全日本キック「Solid Fist」 第一試合〜第七試合

第一試合 アレ?オープニングファイトよりもレベルが…

ヘビー級 3分3R
洪太星(181cm/83.0kg/極真会館)
コンボイ山下(181cm/85.0kg/超越塾)
[判定 3−0]

本戦の第一試合には、野路竜太以来となる現役の極真戦士が全日本キックのリングに登場。洪太星は2002年に全日本選手権で八位、2003年には全世界選手権の日本代表に選ばれている。本日がキックボクシングのデビューとなる洪太星、その対戦相手はPRIDE武士道で活躍する郷野聡寛全日本キックデビューの相手を務めた経験もあるコンボイ山下だ。実力はオープニングファイトレベルの山下を相手に、洪は圧勝できるか?


1R、山下が序盤から仕掛ける。極真空手にはない顔面へのパンチを連打してローキックを放つ。慣れない顔面パンチを前に防戦一方になる洪だが、接近して組み付くと強烈な胴への膝蹴りを放ち、山下の動きを止める。2R、「山下は膝蹴りを捌けない」と見切った洪、組み付いて胴へ膝蹴りを連発。中盤には足を止めての突きの連打と下段蹴りで山下にダメージを与える。そりゃそうだ、極真の看板を背負っている選手が山下に苦戦してはいけない。

3R、試合は洪のペース。組み付いての膝蹴りと顔面への突きの連打、下段蹴りで山下に攻め入る隙を与えない。序盤の勢いもどこへやら、山下は完全に攻めが後手に回っている。時折はパンチが洪にヒットするも、洪の攻めの前に最後まで自分のペースを取り戻す事はできなかった。対する洪は終始攻め続けたが、全ラウンドを通してクリーンヒットが出る事はなかった。

試合は判定へともつれたが、3−0で洪が勝利した。


う〜ん、洪は肩書きの割にはピリッとしなかった、というのが素直な感想かなぁ。空手出身の人はどうしても足を止めてから打撃が出るんだよねぇ。顔面パンチにもまだ慣れてない感じだし。ま、この辺は野路のように少しづつ慣れていけばいいんだけどさ。

第二試合 意外な逸材を発見

スーパーウェルター級 3分3R
クリストフ・プルボー(176cm/67.5kg/スイス/スクランブル渋谷)
●藤元洋次(180cm/69.3kg/NSG)
[判定 3−0]

第二試合は僕が詳しく知らない者同士の対戦となったが、蓋を開ければ「スイスの川村亮(宮田本部長・談)」クリストフ・プルボーが隠れた実力を発揮した。


1R、身長では藤元を下回りつつも四肢の長さがリーチをカバーしているプルボーが主導権を握る。素早いワンツーに加え、インを突いたローキック、首相撲からの膝蹴り、ボディブローを次々に放って藤元を圧倒。勢いの押されて下がってしまう藤元を攻めるプルボー、伸びのあるワンツーが何度も顔面を捉える。巧いなぁ。

2R、ワンツーと首相撲からの膝蹴りで攻めるプルボーだが、藤元は序盤にストレートをヒットさせると、このラウンドは下がらずに前進してパンチやローキックをヒットさせる。手数はプルボーが上なのだが、藤元の下がらない姿勢が展開を互角にしている。更にはプルボーにはやや疲れも見える。逆転か?

3R、やはり藤元は前に出る姿勢を崩さなかったが、このラウンドはプルボーに変化が見られた。藤元に対して下がりながらミドルキックやストレートを放つプルボー、藤元が接近すれば前蹴りで突き放す。自分の打撃を当てる事ができない藤元は苦戦、顔面にパンチを喰らって中盤からは鼻血が出てしまう。終盤は接近する藤元に組み付いて膝蹴りを放つプルボー、藤元は終了直前にワンツーを放ちつつ前に出るも、時すでに遅し。

試合終了、判定の結果3−0でプルボーが勝利。


ふむ。藤元に追いつかれる場面もあったけど、まあプルボーの完勝ですな。スクランブル渋谷の所属という事もあって、最初は「増田博正との『抱き合わせ』で出場したのかな?」と思っていたけど…。プルボーは強かったです、スイマセンでした。

第三試合 気がつけばヘビー級の「台風の目」に

ヘビー級 3分3R + 延長3分1R
山宮恵一郎(180cm/90.0kg/GRABAKA/全日本ヘビー級 六位)
●安部康博(181cm/91.0kg/建武館/全日本ヘビー級 三位、元王者)
[3R 2分26秒 KO]
※3ダウン/安部は1Rにダウン2

第三試合には、全日本キック・ヘビー級のキーパーソンとなりつつある山宮恵一郎が出場。現王者である郷野聡寛と同じGRABAKAに所属する山宮は、掣圏真陰の興行にて桜木裕司に勝利する等で、今のところはキックボクシング戦績3戦3勝を誇る。対戦相手となるのは、元王者で試合は三年ぶりとなる安部康博。山宮としては、ブランクの長い対戦相手に苦戦するわけにはいかない。


1R、お見合いの展開が続く中で、安部は充分に距離を離して軽快にミドルキックを放ち、山宮は時折ワンツーでお返し。静かな展開は終盤まで続いたが…突然、山宮の左ストレートがヒットし安部はダウン。スポナビによると「目線を落とすフェイントから入った一撃」らしい。凄いなスポナビ記者。

観客が騒然とする中、立ち上がった安部にワンツーを連打で叩き込む山宮、右ストレートがヒットして安部は二度目のダウンを喫する。再び立ち上がった安部に、山宮はワンツーを連続で叩き込み三度目のダウンを奪った…が、これは残念ながらゴングの後。観客からは溜息が漏れる。

2R、山宮はラッシュを掛ける事をせず、距離を保ちつつワンツーを放つ。対する安部もミドルキックで山宮を蹴り続ける。試合展開は振り出しに戻るも、山宮は要所でカウンターのストレートをヒットさせる。ジリ貧の展開となった安部、右の大きなフックや裏拳で状況打破を図るも山宮はガードを固めてしっかり防御。

3R、これまでと同じく距離を離して闘う両者。山宮はワンツー、安部はハイキックやローキック。序盤、安部のローキックがローブローとなる。山宮は悶絶、安部にはイエローカード。本当に後がなくなった安部はパンチを放つも、山宮はこれに合わせてカウンターのストレートでまたしてもダウンを奪う。

安部は立ち上がるも、ダメージが残っている状態。山宮は一気にラッシュを仕掛け、ストレートで再びダウンを奪うと、何とか立ち上がった安部に尚もパンチの連打を浴びせた。打撃をガードしつつ後退する安部、パンチがヒットして尻もちを突いたところでレフリーが試合を止めた。


ふむ、山宮は以前より強くなっている気がするなぁ。前回のジミー明成戦では力んでいるのが観ている方にまで伝わってきたけど、今回は肩の力も抜けていたし、観ていて不安になる場面がなかった。こりゃ、仮に郷野がベルトを返上した後で王者になるのは山宮かねぇ。マジで。

第四試合 だから言ったジャン!この試合は激戦になるってさ!

スーパーウェルター級 3分3R + 延長3分1R
○佐藤皓彦(182cm/67.9kg/JMC横浜GYM/全日本Sウェルター級 五位)
●後藤友宏(175cm/68.5kg/TEAM GO/全日本Sウェルター級 十位)
[延長判定 3−0]
※本戦判定 1−0

この試合は、今回の興行の中では「全日本キックの明日を占う好カード」と言えよう。

今年十月に行われた「青春塾祭り」にて全日本キックデビューを果たした後藤友宏。強烈なローキックとミドルキックで、実力者の大蔵”PHOENIX一号”を撃破したのは記憶に新しい。対するのは佐藤皓彦、JMC横浜GYMの第二の男だ。長身を活かしたミドルキックを武器とする闘い方は大輝にそっくり。そして両者は佐藤が23歳、後藤が24歳と若い事が特徴だ。明日の全日本Sウェルター級を担う者同士、ブレイク間違いなしの両者の対戦は青田買いには絶好のカードだ。


1R、リーチに劣る後藤だが、大蔵戦と同じく右ローキックと右ミドルキックで佐藤を切り崩そうとする。強烈なローキックを喰らった佐藤の体は早くも流れていたが、佐藤は前に詰めてのワンツーで後藤に対抗。終盤には後藤にハイキックを叩き込む。しかし後藤はこれに怯まず、リングを回りながらローキックを重ねていく。

2R、やはり右ローキックで蹴り続ける後藤。しかし佐藤は強烈な右ローキックで対抗すると、ワンツーを放って後藤を踏み込ませない。しかし佐藤自身も後藤の右ローキックが効いていて、前に踏み込んで攻める事ができない状態。やはり後藤のローキックは強烈だ。

3R、尚も右ローキックを連打する後藤に対して佐藤は作戦を変更、積極的に組み付いて首相撲を狙っていく。最初はベッタリと組み付いてやり過ごしていた後藤だが…あまりにしつこい佐藤の首相撲の前に徐々に打撃を喰らい始める。ボディで膝蹴りを連発する佐藤、捌けずに喰らい続ける後藤。完全に形成は逆転、合間にローキックやジャンピングパンチを放つ後藤だが焼け石に水。後藤は最後まで佐藤の膝蹴りを喰らい続けた。

さて判定。僕としてはどちらが勝者ともいえない拮抗した展開なので「ドローかな?」と思っていた。んで、ジャッジの一人は佐藤を勝者としたが…残り二人はドロー裁定、試合は延長戦へと突入。う〜む、いい勝負だとは思うけど、このままだと後藤はジリ貧だなぁ。


延長R、やはり佐藤は接近して首相撲を狙うが、後藤はピッタリと密着して膝蹴りを阻止する。佐藤はハイキックをヒットさせるも当たりは浅い。組み付いてはブレイクを繰り返す両者、距離が離れれば後藤がフックやローキックを放つが有効打にはならない。対する佐藤はワンツーで後藤を攻める。

クリンチを繰り返す後藤に「膠着を誘発した」としてイエローカードが提示される。後がなくなった後藤は何とか攻め込もうとするが、佐藤はここに来て右ミドルキックを連発して後藤を近づけない。更には首相撲からの膝蹴りも効かされてた後藤はリーチ差を埋めようと接近するが、佐藤は前蹴りで後藤を遠ざけていく。

延長R終了、判定の結果3−0で佐藤が勝利した。


くあ〜っ、後藤が負けてしまったかぁ。密かに前回の「青春塾祭り」で注目していたんだがなぁ…。確かにローキックは効いていたと思うんだけど、佐藤のポーカーフェイスに負けてしまった感じかなぁ。対する佐藤、最後は「らしさ」が出たものの、この試合ではローキック対策に課題を残したねぇ。ま、二人ともまだまだ若い選手だし、この先の活躍に期待しよう。

第五試合 首相撲合戦に嵌った全日本王者

61kg契約 3分3R + 延長3分1R
○チューティン・シットクヴォンイム(166cm/60.4kg/タイ/谷山ジム/元ラジャダムナンバンタム級フェザー級 王者)
●増田博正(170cm/60.6kg/スクランブル渋谷/全日本ライト級 王者)
[判定 2−0]

今年七月にサトル・ヴァシコバを破って全日本ライト級王者となった増田博正だが、王者としての第一線はいきなりのムエタイ超え。対戦相手のチューティン・シットクヴォンイムはラジャダムナンで二階級制覇を成し遂げ、現在は谷山ジムでトレーナーとして活躍している選手だ。ムエタイ戦士なだけに首相撲には注意したいが、パンフレットによるとスクランブル渋谷の内田会長は「今の増田の得意技は首相撲」と豪語する。どうやら首相撲はこの試合のキーになるようだ。


1R、まずは増田は距離を取って左ローキックを放つ。対するチューティンもローキックで対抗。この後、お互いにローキックで蹴り合う場面が続いたが、やがて両者は組み合う。首相撲で主導権を握ろうとするチューティンを突き放した増田は肘打ちを放つ。再び首相撲合戦、ここでチューティンがフルスイングの肘打ちを披露。その鋭さに観客がどよめく。

2R、いよいよ試合は本格的な首相撲合戦となったが、力を発揮したのはやはりチューティン、肘打ちと膝蹴りが増田に打ち込まれていく。増田も負けじと肘打ちや膝蹴りを返していくが、その数の差は圧倒的。ボディに膝蹴りをしこたま喰らった増田の動きが徐々に落ちる。

3R、主導権を握ったチューティンは、このラウンドは多彩な打撃を見せる。ボディブローやミドルキックで相手の胴を襲うチューティン、増田はローキックで対抗するも体力の差は歴然。

チューティンは首相撲からのボディへの膝蹴りや顔面への肘打ち、ワンツーやミドルキックといった打撃で増田をジワジワと攻め続け、首相撲からの投げで体力を奪う。終盤はチューティンのローキックで転ばされ続けた増田、最後にハイキックをヒットさせたのがせめてもの救いか。

試合は判定となったものの、2−0でチューティンが勝利。誰だよっ、この展開でドローにしたのはっ!?


う〜ん、今日の増田はボコボコにされたワケではないけど、対策を練られずにズルズルと負けてしまった感じ。一緒に観戦していたnar氏(id:nar-_-nar)曰く「首相撲に拘ったのが、逆に負けに繋がっちゃいましたね」との事。確かにどこかで距離を離す闘い方ができていれば、少なくとも無抵抗に負けてしまうような事はなかった気がする。まあそれ以上に、途中から「勝ちたいっ!」という気持ちが見えなくなってしまったのが残念というかねぇ。

第六試合 待ってましたっ!ついに復活っ!

ライト級 3分3R + 延長3分1R
大月晴明(165cm/61.1kg/AJKF/WPKC世界ムエタイライト級 王者)
●山本雅美(175cm/61.0kg/北流会君津ジム/NJKFライト級 一位)
[判定 3−0]

ここからはメインイベントが三試合。その第一試合は…、待ってましたっ!大月晴明の復帰戦だっ!


全日本キックでの試合は2005年1月4日に小林聡をマットに沈めて以来、約二年ぶり。自身の試合としては2005年12月19日にタイでチョンレック・ゲオサムリットに初敗北を喫して以来、約一年ぶりである。顔面をロクにガードしない構えから繰り出される両腕の大砲が武器の大月、たったの一発で相手をマットに沈める独特のスタイルでここまで19戦18勝1敗16KOという戦績を誇る。

今日は仲間であるNKBの瀬尾尚弘などを含めたマッスル軍団を引き連れての入場、会場内に入場曲であるまんが道の「ボヨヨンロック」が流れれば、観客は大歓声で大月を歓迎。いや〜っ、待たされた分だけ今日は暴れてもらうぞっ!

しかし今日の対戦相手は一筋縄ではいかない相手。「パンティ」こと山本雅美は昨年、サトル・ヴァシコバを切り裂いて秒殺勝利を飾っている。氣志團の「ワンナイト・カーニバル」と共にノリノリで入場する山本は調子に乗せると厄介な相手である。ムエタイ選手とも互角以上に闘える強豪を相手に「格闘科学の探求者」は豪快な復活を遂げられるのか?


…とは書いてはみたが、僕は内心「今回はラウンド数も短いし、KO勝利は難しいかな?」と思っていた。nar氏にしても「大月は腰を手術してから三ヶ月しか経過してないし、完全復活はもう少し先になると思うんですよ」と語る。そう聞くと、腕回りの筋肉も幾分細く見えてくるから不思議だ。


1R、腰の低い独特の構えで相手に接近していく大月に対して、山本が顔面をスッポリとガードしたピーカブーの構え。手を出してこない山本に対し、大月はローキックや両腕の大砲を繰り出す。大月のパンチが山本のガードの上を叩く毎に観客からは驚きの声が上がるが、山本は自身のガードを崩さずにローキックを放つ。

この後も大月の大砲が次々に飛び出すも、山本のガードはガチガチに固い。それでも試合終了直前、山本がローキックを出したところに大月のフックがモロにヒット、山本がスリップダウンすれば観客は歓声に包まれる。

2R、スッポリと顔面を両腕で守りつつローキックを放つ山本に対して、大月はボディブローでガードを崩してワンツーを顔面に叩き込む。それでもすぐにガードを固める山本、大月はローキック、ミドルキック、両腕の大砲でこのガードを崩そうとする。終盤、大月の右フックが山本にヒットするも、山本にダメージはなさそうだ。う〜ん、今日の山本は固いなぁ。あれじゃいかに大月といえどKOは難しそうだ。

3R、序盤はミドルキックで攻撃してきた山本に対して、大月はストレートをヒットさせる。尚もローキック、ボディブロー、フックと打撃を上中下に放つ大月、右ハイキックをヒットさせて山本をグラつかせる。観客の歓声の中、左右の大砲を連発する大月。今度は右フックをヒットさせたが、尚も山本は倒れない。

残り時間は少ない。大月は右フックを連発するも山本のガードの上。ここに来て前に出る山本、大月のフックは当たらない。反対に山本がアッパーやストレートをヒットさせるも、直後に大月の右フックがヒット。試合終了直前に大月はボディブロー、ワンツー〜ローキックと果敢に攻める。山本が打ち合いに応じる中で試合終了。

判定の結果3−0で大月が勝利したが、KOできなかったのが悔しかったのか大月はリングを踏みつけて苛立ちを表現していた。


う〜ん、大月に関しては「今回はこんなモンじゃないかな?」というのが素直な感想。腰の手術から3ヶ月しか経過していないのであれば、練習もそこまで満足にはできなかっただろうし、山本のガードは「勝つ気がないんじゃないの?」ってぐらいにガチガチだったし。ただ、試合中に何発か顔面にパンチがヒットしたけど、以前の大月であればその一撃がそのままKOに繋がっているだろうなぁ…とはちょっと感じたけどね。

まずは無事に復帰戦を飾った大月。KOに関しては次回以降復で活すればいいと思いますわい。

第七試合 天井知らずの超新星

68kg契約 3分5R
○大輝(178cm/68.0kg/JMC横浜GYM/全日本ウェルター級 王者 & ラジャダムナンウェルター級 八位)
●ゲーンカート・チューワッタナ(180cm/68.0kg/タイ/ラジャダムナンウェルター級 一位 & タイ国プロムエタイ協会ウェルター級 一位)
[判定 3−0]

メインイベントの第二試合は、全日本キックが誇る「無敗の超新星」大輝の大一番。

デビューから11戦11勝無敗7KOという戦績を持つ大輝。九戦目で手に入れたのは全日本ウェルター級王者の肩書き、そしてタイに遠征した十一戦目で手にしたのはラジャダムナンのランキング。今、日本人ではもっとも「ムエタイの頂点」に近い実力を持つ大輝だが、今日はその頂点を極める上で重要な試合に挑む。

対戦相手のゲーンカート・チューワッタナは、大輝と同じラジャダムナンウェルター級のランカー。大輝よりもランキングは上で、来日前は三位だった順位を一位に上げて今日の試合に挑む。高い身長と長い四肢を持つゲーンカート、さすがの大輝も今日ばかりは苦戦を強いられそうだ…。


と思ったが、終わってみれば大輝の完勝。この男、どこまで強いんだっ!?


1Rは探り合いの展開が続いた。お互いにミドルキックやローキックを交差させつつ様子を伺う。破壊力、手数共に両者互角の状態。途中、ゲーンカートが肘を振る場面あり。大輝としては注意したいところ。またゲーンカートはカウンターを狙っているようにも見えた。

2R、このラウンドもお互いにミドルキックとローキックを交差させた両者だが、大輝は合間にパンチを放つようになる。終盤、ゲーンカートは肘打ちやストレートをヒットさせるも大輝にダメージはなし。会場は水を打ったような静かさ、観客も緊張しているのだ。

3R、両者の均衡が崩れ始める。右ミドルキックに続いて放った右ストレートがゲーンカートにヒットしたのだ。観客はこれまでとは打って変わっての大歓声、大輝は一気に距離を詰めてワンツーを振るい、ゲーンカートが下がれば右ミドルキックや右ローキックを放っていく。ゲーンカートも前蹴りやミドルキックを返したが…終盤になるとダメージが溜まってきたのか、大輝がローキックを放つたびにゲーンカートの体が流れるようになる。これを観た観客が更なる大歓声を上げる。

4R、いよいよ勝利が見えてきた大輝は右ミドルキックで蹴り続け、接近すればパンチの連打を叩き込む。俄然、分が悪くなったゲーンカートは作戦を変更、このラウンドからは首相撲を使おうとする。だがゲーンカートが接近するたびにパンチを叩き込む大輝、ボディストレートをヒットさせると、中盤にはワンツー、ミドルキック、左フックといった打撃を一気に叩き込む。体力を失ったゲーンカートは首相撲も使えずにクリンチするのが精一杯、ブレイクで距離が離れれば大輝の右ミドルキックを一方的に浴びてしまう。

5R、接近して組み付くゲーンカート、最後の頼みの綱である肘打ちを振り回すも…大輝はこれらを悉く阻止。再びミドルキックを連打する大輝に対し、ゲーンカートは完全に試合を捨ててしまった。後ろに下がるばかりでロクな攻めが出てこないゲーンカートに大輝はボディブローを叩き込む。苦しむゲーンカート、この後で大輝は試合終了まで何発も右ローキックを叩き込んでいった。

試合終了、判定の結果3−0で大輝が圧勝。ラジャダムナンの上位ランカーを破った大輝に対して、観客は今日一番の大歓声で祝福した。


おおおっ、大輝の強さは天井知らずだなぁ。大輝って特に必殺技を持っている選手ではないんだけど…とにかく試合全体を通して強さを発揮する事が多いなぁ。しかも今日はムエタイルールであったとしても大輝が勝利していると思われる展開だし、これは大真面目にムエタイの日本人王者の誕生を期待できそうだ。早ければ来年には王者になっちゃうんじゃないのかなぁ?凄えなぁ、強いなぁ、カッコいいなぁ。