S-CUP準決勝戦 第一試合

第七試合 SB・新旧日本人エース対決、勝ったのは先輩の意地

S-CUP 2006 準決勝戦 3分3R + 延長3分1R
○緒形健一(172cm/69.9kg/日本/シーザージム/SB日本スーパーウェルター級 王者)
宍戸大樹(174cm/69.55kg/日本/シーザージム/SB日本ウェルター級王座)
[判定 3−0]

禁断のシーザージム対決、開戦

S-CUPの準決勝戦はどちらも「SB・新旧エース対決」。その第一試合は緒形健一と宍戸大樹、日本人同士によるエース対決だ。


SBでの日本人同士によるエース対決といえば、S-CUP 2004への出場権について「日本人同士によるトーナメントの開催」をぶち上げた後藤龍治と、後藤の段取りを踏まない言いっぱなしのやり方に怒りを覚えた土井広之による「S-CUP 2004 攻防戦」が思い出される。試合前から揉めに揉めたこの対決は序盤こそ体格の大きい後藤が優勢だったが、中盤以降は土井が肘打ちを連発して逆転し判定勝利、後藤のS-CUP出場に待ったをかけた。その後、後藤は他団体へと転出。その背景に、この試合での敗北があるのは想像に難くないだろう。


では、視点を彼ら二人に移そう。宍戸の対日本人戦といえば、現在はZSTで活躍する小谷直之との試合、そして「スネーク」加藤督朗との激闘を思い出す。小谷戦では小谷のガムシャラな打撃を前に宍戸は二度もダウンを奪われるも、最後はキッチリと反撃し逆転KO勝利。そして加藤戦は計7Rにも及ぶ激闘となった。お互いに最後まで蹴り続ける姿にファンは感動、そして宍戸はこの試合にも勝利した。S-CUP 2004は単なる切欠、実は宍戸はSBファンの中では古くからブレイク待ちの状態だったのだ。昨年は菊地浩一との「SB・日本人次世代エース対決」を制した宍戸、「常に背中を追ってきた」という大先輩・緒形に勝利する事はできるか?


対する緒形の対日本人戦といえば、K-1 MAXでの武田幸三戦を思い出す。1R、接近戦からのアッパーでダウンを奪いながらも、試合中に膝を痛めてしまいTKO負け。リングでは実力を示しながらの不本意な敗戦となってしまった。だが今回のS-CUPは大野崇との日本人対決を制して勝ち得たもの。かつてはSBを引っ張ってきた日本人エース、緒形。この対決で宍戸の後塵を拝むわけにはいかない。


二人は同じシーザージムの所属選手。恩師・シーザー会長が見守る中、禁断の日本人対決が始まる。

試合の内容

1R、宍戸はあらゆる打撃で緒形に揺さぶりをかける。リングを回りながらジャブで緒形を遠ざけ、ローキックを連打しつつミドルキック、ハイキック、そして飛び膝蹴り。あらゆる打撃で相手のペースを崩すのが宍戸の闘い方なのに対し、緒形の試合ぶりは「動かざる事、山の如し」。緒形は自らは打撃を殆ど繰り出さず、ガードを固めつつジリジリと前に出続ける。これは大野戦でも見せた闘い方、宍戸との距離が詰まれば強烈なワンツーやローキックを単発で繰り出す。1Rは全体的には静かな展開。


2R、尚も宍戸が撹乱戦法に出る。ハイキック、ストレート、ローキック、ボディブロー。接近と離脱を繰り返しながら緒形に打撃を浴びせる宍戸だが、緒形は1Rと同じくガードをガッチリ固めて防御すると右フックをハードヒットさせる。一瞬怯んだ宍戸だったが、緒形に組み付いて首投げを狙う等、まだまだ元気だ。

しかし中盤、相変わらず手数多く打撃を繰り出してくる宍戸に、緒形は左ボディブロー〜右ストレートを叩き込む。大きく怯む宍戸、緒形はここぞとばかりにパンチのラッシュを浴びせる。一方的に殴られる宍戸、気力を絞って打ち合いに出るも、右フックを叩き込まれると緒形に更なるラッシュを浴びせられる。右ストレートを喰らって大きく仰け反る宍戸、緒形のプレッシャーが凄まじい。


3R、宍戸は2Rの失点を挽回すべくワンツー、ハイキックや飛び蹴りを繰り出すも、緒形はストレートを叩き込む。崩れる宍戸に緒形はフック、ローキック、ワンツーを浴びせ、カウンターのストレートで再び宍戸を崩す。宍戸はアッパー、裏拳などの打撃で一発逆転を狙うも、緒形の「山」は動かない。宍戸の打撃を見切り、またしても緒形のカウンターのストレートがハードヒット。もはや勝利は動かないが、緒形は試合終了までラッシュを止める事はなかった。


観客の大歓声の中で試合は終了、同時に大型スクリーンには大泣きするシーザー会長の姿が。自分が手塩にかけて育てた二人の対決、同じ立場であれば「泣きのシーザー」でなくとも涙の流れるシーンだろう。


判定の結果は3−0、「SB魂の継承者」緒形が後輩の宍戸を下して決勝戦進出を決めた。

宍戸大樹についての総括

一回戦でジョーダン・タイの左ボディブローを喰らい続けたのに対して、緒形は余力を残しての準決勝戦。この辺の体力の差も敗北の一因だと思うが…、その事以上にこの試合での宍戸は緒形に完全に呑まれていた。いつものヒット&アウェイもまったく通用せず、普段は滅多に喰らわないカウンターを次々に浴びるなど、らしくない場面が目立ったていた。


ハッキリ言う。
何をやっているんだっ、宍戸っ!
それでもSB・日本人の新エース」かっ!


この試合で、宍戸は緒形を越えなくてはいけなかった。K-1 MAXで無残な姿を晒した今、宍戸の汚名はS-CUPの優勝でしか返上できない。ならば、たとえ相手が長年憧れた先輩だとしても、それを踏み台にする程のふてぶてしさが欲しかった。

もちろん、この試合だって本人なりに努力した結果なのだから、僕の言っている事は少々理不尽だと思う。それでも尚、宍戸を叱責したくなるのは…この試合から、彼の覚悟を感じる事ができなかったからだろう。相手に遠慮していては勝てる試合も勝てない。正直、この試合での宍戸には大変ガッカリさせられた。


宍戸大樹、再起せよっ!