川村が 奇跡を起こして また勝った(字あまり)

ライトヘビー級 5分3R
川村亮(180cm/89.4kg/PANCRASE ism/PANCRASEライトヘビー級 三位)
金原弘光(178cm/89.3kg/U.K.R.)
[3R 1分36秒 KO]
※スタンドパンチ

本日のメインは、またまた「ベテラン vs 若手」なのだが…この試合は、その一言で修まるような試合ではない。

この試合に出場する「ベテラン」は、U.W.F.インターナショナルでデビューし、キングダムで実力をつけ、RINGSではエースとして活躍していた金原弘光である。これに対する「若手」は、PRIDEで猛威を振るった名門ジム・シュートボクセアカデミーのダニエル・アカーシオをKOし、ニルソン・デ・カストロとはドローへと持ち込んだ「PANCRASE、新世代の救世主」川村亮

この二人の試合、古い言い方をすれば「RINGS vs PANCRASE」「U.W.F.世代闘争」という事になるのだが…、かつてRINGSのエースだった金原を倒す事は、次世代エース候補である川村にとっては…恐らくそれ以上の意味を持っているハズだ。


1R、金原は近藤有己戦でも見せた片足パンチや左ミドルを繰り出し、川村のワンツーにはカウンターを合わせる。対する川村は、金原の老獪さに怯まずに前に出続けてパンチを繰り出す。お互いに打撃を交換する中、均衡が破れたのは中盤。川村のワンツーが金原にヒット、ダメージの残る金原はタックルで追撃を逃れるが…川村はこれを捌くと、亀の体勢になる金原の上からパンチを落とす。

金原が立ち上がって両者スタンド。この後も殴り合いは続いたが…リードしたのは川村。ワンツー、右ストレート、アッパーが何度もヒット、フラフラになる金原。観客からは川村の攻勢を支持する歓声が起こる。


2R、「打撃では勝てない」と見た金原はタックルで川村を倒すも、川村は近藤有己ばりに「尻で立つ技術」を駆使、テイクダウンを拒むとリバースを決めて上からコツコツと殴る。劣勢に立たされた金原、体力を奪われたものの、時間を掛けてグラウンドを脱出。

だがこの後、これと同じ展開がもう一度続く事になる。川村のワンツーやフックがヒット → 金原のタックル → 川村の尻立ち & リバース → 川村が上からコツコツ。う〜ん、金ちゃん、もう勝ち目はないかなぁ…。


3R、窮地に立たされた金原は序盤から何度かタックルを放つも、川村はこれを捌き続け、ワンツーや右ストレートを叩き込む。一方的に打撃を喰らい続ける金原に「もはや勝ちはない」と思われたが…。中盤、打ち合いの中で金原のワンツーが川村の顔面にヒット。

これまでの攻勢が一転、フラフラになる川村。観客が騒然となる中、金原はワンツーの連打で一気に川村を追い込む。対する川村もフラフラになりつつ必死にワンツーを返し、試合は更なる壮絶な殴り合いに発展。観客の大歓声の中、お互いのパンチが乱れ飛ぶ。

そして、この打ち合いを制したのは「PANCRASE、新世代の救世主」川村。乱打したパンチのうち、右ストレートが金原の顔面をモロに捉えると、金原はその場にドサッと倒れる。観客の大歓声の中、レフェリーが止めた。


メインイベントに違わぬ激闘を見せた両者に、観客は試合後も大きな拍手を贈る中、マイクを握った金原は「どうも、ありがとうございます。あと、一試合で引退します。このPANCRASEで引退しようと思います(観客拍手)」と挨拶。う〜ん、ちょっと残念だけど、年齢的な事を考えれば(金原は36歳)自然ではあるよなぁ。最後の試合をPANCRASEでやるのであれば…、やっぱり近藤有己戦になるのかなぁ。

続いて川村が挨拶。「金原さん、ありがとうございます(観客拍手)。僕みたいな若造が全力でぶつかってくれて、本当にありがとうございます(観客拍手)。川村がどこまで行けるかわかりませんが…皆さん、一緒にRIZINGしましょう!(観客歓声)」。う〜ん、なかなかに力強い宣言。これはもう…「PANCRASEの次世代エース『候補』」なんて言い方は失礼だな。


しかしまあ、滅多にダウンを喫しない金原をKOして勝利したのだから、やはり川村の勢いは本物なのだろう。また、KO負けを覚悟しながらも、最後まで打ち合いに応じた金原の心意気にも賞賛を贈りたい。

それにしても川村は、どんな時でも前に出て打ち合うスタイルを崩さないね。パンチに対する技術はそこまで高くないと思うし、現に今日も危ないシーンがあったワケだが…。ピンチに陥っても打ち合いに応じるのだから、川村の肝はかなり太いのだろう。これからも、この調子で金星を手にし続けて欲しいね。

雑感

全部で六試合だった事もあり、二時間強程度の非常に短いものだったが…、今日の興行は「喜怒哀楽」というか、表情が豊かで面白かった。健在をアピールしたり、成す術なく敗れたり…で明暗を分けるベテランと若手、PANCRSEを脅かすスペツナズの存在、そしてメインイベントの激闘。流行の言葉を使えば、パッケージの中に色々な要素が納まった興行だった、って事になるのかな。


あと、観戦記中には書かなかったが…、噂に聞いていたラウンドガールの入江姉妹が可愛かった。インターバル中に簡単な振り付けでダンスを踊るんだけど、一つ一つの動きがなんともいい味を出していたね。観客の反応も凄く良かったし。

格闘技興行で観るダンスというと、バリバリのストリート系の場合が多いんだけど…入江姉妹の存在は、そういう考えに一石を投じるかもね。


以上、長文失礼。