10/7 全日本キック 新宿FACE興行 「AJ NIGHT」 観戦記

Mask_Takakura2006-10-07

全日本キック三連戦!一日目は「AJ NIGHT」だ!

本日より三日間、全日本キック新宿FACEで三連続興業を開催。う〜ん、キック界でこんな興行の打ち方をするのは初めてなんじゃないかなぁ?


で、一日目は本部であるAJジムの主催興行、その名も「AJ NIGHT」。メインイベントは、K-1 MAXへの出場が期待されている山内裕太郎が出場経験がある白虎と激突。これは面白いカードだな。他にはPANCRASEでの試合を経験した吉本光志、総合にキックにと大活躍のWINDY智美、今日が再起戦となる湟川満正とAJジムのオールスターが集結。来月には「格闘科学の探求者」大月晴明の復活も決定したAJジム、今日は所属選手の熱戦に期待しよう。


チケットを購入、立見席3500円 + ドリンク代500円。ドリンク代が500円もするのが新宿FACEの欠点だな。観客は超満員、特に立見席は幾重もの列が生まれていた。…床、抜けないかねぇ?


※観戦記は第二試合から。遅刻しました、スイマセン。

第二試合 折角のAJ NIGHTなのに、一方的とはどういう事か

ライト級 3分3R
○鈴木真治(174cm/61.0kg/藤原ジム)
●安川文健(168cm/61.0kg/AJジム)
[3R 2分14秒 TKO]
※タオル投入

かなり一方的な試合。「野良犬」小林聡も所属する藤原ジムの鈴木がワンツーの連打と右ローキックで試合を圧倒。今日はAJ NIGHTだというのに所属選手の安川は、序盤こそローキックで対抗するも…試合が進む毎に防戦一方になり、2R中盤からは鈴木のローキックが効き始めて左足を気にする素振りを見せた。

鈴木はこの後もパンチとローキックで休む事なく攻め続けた結果、足の踏ん張りの効かない安川は3R終盤に鈴木の右ローキックでダウンを喫した。この後、安川は立ち上がったが足はかなり効いている様子。これを見たレフリーが試合を止めた。


鈴木は以前から「いい選手だなぁ」と思ったが、今日も藤原ジムらしい攻めで勝利を掴んだな。この先が楽しみだ。

第三試合 前回の試合を反省した上での攻めが効を奏した

バンタム級 3分3R + 延長3分1R
○割澤誠(168cm/53.4kg/AJジム/全日本バンタム級 二位)
●真後和彦(168cm/53.5kg/はまっこムエタイジム/全日本バンタム級 三位)
[判定 3−0]

今年三月の興行で寺戸伸近を相手に1RKO負けを喫した割澤誠、今日は再起戦である。ちなみに僕が観戦した場所の周りには割澤の知り合いが沢山いた。女の子が「ワリワリ、頑張れ〜!」なんて叫んでる。


1R、前に出てワンツーやボディストレートを放つ真後に対して、割澤は下がりながらの右ローキックで対抗。互角の展開で迎えた2R、割澤は一転して前に出てワンツーと右ローキックで攻める。接近して組み付けば首相撲からヒザ蹴りを連打、真後はワンツーを放つ機会が減ってしまい劣勢に。

3Rも同じ展開、前に出て打撃を放つ割澤に対して真後は防戦一方だ。しかし中盤、真後は数少ないワンツーを放つ機会にヒジ打ちを混ぜて攻めると、被弾した割澤が流血しドクターチェックが入る。これを見た真後はチャンスとばかりに前に出てワンツーやヒザ蹴りを放って一気に攻めるが、割澤もガードを固めて右ローキックで抵抗。

試合終了、判定は3−0で割澤が勝利。応援団の女の子は「ワリワリ、カッコイイ!」と叫んでいた。


今年三月の試合では一気呵成に攻めたのが裏目に出た割澤だが、今回は慎重に攻めたのが効を奏したな。年齢は決して若くない選手だが、選手層の薄い全日本バンタム級の活性化の為にも、本部ジム所属選手として今後も頑張って欲しいね。

第四試合 再起戦はややあっさり気味に決着

ウェルター級 3分3R + 延長3分1R
湟川満正(178cm/66.4kg/AJジム/全日本ウェルター級 二位)
●遠藤慎介(170cm/66.0kg/峯心会/元全日本フェザー級 一位)
[1R終了時 TKO]
※タオル投入

今年四月に行われた全日本ウェルター級の王座決定戦にて「超新星」大輝に完敗した湟川満正、第三試合の割澤と同じく今日が再起戦となる。試合前にはK-1 MAXにも出場した元日本プロボクシング三冠王前田宏行が湟川を激励。


1R、「昨年、一番成長した男」湟川が攻める。序盤にワンツーをヒットさせると、ローキックとミドルキックを左右問わずに繰り出す湟川。ペースを崩さずに次々に出されるキックを前に遠藤は防戦一方に。目の前の観客は「なんだよ遠藤。割といい体してると思っていたけど…見かけ倒しかよ?」なんて言っていたが…。

1R終了後、唐突にゴングが鳴った。アナウンスによると湟川の右ミドルキックで遠藤が左腕を負傷したらしい。ちょっと拍子抜けの展開ではあったが、湟川が圧勝で復帰戦を飾った。


う〜ん、僕のお気に入りの選手である湟川の試合が短くて残念だ。次戦に期待しよう。

第五試合 姐さん、意外にも大苦戦

女子54kg契約 3分3R + 延長3分1R
WINDY智美(158cm/53.8kg/AJジム/IKMF東洋女子バンタム級 王者)
●イム・スージョン(165cm/53.3kg/韓国/大韓ムエタイ連盟バンタム級 王者)
[判定 2−0]

今年二月、キックボクシングでは念願のベルトを手にしたWINDY智美姐さん。しかし、総合格闘技では宿敵の辻結花に完敗。敗戦のショックから一時は引退も考えたというWINDY姐さんだが、先月行われたSMACK GIRLで総合格闘技は復帰。今日はキックの復帰戦となる。相手は女優としても売り出し中の美形格闘家、イム・スージョン。


1R、WINDY姐さんは積極的に前に出て、ローキックを起点にワンツーを放つ。対するイムは序盤こそワンツーを返したが、WINDY姐さんの攻めを前に怖気づいたのか下がりながらの攻めが目立つようになる。中盤からはボディストレートやワンツーを連続ヒットさせるWINDY姐さん、試合はこのまま一方的に終わる…かと思われた。

しかし2R以降、イムはクリンチを多用するようになる。接近してヒザ蹴りを繰り出しつつWINDY姐さんに組み付くイム、この「掛け逃げ」とも言える攻めを前にWINDY姐さんが反撃に転じれない。合間にワンツーをヒットさせたり、逆に投げ返したりしたWINDY姐さんだったが、結局イムはこの攻めは試合終了まで繰り返した。う〜ん、トンコツドロドロファイトよりもタチが悪いなぁ。

判定の結果、2−0でWINDY姐さんが勝利。ぬぬぅ、一人はドローですかい。厳しいねぇ。


なんとも煮え切らない展開だなぁ。せめてWINDY姐さんの打撃がもう少し重ければ、1Rの攻めで充分勝利できたと思うんだけどねぇ…。

小林、ついに大一番へ!

リング上には「野良犬」小林聡が登場、来月の興行で現役ラジャダムナン王者にしてライト級四冠王、ジャルンチャイ・ケーサージムとの対戦が決定した事を発表した。リングに上がった小林は「ムエタイ四冠王のジャルンチャイが相手という事ですが、今年の全日本キックの対ムエタイの試合で一番インパクトのある試合を見せますので、皆さん観に来てくだチャイ」と、シャレにならない相手の名前で駄洒落を言っていた。

普通、日本キック界のムエタイ越えは、その選手の階級より下の王者を連れてきて試合をさせる事が多いが…、今回は小林の相手は同階級の現役王者という事もあり、苦戦する事は必至。年齢的な事も考えて、恐らくムエタイ越えのラストチャンスとなるであろう小林。強烈な左右のボディブローは通用するのか?楽しみだ。

他にもAJジムの成長株である遠藤智史がムエタイ遠征の結果を報告(善戦するも敗北)、村山トモキが今月のPANCRASEで総合の試合に挑戦する事を発表した。

第六試合 相変わらず島野の扱いが悪いなぁ…

63kg契約 3分3R + 延長3分1R
吉本光志(171cm/62.8kg/AJジム/IKMF東洋ライト級 王者)
●島野智広(169cm/62.9kg/建武館/全日本ライト級 六位)
[判定 2−0]

今年七月、PANCRASE総合格闘技デビューを果たした「黒豹」吉本光志がキック復帰戦に挑む。打たれ強さを武器に後半から捲くる展開を得意とする吉本、「不遇の実力者」島野智広から勝利を奪えるか?


1R、あまり脚光を浴びないが、実は島野はかなりの実力者。左のインローを起点に前に出て左右のパンチのラッシュを浴びせる島野、吉本もワンツーを返すも技術的には島野が上。コーナーに追い込んでワンツーを畳み掛ける島野、本当にこの人は見た目の地味さに比べて実力が高いなぁ。だが吉本は終盤にヒザ蹴りを島野のボディへ叩き込む。この時に僅かに屈んでしまった島野、吉本はこれ以降はミドルキックを多用するようになる。

2R、吉本は右ミドルキックとワンツーで島野を攻め立て、島野はローキックとワンツーの連打で対抗。1Rはやや攻め込まれた感のある吉本だったが、このラウンドはミドルキックを何発も島野に叩き込む。しかし島野も要所でワンツーの連打を繰り出し吉本を追い込んだ。互角の展開だ。

3Rも互角の展開が続いた。ミドルキックを連発する吉本に対し、ワンツーとミドルキックで対抗する島野。一進一退の展開だったが、追い込んでいる場面は島野の方が多かった。だが残り30秒の時点で吉本のミドルキックが効いてきたのか島野はやや失速し、そこへ吉本のワンツーがヒット。チャンスを迎えた吉本はミドルキックを連発したが、島野は前に出てのワンツーで対抗。


試合終了、試合結果は判定へ。僕は「ドローかな?」と思っていたが、ジャッジ二名が吉本を支持、2−0で吉本が勝利した。


島野についてだが、僕が彼の事を「不遇の実力者」と書いたのは、この人はいつもこんな不可解な負け方ばかりをしているからなのである。判定になると、どっからどう見てもドローの試合では島野が負け、どう見ても島野が勝っている試合ではドローにされるという。彼は日本でも非常に珍しい、いわば「逆プロテクト」をされている選手なのだ。

本当に全日本キックの、彼に対するこの仕打ちは一体なんなのだろうか?問い詰めたい、小一時間問い詰めたい

第七試合 K-1 MAX出場査定マッチは壮絶な試合に

70kg契約 3分5R
山内裕太郎(180cm/69.1kg/AJジム/全日本Sウェルター級 王者)
●白虎(176cm/69.7kg/和術慧舟會RANGER品川GYM/元NKBウェルター級 王者)
[5R 1分23秒 KO]
※右ローキック/白虎は1Rにダウン1、3Rにダウン2。5Rの二度目のダウンでKO負け/山内は2Rにダウン1

今年一年で「同階級に敵なし」を証明した山内裕太郎。Sウェルター級王座決定トーナメントではブッチギリの強さで優勝し、M-1では強豪クンタップ・ウィラサクレックに激勝。そしてついにK-1 MAXへの出場を表明した山内、今日は既にK-1 MAXへの出場を果たしている白虎との対戦だ。それにしても、絞りに絞った山内に対して、筋肉質な白虎の体型。ちょっと同じ階級には見えないな。


1R、序盤からワンツーのラッシュを仕掛ける白虎。その勢いに観客から驚きの声が上がったが、山内は隙を見て右ストレートをヒットさせて逆転すると一気にラッシュを仕掛ける。ワンツー、ボディブロー、右ローキックと打ち分ける山内、上中下に打ち分けた打撃を前に白虎は防戦一方。

しかし白虎は打ち合いを望んでパンチを繰り出すと左フックがヒット。今度は白虎がラッシュで攻め込んだが、山内はこれにカウンターを合わせると、両者のストレートが同時にジャストミート。映画のようなシーンに観客が驚く中で勝ったのは山内、白虎はもんどり打ってダウン。観客の大歓声の中、山内は立ち上がった白虎を倒すべくあらゆるパンチを駆使してKOを狙う…が、ここで1R終了。う〜ん、やはり山内は強い。


2R、山内はワンツーに右ローキックを混ぜて攻め始める。更にはボディブローも多用すると、このラウンドは完全に山内のペースとなる。ヒジを使って逆転を狙う白虎だが、山内の多彩な打撃を前に自分を守るのが精一杯の状態。いよいよ山内のKO勝ちが見えてきた…と思われた。

が、中盤。不意に放った白虎の右ストレートがモロにヒット、山内はその場にグシャッと倒れてダウン。思わぬ逆転劇に観客から驚きの声が上がる中、白虎は立ち上がった山内にラッシュを仕掛けていく。ストレートを連続でヒットさせて勢いに乗る白虎、防戦一方になる山内は大ピンチを迎えたが、パンチの連打にヒジを織り交ぜて少しづつ反撃していく。追い詰められても山内は強いな。


観客が一進一退の攻防に揺れる中で迎えた3R、前に出る白虎はワンツーのラッシュで攻めるが、山内はボディブロー、ローキック、ワンツー、ヒジ打ちと持っている打撃を総動員して対抗。互角の展開となったが、前に出ようとする白虎に山内はカウンターの左フックを合わせる。その場にグシャッと倒れる白虎、観客は山内の「逆転の逆転劇」でこの試合何度目かの大歓声だ。

それでも立ち上がる白虎だが、さすがにダメージはアリアリ。山内はワンツーと右ローキックで一気呵成に攻め立てる。特にローキックが白虎を苦しめている。しかし白虎もワンツーをヒットさせてからは逆転、ここからラッシュで攻め込んだが、山内はガードを固めてしっかりと防御、隙を見て右ストレートをヒットさせると、下がる白虎にワンツーの連打を叩き込み、右ローキックでこのラウンド二度目のダウンを奪った。

いよいよ山内の勝利が見えてきたか…と思われたが、ここまでの激戦で両者共に顔面からは流血、ここでドクターチェックが入る。まだまだ試合の行方はわからない。


4R、やや疲れを見せ始めた両者は距離を取っての攻防に終始。気迫でズンズンと前に進んでワンツーを繰り出す白虎に対し、山内は右ローキックが主体、白虎が接近すれば多彩なパンチを放って距離を取る。リードを奪ったのは山内、次々に叩き込まれる右ローキックのダメージからか、白虎が左足を気にするシーンも。しかし白虎はガンガン前に出続け、打撃で互角の展開を見せる。白虎の根性が凄い。


しかし迎えた5R。右ローキックが効いて来て動きが緩慢な白虎に対して、山内はワンツー、フック、ボディブロー、右ローキックと多彩な打撃を連発すると、ストレートを喰らって背を向けてしまった白虎のモモの裏に右ローキックを叩き込んでダウンを奪う。

ついに山内の勝利…と思われたが、白虎は尚も立ち上がる。その執念には観客から畏敬の歓声が上がったが…、これまで四度のダウンを喫したその体はもうボロボロ。山内はストレート、アッパーと繰り出し、再び右ローキックでダウンを奪う。白虎の左足が踏ん張りが利かないのは素人目にもわかる状態、ここでレフリーが試合を止めた。


凄まじい一戦を制した山内は「メインを張らしてもらって、凄くプレッシャーがあったんですけど…、KOで勝てて、白虎選手もすごく強くて、今…最高ですっ!」と挨拶、観客の歓声を浴びていた。負けた白虎は四方に礼、観客はこの姿にも大きな拍手を贈っていた。


いや〜、文句なく壮絶な試合だったっ!観客の歓声が鳴り止まない中、お互いが打撃の手を殆ど休めない展開が続き、最後はキッチリKO決着。勝った山内はもちろん、負けた白虎もこの一戦を経験した事を誇って欲しい。そんな中、勝敗を分けたのは山内の天才的なカウンター技術だろう。試合の要所で白虎のラッシュの勢いを止めたりダウンを奪ったりで大活躍、その技術はもっと上の舞台でも充分に通用するように思われる。見た目は地味だが確かな強さを持つ山内、来年はK-1 MAXへの進出を大いに期待したいところだ。

雑感

今日はとにかくメインイベントに尽きるね。修羅場を経験した山内のカウンターが冴えに冴え、対する白虎も粘りに粘り、お互いに最後まで勝負を捨てなかった結果、文字通りの死闘となった。こんなに凄まじい試合が目の前で観れるのだから、新宿FACEは魔性の会場だな。クセになる、というかねぇ。


以上、長文失礼。