10/28 MARS 両国国技館興行 ちょっと長めの観戦記

Mask_Takakura2006-10-28

もう四度目の火星探訪

本日も性懲りもなく、両国国技館でMARSを観戦。


巨額な資本を元に大箱をドーンと押さえ、不思議なカード編成で格闘技界の裏街道をブッチギリでひた走る暴走団体MARSだが…今日の興行は一味違う。なぜなら、有名な日本人が出場するからだ。高森啓吾桜木裕司金原弘光野地竜太…全員PANCRASEに絡んでいる選手というのがどこか物悲しい。いや、これはMARSではなくてPANCRASEが悲しいんだけどね。


肝心のMARSも選手が揃う前にこの両国という大会場での開催を発表、対戦カードを発表した後も欠場選手が相次ぐ等、相変わらずのドタバタ劇を展開。そんな事にめげずに次回も大箱開催を予定しているのだろうのか?今日の興行内容もさる事ながら、この団体の行く末には大いに注目したいね。


チケットを購入、A席5000円。メンツから考えると、あと1000円安ければ文句ないんだけどね…って、まあ前売りを買えば4000円だけど。で、今回はパンフレットは購入制になっていた。あんまり欲しい情報もないと思われるので今回はパス。観客は…前の興行よりはやや増えていた気がするが、それでも2000人はいないだろう。う〜ん、さっきも書いた事だけど…箱のサイズだけはいつも間違えているんだよなぁ…。

第一試合 日韓新鋭決戦

キックルール 70kg契約 3分3R
○チョ・インジュン(183cm/69.4kg/韓国/闘神塾KOREA)
●丸山準一(180cm/68.9kg/日本/ザ スピリットジム)
[判定 3−0]
※丸山は3Rにダウン1

第一試合は、共に新鋭同士の対戦。試合の図式はパンチが主体のチョに対して、丸山はローキックが主体。お互いの打撃が交差する中、確実にローキックを効かせた丸山。チョは2R中盤から足を気にし始める。

だが3R中盤、丸山が放ったローキックのカウンターでチョの左フックがヒットし、丸山は痛恨のダウン。立ち上がるもダメージは残っており、これを見たチョは丸山にラッシュを仕掛ける。丸山はしのぐのが精一杯、チェはアッパーを連発してKOを狙う。

試合は判定へともつれたが、3−0でチェが勝利。


丸山はMARSの幕張メッセ興行の時はパンチ主体で攻めて返り討ちにされたんだけど、キック主体にしてもダメだったか。そりゃそうとこの試合、日本人の丸山以上に、韓国人のチョに声援が集まっていた。MARSは主催する国を間違えている気がするな。

第二試合 MARSにも生え抜きは存在する

キックルール 85kg契約 3分3R
○松本勇三(172cm/80.7kg/日本/勇三道場)
●野井翔健(180cm/83.4kg/日本/キックボクシング千葉ジム)
[2R 2分22秒 KO]
※右ローキック

第二試合には、MARS生え抜きの日本人である松本勇三が出場。対戦相手は興行の直前にロペス薩摩から野井翔健に変更されたが、MARSではそんなややこしい話をしてはいけない。


1R、インアウトを繰り返してローキックを放つ野井、しかし松本の態度は堂々としたもの。インのタイミングに合わせてワンツーやミドルキックを叩き込み、ハイキックで牽制。既にダメージがありそうな野井、松本はワンツースリー〜ローキック、続いてボディブロー〜右ハイキック三連打で二度のダウンを奪う。

2R、余裕綽々(しゃくしゃく)の松本は上段後ろ廻し蹴りを連発し観客を沸かせると、要所でローキックを放って野井の動きを止め、中盤にはそのローキックでダウンを奪う。立ち上がる野井だが、どうにも足に力が入らない。これ見た松本は容赦なくローキックを連発、あっさりと二度目のダウンを奪う。野井の足が破壊されているのは素人目にも明らか。ここでレフリーが試合を止めた。

試合に圧勝した松本は四方に後ろ廻し蹴りを披露、観客の喝采を浴びた。


今日の松本は非常に強かったが、日本には彼が活躍する80kg級はR.I.S.E.以外に闘いの舞台がないところが悲しいね。ま、暫くはMARSの立ち技部門のパイオニアとして活躍できると思うけどさ。

第三試合 濃厚な寝技勝負

MARS WORLD FIGHTING GP ミドル級トーナメント Aブロック 準決勝戦 総合格闘技ルール 83kg契約 5分2R
○ダニエル・タベラ(180cm/82.9kg/スペイン/シュート スペイン)
佐藤隆平(180cm/83.1kg/日本/R-BLOOD)
[判定 3−0]

第三試合と第四試合はMARS WORLD FIGHTING GPの準決勝戦。激戦に期待しよう。

この試合で対戦するのは、一回戦でべ・ミョンホに逆転勝ちしたダニエル・タベラと、レオナルド・”チョコレート”・ナシメントから一本勝ちを修めた佐藤隆平。ところで佐藤の体重が契約体重を100gオーバーしているが、MARSではそんなややこしい話をしてはいけない。


1R、ダッシュで接近するタベラ、佐藤の片足を抱えてテイクダウンを狙う。佐藤はこれを堪えて反対にテイクダウンを奪うが…タベラは倒れ際、下からあっという間に三角絞めを極める。思わぬ早業に観客が驚く中、タベラは三角絞めを維持しつつマウントへ移行。絶体絶命の佐藤だったが、三角絞めはどうにか脱出。しかしタベラは腕十字を仕掛け、そして再び三角絞めを極める。

一難去ってまた一難、佐藤の大ピンチに観客も声援を贈る中、どうにか腕を抜いた佐藤はサイドからの腕十字で逆襲。観客からは歓声が沸いたがタベラはこれをスルリと脱出。ブレイクが掛かったところで1Rは終了、このラウンドは完全にダベラが取っただろう。


2R、投げを放って相手を倒したタベラは佐藤に「立て」と指示。この挑発に奮起した佐藤はテイクダウンを奪うと、パスガードに成功しサイド〜マウントと移行。

観客は佐藤の反撃を期待したが…ダベラはリバースに成功すると、ラバーガードの体勢を狙う佐藤を振りほどいてパスガード、上四方からヒースチョークを狙う。またしてもピンチの佐藤だったが、タベラの上四方を上半身を使ってひっくり返すと、観客の歓声の中でマウントを奪う。これはダベラにガードポジションへ戻されるも、佐藤はこの体勢から試合終了まで鉄槌を連打して挽回を図る。

試合終了。判定は…2Rは互角に闘ったが、1Rの三角絞めがアドバンテージとなりダベラが3−0で勝利、決勝戦へと駒を進めた。


うむ、いい試合だったね、試合内容もまったく膠着する様子がなかったし。ダベラの1Rの早業は見事だったが、それを逃れた佐藤も素晴らしい。さすがは修斗新人王トーナメントのファイナリストだね。

それにしても、なにかとバカにされるMARSだが…彼らの爪の垢を煎じて呑まなきゃいけない選手はメジャー団体に山のようにいる、というか。

第四試合 何もさせない寝技勝負

MARS WORLD FIGHTING GP ミドル級トーナメント Aブロック 準決勝戦 総合格闘技ルール 83kg契約 5分2R
○ブライアン・ラフィーク(175cm/83.2kg/フランス/ホアン ジュカオン)
●ベ・ミョンホ(182cm/82.7kg/韓国/闘神塾MAD)
[判定 3−0]

この試合もMARS WORLD FIGHTING GPの準決勝戦

対戦するのは、一回戦でジョン・マイケル・コロシに圧勝したブライアン・ラフィークと、三原秀美の欠場により初戦敗退から復活したベ・ミョンホの二人。ま、本来であれば三原の代役はリザーバーの権利を持つマルセロ・ブリットが務めるハズだが、MARSではそんなややこしい話をしてはいけない。そしてラフィークの体重にも触れてはいけない。


で、序文ではやや腐したものの…ベは悪い選手ではない。一回戦ではダニエル・ダベラに対して下から腕十字や三角絞めを連発、最後に極められた場面以外は終始攻めていたのだ。主催者側もこの時のベのファイトぶりを評価しての抜擢なのだろう。


しかし、この試合ではラフィークがベの寝技を完封してしまった。

1R、ラフィークは素早いタックルでベからテイクダウンを奪う。ベはバックを奪い返しスリーパーを狙うも、しのいだラフィークが上になってパンチを入れる。ベ、今度は下から腕十字を狙うがラフィークはこれも防ぐとパスガードを決め、サイドからチキンウィングアームロックを仕掛ける。更には腕十字に移行、これがガッチリ極まった。ピンチを迎えたベだがどうにか脱出。

試合は再びスタンド。ベはテイクダウンを奪いハーフマウントの体勢になるも、ラフィークがリバースしてサイドを奪う。ここで1R終了、第三試合に続いて濃厚な寝技勝負になっているな。


2R、ラフィークのタックルを受け止めたベだが、ラフィークは強引にテイクダウンしてパンチを入れ、ハーフマウントからチキンウィングアームロックを仕掛ける。ベは逃れるのが精一杯、なんとか身を起こして亀の体勢になるも、ラフィークは上からパンチを落とすとベのガードを崩してサイドを奪う。再び身を起こすベ、ラフィークは尚も正面からフロントチョークを仕掛けた。

試合は終了、判定の結果3−0でラフィークが決勝戦へ進出。


う〜ん、一回戦で発揮されたベの滑らかな寝技がまったく出なかったなぁ。特に2Rは歴然とした差が出てしまった。まあそれだけ、ラフィークが「巧い」という事なのだろう。それにしてもMARSのこのトーナメントは意外な程にレベルが高いな。

第五試合 目立つだけでは勝てないのが格闘技界

総合格闘技ルール 70kg契約 5分2R
○ルイス・フェルナンド(170cm/69.5kg/ブラジル/マルセロ ブリット チーム)
●パク・ウォン(180cm/69.7kg/韓国/闘神塾KOREA)
[1R 3分8秒 スリーパーホールド]

今一つ無名な選手同士の決戦。それにしてもMARSは何かと韓国人選手を使いたがるねぇ。いっそ主戦場を韓国に移せばいいのに。


入場時には拍手を要求したり、トップロープを飛び越えたりで目立ちたがり屋ぶりを発揮したパクだったが、試合ではフェルナンドを相手に何もできなかった。

飛び膝蹴りで突っ込んだパクに対し、フェルナンドはこれをキャッチしてテイクダウン、バックマウントを奪ってパンチを入れ、逃げようとするパクからフェルナンドはマウントを奪ってパンチを連打。嫌がって亀の体勢に逃れるパク、フェルナンドはゆっくりとスリーパーを極める。あっさりとパクの体が伸びてタップアウト、フェルナンドが圧勝を修めた。


う〜ん、パクは本当に何もできなかったな。もっと前座で闘うべき選手だと思うな。

第六試合 MARSらしい展開って、こういう試合なのか?

キックルール 無差別級 3分3R
外岡真徳(172cm/92.7kg/日本/シルバーアックス)
●ウィル・リーバ(180cm/95.2kg/イギリス/ザ スピリットジム)
[判定 3−0]
※リーバは試合前にワセリンを塗りすぎでイエローカード、1Rにダウン1、2Rにダウン2&首相撲から顔面への膝蹴りでイエローカード/外岡は3Rにダウン1

この試合は10/4の新宿大会ではウィル・リーバ vs 青柳雅英と発表。その後で「事務局側の手違い」として訂正しているが、MARSではそんなややこしい話をしてはいけない。

で、青柳に代わって出場するのは…正道会館の全日本大会では三階級制覇を達成し、今年九月の無差別級選手権でも優勝を遂げた外岡真徳。う〜ん、肩書きには大物感が漂うねぇ。対するウィル・リーバはR.I.S.E.に出場するキックボクサー、セコンドにはニコラス・ペタスの姿が。彼がMARSに上がる日は来るのかな?


試合前、リーバはワセリンの塗りすぎでイエローカード。観客の失笑の中で試合は開始。

1R、外岡はキレのある左右のフックと強烈なローキックを連打して攻勢。早くも動きが悪くなるリーバ、クリンチでしのぐのが精一杯だ。そんなリーバにお構いなしに打撃を叩き込む外岡、まず終盤に左フックでダウンを奪うと、2R開始早々に右フックを連打して二度目のダウンを奪い、立ち上がったリーバに右フックの連打とアッパー捻じ込んで三度目のダウンを奪う。リーバはもはやフラフラの状態、KO勝利は時間の問題…かと思われた。


し、か、し。


勝利を確信した外岡は、明らかにKOを狙った力みまくりのパンチを連打。リーバはガードを固めて防御、クリンチも連発してスタミナを温存。すると…、それまでは強烈なパンチを放ち続けていた外岡の動きがどんどん悪くなる。いわゆる「攻め疲れ」だね。失速した外岡、殆ど動けずに肩で息をするばかり。これを見たリーバは外岡を首相撲に捕らえて顔面へ膝蹴りを連発して反撃。しかしMARSではこの攻撃は反則行為、リーバにイエローカードが提示される。グダグダだな。

3R、スッカリ体力を回復したリーバに対し、外岡はいまだにバテバテ。リーバは逆転を狙ってローキックを連打、外岡が組み付けば首相撲からボディへ膝蹴りを叩き込む。1Rとはまったく逆転した展開に観客が呆気にとられる中、ヘロヘロの外岡は試合終了と同時にダウンを喫した。あぁ、情けなや。

判定の結果は3−0で外岡が勝利。しかし外岡の姿はどう見ても敗者そのものだった。


う〜ん、これは世間でいうところ「MARSっぽい試合」って事になるのかねぇ。しかしまあ、こういう試合内容のせいで、第三試合や第四試合のような素晴らしい試合が台無しになってしまうのは勿体無い。外岡はKOを狙いすぎたな。猛省しなさい。

第七試合 ロシア vs モンゴル、こんなカードが実現するのはこのMARSだけっ!

総合格闘技ルール 93kg契約 5分3R
○ビタリー・シュメトフ(183cm/91.5kg/ロシア/タイガーズ デン)
●バト・ホトコン(185cm/93.0kg/モンゴル/闘神塾) ※ハン・ジョンソの名で韓国MARSに出場
[1R 2分17秒 KO]
※グラウンドでのパンチ

八月の両国国技館興行では膠着試合を展開してしまったビタリー・シュメトフの再起戦。対戦相手は、四月の韓国興行で勝利を修めたバト・ホトコン。なんでこんなカードが第七試合なんだ?って疑問もあるが、MARSではそんなややこしい話をしてはいけない。


試合開始。まずはバトが投げを放ってシュメトフを倒すと、グラウンドでマウントを奪いパンチを連打。背を向けるシュメトフに更なるパンチを連打するバト。早くもピンチを迎えたシュメトフだが、どうにか立ち上がって脱出。

で、スタンド勝負になってからは流れが一転。ここぞとばかりに大振りなワンツーを連打するシュメトフ、勢いに押されたバトは防戦一方に。そしてシュメトフのフックがバトの顔面にヒット。倒れるバトにシュメトフは上からパンチを連打。グッタリするバト、レフリーが試合を止めた。


う〜ん、展開が大味で特に感想らしい感想が持てんなぁ。よくわからんが、こんなもんなんじゃないですか?それにしてもMARSは試合内容の玉石の差が激しいな。

休憩明けといえばやはりこの人

ここでスペシャルゲストが登場。MARSのゲストといえばこの人、前回に引き続きプリティ長嶋だ。「ん〜っ、妻のワイフの亜希子に『貴方、何処へ行くの?』と言われましてですねぇ〜、ワタクシは『今日は大人気のMARSに行くんだよぉ〜』と応えましてぇ〜」と長嶋茂男のモノマネで観客を盛り上げるプリティ。う〜む、「大人気のMARS」ねぇ…。


この後、プリティはカラーボール投げを行い、最後はお約束の「我がMARSは永遠に不滅です!」で締めた。

第八試合 元PANCRASE MEGATONの神通力、MARSに通じず

総合格闘技ルール 無差別級 5分3R
エドモンド・カバウカンチ・ジュニオール(192cm/95.0kg/ブラジル/ハードコンバット)
高森啓吾(180cm/120.0kg/日本/SAMURAI SWORD)
[2R 1分8秒 KO]
※グラウンドでのパンチ

PANCRASE MEGATONの高森啓吾がMARSに登場。PANCRASE時代では「勝っても負けても秒殺」という勝負師っぷりが人気を呼んだ高森だが、PANCRASEを離れてからは目立った活躍をしていないのが気になるところ。今日の対戦相手は非常にイカツイ体の持ち主、エドモンド・カバウカンチ・ジュニオール。かつてはPRIDE CHALLENGEにも出場した選手だ。

ちなみにこの試合、本来高森の対戦相手は巨漢戦士のビッグジム・ヨークだったが、これまた直前で変更。もうわかっているだろうが、MARSではそんなややこしい話をしてはいけない。


1Rは高森の腰投げ、グラウンドでのバスター、そして小外刈りが決まり観客も大いに沸くも…、グラウンドでカバウカンチがリバースに成功してからは一方的展開に。グラウンドで優位なポジションをキープし続けるカバウカンチは次々にパンチを落としつつ袈裟固めの体勢へ。柔道出身の高森はあっさりとリバースを決めるも、カバウカンチも直後にスルリとバックを奪って反撃。今日の高森は大苦戦だな。

2R、高森のパンチにタックルを合わせてテイクダウンを奪うカバウカンチ、上から一定の間隔でパンチを連打してダメージを与える。ボディへ顔面へとガンガン打撃を叩き込むカバウカンチ、高森がグッタリしたところでレフリーが試合を止めた。


う〜ん高森、完敗だな。PANCRASE MEGATONが廃止になって一年半か…。高森にしても、先日R.I.S.E.に出場した三浦広光にしても、離脱して以来、格闘技界の裏街道を歩んでいるなぁ。僕は尾崎社長に、彼らを寛容に許してほしいんだけどね。

第九試合 掣圏道のエースの想い、ローブローに散る

総合格闘技ルール 97kg契約 5分3R
桜木裕司(180cm/92.5kg/日本/掣圏会館)
ファビアーノ・サイクロン(187cm/96.8kg/ブラジル/TARGET)
[1R 15秒 無効試合]

このところは徹底的に勝ち星に見放されている「掣圏道のエース」桜木裕司。今年に入って4戦1勝3敗1KOとどうにも勝てないワケだが、この試合では心中秘するところがあるのか、表情にメチャメチャ気合が入っている。体も幾分ほっそりした桜木の対戦相手は、本来は立ち技の選手であるファビアーノ・サイクロン。桜木としてはKOで勝ちたいところだが…。


世の中には、どうにも星の巡り合せが悪い時もあるものでして。


開始早々、桜木はまずカカト落としを繰り出す。観客が驚く中、ファビアーノがカウンターのローキックを放つと…なんとこれがものの見事にローブローに。股間を押さえてうずくまる桜木、観客は試合前の表情とは対照的な桜木の姿に思わず大爆笑。残酷だな。

そしてこの一撃はかなりのクリーンヒットだったらしく、ファビアーノがレフリーに口頭で注意された後も、観客がしびれを切らして野次を飛ばした後も、桜木は同じポーズのまま動けない。

待つこと約五分、ようやく和田良覚レフリーがマイクを握る。曰く、とりあえず両者は一旦退場して後に控える試合を進行させ、その間に桜木が回復した場合は再試合を行うらしい。観客は納得し拍手で応えると、桜木はうずくまった状態のまま担架に乗せられて退場。う〜ん、こりゃ回復しないだろうな。

結局、第十試合の後、この試合が無効試合となる事がアナウンスされた。


「泣きっ面に蜂」というか「弱り目に祟り目」というか。悪い時には悪い事が重なるね。桜木は少し休んだ方がいいんじゃないかな。

それにしても、MARSの決断の早さは見事。僕は今年、修斗川尻達也 vs ヨアキム・ハンセン戦で十分以上もオロオロする修斗運営陣を目撃しているだけに、五分で次の進行について決断したMARSの手際の良さは素直に賞賛したい。

ま、修斗のケースは「メインイベントの大一番」だったので一概に並べて評価はできないとは思うが…、観客に対して何の説明もないまま十分も待たされたのには結構イライラさせられた。それに比べればMARSの決断はずっと迅速だったし、観客にも分かりやすかった。こういうドタンバの対応の良さって大事だと思うね。

第十試合 元RINGSのエースのボヤキ節が炸裂

総合格闘技ルール 85kg契約 5分3R
金原弘光(178cm/83.8kg/日本/U.K.R.)
−マルセロ・ブリット(175cm/83.4kg/ブラジル/マルセロ ブリット チーム)
[審議中]
※会場での発表記録は1R 49秒 腕十字固めでブリットの勝ち

前回の興行でMARS WORLD FIGHTING GPのリザーバー権を獲得したのに、トーナメントにて選手が欠場しても何故かワンマッチに出場しているマルセロ・ブリット。MARSではそんなややこしい話をしてはいけないのだが、瓜田幸造を相手に圧勝したファイトぶりを知っている者としては非常に残念。

その対戦相手は…最近はPANCRASEにちょこちょこ出場するようになった金原弘光エンセン井上主催の興行「心」で総合格闘技八連敗を止めた金原、ここは勢いに乗ってブリットを撃破したいところだが…。


ブリットはやはり強かった。

試合開始から程なくして、鋭いタックルで金原をテイクダウンしたブリットは電光石火で腕十字の体勢へ。腕を抜こうとする金原、しかしレフリーが試合を止めた。いわゆる見込み一本だ。

もちろん、金原は「まだ極まっていない!」と猛抗議を開始。ブリットがリングを降りた後も、金原はしきりに審判団に文句を言っていた。ま、気持ちはわかるね。

結局、興行の終了後、運営側から「この決着について審議する」という情報が流された。


でもまあ正直「金原は負けていたと思うなぁ」と思わせるくらいに、ブリットのタックルや腕十字は鮮やかだった。再戦したところで、金原が負けるのは目に見えてるし…。抗議する前にあの素早いタックルを切ってくれよ。ファンは「ボヤき続ける金原」を見たい人もいるかもしれないが、少なくとも僕はそうではない。強い金原、勝つ金原が見たいね。

第十一試合 元PANCRASE GARO、今日は快勝

総合格闘技ルール 無差別級 5分3R
野地竜太(186cm/100.0kg/TEAM GARO)
●セルゲイ・シュメトフ(186cm/112.0kg/ロシア/タイガーズデン)
[1R 3分39秒 KO]
※グラウンドでのパンチ

いよいよMARSも大詰め。この試合には黒い噂でPANCRASEを解雇された(後に和解)野地竜太が出場。僕としては最近ようやく総合格闘技に慣れてきた野地がPANCRASEを離れたのは残念だし、こうやって再び総合格闘技の舞台に復活するのは嬉しい。対戦相手は第七試合に出場したビタリー・シュメトフの兄、セルゲイ・シュメトフ。TITANSにも出場経験があるらしい。総合格闘技は初となるシュメトフ、立ち技素人が相手となれば野地は負けられないな。


試合開始。巨体のシュメトフ、まずは後ろ廻し蹴りを披露。観客が驚く中、シュメトフは投げを狙う。野地はこれをこらえて首相撲から膝蹴りを連打。早くも失速するシュメトフ、苦し紛れにタックルを敢行するも、あっさりと野地に止められてしまう。

あとは一方的。グラウンドではまったく動きのないシュメトフから、野地はあっという間にマウントを奪ってパンチを連打。サイド〜上四方とポジションを遷移しつつ鉄槌も連打する野地、再びマウントを奪ってパンチを放つ。なんとか逃れようとノッソリと動くシュメトフ、野地は逃がさず鉄槌を入れ続ける。タップするシュメトフ、観客は休憩後では初となる日本人の勝利に歓声を上げた。


今日の野地、相手が総合素人だったとはいえ、自分よりも大きな体の選手に圧勝したのはいい経験になるんじゃないかな?これからはどこの団体に彷徨っていくのかはわからないけど、今後の活躍にも期待したいね。

第十二試合 ん?ん?んんん?優勝じゃないの?

MARS WORLD FIGHTING GP ミドル級トーナメント Aブロック 決勝戦 総合格闘技ルール 83kg契約 5分2R + 延長5分1R
○ダニエル・タベラ(180cm/82.9kg/スペイン/シュート スペイン)
●ブライアン・ラフィーク(175cm/83.2kg/フランス/ホアン ジュカオン)
[判定 2−0]
※タベラがMARS WORLD FIGHTING GP ミドル級トーナメント Aブロックを優勝

意外にレベルの高い攻防が続いたMARS WORLD FIGHTING GPもいよいよ決勝。この舞台に立ったのは、かつて自分よりも20kgも重いギルバート・アイブルと引き分けた経験を持つダニエル・タベラ、ホアン・”ジュカオン”・カルネイロの弟子であるブライアン・ラフィーク。どちらも寝技を得意とする二人、見応えのある攻防に期待したいね。


試合はやはり一進一退の攻防に。

1R、ラフィークはタックルを敢行、コーナー際で粘るタベラを投げてテイクダウンを奪うと上からフロントチョークを極める。しばらくこの体勢が続いてタベラはピンチを迎えた…ように思われたが、どうにか首を抜いて脱出、パスガードを決めてマウントを奪うとパンチを落とす。

だがラフィークもリバースに成功しサイドを奪い返す。ならばとタベラは立ち上がり、続くラフィークのタックルをガブッて防御しグラウンドでバックを奪う。これをラフィークがリバースしてサイドについたところで1Rは終了。すげえ攻防だな、高いレベルで噛み合っているよ。


しかし2R開始早々、異変が起きた。接近したタベラのアッパー及びストレートがクリーンヒット。そして、この一撃でラフィークからは大量の鼻血が噴出。そんな事はお構いなしにタベラはテイクダウンを奪う。ラフィークは下から足を効かせてタベラを立たせるが、ラフィークの立ち上がり際にタベラのハイキックがヒット、徐々にタベラがペースを握っていく。それにしてもラフィークは鼻血がひどいな。

タベラは再びテイクダウンを奪い、半立ちになってパンチを浴びせる。押され気味のラフィークは亀になって防御。タベラは尚も上からパンチを浴びせたが…。ラフィークは下から足を捕らえてタベラを倒し、グラウンドでサイドを奪い、準決勝でも見せたチキンウィングアームロックを極めに行き、ダメだと見るや腕十字へ移行。しかしここで無常にも試合は終了。う〜ん、最後までなかなかレベルが高かったなぁ。

最後まで目の離せない攻防は判定となり2−0でタベラが勝利し、MARS WORLD FIGHTING GPミドル級トーナメントのAブロックの優勝者となった。


ん?Aブロックって何?前の興行でそんなブロック分けなんてなかったジャン!

主催者によると、実はこのトーナメントは16人制のトーナメントの半分でしかなく、もう半分は次回以降に開催。最終的にはAブロック優勝者とBブロックの優勝者で真の優勝者を決めるらしい。う〜ん、そんなアナウンスなんてどこにもなかったような。いやいや待て待て、MARSではそんなややこしい話をしてはいけない。


ま、なんにせよこの試合のレベルは高かった。MARSがこのレベルを維持できれば、周りの評価も一転する可能性を秘めていると思うねぇ。いやいや、MARSには「男子三日会わざれば活目して見よ」という言葉が似合うな。

雑感

相変わらず、箱さえ間違えなければ興行の内容は「面白い!」と思えるのがMARSの七不思議なんだよなぁ。進行に関してもいい機転の効かせ方をしてるし、居心地はかなり良かったなぁ。ま、空っぽの両国国技館という状況が気分がいいのかもしれんが(笑)。


さて次回のMARSだが…こちらの期待を裏切らずに、横浜文化体育館での開催が決定。まあ箱のグレード自体はかなり下がったんだけど、相変わらず大箱での開催という発想は抜けないようだなぁ。とはいえ、これくらいの試合のクオリティを維持したまま横浜文体で定期開催できるようになれば、かつてのRINGSみたいな役回りになって意外に化けるかもしれないなぁ。


BoutReviewの井田さん。もう少し根気よくMARSに付き合ってみたらどうですかね?マジで。


以上、長文失礼。