12/2 K-1 東京ドーム興行(地上波) 簡易観戦記

あれ?意外と面白いジャン!

藤原紀香

さあ今年の決勝ラウンドは、なんと世界129ヵ国での中継が実現です!まさに世界の人々がたくさん見守る中、今夜K-1王者が誕生しますっ!


実は正直、僕は今年のK-1 WORLD GPの決勝戦には期待をしていなかった。代わり映えしないメンバー、特に大きな目玉や隠し玉もない、いつもの決勝戦。しかし蓋を開ければ、そこには意外なドラマが待っていた。苦悶するボンヤスキーホーストの引退、アーツの大躍進、そして仁王立ちするシュルト。TV放送日より遅れる事、一週間。今こうして観戦記を書いているんだが…、ズバリ言ってオンタイムで見ていれば良かったなぁ、と後悔する事しきり。

では、観戦記をば。

第一試合 今年のK-1のドラマは、この試合から始まっていた

2006 K-1 WORLD GP リザーブファイト 3分3R + 延長3分1R
ピーター・アーツ(192cm/111kg/オランダ/チーム アーツ/2005 K-1 WORLD GP BEST8)
●武蔵(185cm/102kg/日本/正道会館/2005 K-1 WORLD GP BEST8)
[1R 2分53秒 KO]
※2ダウン

試合の感想

試合前の声援は、武蔵よりもアーツの方が多かった。武蔵は今年一年で随分と株を落としたけど、人気は等身大になったような気がする。

んで試合は…なんだか「アーツが本気になったら、武蔵になんていつでも圧勝できる」って感じ。自分の年齢に合わせて闘い方を変化させるアーツだけど、こんなにパンチを連打するとは思わなかった。恐らく武蔵も予想していなかったのだろう。

っていうか、武蔵はああいう「ストレートな圧力」には滅法弱い印象があるね。しかしまあ、武蔵くらいの年齢で大きな弱点を残しているって事は「もう限界」って事じゃないのかねぇ?来年はどうなるんだろ?

藤原紀香

特にグランプリにはねぇ「魔物」が棲んでいますから、何が起こるかわかりませんよっ!

この後の波乱の展開を予見したかのような紀香姉さんの言葉。さすがはベテラン。それにしても陣内友則との交際は意外だった。

第二試合 今年もそびえ立つ、巨大な壁

2006 K-1 WORLD GP 準々決勝戦 3分3R + 延長3分1R
セーム・シュルト(212cm/128kg/オランダ/正道会館/2005 K-1 WORLD GP 王者)
ジェロム・レ・バンナ(190cm/115kg/フランス/レ バンナ Xトリーム チーム/2005 K-1 WORLD GP BEST8)
[判定 3−0]
※バンナは2Rにダウン1

試合の感想

バンナは1Rはボディへのストレートで力強く攻めて、2Rはローキックをイン・アウトの両方から放つ。バンナがとったシュルト攻略の戦法は正しいと思う。まあ、それだけに2Rの左ハイキックによるダウンが痛いなぁ。で、3Rは完全に失速。体格で負けているのに残りの体力でも負けてしまっては、もはやバンナに勝ち目はないというかねぇ。

逆にシュルトは強かったなぁ。前にグーンと伸びる前蹴り、巨体から繰り出される膝蹴りはかなり強烈。2R、バンナの視界の外から放った左ハイキックも見事。3Rはバンナの間合いの外からパンチを放ち続ける「逃げの姿勢」、シュルトの巨体でこれをやられては手負いのバンナではどうにもならないよなぁ…。

藤原紀香

あ、あ、あああぁぁぁっ!

2Rにバンナが倒れた瞬間、公平な立場であるはずの紀香姉さんも思わず声を上げてしまう。試合前に「一番、期待しているのはバンナ」と発言していた紀香姉さん、その心中はいかに?それにしても陣内友則との交際は意外だった。

第三試合 ラストダンスは終わらない

2006 K-1 WORLD GP 準々決勝戦 3分3R + 延長3分1R
アーネスト・ホースト(189cm/102kg/オランダ/チーム ミスター パーフェクト/推薦選手)
ハリッド“ディ・ファウスト”(179cm/93.3kg/ドイツ/ゴールデン グローリー/2006 K-1 USA GP 王者)
[延長判定 3−0]
※本戦判定 1−0

試合の感想

ホーストの引退を悲しげに煽るウェットな映像の中、若い頃のホーストの姿がチラッと映った。そのシルエットは圧倒的に美しくて、この頃のホーストは女性ファンも多かったんだけどね。対するハリッド、そうかこの人は実業家としての一面もあるのか。知らなかった。

「4 Times Chanpion」のホーストは試合運びが巧い。開幕戦の試合では危なっかしい場面も多かったが、今回の闘いぶりは安定していた。1Rに繰り出した右ハイキックは見事だし、3R序盤にハリッドが前に出た場面でも綺麗にカウンターを合わせている。往年のコンビネーションこそ出なかったものの、とても現役を引退する選手の姿には見えないねぇ。大したモンですよ、ハイ。んで、負けたハリッドについては…ホーストとの体格差には手を焼いたけど、どんどん前に出る姿は好感を持った。次回に期待。

それにしても…この展開で延長はないでしょ。本戦だけでホーストの勝ちじゃないの?

藤原紀香

やはり、ここまで色んな苦しい事を切り抜けてきましたしね。ここからのホースト選手の闘いぶりに注目したいですね。

K-1黎明期からホーストを見てきた紀香姉さんならではのコメント。ちょっとした言葉に妙に重みがある。それにしても陣内友則との交際は意外だった。

第四試合 若き力を粉砕する極真魂

2006 K-1 WORLD GP 準々決勝戦 3分3R + 延長3分1R
グラウベ・フェイトーザ(193cm/100kg/ブラジル/極真会館/2005 K-1 WORLD GP 準優勝)
ルスラン・カラエフ(188cm/95kg/ロシア/フリー/2005 K-1 WORLD GP BEST8)
[1R 1分11秒 KO]
※パンチ連打

試合の感想

TVの煽り映像でも触れていたけど、K-1 WOLRLD GPの決勝に出場する二十代の選手はカラエフだけなんだよなぁ。ま、それもこれもテレビ主導でカードを組み続けた結果なんだけど…マズイねぇ、本当にマズイねぇ。

さて、そのカラエフだが…コンディション自体はバッチリだったんだけど、フェイトーザの伸びる左ハイキックをテンプルに喰らってしまってはどうにもならないね。自分が攻める事しか考えていない時に入っちゃった感じだな。ガードが甘いというか。ま、ああいう一撃を貰ってしまうのも経験のうち。数少ない二十代の強豪として、来年の活躍に期待したい。

藤原紀香

すご〜いっ!

フェイトーザの勝利が決まった瞬間、その鮮やかさを手放しに称える紀香姉さん。K-1の女性ゲスト陣の中では紀香姉さんだけが三十代、それでもビジュアル的にあのレベルをキープしているのだから大したもんだ。でも、他の二人が紀香レベルのコメントを出せない事実は…マズイねぇ、本当にマズイねぇ。それにしても陣内友則との交際は意外だった。

第五試合 予期せぬアクシデントで閉ざされてしまう道

2006 K-1 WORLD GP 準々決勝戦 3分3R + 延長3分1R
レミー・ボンヤスキー(192cm/103.2kg/オランダ/チーム ボンヤスキー/2005 K-1 WORLD GP BEST8)
ステファン“ブリッツ”レコ(187cm/98kg/ドイツ/ゴールデン グローリー/2006 K-1 FINAL PRELIMINARY 優勝)
[判定 3−0]
※レコは1Rに減点1、3Rにダウン1

試合の感想

キックボクシングという競技の性質上、ローブローはどうにも防ぐのが難しいんだけど…。一発目はローキック、二発目はバックスピンキック。どちらも「立ち技の攻防ではよくある光景」だけど、それら二発が立て続けにハードヒットというのは、何年か立ち技を見てきた僕でもちょっと記憶がない。ま、総合格闘技には「ミスター・ローブロー」こと窪田幸生がいるけどね。

で、二度も災難にあったボンヤスキー。そのダメージはかなり大きそうだったけど、まあ最後までよく闘ったね。レコのボディブローはかなりのスピードで、ボンヤスキーローブローのダメージと相まってかなり苦しんだと思うんだけど、3Rにダウンを奪った右ストレートは見事だった。

藤原紀香

わからないですねぇ〜っ!

ボンヤスキーがダウンを奪った瞬間、この勝負の行方についてコメントする紀香姉さん。いつもハツラツとしているのがこの人の強みだな。それにしても陣内友則との交際は意外だった。

第六試合(未観戦) 「流れの中の一撃」って言葉はあまりにも便利すぎる

2006 K-1 WORLD GP リザーブファイト 3分3R + 延長3分1R
レイ・セフォー(180cm/103.1kg/ニュージーランド/レイ セフォー ファイトアカデミー/2005 K-1 WORLD GP BEST8)
メルヴィン・マヌーフ(177cm/88.9kg/オランダ/ショータイム)
[1R 40秒 KO]
※右フック

試合の感想

あれ?HERO'Sではあれだけ力強い打撃を繰り出していたマヌーフが、K-1ではあっさりとKO負けですかい?…なんて思っていたら、どうも後頭部へのパンチだったらしい。よろしくないね。

第七試合 みんなホーストが好きだった

2006 K-1 WORLD GP 準決勝戦 3分3R + 延長3分1R
セーム・シュルト(212cm/128kg/オランダ/正道会館/2005 K-1 WORLD GP 王者)
アーネスト・ホースト(189cm/102kg/オランダ/チーム ミスター パーフェクト/推薦選手)
[判定 3−0]

試合の感想

2002年8月のDynamite!!での初対決の際、ホーストシュルト首相撲を捌く事ができずに膝蹴りを何発も喰らってしまったが、その図式はこの試合でも変わる事はなかった。たとえ首相撲がルールで禁止されても、シュルトはリーチの外からストレートや前蹴りを連発して一方的に攻める。

そしてホーストは…最後まで試合のペースを握れなかった。「大人と子供」と思える程の体格差、そして大きな年齢差。恐らくホーストは、シュルトのような選手を本当に苦手にしているんだろうねぇ。

それでも試合終了直前、ホーストは現役最後の突進を見せる。まるで「オレは本当は、まだまだ闘えるんだっ!」と言わんばかりの力強い前進。そして試合は終了、東京ドームの観客はスタンディング・オベーションホーストの引退を惜んだ。なんだかんだ言ったって、本当はみんなホーストが好きなのだ。

藤原紀香

本当にお疲れさまでした。いつもホースト選手の闘いには勇気・希望をもらいましたんで。きっとその精神はこのK-1に受け継がれていくと思いますし…本当にありがとう、そしてお疲れさまと言いたいです。

紀香姉さんのこの言葉が、すべてのK-1ファンの気持ちを代弁しているだろう。


ホースト選手、
本当にお疲れ様でした。

第八試合 今年のK-1はこの一戦で俄然、面白くなった

2006 K-1 WORLD GP 準決勝戦 3分3R + 延長3分1R
ピーター・アーツ(192cm/111kg/オランダ/チーム アーツ/2005 K-1 WORLD GP BEST8)
グラウベ・フェイトーザ(193cm/100kg/ブラジル/極真会館/2005 K-1 WORLD GP 準優勝)
[2R 1分2秒 KO]
※左アッパー

試合の感想

試合に出場する予定だったボンヤスキーは…ローブローのダメージが大きかった為に試合を辞退。そして対戦相手のレコは、左足を負傷して試合を辞退。そして、あれよあれよという間にアーツがトーナメント本戦へ劇的な復活を果たした。まあ「出来過ぎたブック」のようにも感じるけれど、ローブローを連発したレコが準決勝進出…って話もヒドイと思うので、これで良かったんじゃないの?

この試合ではアーツもフェイトーザも体調はバッチリ。二人とも一試合目を1RKO勝ちをしているからである。ベテランでもコンディションさえよければ、このような素晴らしい攻防を繰り広げるのだからK-1はもっとワンマッチを増やすべきだな。

しかしまあ、パンチと膝蹴りを主体に攻める今年のアーツは本当に強い。マジでこれからもう一度、全盛期を迎えそうな勢いだな。ベテランがこれだけ完璧な強さを発揮すれば、観客も大喜びするわな。

藤原紀香

やはり、K-1には「魔物」が棲んでいますねぇ!

何気にアーツのリザーブファイトでのコメントと繋がっている紀香姉さん。さすがはベテラン、やる事にソツがない。それにしても陣内友則との交際は意外だった。

第九試合(未観戦) ゴールデン・ボーイがようやく実力を発揮

スーパーファイト 3分3R + 延長3分1R
バダ・ハリ(197cm/94kg/モロッコ/ショータイム)
ポール・スロウィンスキー(190cm/106kg/オーストラリア/ファインダーズ ユニ ムエタイジム)
[判定 3−0]

試合の感想

スポナビの文章を読むと、ハリはかなりコンディションが良かったみたいだ。K-1の中で比較的軽い体重を活かしてスピードのある攻めを見せたようだな。今年は期待されながらも活躍できなかったハリだが、来年は仕切り直しの年として欲しいね。

第十試合 シュルトが最強、しかし光ったのはアーツの意地

2006 K-1 WORLD GP勝戦 3分3R + 延長3分2R
セーム・シュルト(212cm/128kg/オランダ/正道会館/2005 K-1 WORLD GP 王者)
ピーター・アーツ(192cm/111kg/オランダ/チーム アーツ/2005 K-1 WORLD GP BEST8)
[判定 3−0]
※アーツは2Rにダウン1/シュルトが2006 K-1 WORLD GPを制覇

試合の感想

シュルトはバンナ、ホーストを撃破しての決勝戦進出。アナウンサーは「これでアーツを倒せば、古き時代を叩き潰して真の新しい時代を築く事になります」と言っていたが…古き時代のK-1は既に破壊されているんだよね、モンスター路線によって。

今年二月の試合でアーツはシュルトから判定勝利を奪っている上、今日のアーツは心身共に充実。ならば、この試合でもアーツが勝つかな?と思いつつ観戦していた。そしてアーツは二月の試合と同じく、ローキックを連発してシュルトを崩していく。対するシュルトは膝蹴り、ボディブロー、ストレートで激しく応戦。

それでも躊躇する事なく前に出続けるアーツ、そしてシュルトの攻めも止まらない。そんな中、2Rにシュルトのボディへの前蹴りがズバリと入ってアーツは思わずダウン。観客も解説も、恐らくもすべての視聴者までもが応援する中、アーツは立ち上がった後ですぐに前に出て攻める。スゲェよっ、本当にカッコイイよっ!

まあ最終的には体格に優るシュルトがこの後も攻め続けて、2006年のK-1 WORLD GPの王者となったけど…今日のMVPは間違いなくアーツだね。K-1創生から13年、ピーター・アーツは36歳。残された時間は少ないけれど、せめて来年だけでも大輪の花を咲かして欲しいな。

…それにしても、ここまで祝福されないK-1王者も珍しい(笑)。シュルトシュルトで進化した姿を見せたとは思うけどねぇ。

藤原紀香

セーム・シュルト選手、本当に素晴らしいですよ、もう。あの〜、本当に強いですね。なかなかこの牙城は崩れないと思うんですが…。そしてアーツ選手なんですけど、本当に心から凄い「ありがとう」といいたいですね。もうあの〜、全身に鳥肌が立つくらい感動しましたし、そしてアーツ選手のここまでの意地。あの〜、若い選手達へのメッセージっていうのを感じましたっ!

勝者のシュルト以上に、敗者のアーツを大絶賛する紀香姉さん。またしても、すべてのK-1ファンの気持ちを代弁しているな。それにしても陣内友則との交際は意外だった。

雑感

いや〜っ、今日の興行は非常にドラマチックだった。とにかくアーツの頑張りには頭が下がる。リザーブマッチと準決勝戦での鮮やかなKO劇、そして決勝戦での意地。観戦記中にも書いたけど、来年はアーツの快進撃に期待したい。


ただ…。


「いつまでもアーツでもないだろっ!」と思うのも事実ではあるな。今年のK-1 WORLD GPの決勝戦は二十代の選手がカラエフしかいなかった。正直、若い力がもっと台頭していかないと…K-1に未来はないように思うね。そういえばNJKFの真王杯の決勝戦では、若い選手が次々にKO勝利を修めていたなぁ。K-1もそろそろ、本格的な代替わりを果たして欲しいね。


それにしても陣内友則との交際は意外だった。


以上、長文失礼。