全日本キック 本戦観戦記

Mask_Takakura2007-03-09


ついに、この日がやってきた

本日は後楽園ホールにて全日本キックを観戦。


今日の興行については、もうこの一言につきるだろう。


野良犬小林聡、引退


昨年11月の興行で「現役ムエタイ四冠王」ジャルンチャイ・ケーサージムに惨敗した小林、その口から飛び出したのは、まさかの引退宣言。突然の事に呆然とする関係者や観客を他所に、小林は黙って花道を後にした。その後、全日本キック関係者の間で話し合いが行われたが…小林の意思は固かった。90年代から15年間にも渡ってキック界を牽引してきた野良犬が、今日をもって引退。果たして小林が、最後に我々にどのような姿を見せてくれるのか?


そして今日は、小林の引退に花を添えるべく、次々に好カードが実現。メインイベントでは「格闘科学の探求者」大月晴明が、全日本ライト級王者の増田博正を迎え撃つ。またセミファイナルでは思わぬドリームマッチが実現、全日本バンタム級王者の藤原あらしと、全日本フェザー級王者の山本真弘が激突するのだ。階級の違う王者同士の一戦はなかなか興味深いものがある。他にも、大輝が返上した全日本ウェルター級王座決定トーナメントの準決勝戦が開催される等、選手も内容も充実している今日の全日本キック。主役の小林を喰うような活躍を期待したい。


というワケで、早速チケットを購入。A席7000円とちょっと高めではあるが、今日は小林の最期の晴れ舞台。これくらいは仕方がない。そしてパンフレットも購入。今日は通常のパンフレットとは別に、野良犬引退記念パンフレットも売られていたのでそちらも購入。合計2000円。他にも今日は、野良犬引退記念DVDなどを購入。結構な散財になったなぁ。

観客の入りについては…、言わずもがなの超満員。ただ、立ち見に列ができる程ではなかったかなぁ。正直、もっと人が入ると思っていたんだけどね。ま、超満員である事は事実、なんだけどね。

第一試合 いきなり熱戦

ライト級 3分3R + 延長3分1R
○野間一暢(JMC横浜GYM)
●寺崎直樹(青春塾)
[延長判定 2−1]
※本戦判定 1−0

この試合の2Rから観戦。

自ら下がって中距離をキープし、ミドルやパンチを放ち続ける野間。いかにもJMC横浜GYM所属の選手らしい野間の攻めに対して、寺崎は常に前進を続けてパンチを放っていく。お互いのパンチは顔面にクリーンヒットし続ける光景は壮絶そのものだったが、手数は若干、野間が上。寺崎は野間の額から流血させている状態。まさに一進一退の攻防。

観客の大歓声の中で試合終了。判定の結果は野間の1−0でドローとなり、延長戦に突入。


延長R、逃げながらローを放ち続ける野間に対して、寺崎は愚直に追い続けてパンチを放つ。このラウンドは寺崎のワンツースリーが、何度も野間の顔面を襲った。体力を残していたのも寺崎だったが、野間はガードを固めて防御しつつ、試合終了直前にストレートをクリーンヒットさせる。

延長戦も終了。判定は…非常に難しいものとなったが、結果は2−1で野間が勝利。う〜ん、僕は延長ラウンドでの攻めが冴えていた寺崎が逆転勝利だと思ったんだけどねぇ。


ま、負けた寺崎も勝った野間も、この先が楽しみな選手である事には変わりない。野間は大輝、佐藤皓彦に続く「JMC横浜GYM 第三の男」として、寺崎は石川直己、山本優弥に続く「青春塾 第三の男」として、更なる活躍を期待したい。

第二試合 なんだか、こういうのはちょっと…

ライト級 3分3R + 延長3分1R
○遠藤智史(172cm/61.2kg/AJジム/前全日本フェザー級 七位)
●畑尾龍宏(174cm/60.8kg/REX JAPAN/全日本ライト級 九位)
[延長判定 3−0]
※本戦判定 0−0
※畑尾は3Rにダウン1、延長Rにダウン2/遠藤は2Rにダウン1

僕は畑尾龍宏という選手の事をスッカリ忘れていたのだが、試合開始と同時に彼の事を思い出した。カンフー風の構えを保ちながら軽いステップを踏み、大振りな打撃によるヒット&アウェイを繰り返す畑尾。その特異なファイトスタイルを目にした観客から驚きの声が上がる。

対する遠藤はワンツー〜ローという正攻法のスタイルなのだが、序盤は畑尾の変則的なスタイルに撹乱されてしまい、自分の打撃を放つ事ができない。迎えた2R、畑尾の右ストレートが遠藤の顔面を捉えた。思わずダウンする遠藤、観客も驚きの声を上げる。しかし、それ以上に驚かされたのが、レフェリーがダウンした遠藤ではなく、立っている畑尾にダウンカウントを数えていた事。あまりの珍事に観客も大爆笑。


んで、このダウンを契機に試合模様は一転。といっても、ダウンを奪った畑尾が攻勢を取った…のではなく、ダウンを奪われた遠藤が攻め始めたのだ。時間を掛けてコツコツとワンツー〜ローを繰り返した結果、畑尾は段々と棒立ちに。もともと大きなステップワークを駆使していた畑尾はすっかりスタミナ切れ、もはや防戦一方の状態だ。

そして3R終盤、遠藤の右ローで思わずスリップした畑尾にダウンが宣告される。遠藤応援団からイケイケの歓声が上がる中で試合は終了。う〜ん、確かに畑尾の足は効いていたが…このダウンはスリップだと思うんだがなぁ。

判定の結果は三者共に28-28、試合は延長戦に突入。


延長R。正直、ラウンドが開始した時点で、既に勝敗は分かれていた。右ローのダメージとスタミナ切れから、畑尾は立っているのもやっとの状態。対する遠藤は、これまでと同じくワンツー〜ローを叩き込む。それでも必死に立ち続ける畑尾だったが…終盤になると、畑尾がちょっとでもスリップすると、レフェリーは容赦なくダウンを宣告し続けた。

延長判定の結果、3−0で遠藤が勝利した。


ぬぅ、2Rの間違いといい、3Rからの容赦のないダウン宣告の姿勢といい、このレフェリーは畑尾の事を目の敵にしているとしか思えん。確かに、遠藤はこの先の全日本キックを支える逸材だというのはわかるが、こういう形で『保護』する姿勢はちょっと気に食わない。「逆プロテクト」されている島野智広とかもそうだが、全日本キックは時折こういう事があるから、ちょっと困りモノなんだよねぇ。

第三試合 二人ともこの先が楽しみだなぁ

フェザー級 3分3R + 延長3分1R
中村元気(171cm/57.0kg/クロスポイント ムサシノクニ)
●岩切博史(174cm/56.9kg/月心会/全日本フェザー級 五位)
[延長判定 2−1]
※本戦判定 1−0

パンフレットに載っていたてらかわよしこさんの漫画によると、この試合はマニア垂涎のカードなのだそうな。曰く「イケメンにして、明日のキック界を担う者同士の対決」。確かに中村元気も、年末に山本真弘と激闘を繰り広げた岩切博史も、イケメンにして期待のホープである事には違いない。


試合。僕自身は初見となる中村元気だったが…風貌やファイトスタイルはムエタイそのもの。特にミドルキックはスピード、破壊力共にムエタイランカー並だった。他にも中村は前蹴りや首相撲からの膝蹴りも多用、2Rには肘打ちで岩切の左目尻をカットする。う〜ん、今時のタイ人よりもムエタイスタイルを貫いているかも。

対する岩切、こちらは前に出てのパンチの連打で中村にガッチリと喰らいつく。中村が首相撲を使ってきても振りほどいてパンチを連打。パンチを喰らい続けた中村は鼻から出血。そして打撃の手数では完全に中村を圧倒していた。

試合終了。僕は「手数で圧倒していた岩切が勝利するだろう」と思っていた。だが、判定の結果は一人が中村を勝者にし、残り二人はドロー裁定。試合は延長戦に突入。ふむ、そんなモンかねぇ。


延長R、ここでも「中村のムエタイ殺法 vs 岩切のパンチ」の図式は崩れなかった。中村はこれまでと同じく首相撲からの膝蹴りで岩切にダメージを与えるも、岩切は要所でパンチを顔面に叩き込んでいく。クリーンヒットの数は岩切が上、試合運びは中村が上、という展開のまま試合終了。

判定は非常に難しいものとなったが、結果は2−1のスプリットで中村が勝利。


ふ〜む、僕は手数やクリーンヒットの数で岩切の勝ちだと思っていたんだけどなぁ。ま、僕は岩切に肩入れして観戦していたので、試合を公平に観戦できていた自信もないんだけどね。いずれにせよ、天才と呼ばれる中村を相手に実力で肉薄したのは事実。この敗戦に腐らず、また頑張って欲しいねぇ。

それにしても今日は、延長が続くな。この調子だと、興行の終了時間が結構深くなりそうだ…。

第四試合 名勝負製造機、再び起つ

全日本ウェルター級王座決定トーナメント 準決勝戦 3分3R + 延長3分1R
湟川満正(178cm/66.5kg/AJジム/全日本ウェルター級 三位)
●三上洋一郎(173cm/66.1kg/S.V.G./全日本ウェルター級 八位)
[2R 1分21秒 KO]
※右ハイキック

試合をすれば好勝負を連発する湟川満正だが、昨年は大きな課題を残した。それは王座の奪取。

世界王座に挑戦する為、山内裕太郎が返上したのが全日本ウェルター級王座。持ち主のいなくなったベルトを賭けて争ったのは…山内の後輩の湟川と、デビュー以来無敗記録を更新している大輝の二人。結果は残念ながら大輝の完勝。「先輩が巻いたベルトを、自分も巻きたい!」という湟川の野望は、無残に砕け散った。

そんな湟川に今宵、再びチャンスが訪れる。新王者となった大輝は階級をSウェルター級に上げる為に王座を返上。またしても持ち主が不在となったベルトを賭けてトーナメントが開催される事になったのだ。上位ランカーとして一回戦をシードされた湟川、その対戦相手は、唯一の一回戦(このトーナメントは五人で行われるのだが、一回戦は一試合だけなのだ)で、宝樹まもるとのベテラン対決を秒殺KOで制した三上洋一郎だ。


試合は一方的だった。三上は序盤こそパンチの連打で湟川に喰らい付いたが、湟川は重い右ローを連打して三上の動きを封じていく。あっという間に動きが鈍った三上に対し、湟川は2Rに右ローでダウンを奪うと、立ち上がった三上に右ハイキックを放つ。ガードの意識が下に向いていた三上は、このハイキックをまともに喰らって失神。観客の歓声の中、湟川が完璧な試合運びで決勝戦へと駒を進めた。


うん、このところは敗戦続きだった湟川だけど、今日は完璧な試合運びで勝利を呼び込んだねぇ。一昨年は大活躍した湟川だが、昨年はやや失速してしまった。是非、このトーナメントを切欠に、一昨年の勢いを復活させて欲しい。

第五試合 微笑みの神童、再生

全日本ウェルター級王座決定トーナメント 準決勝戦 3分3R + 延長3分1R
山本優弥(175cm/66.6kg/青春塾/全日本ウェルター級 一位)
金統光(175cm/66.6kg/藤原ジム/全日本ウェルター級 二位)
[判定 3−0]
※金は2Rにダウン1

第四試合に続いて、この試合も全日本ウェルター級王座決定トーナメントの準決勝戦。決勝を賭けて争うのは、昨年はK-1MAXを主戦場にしていた山本優弥と、最近メキメキと頭角を現してきた金統光。若き実力者と、期待のホープによる試合は、全日本キックマニアにとっては注目の一戦と言えるだろう。特に金は、実力はありながらも怪我に泣かされ、ここまで来るのに随分と時間の掛かった選手。心情的には金を応援したい、でも僕は山本も嫌いじゃないんだよなぁ…。


試合。金は藤原ジム所属の選手らしく、前に出てワンツー〜ローを放つ。対する山本はガードを固めつつ、金のパンチにカウンターを合わせる。試合を支配したのは山本、必要以上にはパンチを出さない省エネファイトで金の気力を削ぐと、2Rにカウンターの右ストレートでダウンを奪う。

藤原ジム応援団からは野太い罵声が、山本応援団からは黄色い声援が飛ぶ中、追い込まれた金は山本に対して、これまで以上に接近戦を挑んでいくが、山本は挑発を繰り返しながらスウェーを多用、スルスルとパンチをかわしていく。

試合終了。判定の結果、3−0で山本が勝利し、全日本ウェルター級王座に王手を掛けた。


今日の山本、試合運びは「らしさ爆発!」って感じだったけど…僕が驚いたのは体格の変化だね。以前は線が細かった印象があるが、今日は上半身がガッシリとしていた。正直、一階級違う選手のように見えたなぁ。

山本は元来、テクニックに定評があった選手。右肩の脱臼癖を筋肉でカバーし、外国人にも負けないパワーを手に入れつつある彼が、K-1 MAXで再び活躍する日は来るのか?注目しよう。

第六試合 藤原あらしは、いつだって観客を熱狂させる

56kg契約 3分5R
山本真弘(165cm/56.0kg/藤原ジム/全日本フェザー級 王者)
△藤原あらし(164cm/55.4kg/S.V.G./全日本バンタム級 王者)
[判定 1−0]
※藤原は3Rにダウン1

本日のセミファイナルは…唐突に組まれたドリームマッチ、「全日本フェザー級王者」の山本真弘と「全日本バンタム級王者」の藤原あらしによる「王者対決」である。特に因縁があるワケでもない両者が何故、こんなリスキーな試合に挑むのかはまったくの謎なのだが…興味深い一戦である事には違いない。

この一戦で面白いのは、藤原のスタイルを山本が苦手にしている事だろう。パンチではなく左ミドルを主武器としている藤原に対し、山本はムエタイスタイルの選手が大の苦手。充分に距離をとって左ミドルを連打できれば、体格で劣る藤原にも充分に勝機のではないか。反対に山本は、スタミナは無尽蔵の藤原に対して、早い段階でパンチを叩き込んで大きなダメージを与えたいところだ。


1R〜2R、藤原はリングの中心を陣取り、得意の左ミドルと左ローを放つ。対する山本はリングを右回りに回りつつ、藤原の左ミドルにカウンターのパンチを合わせる。今日はカウンター待ちの作戦をとった山本、パンチの数が少なくなるのは仕方ないが…ちょっと気になるのは、動きにもいつものキレがない事だ。体を大きく振りながら前進するいつものスタイルを捨てた山本、正直…魅力が半減するなぁ。


迎えた3R。藤原の左ミドルに合わせた、山本のカウンターの右ストレートがハードヒット。藤原は一発でダウン。ついに破られた均衡、千載一隅のチャンスをモノにすべく山本が勝負に出る。一気に前に出て得意のパンチのラッシュを仕掛ける山本、藤原はガードを固めて必死にこらえる。観客からは大歓声が沸いたが…。

このラッシュで試合の流れは一転。なんとパンチを放ち続けた山本がスタミナ切れを起こしたのだ。まったく手がでなくなった山本、対する藤原は逆襲を開始。得意の左ミドルが山本にヒットする毎に、観客から「オーイッ!」掛け声が飛ぶ。


そして4R〜5Rは、藤原のワンサイドゲームに。バテバテの山本に対し、藤原は休む事なく左ミドルとテンカオを叩き込む。ボロボロの山本はクリンチに逃げるのが精一杯。観客から「どうした山本!それでも王者か!」という厳しい野次が飛ぶ中、藤原は持ち前のスタミナを発揮し、試合終了までキックを放ち続けた。

試合終了、判定は…ジャッジの一人がダウンを奪った山本を勝者にする。観客からはブーイングが飛んだが、残り二人はドローの裁定。ま、この試合に関しては…色々な意味でこの結果が一番妥当だと思うな。


それにしても、山本はすっかりスランプに陥ってしまったねぇ。昨年一月の山本元気戦以降、「山本真弘らしさ」を発揮している試合が皆無というのが苦しい話だなぁ。ここまで来ると…スタイルの変更など、根本的な問題解決をしない限りは再浮上は難しい気がするなぁ。

対する藤原、この試合でも「らしさ」が爆発。特に4R〜5Rの流れは、本当に「いつもの『頼れる』藤原」という感じだったしねぇ。この二年間、他団体でのトーナメントで強さに磨きを掛けた藤原。今年は外国人選手との大一番も期待したい。

第七試合 ライト級戦線に異常あり

61.5kg契約 3分5R
○増田博正(170cm/61.2kg/スクランブル渋谷/全日本ライト級 王者)
大月晴明(165cm/61.5kg/AJKF/WPKC世界ムエタイライト級 王者)
[判定 3−0]
※大月は2Rにダウン1

本日のメインイベントは、全日本ライト級の頂上決戦だ。

脅威のKO率を誇る「格闘科学の探求者」大月晴明に挑むのは、全日本ライト級王者の増田博正。「三十路」「かつてフェザー級で試合をしていた時は、敵なしだった」という点で共通している両者だが、そのファイトスタイルは対照的。一発のパンチで相手を葬る大月に対し、増田は全体の試合運びで勝利を掴むタイプなのだ。

僕の予想は「増田には長年の戦いのダメージによる『落ち癖』という大きな弱点があるので、どんな作戦を立てても大月が一発でKOするだろう」というもの。恐らく、同じような予想をした人は少なくないだろう。


だが試合では、増田が「これをお手本にしてくれ!」と言わんばかりの大月攻略法を見事に実践、観客を大いに驚かせる事になる。


試合開始。相変わらずノーガードに近い独特の構えから左右の豪腕を振るう大月。その破壊力には観客も歓声を上げたが、増田はガチガチにガードを固めて顔面を防御。会場に緊張感が走る中、手を出してこない増田に焦れた大月が再び左右の豪腕を振るうが…、待っていたのは増田のカウンターのストレート。パンチをモロに喰らった大月が怯めば、観客からは驚きの声を上げる。この日の増田のカウンターの精度は非常に高く、大月は豪腕を振るたびに、逆にパンチを喰らい続けていた。

そして2R、大月の足が揃ったところに、増田のストレートが入った。思わず尻もちをつく大月に、レフェリーがダウンを宣告。ありえない展開を前に観客の驚きは更に大きな声となる。


ここまでの展開で「得意の豪腕は通用しない」と見た大月は、増田の堅いガードを崩すべく、重い右ローを次々に叩き込んでいく。増田の左足はあっという間に真っ赤になったが、ガードだけは下がらない。それどころか、右ローにもカウンターのパンチを合わせられてしまう。

完全に追い詰められた大月は、挑発を繰り返して性格的にキレやすい増田のパンチを誘う。大月自身もカウンターを狙うが故の行為だったが、この日の増田は絶対に自分から手を出さない。たとえレフェリーから「攻めが消極的」と見なされてイエローカードを貰っても、増田はお構いなしに大月の出方をじっと待ち続ける。そして我慢できなくなった大月がパンチを出せば、増田は「待ってました!」とばかりにカウンターを合わせる。徹頭徹尾、カウンター狙いの増田に対して、大月は手も足もでない状態。いよいよ増田の勝利が見えてくると、増田応援団は大歓声を上げ始める。


5R、もう後がない大月は、これまでにも増して増田を挑発。だが、そんな大月を待っていたのは増田のカウンター…ではなく、「大月!お前が手を出さなきゃ負けるだろ!」という観客からの厳しい野次。しかし、自身もカウンター狙いの為、大月の手数もまったく少なかった。う〜ん、この試合がこんな展開になるとは、全然予想しなかったなぁ。


ついに試合は終了。判定の結果は、聞くまでもなくフルマークで増田の勝利。露骨に悔しさを露にしながら会場を後にする大月に対して、増田の帰りの花道はお祭り騒ぎの状態。多くの応援団が増田の事を祝福していた。


この試合は「今日の増田は巧かった!」の一言に尽きるだろう。「打たれ弱い」という大きな弱点を持つ増田が、最初から最後まで「観ていて危なっかしいシーン」がなかったのだから、大月対策は万全という他はない。相手のプレッシャーに負けず、挑発にも乗らず、ただ自分が立てた作戦を遂行する。今日の増田からは、ベテランならではの精神力の強さを感じた。本当にお見事でしたな。

対する大月、今日は「してやられた」という感じだね。2R〜4Rに見せていた右ローは重さもあったし、結構有効打になっていたと思うので、もう少し多用していれば違った展開になった気もするんけどねぇ。ま、ここで腐る選手ではないと思うので、捲土重来を期待したい。

雑感

なかなか、いい試合が続いたように思うが…僕としては今一つだなぁ。第二試合における身びいきの激しいレフェリング、セミファイナルでの山本真弘の失速、そしてメインイベントで大月晴明の大砲が不発だった事が主な原因かな。ま、セミとメインに関しては、藤原あらしの勝負強さ、そして増田博正の辛抱強さは楽しませてもらったけどね。特に増田は、大月ファンの僕でも負けを認めてしまう程に巧かったなぁ。

あとは第三試合のイケメン対決もなかなか良かったね。ムエタイスタイルの中村元気、パンチ主体の岩切博史…どちらもこの先が楽しみな選手。これからもう少し注目して観戦していこうと思う。


以上、長文失礼…しちゃいけないな。今日の「真のメインイベント」はこれからなのだから。