9/16 PANCRASE ディファ有明興行 ちょっと長めの観戦記

あんなに前回の興行で怒っていたのに…

本日はディファ有明PANCRASEを観戦。


前回のPANCRASE横浜文化体育館興行は客入りも試合内容も散々で、僕自身も非常に腹立たしい気分にさせられた。

この怒りについては「8/27 PANCRASE 横浜文化体育館興行 観戦記」を参照の事

http://d.hatena.ne.jp/Mask_Takakura/20060827
読むのがめんどくさい人も、ピンクに塗った部分だけを拾い読みしてくれい

この事は今、思い出しても怒りしか沸いて来ない。故に本当はこの日の興行も観戦予定はなかった。むしろ僕の興味は、同日に横須賀で開催されている大日本プロレスの「商店街プロレス」の方にあった。

だが…。開催当日になって「あ、そうか。よくよく考えれば伊東竜二とかアブドーラ小林は怪我で欠場してるのか…」を思い直した為にこの観戦は中止に。決して寝坊をしたから観戦を諦めたワケではない。断じてそうではない。確かに目を覚ましたのは午後二時だったが、それが理由ではない。断じてそうではない。

…っていうか、どうも最近は土日になると寝坊する癖がついたなぁ、イカイカン。


んで、考え直した結果、新木場1stRINGで開催されていたEl Doradoにも興味はあったが…結局、今日はPANCRASEを観戦する事に。

モノは考えよう

ま、この日のPANCRASEに興味がなかったワケではない。「世界の荒鷲」坂口征二の長男が総合デビューしたり、シュートボクセのダニエル・アカーシオが参戦したりと、それなりに僕の興味を惹く話題もあるにはあった。しかし興行全体では押しの弱いカードばかり組まれていたのも事実。知人からは「さすがに今回はパス…」という声が続出、僕もその決断までにかなりの時間を要した。


しかし、「モノは考えよう」というか。実はカードを冷静に見れば「案外、今のPANCRASEの身の丈にあっているのではないか?」という気もするし、そうなると「試合を観る事」以上に「このカードと、ディファ有明という箱を使った時のPANCRASEの現状」にも興味が出るというものだ。ってなワケで、最終的には思った以上にテンション高くディファ有明に向かう事となったのだ。着想の転換って大事だね。


チケットを購入、C席5000円。高いなぁ。近頃のPANCRASEは立見席が出ていないのでどうしても観戦が高くついてしまう。観客は超満員。後楽園ホールは埋められないのに、ディファ有明は超満員になってしまうPANCRASE。「帯に短し、襷(たすき)に長し」というか。今のPANCRASEにとって「丁度良い箱」というのはどこなのか?

PANCRASE GATE 第二試合 「坂口道場の若頭」この看板だけでメインイベント級

ウェルター級 5分2R
坂口征夫(坂口道場)
●小野明洋(チームタイゴン)
[2R 2分47秒 KO]
※スタンドでのヒザ蹴り

あの「世界の荒鷲坂口征二の長男が、33歳にして突如PANCRASEマットに登場!そのファイトぶりに注目が集まった。試合では小野のパンチに苦戦するも、首相撲からのヒザ蹴りを連発してダメージを与えると…2R中盤、顔面へヒザ蹴りをヒットさせて小野を完全KO。

試合後はまるで大仁田集会、リングの周りを応援団が取り囲んでリングをバンバン叩きまくる。会場はまるでメインイベントのような大盛り上がりとなった。


…と、仕事に来ていたダイスさんに教えられた。クソ〜ッ、乗り過ごしさえなければぁ。


とりあえずプレス向けにインタビューをする姿と、その後で応援団に胴上げされる姿だけは見れた。顔は弟の坂口憲次に負けず劣らずのベビーフェイスなのだが、その背中には大きなタトゥーが。「あの『世界の荒鷲』の息子が、何たる事を!」って意見もあるだろうが…、ここは「偉大な父を持つがゆえの、若き日の過ち」と大目に見たい。




そりゃそうと、既にこの時点で前回の横浜文化体育館興行以上のお祭り状態になっている…というのもどうなのかねぇ?

PANCRASE GATE 第三試合 高田道場所属の若手は本当に勝てない選手が多いなぁ

ミドル級 5分2R
○藤井陸平(和術慧舟會RJW)
●長屋圭三(高田道場)
[1R 2分14秒 腕十字固め]

ディファカレーを食べつつぼんやりと観ていたら、藤井がアッサリと腕十字を極めていた。長屋にいいところはなかった。



う〜ん、高田道場GAEA JAPANばりに若手が育たないねぇ。デビューした選手がやめないだけ、GAEAよりはマシだと思うけど。

第一試合 ほほう、P's LABにはこんな選手もいるのか

フェザー級 5分2R
○島田賢二(171cm/63.1kg/PANCRASE P's LAB 東京)
●裕希斗(168cm/62.9kg/U-FILE CAMP.com)
[判定 3−0]

本日の第一試合には、7月の興行で全日本キック吉本光志と引き分けた裕希斗が、セコンドに田村潔司を従えて登場。そのファイトぶりに注目したが…、試合では島田賢二はセンスの良い打撃で圧倒。


試合は両ラウンドを通して「スタンドでの打撃戦」と「コーナー際での差し合いによる膠着」が交互に繰り返される展開となったが…島田はワンツーやアッパーやローキックといった打撃で裕希斗を少しずつ追い込んでいく。特に右ストレートは随所で裕希斗の顔面を捉えた。更に島田は飛びヒザ蹴りも多用、これまたよくヒットしていた。

単発ながらも休む事なく繰り出される島田の打撃を前に、裕希斗は2R中盤からは鼻から出血する等で苦戦。結局、有効な反撃をする間もなく試合終了のゴングを聞いた。う〜ん、一方的だねぇ。

試合終了、判定の結果3−0で島田が勝利。


いやいや、島田は強いねぇ。今日の試合からはグラウンドの強さは解らなかったけど、これで寝技もイケればフェザー級戦線に殴りこめるんじゃないかな?この先の活躍に期待しよう。

第二試合 K.I.B.A.といえば、DJ.taikiの去就が気になるなぁ

ライト級 5分2R
○Dr.Yoshimura(176cm/68.1kg/K.I.B.A.)
●荒牧拓(178cm/66.3kg/PANCRASE P's LAB 横浜)
[判定 2−0]

第一試合に続いて、P's LABの所属選手が登場。荒牧拓は佐藤光留をセコンドに従えて入場、そのファイトぶりに注目したが…。


1R、Yoshimuraのローキックをキャッチした荒牧がテイクダウンに成功。そして…。ここからラウンド終了まで荒牧は足関節技に固執、Yoshimuraはこれに付き合わされる事になる。最初こそ下から腕十字を仕掛けられが、これ以降はずっと膝十字固めを極めようと粘る荒牧、Yoshimuraもグラウンドで蹴る等して抵抗するが、荒牧は体勢を何度も変えながらも足を離そうとしない。結局、これは極まる事がなかったが…さすが佐藤が師匠なだけあって、荒牧の足に対する執念が凄まじい。

2Rは1Rとは一転、スタンドでの打撃戦が中心となった。景気よくワンツーで前進したのは荒牧、裏拳やアッパーなども繰り出すもヒットしない。そして荒牧は本命のタックルを繰り出す…が、Yoshimuraが切る。二度目のタックルも突き放したYoshimura、そしてここで荒牧に異変が。1Rの関節技への執着が災いしたのか、荒牧の動きが悪くなる。そこへ、Yoshimuraのカウンターの右ストレートがクリーンヒット。思わずよろめく荒牧、ダウンを誤魔化すようにタックルを仕掛けるも、捌いたYoshimuraが上になる。インサイドからパンチを落とすYoshimura。ラウンド終了直前、荒牧の横三角絞めが極まりそうになるが、ここで無常にも試合終了のゴング。

判定の結果、2−0でYoshimuraが勝利。2R終盤のカウンターの右ストレートが決め手となったね。


う〜ん、負けたけど荒牧の足関節への拘りぶりはなかなか面白かったなぁ。打撃系選手以外にあの戦法が通用するかどうかは疑問だけど。

第三試合 TIGER PLACEって久松先生以外に選手っているんだっけ?

ミドル級 5分2R
金井一朗(176cm/81.3kgPANCRASE ism/PANCRASEミドル級 八位)
●久松勇二(178cm/81.1kg/和術慧舟會TIGER PLACE)
[判定 3−0]

PANCRASE ismの中では影の薄い存在である金井一朗が5ヶ月ぶりの試合に臨む。う〜ん、ismの中では若い方なのに試合数が少ないのは可哀想だなぁ。対戦するのは「久松先生」こと久松勇二、今日も「11PMのテーマ」に乗って入場。今回はお付きのJ-BOYSが六人に増殖、ショッキングピンクのビキニのパンツが目に眩しい。っていうか、増えるなよ…。


■久松先生 & J-BOYSとは?(スポナビへのリンク)
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/photo/200609/im00045419.html

■11PMのテーマ(久松先生はロング・リミックス版で入場)
http://www.youtube.com/watch?v=2X3BeQ82EgI


試合は終始、スタンドによる単発の打撃戦となった。両ラウンドにおいて久松先生は、得意の左ジャブで金井の動きを牽制し、中距離から左ミドルキックでダメージを与える。これは打撃戦における久松先生の必勝パターン。対する金井は単発の右フックと左右のボディブローで対抗、手数では金井が上回る。1R終了直前には金井の右フックがクリーンヒット、久松先生がダウンを喫する。

こうなると金井のKO勝利を期待したくなる…が、2Rは久松先生の左ミドルキックに苦戦する等でKOが出る雰囲気ではなかった。しかし金井は1Rと同じく単発の右フックと左右のボディブローで攻勢。久松先生は試合終了直前に金井を崩しヒザ蹴りやフックを連打したが、すべては後の祭り。

判定の結果、3−0で金井が勝利。


ぬぬぅ、退屈…とまではいかないが、やや単調な試合だったかな?それにしても久松先生はズルズルと負ける事が多いなぁ。決して弱い選手だとは思わないんだけどねぇ。

第四試合 U-FILE CAMPにこんな巨漢がいたとはねぇ

ヘビー級 5分2R
水野竜也(186cm/98.9kg/U-FILE CAMP登戸)
桜木裕司(180cm/91.9kg/掣圏会館)
[2R 3分20秒 スリーパーホールド]

今年に入って4戦1勝3敗1KO、精力的に試合をこなしながらも勝ち星に恵まれない桜木裕司。「今日こそ久々の勝利なるかっ!?」と個人的に期待していたが…、何せ対戦相手の水野竜也がでかいのなんのって!186cmにして約100kgの体格はなかなかの巨体、桜木との体格差は歴然だ。


んで、試合では大柄な体格の水野がパワーでひたすら圧倒。1R序盤から突進する水野、あっさりとテイクダウンを奪うとグラウンドであっさりとマウントへ移行、パンチを落としながら腕十字を仕掛けていく。圧倒的にでかい水野に上になられた桜木は防戦一方、成すがままの状態だ。終盤ようやくリバースするも、水野は下から腕十字。桜木はこれを外し、立ち上がった水野に打撃を入れようとするが、1Rはここで終了。これでは桜木、今日も勝てないな…。

2R、やはりノッシノッシと前進してきた水野、組み付いてからサバ折りで桜木をテイクダウン。またまたあっさりとマウントを奪った水野はパンチを入れながらスリーパーを極める機会を伺う。桜木は必死に逃げようとしたが…。2R中盤、ついに水野の腕が桜木の首に絡みついた。程なくして桜木がタップして試合終了。


う〜ん、U-FILE CAMPにこんな選手がいるとは知らなかった。水野はこの先、圧倒的に日本人の層が薄いPANCRASEのヘビー級戦線には絡んでくるのかなぁ?対する桜木は泥沼の状態、「奇跡の逆転劇」を連発したのも今は昔。とりあえず、スタンドレスリングを鍛えるのが課題かなぁ?

第五試合 元全日本プロレスラーが総合格闘技の基本技で勝利

スーパーヘビー級 5分2R
河野真幸(192cm/110.0kg/フリー)
●ダニエル・リオンズ(185cm/106.0kg/オーストラリア/フェアテックスジム)
[1R 3分46秒 KO]
※グラウンドでのパンチ

先ほどの水野以上の巨漢である元全日本プロレス河野真幸だが、今日はどういう訳か「プロレスリング NOAH中継のテーマ」を入場曲の出だしに使用、セクシャル・ターザン時代の武藤敬二の入場曲「HOLD OUT」へ繋いでいた。武藤の入場曲ではこの曲が一番好きだ。

対戦相手は、現在キックボクシング界で猛威を振るっている、あのフェアテックスジムの所属だというダニエル・リオンズ。「って事は、彼もムエタイ戦士なのか?」と思ったが、どうやら普段はフィットネス部門のパーソナルトレーナーをやっているらしい。「キックボクサーの割には妙にガタイがいいな」と思ったが、そういう事ね。ちなみにリオンズは総合格闘技の経験がゼロ。


で、試合は一から十まで河野真幸がペースを握った。そりゃそうだ、相手は素人なんだしね。試合開始早々にタックルでテイクダウンを奪った河野、あっさりとサイドを奪って鉄槌をコツコツと落としていく。防御方法のわからないリオンズは殴られるがままの状態。んで、河野はじっくりとアームロックを狙いながら流れの中でポジションをマウントへと移行、ゆっくりと確実にパンチを落としていく。防御できないリオンズは背中を向けたが、河野は尚もパンチの手を止めない。やがてグッタリするリオンズ、レフリーが試合を止めた。


まあ、相手がド素人だったとはいえ、河野の勝利は全日本プロレス好きの僕としては嬉しいね。欲を言うなら、もっとテンポ良く勝って欲しかったなぁ。

第六試合 U.W.F.スネークピットジャパンは大江慎の影響が強い

フェザー級 5分2R
井上学(167cm/63.9kg/U.W.F.スネークピットジャパン/2005 NEO BLOOD TOURNAMENT フェザー級優勝)
砂辺光久(172cm/60.5kg/REAL)
[判定 3−0]

PANCRASE 稲垣組の前田吉朗が登場するまではフェザー級のエース格だった砂辺光久。今回はHYBRID WRESTLING武∞限の解散に伴い、所属をREALに移してから初の試合となる…のだが、身体は相変わらず細身の砂辺。フェザー級でやるにしても60.5kgは軽すぎるのだが、今日は勝つ事ができるか?


…と思ったら、意外に井上が強かった。試合は両ラウンドを通して主にスタンドでの打撃戦となったが、井上学は左右のローキックと左ミドルキックを巧みに操り、砂辺に付け入る隙を与えない。たとえ砂辺がタックルに来ようとも、立ちレスリングから首相撲へスムースに移行しヒザ蹴りを連打する。こうして試合をリードした井上は2R中盤と2R終盤に砂辺からテイクダウンを奪う。そしていずれのグラウンドでもパスガードに成功しサイドまで移行する井上、特に2R終盤の方は首をスピニングチョーク気味に極める事にも成功したが、結局はいずれの体勢も砂辺に逃げられてしまう。惜しいねぇ。

対する砂辺だが、まったくいいところがない。スタンドではワンツーを繰り出しながら前に出るも、その打撃は常に距離を置いてキックを放つ井上の顔面を捉えられない。それでも1R終盤と2R中盤にタックルで井上からテイクダウンを奪ったが…1R終盤のソレはアッサリと脱出され、2R中盤のソレは自ら立ち上がる。スタンドでは勝ち目がないのに、寝技に拘らずにどうやって勝つんだ?という気もする。そしてローキックを喰らい続ける砂辺、その左のももは真っ赤に腫れていた。2R終盤には井上のタックルを喰らって場外へ落ちそうになる場面もあり、どうにも印象が悪い。

試合終了、判定の結果3−0で井上が勝利。


勝者と敗者でハッキリと明暗が分かれたなぁ。まったくいいところなく敗れた砂辺はPANCRASEフェザー級戦線から一歩も二歩も後退したし、圧勝した井上はこの先は前田やDJ.taikiと絡んでいくだろう。それにしてもビル・ロビンソンの弟子達は、揃いも揃ってグラウンドよりスタンドの打撃を得意とする選手ばかりだなぁ(笑)。

第七試合 KILLER BEE所属選手に共通して言える事だけど、打撃はもう少し小振りな方がいいと思う

ウェルター級 5分2R
星野勇二(170cm/74.5kg/和術慧舟會GODS/2000 NEO BLOOD TOURNAMENT 優勝)
小路伸亮(168cm/74.9kg/KILLER BEE/2005 NEO BLOOD TOURNAMENT ウェルター級優勝)
[判定 3−0]

この試合はNEO BLOOD TOURNAMENTの優勝経験者同士による決戦。久々の登場となる星野勇二は2000年度の優勝者、相変わらず応援団のガラが悪い小路伸亮は2005年度の優勝者だ。それにしてもこの両者、見た目がどうにもソックリ。同じような身長と体重、同じ体型(若干、小路の方が上半身に筋肉がある)、同じ坊主頭、そして同じ色のショートスパッツ(柄は違う)。試合中に見分けがつかなくなるかもなぁ。


さて。格好も似ているこの二人、実は闘い方もソックリだったりする。お互いにスタンドレスリングを基本とし、単発のパンチで相手を追い詰めていくスタイルなのだ。で、試合はその戦法に沿う様にスタンドでの打撃戦が中心となった。

1R、小路はいつも通り、ガラの悪い応援団の声援をバックに前に出て大振りなパンチを振るい、星野はこれを迎え撃つように下がりながらカウンターのパンチを顔面に入れていく。リードを奪ったのは星野、大振りすぎて打ち終わりのガードが甘くなる小路に星野のパンチがヒット、更にはスタンドでフロントからスリーパーも極まった。抜け出した小路は直後にテイクダウンを奪ったものの、あっさりと星野に立ち上がられる。この後、両者はコーナーでヒザ蹴りを入れ合う、試合はやや膠着。

2R、開始早々に小路はテイクダウンを奪いマウントへ移行、密着しながらパンチをコツコツと落とす。しかし星野は隙を見てスルッと脱出、亀になる小路の前に立ちフロントからネックロックを極める。首はかなり曲がっていたが小路はなんとか脱出するも、その過程でロープを掴んでしまいイエローカードを出されてしまう。追い込まれた小路だが初志貫徹、この後も前に出続けてコーナー際でヒザ蹴りを出したり、テイクダウンを奪ったりしたが、いずれも有効な攻撃とはならなかった。スタンドで打撃が交差する中で試合終了。

判定の結果、3−0で星野が勝利。


試合自体は単調で今一つ。ちなみに小路はこれで三戦勝ち星なし。もう少し打撃を丁寧に打たないと、これ以上は伸びないんじゃないかなぁ。対する星野は約二年ぶりのPANCRASE参戦で白星。実績から考えれば竹内出との試合が観たいね。お互いのスタイルを考えれば思いっきり膠着しそうだけどさ(笑)。

第八試合 SKアブソリュートは、何とかPANCRASEの中に編入されないのかねぇ?

ウェルター級 5分3R
○カーロス・コンディット(187cm/74.9kg/アメリカ/ファイターズ イン トレーニング/PANCRASEウェルター級 三位)
和田拓也(171cm/74.7kg/SKアブソリュート/PANCRASEウェルター級 七位)
[3R 4分22秒 アームロック]

久々に登場する気がするワダタクこと和田拓也、調べてみたら5ヶ月ぶりだった。その実力は誰もが認めるところであり、層が薄いPANCRASEウェルター級にあって七位という順位は不本意であろう。今日の相手は前回の試合では打撃で大石を完封したカーロス・コンディット。和田が存在感を示すには充分な相手だが、果たして?


…と思っていたのだが、両者の間には思った以上に実力差が。とにかく、コンディットが強いのなんのって!まあ、身長差だけでも16cmもあるのに、コンディットの手足は長いからねぇ。


試合全般を通して、コンディットが攻め続ける姿勢を崩さない。1R、序盤にはワダタクにテイクダウンを許したが、コンディットは下からの三角絞めで逆襲。これがかなりしつこく、ワダタクがどんなに振りほどいても、異様に長い手足を駆使して何度も三角絞めを仕掛けていく。上になっているハズなのにまったく攻める事ができないワダタクは約三分間は下から攻められ続けた。試合はスタンドへ移行、右ストレートをヒットさせたコンディットは崩れたワダタクを踏みつけながらパスガードし腕十字やスリーパーを狙う。攻め達磨だな。


2R、胴タックルに失敗したワダタクからあっさりとマウントを奪ったコンディット、バックマウットからスリーパーを何度もも狙う。リバースして上になるワダタクだがコンディットに下から殴られたり腕を捕られたり。立ち上がるワタダク、コンディットはこれを崩してあっさりとマウントを奪うと、パンチや鉄槌を連打しつつバックからスリーパーを狙う。再びグラウンドでピンチに陥るワダタク、ラウンド終了前に脱出したがコンディットに再び潰されて踏みつけやパンチを喰らってしまう。…勝てんな、こりゃ。


3R、序盤にまたしてもマウントを奪ったコンディット。ワダタクは脱出してグラウンドで上になるも、今度は下から三角絞めを仕掛けられる。抜け出して半立ちになってパンチを落とすワダタクだが、これをキャッチしたコンディットは腕を掴んだまま回転、テコの原理でリバースに成功してアームロックを極める。慌てて脱出するワダタクだったが…。

最後はタックルにきたワダタクの腕を捕まえたコンディットが、後方へ一回転してからアームロック。かなり鮮やかな技を前に観客から驚きの声が上がる中、ワダタクがついにタップ。鬼のような強さを見せつけたコンディットが、実力者であるワダタクを相手に圧勝を修めた。


ぬあ〜っ、最初にも書いたけど…本当にコンディットが強い強いっ!こりゃあ、どう観てもウェルター級王座の次期挑戦者だろうな。っていうか正直、石毛じゃ勝てないだろうなぁ。イヤイヤ、北岡悟はよくもまあこんな怪物にアッサリと勝ったなぁ…。

第九試合 勝つPANCRASE、これぞ「PANCRASE ism」だ!

ライトヘビー級 5分3R
川村亮(180cm/89.5kg/PANCRASE ism/2006 NEO BLOOD TOURNAMENT ライトヘビー級優勝&MVP)
ダニエル・アカーシオ(178cm/87.8kg/ブラジル/シュート ボクセ アカデミー)
[2R 2分40秒 KO]
※右フック

本日のメインイベントは、2006 NEO BLOOD TOURNAMENTでMVPを獲得した川村亮のチャレンジマッチ。まだデビューして5戦しかしていない川村、戦績は5戦4勝1分1KO1Sと無敗ではあるものの、実際には三人としか闘っておらず(つまり同じ相手に二勝したりしている)、実際にはまだまだ経験不足なのだ。しかし今日、川村に立ち塞がるのは…な、なんと!

シュートボクセの強豪、ダニエル・アカーシオだというではないか!

アカーシオと言えば、PRIDE武士道の舞台で高瀬大樹三崎和雄を撃破している強豪。川村にとっては余りにも格上すぎる相手である。う〜ん、PANCRASEが何を考えているのかはサッパリわからんのお、ボコボコにされて川村が長期欠場に追い込まれても知らんぞ…と、試合前は思っていた。


1R、予想通り川村はアカーシオに大苦戦。いきなり飛びヒザ蹴りで突進してきたアカーシオは右フックを川村にヒットさせると、そのままパンチのラッシュを川村に浴びせる。早くもアカーシオに呑まれる川村、ラッシュを何とかしのいでアッパーをヒットさせるも、尚も打撃が川村を襲う。落ち着いて距離を取りながらワンツーとローキックを繰り出すアカーシオ、特に左フックは何発も川村の顔面にヒット。

それでも強気にワンツーを返す川村だが、終盤にアカーシオの左フックがクリーンヒット、思わず腰が落ちる川村からテイクダウンを奪うアカーシオ、川村は慌てて脱出。しかしアカーシオの左ストレートが再びヒット、川村はダウンを誤魔化すようにタックルを敢行。だがアカーシオに切られた上に、シュートボクセ謹製の踏みつけの餌食になりそうになる。ゴングに助けられた川村だが、やはりアカーシオとの実力差は歴然だ。


2R、ローキックで崩れそうになる川村、更には左ストレートを何発もヒットさせるアカーシオ、組み付けばコーナー際でモモへのヒザ蹴り。大苦戦が続く川村、しかしボロボロになりながらも前進を続ける。圧倒的劣勢に立たされながらも勝負を諦めないその姿に、観客からは大声援が贈られたが…。

この時、アカーシオに異変が。この日のアカーシオはお腹のあたりがややポッコリと突き出ていた。明らかに「調整不足」の体型、その見立てが嘘でない事を証明するように2Rに入ると打撃の手数は減っていたのだ。


迎えた2R中盤、ついに奇跡が起きた。


お互いに単発のパンチしか出せず、お見合いが続く中…ジリジリと前進を続けてアカーシオをロープ際へと追い詰めた川村が不意に放った右フック。これが見事にアカーシオのテンプルを打ち抜いたのだ!その場にドサッと倒れるアカーシオ、誰が観ても分かる逆転KO劇、PANCRASEのリングで発生した大番狂わせを前に観客狂喜乱舞しながら大歓声を発する中、尚もアカーシオを攻撃しようとする川村をレフリーが慌てて止めた。

観客はスタンディングオベーションの状態、ガッツポーズを取りながら泣いている川村を誰もが心から祝福。マイクを持った川村は、涙ながらに「こんな僕ですけど、PANCRASEを背負っていきます!」と宣言。今、PANCRASEファンが一番求めていたその言葉に、観客は更なる歓声を上げていた。


凄い。こんな大番狂わせは久しぶりだ、本当に久しぶり。それこそ「アレクサンダー大塚 vs マルコ・ファス」級の大番狂わせだ。まあ正直、僕はこの試合で川村が「強い」とは思わないし、また同じカードが組まれれば今度こそ川村は血の海に沈むだろうと思っている。しかし今日は、今日だけは彼の勝利を素直に喜びたい。

ファンは怪我をしないように自分を守る姿より、最後まで勝負を諦めない姿が観たいのだ。ファンは負けた時の言い訳よりも、勝った後の前向きなコメントが聞きたいのだ。そして何より、ファンは負ける姿よりも勝つ姿が観たいのだ。今日の川村はPANCRASEが今、一番必要な姿を体現したのではないだろうか?



白い線が見えたら、僕の勝ち

そういえば、川村はインタビューで下記のような事を言っていた。

PANCRASE 2006 BLOW TOUR 9.16 DIFFER ARIAKE SPECIAL INTERVIEW

http://www.pancrase.co.jp/data/news/2006/0916/index.html

以下、上記インタビューより抜粋。

聞き手:はい。ありがとうございました。(と、レコーダーを切ろうとしたところ…)
川村亮:あの…大事なこと言い忘れてました。


聞き手:はぁ、何ですか?
川村亮:ぼく、高校時代からなんですけど、不思議体験っていうか、自分の力じゃない力を出すときがあるんですよ。


聞き手:それ、ホントに大事な話ですか?(笑)
川村亮:大事ですよ、これ!高校のとき野球やってて、打席に立ったときに、ピッチャーがどこに投げるかわかったんですよ。投げる前に。トントントントンって、白い線が光ったんですよ。『なんだこれ?』と思って、それに沿っていったら、バットとボールが当たる瞬間が見えて、ボーンとむちゃむちゃでかいホームランになったんですよ。


聞き手:へー。
川村亮:っていうのが高校時代にあって、大学時代はアメフトをやってて、ぼくはランニングバックだったんですけど、ボールをもらう前に、まだ混雑してるんですけど、そこに白い線が見えるんです。『なんだ、これ?』と思ってそれについてったら、道がパッカーと開いてタッチダウンとれたんですよ。で、それが、格闘技でこの間初めてあったんですよ。


聞き手:えっ、何の試合?
川村亮:四月の渡辺悠太戦です。ビデオ見てもらえばわかりますけど、あのときKOしたパンチ、それまで一度も出したことのないパンチなんですよ。


聞き手:出したことのないパンチですか?
川村亮:構えてて打ち合ってて『ああ、いい感じ、いい感じ』と思ってたら、相手が下がったんですね。そしたらそのときにスッと渡辺選手とぼくの間に白い線が見えたんですよ。周りは暗いのに、そこだけ光ってるんですよ。


聞き手:おー。
川村亮:『なんだ、これ!』でもなんだかわかんないけど、この白い線のとおり、その角度で殴ってみようと思って、そのまま殴ったら、ポコーンと当たって倒れたんですよ。


聞き手:へーーーーー!!
川村亮:これ、おもしろいでしょ?その試合は、右は全部まっすぐ出そうと思ってたんですよ。相手がサウスポーだったんで、ズラして右を出そうと。それが、最後は右のフックみたいな感じだったんですよ。そんなパンチ、初めて出しましたよ。もう、手応えとかまったくなくてスポーンって抜けて。ちょうどその白いライン通りに手がいったんですよ。


聞き手:見えてる間っていうのは、時間もゆっくり動いてるんですか?
川村亮:ゆっくりですよ。時間にすれば一秒二秒ですけど、ぼくの中で考えるんですよ、いろいろ。『あれ?なんか白いの見えてるな。何だこれ?』って考える時間はあるんですよ。


聞き手:あ……でも、野球で一回、アメフトで一回ってことは、もう格闘技の分はその一回で使っちゃったんじゃないですかね(笑)。
川村亮:アッ、使っちゃいましたね!(笑)


聞き手:ネオブラの一回戦でしょ?どうしてもっと大事な試合にとっとかないのか(笑)。
川村亮:使っちゃった…。でもホント、見えたんですよ。『うわっ、また出た!』って。それ、なんなのかわかんないんですけど、また…『出したいな』と思ってるんです(笑)。

なかなかに面白いエピソード。フィニッシュの右ストレートを出した時、川村には白い線が見えていたのか?

雑感

いや〜、面白かった!
あの横浜文化体育館で大ポカをやらかしたPANCRASEと同じ団体とは思えないくらいの面白さだなぁ。


もちろんメインの大番狂わせも面白かったのだが…、それ以外の試合も小粒にいい試合が続いたのが大きいかな。定期参戦する強い外国人がいたのもPANCRASEらしいし、全体的にPANCRASE所属選手が頑張っていたのも大きい。メインを別格と考えても、これくらいの興行がコンスタントに続けばPANCRASE人気は復活するんじゃないかなぁ、と思わせるには充分な内容だった。

っていうか、今のPANCRASEの規模であれば、ディファ有明って場所はピッタリとハマる箱なんだろうなぁ。交通の便が悪いのは難点だけど、来年はもう少しディファ興行を増やしてみたらどうなのかねぇ?


以上、長文失礼。