S-CUP一回戦 第一試合

第一試合 あらゆる意味で試練の一番、それを越えるのが宍戸

S-CUP 2006 一回戦 3分3R + 延長3分1R
宍戸大樹(174cm/69.55kg/日本/シーザージム/SB日本ウェルター級王座)
ジョーダン・タイ(180cm/69.85kg/ニュージーランド/レイ セフォー ファイトアカデミー)
[延長判定 3−0]
※本戦判定 1−0

「険しくて複雑だった」宍戸大樹S-CUPへの道

S-CUP 2004宍戸大樹は救世主となった。


活躍を期待された先輩の緒形が一回戦で敗退、興行の目玉であるアルバート・クラウスとジェンス・パルバーが相次いで負傷し準決勝を辞退するという非常事態の中、リザーバーから繰り上がった宍戸は緒形を秒殺したカテウ・キビスを撃破。決勝戦ではアンディ・サワーと真っ向勝負し敗れるも、真正面から闘う姿は観客の感動を呼び、誰もが宍戸の準優勝を喜んだ。

S-CUPでブレイクした宍戸は、その後も強さを発揮。チャンプアック・チョーセパサート(ムエタイ王者)、オーレ・ローセン、大野崇、イム・チビンマルフィオ・カノレッティ、そしてイアン・シャファー。5Rをフルに使う闘う方でこれらの強豪に勝利した宍戸は、SBファンなら誰もが認める新しいエースとなった。

だが、その評価が一気に転落したのが今年九月のK-1 MAX初進出だ。今年のK-1 WORLD MAX 世界王者であるブアカーオ・ポー・プラムックを相手にまさかまさかの秒殺負け。K-1 MAXのファンには「SBにその人あり」と言われる程に前評判が高かった宍戸だが、この敗戦で株は一気に暴落。宍戸のK-1 MAX参戦に当たっては関係者の中に「実は私、宍戸のファンです」という人が続出したが…彼らもまた、この秒殺劇には大きなショックを受けていた。

そんなこんなで、宍戸にとってブアカーオ戦以来の復帰戦となるS-CUPの一回戦は「頂点への通過点」という一言では片付けられない重要な試合となった。対戦相手がマニアには実力に定評のあるK-1 MAXの常連・ジョーダン・タイであれば、それは尚更の話だ。SBの新エースとして、これ以上無様な姿は晒せない。多くのファンの期待を背に宍戸のS-CUP一回戦が始まる。

試合の内容(本戦)

1R、宍戸は左のインローと左ミドルキックでタイの動きを牽制、対するタイはハイキック、フック、アッパーといった高めの打撃を繰り出す。打撃をガードしながら様子を伺う宍戸に、タイは中盤からローキックや左のボディブローを多用。特にボディブローはガードを高く上げている宍戸の腹にモロにヒット。だが宍戸はソバットや裏拳といった大技でタイを突き放し、左のインローを放っていく。このラウンドは互角だ。


2R、タイの攻撃はパンチが主体。ワンツースリーと繰り出されるコンビネーションにローキックやミドルキックをまぜる。対する宍戸は構えを色々と変えながらキック主体の攻撃を見せる。距離をとってミドルキックやローキックで蹴り続け、時にパンチを入れていく。中盤、ローキックが効いたのかタイの動きが鈍る。観客は歓声で宍戸を支持したが、タイは要所で左ボディブローを放って反撃。ならばと宍戸は終盤、ローキックやソバットを使ってタイを攻める。このラウンドはやや宍戸有利だが、ポイント差がつく程ではないかな。


3R、1Rと2Rは前に出ていて攻めていたタイが下がるようになる。スタミナを切らしたのだろう。宍戸はここぞとばかりに前に出てワンツー、フック、ボディストレート、ミドルキック、テンカオ、前蹴り、ローキックと多彩な打撃を駆使して何度もタイを追い詰める。この引き出しの多さ、攻めの掴み処のなさが宍戸の真骨頂だ。タイも左ボディブローで反撃するも、宍戸はワンツーで何度もタイの動きを止める。ここまで来れば宍戸の勝ちは動かないだろう。

と思ったら。終盤、宍戸のソバットにタイがフックを合わせ、宍戸はスリップダウン。そしてこのフックが効いていたらしく、一気にタイに攻め込まれてしまう。ワンツー、ミドルキック、ローキックを前に防戦一方の宍戸は、試合終了と同時にタイのハイキックを喰らってダウン。一瞬、会場が騒然となるがこれはノーダウンと数えられた。イヤイヤ危ない。


というワケで判定。僕としては3R序盤〜中盤の宍戸の攻めは、2Rの攻勢をポイントにする程のものだったと思うので、タイが終盤に攻勢をかけたとしても30-29で宍戸の勝利でいいと思った。だが実際にはジャッジの一人が宍戸を勝者とするも、残り二人はドロー裁定で試合は延長戦に突入。う〜ん、そう来たか。おそらく最後のハイキックを「ダウンじゃないけど有効打ではある」と考えたんだろうな。

試合の内容(延長)

延長R、まずはタイが3R終盤の攻勢を背景に前に出て攻める。ワンツースリーに左ボディブローが次々に打ち出されるも、宍戸はガードを固めて防御しワンツー、ローキック、テンカオをタイに叩き込む。中盤あたりから宍戸のワンツーが何度も捉えるようになり、タイは再び失速。観客の大歓声の中、宍戸は前に出てワンツー、ミドルキック、ローキックと上中下段の打撃を繰り出していく。


延長R終了。判定は3−0で今度こそ文句なく宍戸が勝利し、準決勝へと駒を進めた。

ジョーダン・タイについての総括

タイが試合全体を通して放たれた左ボディブローは脅威だった。こっちはいつ、宍戸の動きが鈍るかとヒヤヒヤしながら観戦していたくらいだ。反面、全体的を通して宍戸を棒立ちにさせたシーンが3R終盤程度しかなく、その他のシーンでは宍戸の打撃に気圧される事が多かったのが今日の敗因だろう。不用意に打撃を喰らう事が多かったので、攻撃と防御のバランスをもう少し考えたほうがいいだろう。

いずれにせよ彼はまだ24歳、これからまだまだ伸びる選手だ。SBへは定期参戦を希望しているようなので、また参戦して欲しいね。