S-CUPスペシャルマッチ

第九試合 SBの絞首刑人を王者の怒りが切り裂く

エキスパートクラスルール 3分5R
○及川知浩(164cm/59.4kg/日本/龍生塾/SB日本スーパーフェザー級 王者)
●石川剛司(170cm/60.0kg/日本/シーザージム/SB日本フェザー級 一位)
[3R 49秒 TKO]
※石川が額をカット

S-CUPの決勝戦の前に、出場選手の体力回復を兼ねてスペシャルマッチが一試合。組まれたのは最近、徐々に層が厚くなりつつあるSBフェザー級による頂上決戦だ。


王者の及川は怒っていた。本来は5月26日には実現するはずだった及川知浩 vs 石川剛司の一戦は、石川の直前の怪我によって一度流れてしまったカード。パンフレットでは「あいつ、逃げたな…」と挑発する及川だが、どうも怒りの理由は別なところにある気がしてならない。

僕は及川の怒りの真の原因は、昨年11月に及川の実弟・ナグランチューンマーサM16が石川と対戦した時の事にあると推測している。この試合でマーサは石川を圧倒し、石川は3Rにダウン気味にスリップ。最後こそカウンターを決められて崩れる場面もあったが、判定になればマーサが勝利する試合だった。だが実際の判定結果は2−0で石川が勝利。言い方は悪いが、石川はジャッジに守られる形となった。

だからでこそ及川は、相手が怪我で欠場を発表した時に「(マーサより格上の俺から)逃げた」と発言したのではないか。これは僕の素人推理、正解かどうかは正直わからないが…、やや唐突な印象のある及川の怒りもこれなら納得がいくのだ。いずれにせよ石川に対しては怒り心頭の及川、SBの絞首刑人を相手にその豪腕は炸裂するのか?


1R、お互いのローキックが交差する中、及川は投げを狙うも石川はこれを潰す。及川はボディストレートや前蹴りで攻めるも、石川はワンツーを出しながら及川に接近、組み付いては体を浴びせて潰していく。だが、あまり打撃が交差しないうちに1Rは終了。かなり静かな出だしと言える。

2R、異変が起こる。ローキックで牽制する及川、石川のフックに合わせて隠れた得意技である右の肘打ちを一閃。一撃で石川は額をザックリとカットし流血。そういえばこの試合、このS-CUPの中で唯一の肘有りルールによる試合だな。

長いドクターチェックの後に試合は再開、一気に後がなくなった石川は流血を気にせずに強引なラッシュで猛然と及川に襲い掛かる。次々にワンツーや肘打ちを繰り出す石川、元々豪腕な選手なだけに及川も防御にはやや手を焼いている様子。途中、石川のフックがクリーンヒットする場面もあったが、及川はガードを固めると徐々に肘打ちで反撃していき、ラウンド終了直前には投げを放ってペースを戻そうとする。

3R、額の傷口にワセリンをテンコ盛りにした石川は、このラウンドもどんどん前に出て打撃を繰り出すも、及川はローキックで冷静に対処。すると石川の額から再び流血が。再びドクターチェックが入り、やがてレフリーが腕を振った。ガックリと肩を落とす石川を尻目に、及川は龍生塾応援団の歓声に応えていた。


強烈なパンチが印象深い及川だが、実は肘打ちも得意技。かつてはこの肘で元全日本キックフェザー級一位の「マッドドッグ」竹村健二から勝利を奪った事もある。今日は弟を破った仇敵を討った及川だが、石川を倒した事は同時に「SBフェザー級に敵はなし」を証明したのと同じ。そろそろもう一度、IKUSA-60参戦時のような「他団体の大物との対戦」が観てみたいね。