2/25 SB 後楽園ホール興行 観戦記

Mask_Takakura2007-02-28

SBが久々に「コンセプト」を持って興行に挑む

本日は後楽園ホールにてSB(シュートボクシング)を観戦。


今日のSBの興行の売りは「SB vs ムエタイ 全面対抗戦」。今宵SBには、現役ラジャダムナン王者であるビックベン・ケーサージムを筆頭に、ラジャダムナンやルンピニーで活躍するムエタイ戦士達が襲来する。これを迎え撃つのは…「S-CUP 2006覇者」緒形健一、「名勝負製造機」大野崇、「SBの次世代エース候補」菊地浩一、「SBの絞首刑人」石川剛司の四人。S-CUP絡み以外では、久々にコンセプトを持った今回の興行、SB勢は全勝する事ができるか?


チケット購入、A席4000円。相変わらず安いねぇ。パンフレットは1000円。やや大きいのがタマに傷だが、和風のデザインが素晴らしい上、内容も読みごたえがあってGOOD。観客の入りは椅子席約九割&立ち見で満員。ヨシヨシ。

細かい話題アレコレ

さて今日のSB観戦は、珍しく一人での観戦ではなかったのだ。psyzohさん(id:psyzoh)、フリジッドスターさん(id:frigidstar)、PON君(id:pon-taro)を伴っての観戦となった。観戦の理由は三者三様、psyzohさんは「S-CUPで優勝した緒形選手の続きが観たい」、フリジッドスターさんは「今日の興行に『続・S-CUP』を感じたから」、PON君は「昼間に観戦したDDTの出来がイマイチだったから」。ま、理由はそれぞれ違うけど、いつもは一人で観る事が多いSBを皆で観戦できるのは良い事だな。


あと、SBの興行に変化が現われていた。昨年一年を通して使用し続けていたレーザー光線による演出を止め、大型モニターを使用した煽り映像を使っていた。僕としてはレーザー光線による演出がなくなったのは、ちょっと残念。でも煽り映像はなかなか出来が良かったと思うね。

第一試合 前座に「2分3R制」を起用したのは良いと思います

スターティングクラスルール 56kg契約 2分3R
○岩崎晃久(170cm/55.8kg/大村ジム)
●鈴木友則(167cm/55.0kg/湘南ジム)
[判定 2−0]

第一試合は両者共に2戦2敗という、競馬でいうところの「未勝利戦」となった。


試合は「『打撃を放ってはクリンチ』という事を繰り返す」という、非常に単調な展開となった。んで、あっという間に2分3Rは終了。正直、両者に差なんてつけられない内容だったが…ミドル、ワンツー、膝蹴りを駆使した岩崎が、ジャッジ二名の支持を集めて勝利した。


ま、鈴木もローやミドルで粘ったんだけどね。

第二試合 ここにMEGATON FIGHTをもってきたのも正解だと思います

スターティングクラスルール ヘビー級 2分3R
○井上俊介(174cm/体重未発表/フリー)
●GORILLA(191cm/体重未発表/SAMURAI SWORD)
[判定 3−0]
※GORILLAは3Rにダウン1

元吉田道場の井上俊介、今日はセコンドに宍戸大樹を従えて入場。最近はシーザージムで練習しているのかな?対戦相手はPANCRASE MAGATONを母体とするSAMURAI SWORD出身のGORILLA。組み技格闘技から転身した選手同士の対戦というワケだな。


んで、試合は予想通りの「MEGATON模様」に。やや大味ながらも派手なパンチが交差する展開を前に、観客は大いに盛り上がる。そんな中、太った体型に似合わずキレのあるミドルやローを駆使して優位に立ったのは井上、リーチが長い上に次々に繰り出されるGORILLAのワンツーを前にしても、臆する事なく打撃を返していく。

そして3R終盤、井上のワンツーがGORILLAの顔面を打ち抜いた。GORILLAの大きな体が崩れ落ちれば、観客は歓声でこれを支持。で、これが決定打となり、判定3−0で井上が勝利を手にした。


ふむ。井上は前回の試合では組み技を狙いすぎるあまりにスタミナを消耗してけど、今回はみっちりと打撃の練習を積んだらしい。シュートボクサーとしてしっかりと成長してるねぇ。いい事だよ。

第三試合 活きの良い選手が快勝したのは良い事だと思います

フレッシュマンクラスルール 57kg契約 3分3R
○山本秀峰(165cm/57.0kg/マッハ道場)
●中森保貴(170cm/56.8kg/シーザージム)
[1R 1分16秒 KO]
※3ダウン

SB軽量級のホープ・中森保貴と対戦するのは、マッハ道場の山本秀峰。山本の師匠、桜井"マッハ"速人は今日、ラスベガスで勝利を修める事ができたが、山本はコレに続く事はできるか?それとも中森が、先輩・森谷吉博が巻いていたベルトの領域に一歩近づくのか?


…なんて思っていたら、試合はあっという間に終了。

公式発表では165cmでありながら、どう見てもそれ以上に身長が低いと思われる山本だったが、いきなり突進してロー〜右フックを放てば、この一撃で中森はアッサリとダウン。観客が驚く中、山本は立ち上がった中森にワンツーを叩き込んで二度目のダウンを奪う。

なんとか立ち上がった中森は、自ら下がって距離を取りつつロー、ミドル、ハイといったキックを放って試合の立て直しを図ったが、山本はこれに怯む事なく前進して右ストレートをヒットさせた。喰らった中森が背を向けた時点でレフリーが試合を止めた。


いや〜、山本はなかなかいい勝ち方をしたなぁ。あんなに体が小さいのに、前進を続ける度胸は見事というかねぇ。

第四試合 ここでお笑いの要素を持ってきたのも絶妙ですな

エキスパートクラス特別ルール 55kg契約 3分3R
○えなりのりゆき(170cm/54.7kg/シーザージム/SB日本スーパーバンタム級 三位)
高橋拓也(170cm/55.0kg/習志野ジム/MA日本バンタム級四位 元王者)
[延長判定 2−0]
※本戦判定 0−0

名前を「えなりのりゆき」に改名してからは目下五連勝中と好調のえなりだが、今日は密かに大一番を迎えた。何故なら、対戦相手の高橋拓也は元MA日本バンタム級王者という立派な肩書きの持ち主だからだ。岡持(おかもち)のコスプレで入場して観客の笑いを誘ったえなりだが、これまで大物との対戦経験は皆無だった男は、このチャンスをモノにできるか?


1R、左ミドルを連発して試合を組み立てる高橋に対して、えなりは右ローで対抗。中盤、えなりは華麗な一本背負いでシュートポイント1を獲得すると、その後もボディストレート等で高橋の勢いを削いでいく。

2R、高橋はやはり左ミドルを連発。ボディへは膝蹴りを突き立て、ヒジ打ちも多用。終盤にはワンツーをえなりの顔面に叩き込む。やや劣勢となったえなりだが、右ローや左ボディブロー、ワンツーで対抗して自分のペースを保とうとする。

3R、やはり左ミドルを連発する高橋、さらにはカット狙いのヒジ打ちも連発。だがえなりも右ロー、右フック、右ボディでガッチリと喰らいつく。うん、今日のえなりは頑張ってるね。

試合終了。判定の結果は三者共に29-29、試合は延長戦に突入。


延長R、序盤にえなりのワンツーがクリーンヒット。観客が歓声を上げる中、えなりは一気に距離を詰めてパンチを打ち込もうとするが、中盤は高橋が距離を作って左ミドルを連発してペースを巻き返す。

だが終盤、えなりの左ストレートがクリーンヒット。大きく仰け反る高橋、えなりは再び距離を詰めて攻めようとするも、高橋は左ミドルを連発してえなりを攻め込ませない。

で、延長Rも終了。判定の結果は2−0でえなりが辛勝。最後の左ストレートが明暗を分けたな。


うむ、今日は非常に苦しい試合だったけど、この一戦を制した価値は大きいと思うなぁ。これからもどんどん大物との対戦を続けて欲しいねぇ。

第五試合 SBは時折、思わぬ強豪を連れてくる事がありますな

エキスパートクラス特別ルール 70kg契約 3分3R
○ファディル・シャバリ(182cm/69.6kg/オランダ/チーム サワー/WFCA世界ミドル級 王者)
●山口太雅(176cm/70.0kg/寝屋川ジム/SB日本ウェルター級)
[判定 3−0]

チーム・サワーから新たなる強豪が登場。ファディル・シャバリは、これまで73戦64勝6敗3分という戦績を残しているが、これまで倒してきた選手が凄い。ムラッド・デレッキー、ドラゴ、金沢久幸、アリ・グンヤー、そしてライアン・シムソン。本物の強豪達から勝利を得ているシャバリ、左目は義眼だというのにこの戦績は本当に見事。対戦相手は最近、密かに実力をつけてきた寝屋川ジムのNo.2の山口太雅。もうワンランク上を目指したい山口としては、シャバリは絶好の相手なのではないかな?


だが試合では…全体を通してシャバリが山口を圧倒した。

シャバリは1Rから強烈無比な右ロー、右フック、ボディブロー、ワンツーのコンビネーションで山口の動きを牽制。その打撃はかなりの切れ味と重さを誇り、打撃が出る毎に観客から驚きの声が上がった。対する山口は押され気味の展開が続いたが、左ミドルと左ローを軸とした打撃で必死に喰らついていく。2Rには投げを放ってシュートボクサーの意地を見せるが…シャバリの余裕が消える事はなかった。シャバリは逆に、飛び膝蹴りや膝蹴りで山口にダメージを与える。更には山口のパンチはスウェーでかわしていく。アウェーなのに横綱相撲だな。

迎えた3R、山口は序盤にラッシュを仕掛けるが…やはりシャバリの牙城は崩れない。山口の顔面に前蹴りを放ったシャバリは、この後も必要以上には山口を攻め込まずに、最後までマイペースにワンツー、ボディブロー、膝蹴りを放って試合を優位に進めた。

試合は判定となり、3−0でシャバリが勝利した。


う〜ん、今日のシャバリは「顔見せ」って感じの試合ぶりだったけど、その強さの片鱗は見れたかな。本気になったらもっと強いんだろうなぁ、この人。対する山口、敗れたのは残念だったが、むざむざと敗れたのではなく、持っている打撃をすべて駆使したと思う。彼に必要なのは経験、ならば…これも経験のうち、というかね。寝屋川ジムNo.2として、更なる成長に期待したいね。

とりあえず、ほっと一安心

「10分休憩」と名を借りた20分休憩の後、「♪シィ〜ザァ〜、シィ〜ザァ〜」とテーマソングが流れれば…出てくるのは当然この人。シーザー武士会長がリングインして観客に向かって挨拶を行った。

「この世に、二つとないものを創る」という意味を込め、今年のシリーズ名を「無双」とさせていただきました。今日はご来場、誠にありがとうございます!(観客拍手)


1985年にSBを創設しまして、約10年後の1995年に第一回のS-CUPを開催しました。そして…そこから約10年経った2006年、5回目のS-CUPにして二人目の日本人チャンピオンが誕生しました。そしてまた今年、こうしてSBの興行を開催できるのは、一重に協賛会社各位、そして多くのファンの方々のお陰です。ありがとうございます!(観客拍手)


皆様から受けた恩義は、SBを通じて「世の中のためなるような若者を育てていく事で返していこうと思います。高い所からではありますが、厚く御礼申し上げます。今日はありがとうございます!(観客拍手)

おっとシーザー会長、以前よりも滑舌が良くなってるジャン!脳内出血で倒れて以来、喋っていても「呂律が回っていないなぁ」と感じる事が多かったけど、今日の喋りを聞くにつけ、もう脳の病気の心配はなさそうだな。良かった良かった!

第六試合 SB名物「勝つまで延長!」がココで出てきたのも素晴らしいです

エキスパートクラスルール 60kg契約 3分5R
○アーリー・イングラムジム(170cm/59.8kg/タイ/ルンピニー スーパーバンタム級)
●石川剛司(170cm/59.8kg/シーザージム/SB日本フェザー級 一位)
[再延長判定 2−1]
※延長判定 1−1
※本戦判定 0−0

さてここからは「SB vs ムエタイ 全面対抗戦」。「ヒジなし、投げあり」というSB側に優利なルールなのが気になるところだが、ここは素直にSB選手の活躍を期待しよう。


で、その第一試合には「SBの絞首刑人」石川剛司が登場。


昔は対戦相手を尊敬しない態度を連発で、マニアのハートを逆撫でしていた石川だが、最近はそういう事もなくなって一安心といったところ。前回の試合では、S-CUPでのスペシャルマッチで及川知浩と対戦するも、及川の隠し技・ヒジ打ちを喰らって無念のTKO負けを喫した。今日は再起戦となる石川、カノンスック・フェアテックスを相手に二連勝を修めた実力の持ち主であるアーリー・イングラムジムから勝利を奪う事はできるか?


そして試合は、SB名物「勝つまで延長!」ルールの為に長丁場となった為にダイジェストで。

試合全般を通して左ミドルを連発するアーリーに対し、石川は右ローやワンツーで対抗すると、隙を狙って投げを狙っていくも、なかなか投げきれない。こういった展開が淡々と続く中、石川は3R終盤に奇麗な首投げを決めるも、これはシュートポイントにはならず。他にも石川は、4R序盤にワンツーの連打をヒットさせ、5R終盤にもワンツーの連打を繰り出すも、アーリーは左ミドルの手を最後まで休める事はなかった。

試合終了、判定の結果は…差らしい差がない試合展開だった事もあり、ジャッジ3名は全員ドロー裁定。試合は延長戦に突入。


延長R、このラウンドに勝負を賭けた石川は、気力を振り絞って序盤にワンツーのラッシュを仕掛ける。勇ましい石川の姿に観客は声援を贈ったが…、これがマズかった。このラッシュで逆にスタミナを切らしてしまったのだ。すると後半、アーリーが左ミドルを連発、一気にポイントを挽回してきた。淡々と繰り出されるミドルを前に石川は反撃する事ができない。厳しいね。

延長Rも終了、判定は「前半の石川の攻めを評価」「後半のアーリーの左ミドルを評価」「その両方を評価」と三者三様に分かれた為に、試合は再延長戦に突入。おっと、再延長戦への突入は久々だなぁ。


そして再延長R、ついに両者に差が現われた。前ラウンドのラッシュでスタミナを切らした石川に対し、アーリーはまだまだ余力を残している状態だ。アーリーはこれまでと同じく左ミドルを連発、更にはストレートで石川の顔面をカットする。時折はパンチで反撃する石川だが、手数の差は歴然。アーリーは最後まで左ミドルで石川を蹴り続けた。

再延長R終了、判定の結果は2−1でアーリーが勝利。この展開で石川の勝利にするのはヒドいな。


う〜ん、石川は頑張ったとは思うんだけどねぇ…。以前から弱点とされていた「スタミナ不足」が、この試合では決定的な差となって現われたな。まあ、年齢的な事を考えると今からスタミナをつけるのは難しいとは思うが(33歳)、これからもっと国際戦を経験するのであれば、ここは越えなければならない壁だと思うなぁ。再起に期待。

第七試合 「隠れたエース候補」が快勝を修めたのが良かったです

エキスパートクラスルール 70kg契約 3分5R
菊地浩一(175cm/69.8kg/寝屋川ジム/SB日本ウェルター級 二位)
●ファープラターン・シンマナサック(172cm/67.6kg/タイ/ラジャダムナン スーパーウェルター級)
[2R 2分45秒 TKO]
※タオル投入

SB vs ムエタイ 全面対抗戦」、第二試合には「SBの次世代エース候補」菊地浩一が登場。


ゲンナロン・ウィラサクレックや"SHINOBU" ツグト・アマラを撃破し、R.I.S.E.の中量級トーナメント・D.O.A.でも優勝経験を持つ菊地、肩書きだけ見ればもっと上のステージでの活躍を期待したいが…、現状は宍戸大樹・緒形健一・土井広之といった面々の陰に隠れている。S-CUPでは実力者のライアン・シムソンに惨敗した菊地、今日の相手はルンピニーの元ランカー。ここはスカッと勝って存在感をアピールしたいところだ。


1R、菊地はいきなり強烈な左ローで相手の機先を制すると、足払いでファープラターンをなぎ倒す。観客が歓声を上げる中、菊地はその後も左ローを連発してファープラターンにダメージを与えると、終盤には左ストレートで相手をグラつかせた。1R終了、菊地の強さを観た観客から歓声が上がる。

2R、やはりワンツーと左ローで試合を支配する菊地。特に左ローはかなり有効らしく、ファープラターンは右足をしきりに気にしている状態だ。それでもファープラターンは左ミドルで反撃したが…。中盤、菊地はストレートと左ローの連打でファープラターンからスタンディングダウンを奪う。

何とか立ち上がったファープラターンだが、菊地は容赦なく左ローを連発して意識を下に散らすと、ガードの下がった顔面に右ストレートを叩き込んで2ダウン目を奪う。観客が歓声を上げる中、もはや戦闘不能と見たファープラターンのセコンド陣がタオルを投入。観客の歓声が更に大きくなる中、菊地が自分の攻めを貫いて完勝した。


うむ、今日の菊地は強かったなぁ。D.O.A.優勝の肩書きは伊達ではない、というかね。年齢的にはあまり時間がない選手なので(30歳)、今年は一気に飛躍を期待したいところだね。

第八試合 「名勝負製造機」が勝利を手にしたのも良かったです

エキスパートクラスルール 72kg契約 3分5R
○大野崇(180cm/71.8kg/UNIT-K/ISKA世界ミドル級 王者)
●プラカーイケーオ・シンマナサック(173cm/72.0kg/タイ/ラジャダムナン ミドル級)
[2R 47秒 KO]
※左膝蹴り

SB vs ムエタイ 全面対抗戦」、第三試合には「SBの名勝負製造機」大野崇が登場。


今やすっかりSBに定着した大野は、これまでに緒形健一、土井広之、宍戸大樹菊地浩一アンディ・サワーといったSBの中心選手と対戦して激闘を連発、SBにおける地位を不動のものとした。しかし彼のSBでの戦績は、これまで2勝4敗と負け先行。SBの餅つき大会ではひたすら餅を突かされた大野だが、今日は未知のムエタイ戦士から勝利を奪う事ができるか?


1R、いきなり大野の左のキックが唸る。左ロー、左ミドル、左ハイが次々にプラカーイケーオにヒットすれば、観客は早くも歓声を上げている。対するプラカーイケーオ、右ミドルで必死に反撃するも…既に勢いの差は歴然。観客は大野の圧勝を確信した歓声を上げるが…、大野は距離を詰めても必要以上にはラッシュを仕掛けない「様子見モード」。大野のじれったい態度を目にした観客から野次が飛ぶ。厳しいねぇ。

2R、大野が仕上げに入った。プラカーイケーオに対して左ミドルを効かせつつ、組み付けばボディへ膝蹴りを叩き込み…最後はガードが甘くなった顔面へ右の膝蹴り一閃。観客の歓声の中、モロに喰らったプラカーイケーオは一発でダウン。そして彼が立ち上がる事はなかった。


う〜ん、正直プラカーイケーオは下の階級から体重を上げた選手で、「今も現役なのか?」と聞かれれば微妙なところなんだろうな。とはいえ、今の大野に必要なのは「KO勝利」だと思うし、この結果自体は良かったんじゃないかな?

第九試合 でも、この試合がこの結果なのは…厳しいなぁ

エキスパートクラスルール 70kg契約 3分5R
○ビックベン・ケーサージム(167cm/69.4kg/タイ/ラジャダムナン&WMCスーパーウェルター級 王者)
●緒形健一(172cm/69.9kg/シーザージム/S-CUP 2006 覇者SB日本スーパーウェルター級 王者)
[2R 1分4秒 KO]
※右フック

SB vs ムエタイ 全面対抗戦」、トリを飾るのはやはりこの人…S-CUP 2006を制した「SBの魂」緒形健一が出陣。


肉体は満身創痍の状態でありながら、尚もSBを背負って闘い続ける男・緒形健一。S-CUPへの切符は大野崇との激闘を制して手に入れた。S-CUPでは一回戦でダマッシオ・ペイジにダウンを奪われつつも最後はKOで下し、準決勝戦では後輩・宍戸大樹と死闘を演じた末にこれも撃破。決勝戦ではアンディ・サワーからダウンを奪って文句のない判定勝ちを修め、シーザー会長が涙を流す中でS-CUPの頂を制したのだった。しかし、緒形の闘いは終わらない。S-CUPの価値を更に高める為、今日は強豪を迎え撃つのだ。

対戦相手のビックベン・ケーサージムは現役のラジャダムナン王者であり、WMC王者である。打ち合いを得意とするビックベンは昨年、あのジャン・スカボロスキーを1RにKOで下しているのだ。名前がコールされるとマッスルポーズで上半身の筋肉を誇示するビックベン。成程、確かに打ち合いには強そうだ。


S-CUP以上の大一番を迎えた緒形。ラジャダムナン王者を下す事はできるのか?


1R、まずはビックベンは様子見モード。距離を取りながら牽制のパンチを放つが…これがとんでもなく早い上に、とんでもなく重いのだ。ガードの上から圧力を掛けるビックベンを目にした観客から早くも悲鳴が上がる中、ビックベンは左ローも駆使して緒形の動きを止めていく。対する緒形、こちらもこのラウンドは様子見に終始。距離を取りながら右ローを連発してビックベンの動きを警戒する。

迎えた2R、ビックベンがその牙を剥いた。緒形のガードの上から強烈なワンツースリーを叩き込むと、もうこの時点で緒形の腰が落ちてしまう。恐るべき打撃の重さを見た観客から悲鳴が上がる中、ビックベンは左ローを連打して緒形の意識を下に散らすと、その顔面にワンツーを叩き込んで最初のダウンを奪う。

もはや実力差は歴然。観客は立ち上がった緒形に必死に声援を贈ったが…その想いは通じなかった。ビックベンはダメージの大きい緒形に右ストレートを叩き込めば、モロに喰らった緒形は完全にダウン。そして彼が立ち上がる事はなかった。


S-CUP覇者ラジャダムナン王者に完敗」。観客が悲しみに包まれる中、シーザー会長が慌ててリングイン。「勝負ですから、こういう時もあります!SBは最後まで真剣勝負でやります!」と叫ぶ。しかしその言葉は…観客を慰める為に口にしたというよりは、会長自身が自分に言い聞かせる為に言ったように見えた。それが逆に悲しかった。


ビックベンは強かった。あれだけの破壊力を持つ打撃を放てるムエタイ戦士が、ブアカーオ・ポー・プラムックやゲンナロン・ウィラサクレック以外にもいた、という事実が凄いね。ラジャダムナン王者という肩書きも納得、というかねぇ。ムエタイは本当に奥が深いなぁ…。

そして緒形。相手がラジャダムナン王者であるとはいえ「何もしないうちに負けてしまった」という事実が現実として突き刺さる。数年前、アンディ・サワーに完敗し、シェイン・チャップマンに惨敗した緒形。S-CUP 2004では一回戦で敗北した緒形。それでも彼は昨年、サワーを下してS-CUP 2006を制した。彼の歴史は同時に敗北の歴史でもあるのだ。


残された時間は少ない緒形だが、彼はここから必ず再起するだろう。必ず。

雑感

興行全体を見渡すと、試合に起伏があって面白い興行だったと思う。でも、今日の観客の沸き方はどこか散漫だったように感じたなぁ。えなり選手以外にも、前座の方でもう一人くらい「お馴染みの選手」がいれば、もっと盛り上がったような気もするんだけどねぇ。…菱田先生の出番、まだかなぁ?


それにしても緒形健一の敗北は…痛い、痛すぎる。S-CUP制覇後の第一戦が完敗劇とはねぇ。ま、SBを長く観戦している僕としては、緒形はここから這い上がる選手だと信じているけど…、K-1 MAX 日本予選で宍戸大樹が一回戦負けしたこのタイミングでの敗北は「SB全体のイメージダウン」に繋がる、というかねぇ…。


二人とも、次の興行での捲土重来に期待したい。


以上、長文失礼。