12/2 PANCRASE ディファ有明興行 画像付き観戦記

二週連続のPANCRASEディファ有明興行、一週目は非ism系興行

本日はディファ有明にてPANCRASEを観戦。


二週連続のディファ有明興行となった今回のPANCRASE、その一週目は「本隊であるPANCRASEismの所属選手がまったく出場しない」という異色の興行となった。

しかし。本来、この興行の目玉は「世界の荒鷲坂口征夫の息子にして、俳優の坂口憲二の兄である坂口征夫のプロデビューだったのだが…坂口の怪我でこの話はお流れに。こうして、あっさりとピンチを迎えた今回の興行。一応はPRIDEで活躍したチェ・ムベPANCRASEデビューや、竹内出中西裕一によるミドル級王座決定戦などもあるが、これらのカードも坂口のデビュー戦と比べるとグレードは一枚落ちている。しかし「それでもショーは続く」、今日はカードの薄さを試合内容でカバーできるか?


チケットを購入、今回は6500円も掛かってしまった。最近のPANCRASEは当日券を購入するとバカみたいに高くついてしまうが…高すぎ。マジでもう、PANCRASEに行くのはやめようかなぁ。観客の入りは、残念ながら今回は500人バージョンのディファ有明を満員にできなかった。厳しいねぇ、ism vs GRABAKAの頃を知る者にとっては悲しい光景だな。

第一試合 う、う、う〜ん…感想なし

フェザー級 5分2R
△裕希斗(U-FILE CAMP.com)
△中村健太(禅道会広島支部)
[判定 0−0]

この試合の2Rから観戦。スタンドでの打撃戦は互角、ならばと裕希斗は中村をテイクダウンして上になりパンチを落とすも、中村は下から腕十字で逆襲。グラウンドの攻防も互角。

試合は判定までもつれ、結果は0−0のドローとなった。


う〜ん、正直…特に感想はないなぁ。

第二試合 そ、そ、そろそろキックの試合をしてよ

フェザー級 5分2R
吉本光志(171cm/63.8kg/AJジム/IKMF東洋ライト級 王者)
●山澤勇紀(163cm/63.3kg/スタンド)
[判定 2−0]

全日本キックの本隊であるAJジムの所属でありながらPANCRASEに参戦するのはこの人、吉本光志。デビュー戦では第一試合に出場した裕希斗と対戦、前半はスタンドで圧倒するも後半はグラウンドで苦戦し課題を残した。今回の対戦相手はスタンド所属の山澤勇紀、僕の周りには山澤応援団が座っていたのだが…その中には元骨法の小柳津弘もいたようだ。どういう繋がりなんだろ?


試合は終始、吉本ペースだった。

1R、吉本はスタンドで一定の距離をキープしつつ、ワンツー、左ハイキック、左ローキックを連発。対する山澤は序盤にテイクダウンを奪ってハーフマウントの体勢になるも吉本は脱出。ならばと山澤は強気にパンチやローキックを放つも、打撃戦であれば吉本の方が一枚上手。中盤に吉本の右ストレートを喰らった山澤は、ここから自ら下がるようになってしまった。

山澤は流れを変えるべく何度かタックルを敢行、しかし吉本が腰の強さを発揮して倒れない。そして距離が離れれば吉本のワンツーが山澤に刻まれる。山澤は終盤にも組みに行ったが、反対に吉本に倒されてしまう。寝ている山澤を上から見下ろす吉本は、かつてのミルコ・クロコップばりに立ち上がるよう指示。肝が座っているねぇ。


2R、スタンドでの打撃戦で試合をリードする吉本。ワンツー、右のインロー、ボディブロー、ハイキックといった打撃が山澤の体に吸い込まれる。打撃を恐れる山澤がどんどん下がってしまうが、吉本は容赦なく打撃を連打。

こうしてペースを掴んだ吉本は、中盤に勢いで山澤をスリップさせるとグラウンドで上になりパンチを落としていく。山澤は下から逆転の三角絞めを狙うが、吉本は危険を察知してすぐに立ち上がる。このような展開が二度続いた後、終盤は吉本が圧倒。右のハイキックがヒットすれば吉本応援団からは歓声が上がる。


試合終了、判定の結果3−0で吉本が勝利。勝った吉本はマイクで「PANCRASE伊藤崇文選手の試合を観て以来、総合格闘技の舞台で闘う事が夢でした。今日は試合に出場できて嬉しいです。皆さん、ありがとうございますっ!」と挨拶。


…そ、そ、そうだったのか。吉本の総合格闘技デビューって唐突な印象があったんだけど、まさか伊藤との出会いが切欠だったとはねぇ。そりゃそうと吉本は最近は全然、全日本キックで試合をしてないよなぁ。最近、全日本キックのライト級は層が薄くなった印象があるから、ここらで復活して欲しいんだがねぇ。

第三試合 こ、こ、怖っ!その1

ライト級 5分2R
昇侍(171cm/67.8kg/K.I.B.A.)
●荒牧拓(178cm/67.9kg/PANCRASE P's LAB横浜)
[1R 3分36秒 KO]
※顔面への踏みつけ

このところPANCRASEの軽量級戦線を荒らしまわっているのが、元MAミドル級王者の港太郎や、PANCRASEフェザー級の強豪・DJ.taikiなどが所属しているK.I.B.A.だろう。そしてこの試合に出場する昇侍もまたK.I.B.A.の所属。今年十月のデビュー戦では飛び膝蹴りで3秒殺という破天荒な勝利を得ている昇侍、その対戦相手はP's LAB横浜の荒牧拓。


試合開始、荒牧は昇侍に組み付き、体を浴びせてテイクダウンを奪う。しかし昇侍は速攻でリバース、されど荒牧は下からクロスガードでガチガチに防御しつつ隙を見てラバーガードを狙う。思うように攻められない昇侍は荒牧の体を持ち上げ、バスターで何度もリングに叩きつける。そして五度目のバスターで荒牧のクロスガードが解けた。昇侍は強気だな。

そして昇侍はパスガードに成功しサイドを奪うが、荒牧はすかさず下からの腕十字を極める。油断も隙もない展開だが、昇侍はこの腕十字を逃れて立ち上がり、寝ている荒牧の顔面を躊躇なく踏みつければ、喰らった荒牧は一発でグッタリ。観客が戦慄の一撃に凍りつく中、レフリーが慌てて試合を止めた。


勝った昇侍はマイクを握り「どうも。PANCRASE昇侍です。これから有名になります」とふてぶてしくアピール。


デビュー戦に続いてまたしても「恐ろしい一撃」で勝利を手にした昇侍。今後の活躍には期待したいが…正直こんなKO劇はあんまり頻発して欲しくないねぇ。荒牧は死んだかと思ったよ、マジで。

第四試合 こ、こ、怖っ!その2

ウェルター級 5分2R
ウマハノフ・アルトゥール(170cm/69.8kg/ロシア/SKアブソリュート ロシア)
●宮崎裕治(168cm/71.9kg/コブラ会)
[1R 1分3秒 KO]
※ジャーマン・スープレックス

今回の興行は全体的に地味なカードが揃っているが、この試合だけは異彩を放つ。何故ならこの試合でPANCRASEデビューを果たすウマハノフ・アルトゥールは、なんとあのロシア特殊任務部隊・スペツナズの出身だからだ。スペツナズといえば平時はスパイ活動、戦争時には破壊工作や要人の暗殺が任務…という、マジでシャレにならない部隊だ。ちなみにMETAL GEAR好きの僕としては、スペツナズという単語は非常に耳馴染みの深い言葉だったりする。

スペツナズの練習風景


久々に大きな幻想を持った選手がPANCRASEに参戦したが、入場曲は何故かピンク・フロイドの「呼べよ風、吹けよ嵐」(アブドーラ・ザ・ブッチャーの入場曲)だった。

Pink Floyd 「One Of These Days」(邦題:「呼べよ風、吹けよ嵐」)


ちなみに対戦相手の宮崎の入場曲はピンク・レディーの「モンスター」。同じピンクでもエラい違いだ(笑)。

Pink Lady 「Moster」


試合ではウマハノフが恐るべき実力を発揮。

試合開始と同時に前に出る宮崎をワンツーで牽制するウマハノフ。宮崎は寝技を仕掛けるべく腕を掴んで引き込もうとするが、流れの中でバックを奪ったウマハノフは強烈なフックを連打。その鋭さに観客が驚嘆する中、ウマハノフはなんとジャーマン・スープレックスで宮崎をリングに叩きつける。鮮やかな投げを目にした観客から歓声が上がる中、後頭部を打った宮崎は倒れたままピクリとも動かない。レフリーが試合をストップ、ウマハノフが衝撃のPANCRASEデビューを果たした。


勝ったウマハノフに代わってマイクを握ったのは、SKアブソリュート代表の松本天心氏。「こんな勝ち方をしてしまっては正直、PANCRASEには敵がいないですね。次はカーロス・コンディットと対戦させてください」と不敵にアピール。松本代表はヒールぶりが板についてるねぇ。


ま、松本代表の言う通りで、PANCRASEには彼の相手ができるウェルター級の選手はいないだろうなぁ。ズバリ言ってHERO'SやPRIDEに行った方がいいような気がする。PANCRASEにとって彼は刺激が強する、というか。



第五試合 つ、つ、強いねぇ

ヘビー級 5分2R
水野竜也(186cm/96.6kg/U-FILE CAMP登戸)
●三浦康彰(183cm/93.5kg/禅道会広島支部)
[1R 1分47秒 チキンウィングアームロック]

今年九月、PANCRASEデビュー戦でいきなり桜木裕司チョークスリーパーで撃破。PANCRASEのヘビー級戦線の第一線に躍り出た水野竜也。186cm、96kgという恵まれまくった体が最大の武器である水野だが、今日の相手の三浦康彰も体格だけなら負けてはいない。ならばこの試合は、水野の真の実力が試される一戦となるだろう。


試合開始と同時にテイクダウンを奪う水野。三浦は隙を見て何度も立ち上がろうとするが、水野は三浦が立ち上がる毎に足を掛けて転ばせていく。まるで柔道の乱取りのような展開の中で、水野はいつの間にかサイドポジションを奪うと、半身を起こして強烈なチキンウィングアームロックを極める。素人目に見ても脱出不能なのは歴然だったが肝心な三浦がギブアップしない。しかし結局、レフリーが試合を止めた。


やはり水野は強い。正直、PANCRASEの日本人のヘビー級では敵がいないんじゃないの?まあ、まずは空位になっているヘビー級王座の獲得に注力して欲しいね。

第六試合 い、い、意外にもこれが初の一本勝ちなのね

ウェルター級 5分2R
和田拓也(171cm/74.7kg/SKアブソリュート)
●ヨシロックT(174cm/74.4kg/和術慧舟會A-3) ※吉田直輔から改名
[1R 4分22秒 チョークスリーパー]

SKアブソリュートが主戦場を修斗からPANCRASEへ移動した時、その活躍を期待されたのがワダタクこと和田拓也。しかし彼のPANCRASEでの戦績は…11戦3勝3敗5分とまったく奮わない。前回の試合ではカーロス・コンディットと対戦、何もできないままチョークスリーパーで敗れてしまった。今回の対戦相手は、お腹の6パックが凄まじいヨシロックT。この試合が本戦でのデビュー戦の選手だ。和田としては、この世界の先輩としての意地を見せたいところだ。


試合開始と同時に前に出るヨシロック、和田は組み付いての膝蹴りで応戦。和田は牽制のミドルキックを放とうとするも、勢い余って一回転。ヨシロックはこれにタイミングをあわせてタックルを敢行してグラウンドで上になる。だが和田はブリッヂを効かせてリバース、ヨシロックは下から脱出しようとするも、和田はバックから体重を掛けてヨシロックを潰してバックマウントを奪い、パンチを落としながらスリーパーをガッチリと極めた。ヨシロックがタップして試合は終了。


実はこれがPANCRASEで初の一本勝ちとなる和田、この勝利の喜びをバク転で表現。よかったねぇ。


それにしても今日は一本勝ちが続くなぁ。正直、こんなPANCRASEは珍しい、いい事だ。普段もこれくらい一本勝ちが多ければいいのに。

色々な人々の挨拶

休憩を挟んで、PANCRASEを取り巻く人々が次々に挨拶を行った。

まずは今大会を欠場した坂口征夫が挨拶。「チャンスを貰ったにも関わらず、欠場してしまって申し訳ありません。必ずPANCRASEで試合をしますので、その時は応援をよろしくお願いします」。う〜ん、今回は残念な事になったけど、次の機会では華々しくデビューして欲しいねぇ。


続いて、来週のPANCRASEで対戦する石毛大蔵アライケンジが挨拶。石毛曰く「皆さんサンボは強いんです。今日はもうウマハノフと和田さんが一本勝ちしていますし、メインイベントでは竹内選手が一本勝ちしてSKアブソリュートに二本目のベルトを持って来ると思います」。対するアライの挨拶は「気合で殴り勝ちます」。シンプルだな。


この試合はもう来週の話なのか。なんだかせわしないねぇ。

第七試合 い、い、いよいよ昇り詰めてきたな

フェザー級 5分2R
井上学(167cm/63.7kg/U.W.F.スネークピットジャパン/PANCRASEフェザー級 四位)
●島田賢二(168cm/62.9kg/PANCRASE P's LAB東京)
[判定 3−0]

徐々に層が厚くなりつつあるPANCRASEフェザー級前田吉朗志田幹DJ.taiki山本篤といった面々が活躍する中、彼ら四人のすぐ後を追いかけているのが、この井上学だ。宮戸優光が率いるU.W.F.スネークピットジャパンの所属、打撃が得意技の井上はこれまで6戦して負けなしの戦績を誇る。今日はP's LAB東京の島田賢二を相手に勝利できるか?


1R、ワンツーや左右のミドルキックを繰り出す井上、対する島田はワンツーで対抗。両者の打撃は互角、ならばと井上は要所で片足タックルを敢行する。尚も「倒れまい」と踏ん張る島田、しかし井上も掴んだ片足を離さそうとしない。長い攻防の末にテイクダウンを奪う井上、上から鉄槌を落としつつパスガードを狙うも島田はこれを阻止。終盤、バスターを仕掛けた井上が立ち上がってのパスガードを狙うも、島田は下から蹴り上げて防御。

2R、右ミドルキックで牽制する井上がタックルを敢行するも、島田はカウンターの膝蹴りで迎撃。しかし井上は怯まずに片足タックルを継続、島田からテイクダウンを奪う。またしてもグラウンドで下になった島田は積極的にラバーガードを狙うが、井上は阻止しながらパンチを落としていく。この後で試合は膠着、島田の腕十字を井上が脱出したところでブレイクが掛かる。ここまで両者共に決め手がないねぇ。

終盤、井上のタックルを潰した島田、この試合で初めてグラウンドで上になる。しかし井上は下から島田の体を足で挟むと、見事にスイープを決めてマウントになってパンチを落とす。島田はハーフガードまで戻したが、井上のパンチは試合終了まで止まる事はなかった。

試合終了。勝敗は判定に委ねられたが、結果は3−0のストレートで井上の勝利。


試合中は決め手がなくてイライラしたけど、ま、終わってみれば井上が印象点を稼いで勝利した感じだね。ともあれ井上はこれで無敗をキープ。いよいよ次回の試合では上位陣の四人と闘う事になるのかねぇ?

第八試合 よ、よ、ようやく極まったか

スーパーヘビー級 5分3R
チェ・ムベ(190cm/111.6kg/韓国/チーム タックル)
河野真幸(192cm/119.5kg/フリー)
[2分 1分36秒 肩固め]

2004年〜2005年初頭までPRIDEで活躍していた「ムベ様」ことチェ・ムベPANCRASEに参戦。レスリングがベースのチェはどんな試合でもスープレックスを決めるのが持ち味だ。対戦相手は全日本プロレス出身の河野真幸。他団体で活躍していた選手同士の対戦となったこの対戦、河野の入場曲は「オリンピア」〜「HOLD OUT」というコンビネーションだった。全日本LOVEを感じるねぇ。なんで離脱したんだろ?




1R、リングの周りを回る河野に対して、リングの真ん中で様子を伺うチェ。そして河野に組み付いたチェが、いきなりスロイダーで河野を投げ捨てた。観客の歓声の中、グラウンドで上になるチェ。だが河野は下から鉄槌を浴びせると、立ち上がったチェの顔面を蹴り上げてグラウンドを脱出する。

しかしチェは怯まない。今度はジャーマン・スープレックスで河野を投げ捨てると、再びグラウンドで上になる。そしてポジションをマウントへ移行するチェだが、河野は何発かパンチを喰らいながらも…またしてもグラウンドを脱出。河野が上手いというよりは、チェのポジション取りがイマイチって感じ。

三度目の両者スタンド状態となったが、チェの三度目の投げは首投げだった。そのままグラウンドで上になったチェは、袈裟固めの体勢から足による腕固めを仕掛けていく。これは極まるかな?と思ったが、関節技に気を取られるあまりポジション取りが甘くなり、結局は河野にグラウンドを脱出されてしまった。あらららら。

まあ、それでも試合はチェのペースである事に変わりはない。亀の体勢で防御する河野のバックを奪ったチェは、上からパンチを落とながら河野を裏返し、グラウンドでサイドへ移行しつつ…今度はアームロックを仕掛ける。これで極まるかな?と思ったが、やっぱり河野が脱出してしまう。チェがポジションをマウントへ移行する中で1Rは終了。

チェはポジション取りはいいんだけど、どうにも極めが弱いねぇ。


2R、チェはパンチを振り回しながら突進、河野に組み付くとバックを奪って押し倒す。亀の体勢で防御する河野が立ち上がろうとするが、チェはミドルキックを河野の顔面に叩き込む。この一撃で河野の額からは大流血、すかさずドクターチェックが入る。河野にとっては厳しい展開が続くねぇ。

幸い河野の傷は浅く、試合は再開。河野はグラウンド、チェはスタンドの猪木アリ状態。河野は下から蹴り上げを連発、しかしチェはパスガードを決めてマウントを奪うと、そのまま肩固めを極める。今度こそ極まったかな?と思ったが…、どうやら本当に極まったようで、しばらくしてレフリーが試合を止めた。ヤレヤレ、ようやく極まったか。


久々の試合で快勝したチェはマイクを持ち、何故か「あなたが好きだからっ!」と叫んだ後でフィーバーポーズ。観客はヤンヤの歓声でチェの勝利を歓迎した。




う〜ん、この試合はもっと早い段階で決着がつく試合だと思ったんだけど、極めるまでにチェが随分と手こずったなぁ。試合前には「これからは総合格闘家としての実力もつける」とコメントしていたチェだが、この試合では大きな課題を残したね。ま、チェ以上に課題を残したのは河野なんだけどね。今日は大完敗、また一から出直しだな。

第九試合 な、な、なんだか凄い事になったなぁ

第六代ミドル級 KING OF PANCRASE決定戦 5分3R
中西裕一(180cm/81.3kg/フリー/PANCRASEミドル級 二位)
竹内出(180cm/81.8kg/SKアブソリュート/PANCRASEミドル級 一位)
[判定 2−1]

この試合は長い間、王座に君臨しつづけたネイサン・マーコートUFCへ転出するのに伴い、ベルトを返上して空位となったPANCRASEミドル級の王座決定戦である。今宵、PANCRASEミドル級では久々となる日本人王者が誕生する。王座を争うのは、PANCRASEミドル級では敵なしの竹内出と、このところは試合数が減っている中西裕一の二人だ。

PANCRASEのミドル級では圧倒的な実力で日本人最強を誇る竹内出、だが意外にも彼はPANCRASEの王座についた経験がない。これまで彼は王者マーコートに二度挑戦するも、いずれもリーチの長い打撃を前に一本負けを喫しているのだ。しかし、そのマーコートUFCへ転出、もはや竹内の戴冠を邪魔する者はいないくなった。あとはPANCRASEでは八ヶ月ぶりの試合となる中西裕一を撃破するだけだ。

いつものようにイズルガールを引き連れて入場する竹内だが、その表情はいつも以上に気合が入っている。対する中西は独自のチャンピオンベルトを巻いて堂々と入場、会場に大量に駆けつけている中西応援団の声援が凄まじい。PANCRASEでここまで荒っぽい声援を受ける選手を観るのは久しぶりかも。




1R、まずは距離を保つ両者、中西の左フック、右ミドルキックが竹内を襲う。対する竹内は中西のローキックをキャッチしてテイクダウンを奪い、いつものようにインサイドガードからパンチを落としていく。そして、いつものように有効打はなし。んで、僕はこの時は「う〜ん、これはいつも通りに竹内がグラウンドでガチガチに攻めまくって判定勝利するパターンだな」と思ってた。


しかし、試合は大荒れに荒れる。


パスガードを狙う竹内が立ち上がったのに合わせて巧くグラウンドを脱出した中西は、竹内のタックルにカウンターの膝蹴りを合わせた。この一撃が強烈に決まって竹内はフラフラの状態、顔面は大流血に見舞われた。中西応援団が大歓声を上げる中、中西はフックの連打で竹内を一気に追い込んでいく。思わぬ展開だな。

ワンツーが顔面にヒットし、組み付けば膝蹴りを連打、中西の攻勢は続く。追い込まれた竹内はコーナー際でバックを奪って膝蹴りを連打するが、中西はラウンド終了直前に竹内からテイクダウンを奪って上からパンチを落としていく。中西の勢いが止まらない。

1R終了、中西応援団は勝利を得たかのような大歓声を上げている。ふむ、元々打撃は苦手にしている竹内だけど、弱点を露呈しちゃったねぇ。いつ試合が止まってもおかしくない程の大流血も気になるところ。でもグラウンドは竹内の方が上だろう。「スタンドの中西 vs グラウンドの竹内」か、これは面白い試合になりそうだ。


2R、顔が腫れている竹内に対し、中西は容赦なく顔面にパンチを叩き込む。竹内はどうにかタックルを決めてテイクダウンを奪うも、顔面からの出血が本当に凄まじい。中西の白いタイツが返り血で真っ赤になる程の大流血、ここで竹内に一度目のドクターチェックが入る。う〜ん、大丈夫かねぇ?

幸いにして試合は再開、竹内応援団の声援を受けながら竹内はグラウンドで上からコツコツと鉄槌を落とす。圧倒的に劣勢な場面でも竹内はあくまで「いつもの竹内」、その姿がいじましい。この後、試合は膠着。やがてレフリーが二人をブレイクしたが、竹内の大流血がまだ止まらない。ここで二度目のドクターチェックが入る。今度こそダメか?

それでも試合はどうにか再開。追い詰められた竹内は強引に中西を倒して足関節を取りに行く。いつもは堅実な闘いを好む竹内が、リスキーな足関節を取りに行くのは非常に珍しい。この一戦への並々ならぬ思いが伝わってくる光景だが、結局は中西に脱出されてしまった。

両者スタンド。中西は膝蹴りやワンツーを繰り出すも、竹内は再び中西からテイクダウンを奪うと、ポジションをサイドへ移行して上からパンチを落とす。そしてこの間も、竹内の顔面からの流血は止まる気配がない。

2R終了。まあこのラウンドは竹内が制したが、あまりにも激しすぎる流血は気になるところだ。それにしても壮絶な試合だなぁ。


3R、序盤から中西のワンツーが竹内を襲う。モロに喰らってダメージを負いながらも竹内はタックルを仕掛けるが、中西はコーナー際で差し返して膝蹴りを連打、竹内も膝蹴りで対抗。ブレイクの後、やはり中西はパンチを連打して竹内を攻める。積極的だな。

竹内の逆襲は、あくまでグラウンド。中西からテイクダウンを奪って上になり、コツコツと鉄槌を落とす。対する中西も下からの鉄槌で応戦、傷口めがけて容赦のない打撃を浴びせる。中西応援団の歓声がどんどん大きくなっていくが…試合自体は膠着、レフリーがブレイクをかける。

いよいよ大詰め。中西はスタンドでワンツーを浴びせて更なる流血を誘い、竹内はテイクダウンを奪って上からコツコツとパンチを落とす。そして竹内は相変わらずの大流血状態、中西の体は返り血で真っ赤だ。それにしても、凄まじい流血だなぁ。


ついに試合は終了。勝敗は判定へと委ねられた。

さて僕は「グラウンドでは竹内が有利だったけど、スタンドとダメージ性では中西か。どっちが勝ってもおかしくないなぁ」と考えていた。そして結果は、2−1のスプリットながら中西が勝利し第六代のミドル級王者となった。勝った中西は全身で喜びを表現、負けた竹内は憮然とした表情でリングを去っていった。

ま、確かに「竹内の勝利」という判断も充分にできる試合だとは思うけど…、竹内の場合は中西のように決定的な場面を作る事ができなかったのが痛かった。ま、普段は「試合が面白くない」という評判の竹内が、ここまで面白い試合を展開できた事は逆に好評価に繋がるんじゃないかな。とはいえ、試合が面白くなったのは流血したのが主な原因だから、竹内としては不本意だろうけどね。



だ、だ、大乱闘だなぁ

さて、この試合の観戦記はまだ終わらない。この後、PANCRASEは思わぬ事態に巻き込まれたのだ。


試合中も荒っぽい歓声を上げつづけた中西応援団の一部が中西の戴冠劇に感激し、祝福しようと次々にエプロンに登り始めたのだ。素人がリングに上がるのはどんな団体でもご法度。PANCRASE関係者は慌ててリングインすると、中西応援団をリングの外へと排除していく。だが、すっかり興奮している中西応援団がこれで収まるワケもなく、やがてリングの上は大乱闘状態に。会場は騒然、一部の審判団は膝蹴りで中西応援団を蹴り続け、これを喰らった中西応援団の一部からは怒号が起こる。ここまでガチで本格的な大乱闘を観るのは初めてだな。




やがて審判団を代表して廣戸聡一氏がマイクを握り、中西応援団の一部を一喝する。

「オイッ!お前ら、いい加減にしろっ!お前らのせいで、中西選手から王座が剥奪されるかもしれないんだぞ!」



多くの観客は大拍手でこれを支持するも、中西応援団はなかなか収まらない様子。今度は新王者となった中西が「やめて下さいっ!」と絶叫し続けて、ようやく騒ぎは収まった。


なんというか、考えさせられたなぁ。以前はリングと言えば「素人には近寄り難い聖域」というイメージがあったんだけど…、この事件はそういう幻想をPANCRASEが守れなくなっている事を露呈してしまっている気がするなぁ。以前はちょっとサミングや金的が出ただけで「この団体から出て行け!」なんて声が飛んでいたPANCRASEのリングが、こんな事件に巻き込まれるとはねぇ…。正直、悲しい光景だったなぁ。



雑感

今日のPANCRASEは、試合の内容がかなり良かったと思う。選手は次々に一本勝ちを修めて、ウマトノフは強烈なデビューを飾り、チェも存在感をアピール、そしてメインイベントの大激闘。正直、かなりお腹一杯だった。これでチケット代が安ければ文句はないんだけどねぇ…。


それにしても、メインイベント終了後の乱闘劇は悲しかった。


以上、長文失礼。