S-CUP一回戦 第二試合

第二試合 こういうカードがないとS-CUPらしくない

S-CUP 2006 一回戦 3分3R + 延長3分1R
○緒形健一(172cm/69.9kg/日本/シーザージム/SB日本スーパーウェルター級 王者)
●ダマッシオ・ペイジ(165cm/66.9kg/アメリカ/ジャクソンズ サブミッション ファイティング)
[2R 1分14秒 KO]
※2ダウン/ペイジは1Rにダウン1/緒形は1Rにダウン1

「遠回りしながらやって来た」緒形健一のS-CUPまでの道

宍戸大樹とは対象的に、S-CUP 2004で地の底に落ちたのが緒形健一だ。


念願のS-CUP進出を果たした緒形だが、一回戦でアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラの打撃の師匠であるカテウ・キビスを相手に秒殺負けという不本意な結果に終わる。自身「これが最初で最後のS-CUP」と公言していただけに、宍戸がスターになったのとは対照的に、緒形には「限界説」が囁かれるようになる。SB本戦でもイム・チビンに敗北、これも後に宍戸が仇を討ってしまった。完全に宍戸に存在を喰われてしまった緒形は次第にメインイベントで闘う機会も減り、宍戸との試合順も逆転するようになる。それでも緒形は白星を重ねたが、ネームバリューのある選手と当たる事はなくなった。正直、僕は「緒形は次のS-CUPに出る気がないのかな?」と思っていたくらいだ。

しかし緒形は今年の始め頃からS-CUP参戦を何度も主張。それを実力でアピールしたのが、前回の後楽園ホールでの大野崇戦だ。自分のリーチの長さをしっかりと武器にしてきた「ニュー大野」を、緒形は無言のプレッシャーで追い詰めて何度もラッシュを浴びせる。お互いのパンチが何度も交差する乱打戦に観客が熱狂する中、緒形は判定ながらも激勝を果たすと同時に、「SBのエース、健在!」をファンに示した。


前回の秒殺劇から二年、たった一戦でその信用を回復した緒形が再びS-CUPの舞台に立つ。最近は引退を匂わせる発言が多い緒形、恐らくこれが最後のS-CUP出場になるだろう。正直に言えば、宍戸ほどには険しくない道を歩んできた緒形、ならばトーナメントではしっかりと実力を示さなくてはならない。対戦相手は打撃戦は未経験の総合格闘技の選手、ダマッシオ・ペイジ。相手は素人、緒形としてはしっかりとKO勝ちするより道はない。

試合の内容

1R、ペイジはPANCRASE参戦時にも見せたメチャクチャな打撃で突進。その暴れぶりに観客が驚きの声を上げるが、緒形がストレートを繰り出せばモロに喰らったペイジは一発でグラつく、さらに緒形のアッパーがヒットしペイジはダウン。観客は緒形の強さに歓声を上げる。

しかし、ペイジはカウント8で立ち上がると、ミドルキックを繰り出した緒形に襲いかかってストレート一閃。もろに喰らった緒形はダウン。S-CUPは2ダウン制の為、このラウンドはもうお互いに後がない。観客の反応は一転、日本人エースのまさかの状況に騒然となる。

勢いに乗ったペイジは、デタラメなパンチを振り回しながら緒形に突進。ブン回しのワンツーが次々に緒形を襲うが、これをガードした緒形はワンツーをヒットさせると、テンカオを連打してペイジのボディを攻める。何発もの膝がボディへ刺さったペイジだが、それでもパンチを振り回す。そういえばペイジは、こういう打撃を何度振り回しても疲労しないスタミナの持ち主だったな。


2R、フックに加えてタックルまでも繰り出すペイジに、緒形はミドルキックを叩き込む。それでも尚、前に出るペイジに、緒形はカウンターのストレートをヒットさせた。さすがに怯むペイジに緒形はここぞとばかりに一気に左右のボディブローを連発してダウンを奪う。観客は今度こそ勝利を確信した大歓声だ。

しかしペイジは立ち上がる。そのスタミナに観客から驚きの声が上がる中、ペイジは再び捨て身のラッシュを仕掛ける。しかし緒形はしっかりとこれを受け流すと再びボディへラッシュを仕掛け、最後は単発の左ボディブローが綺麗に決まった。お腹を押さえてダウンするペイジ、それと同時に観客は緒形の一回戦突破を大歓声で祝福した。

ダマッシオ・ペイジについての総括

急なオファー、慣れないルール、立ち技は未経験など、ペイジにとっては不利な条件が揃いまくったS-CUP参戦だったが、その中で緒形をダウンさせたのが面白かった。僕としてはトーナメントの中にはこういう突飛な選手が一人いた方がS-CUPらしいように思えるな。ま、技術はもっとあった方がいいとは思うけどね。

いずれにせよ、ペイジには再び総合格闘技の中での活躍を期待したいね。