8/26 全日本プロレス 両国国技館興行(地上波) 簡易観戦記

ついに両国に辿り着いた全日本プロレス

これは9/2に関東ローカルで地上波放送された「8/26 全日本プロレス 両国国技館興行」の観戦記。僕の中では気になる興行だったので、とりあえず備忘録として記述。


さて、今回の興行は全日本プロレスにとって非常に重要な意味を持っている。


全日本としては久しぶりとなる一万人規模の大箱での興行なのだが、この興行を行うに当たり全日本は『製作委員会』方式を採用。これは、複数の企業から出資金を募り一つのイベントを作り上げていく方式で、プロレス界では初の試みとなるものなのだ!…と、Wikipediaに書いてあった(笑)。今回はサンリオの協力を得る事に成功、ついでに業務提携まで結んでしまう。やるなぁ武藤全日本。

こうなったら全日本プロレスとしても手を抜けない。出場メンバーがいつもより豪華なのは当たり前、対戦カードにもかなり気合が入っている。メインイベントは衆議院議員レスラー馳浩引退試合。武藤自身はグレート・ムタに扮し、WWEのスーパースターだったTAJIRIと対戦。他にも三冠ヘビー王座戦や世界ジュニア王座戦などの切り札的カードを総動員した結果、PPVや地上波のTV放送も決定。

プロレス不況が続く昨今、武藤は「プロレスLOVE」と「興行のパッケージ化」に拘った。ジャマールや曙、ジャイアント・バーナードといった大型主力選手の離脱、嵐のスキャンダル等のアクシデントも続いた全日本だが、知恵を絞り汗を流し総力を動員し、今日の両国興行へと辿りついた。この興行が「老舗団体としての再浮上」の第一歩となる。


ね。かなり重要でしょ?

第一試合 サンリオが放つニューキャラクター、その名もHII!!

シングルマッチ 30分一本勝負
HII(身長不明/体重不明)
●ブードゥーマスク(身長不明/体重不明/VOODOO-MURDERS)
[3分53秒 エビ固め]
※高速ウラカンラナ

試合の動画(YouTubeへのリンク)

http://www.youtube.com/watch?v=xzxZkGx4IeA

今回がデビュー戦となる「ハバネロファイター」AHII、TV放送の一番最後にちょっとだけ放送。最初は放送予定がなかったけど「AHIIはスポンサーであるサンリオとのコラボレーションで生まれたキャラクターだから…」という事で無理矢理放送枠を設けたのかもしれん。ちなみにこの放送の提供にサンリオの名前はなし。


ブードゥーマスクがジョン・ウーを繰り出した時に会場が騒然としていたのが面白かった。「この技の使い手と言えばアノ人しかいない!」という事での騒ぎなのだろうが、それは早合点。よくよく考えればもう一人この技を使っても不思議ではない選手がいるワケで、その選手は僕が最初にブードゥーマスクの正体として予想した選手と一致している。

んで、僕の考えどおりこの選手が他団体で一騎当千な活躍をしている彼だとしたら、自ずとAHIIの正体も鬼一法眼の弟子達から伝えられた剣術の使い手という事になるのだろう。まあ、あれだけ体の小さくて線が細いプロレスラーだから、元から正体の候補はかなり限定されているけどね。

デジャ・ブ(二回転式コルバタ)やトルニージョ式のプランチャ等、軽快な飛び技を連発して会場を沸かせたAHII、最後はスワンダイブから飛びついて、頭が突き刺さるようなウラカンラナ。フランケンシュタイナーみたいだな。


ま、AHIIのお披露目試合ですな。

※第二試合〜第四試合は放送なし

第五試合 新たなる「名勝負数え唄」が誕生

世界ジュニアヘビー級選手権 シングルマッチ 60分一本勝負
近藤修司(173cm/103kg/VOODOO-MURDERS)
カズ・ハヤシ(173cm/83kg)
[23分53秒 体固め]
キングコングラリアット/近藤が防衛に成功

試合の動画(YouTubeへのリンク) スタン・ハンセンもでるよ

http://www.youtube.com/watch?v=8vnP_hqhyXg

メインイベントを別格とするなら、恐らくこの日一番盛り上がったと思われる試合。実際、ダイジェストで見ても面白さは充分に伝わってきたのだが…、その攻防は王道を掲げる全日本プロレスという感じではなく、どちらかと言えばDRAGON GATEを見ているかのようだ。


近藤はエプロンでランサルセを仕掛ければ、ハヤシは空中で切り替えしてDDTを繰り出す。近藤の頭がグサリとエプロンへ突き刺されば、思わぬ返し技に会場がドーッと沸く。続くハヤシの突進は、近藤が空中へと突き上げてからのアバランシュ・ホールドで切り返す。プロレス独特の「一瞬の閃き」を技ではなく力に変換できるのは、近藤の稀なる才能だと思う。

近藤のキングコングラリアットに飛びついたハヤシ、元DRAGON GATEの近藤にアサイDDTで嫌がらせ。更にはファイナル・カットで勝負に出たハヤシだったが、二発目は近藤が体勢を入れ替えての垂直落下式リバース・ブレンバスターで逆転。尚も続く「切り替えし合戦」と「心理戦」。

諦めないハヤシは雪崩式の技を仕掛けたが、これを返した近藤が「トップロープから一回転するDDT」という超荒業を披露すると…誰もが「あっ!」と驚く、まさかまさかのムーンサルト・プレスで追撃。パワー殺法を得意とする近藤の予想外の美技に観客が息を飲む中、最後はキングコングラリアットで近藤が3カウントを奪取、一進一退の大熱戦を制した。


かなり完成度の高い攻防で、この試合を観戦していた渕が「名勝負数え唄にしたい」と言っているようだ。う〜ん、この二人の攻防は全日本プロレスのジュニアのなかで頭一つ飛び抜けてしまったなぁ。他の選手がついていけない領域に入った、というか。凄い試合だったけど、凄い分だけ今後が心配というかねぇ。

第六試合 世界遺産 vs WWEスーパースター

シングルマッチ 60分一本勝負
グレート・ムタ(身長不明/体重不明)
●TAJIRI(176cm/93kg/フリー)
[18分33秒 体固め]
ムーンサルトプレス

試合の動画(YouTubeへのリンク)

http://www.youtube.com/watch?v=Jn-LoEMWEDE

アステカ調デザインのゴールデン・ムタ、カッコいいけど全然忍んでねぇなぁ。今回は入場曲が何故か「HOLD OUT」の雅楽バージョン。ムタの入場曲としてはこの曲が一番しっくりとくる。


しかし、試合で盛り上がりは今一つ。生観戦したPON君が「序盤の心理戦に時間を掛けすぎたのが原因だろう」と言っていたが、それ以前にムタの試合って面白かった事の方が少ない気がするなぁ。僕の記憶だと「一回目の馳浩戦」くらいかなぁ、しかもあの試合はが面白くしたようなモンだしね。

それにしても、TVで見た限りではこの日のムタは全然ダメ。もっとお互いの価値観がぶつかる試合になると思ったのだが…どうにもムタの動きが悪い。TAJIRIの必殺技であるバズソーキックを喰らってもボーッとしてたり、タランチュラを掛けられてもボーッと突っ立てたり。相手を知らなさすぎだっつーの。これじゃあ価値観以前の問題だよなぁ。


まあ、よくよく考えれば最近は「プロレスLOVE」に代表されるように、ムタよりも武藤の方が価値観がしっかりしているんだよなぁ。結果論だけど、この試合は武藤 vs TAJIRIの方が盛り上がったかもしれん。

第七試合 継承した王道は軽くない

三冠ヘビー級選手権 シングルマッチ 60分一本勝負
太陽ケア(185cm/106kg/RO&D/アメリカ)
川田利明(183cm/105kg/フリー)
[24分51秒 エビ固め]
パワーボム/ケアが防衛に成功

試合の動画(YouTubeへのリンク) スタン・ハンセンもでるよ

http://www.youtube.com/watch?v=Vw_NcNdjBTc

「伝統の三冠戦」の割に放送時間は短め。観客の盛り上がりは今一つ。折角、川田が帰ってきたのにねぇ。


僕が気になったのは、前半はケアが必死に足を攻めていたのに、中盤以降はその流れを無視するかのような試合展開だった事。ケアは相手の蹴りを封じようとしたんだろうけど、川田は全然ピンピンとしてたしね。第一、ケアは足を極める必殺技を持ってないでしょ。どうせなら、自分の必殺技の威力を増長させる部位を攻めて欲しかったなぁ。

試合の途中、ケアがランニング・ネックブリーカー・ドロップ。「全日本プロレスの王道を引き継ぐ技、見てるか馬場さん!」という事なんだろうけど、どうせこの技を使うのであればフィニッシュのつもりで使って欲しい。馬場さんのフィニッシュを繋ぎ技に使うのは、それこそ馬場さんへの冒涜じゃないのかなぁ。まあ、これはNOAHの選手にも言えるんだけどさ。

フィニッシュは意外にもパワーボム。映像で見る限りではラストライドに近い型になっていたので説得力はあったものの、自分の必殺技で決める事はできなかったのかな?まあ、川田がH5Oを二度も返しちゃったから、どうにもならなかったんだろうけどねぇ。


う〜ん、我ながらダメ出しばっかりだな。

第八試合 最後は笑って引退、それもまたよし

馳浩引退記念特別試合 六人タッグマッチ 60分一本勝負
馳浩(183cm/105kg)
 小島聡(183cm/112kg)
 中嶋勝彦(175cm/82kg/フリー)
vs
 TARU(185cm/100kg/VOODOO-MURDERS)
 諏訪魔(188cm/120kg/VOODOO-MURDERS)
●“brother”YASSHI(173cm/80kg/VOODOO-MURDERS)
[20分36秒 ノーザンライト・スープレックス・ホールド]

試合の動画…が見つかりませんでした。ゴメン。

一時間枠のTVの半分近くがこの試合。武藤社長がこういう放送形態を求めたかどうかはわからないが、結果的には正解だったように思う。


馳の応援に駆けつけた森喜朗前首相に向かって、YASSHIは「おい!そこの森!お腹の中に何か詰まっているな!お金か?黒い垢か?」「お前がそんなんやったからなぁ、日本のなぁ、このオレがなぁ、こんななぁ、悪ガキになったんじゃ!」と吠えまくり。闘龍門で寒いマイクを連発してブーイングを浴びていたのも今は昔、YASSHIは一国の元首相にここまでズケズケとモノを言えるまでに成長しました。…いいのか、コレ(笑)。

対するも、このマイクにすっかり感化されて思わず「おい!このチ●カス野郎!」と放送禁止用語を口にする。もちろん地上波ではカット(笑)。そして、かつての盟友・佐々木健介が登場すると会場は大爆発。う〜ん、二人とも本当に大きく成長したなぁ。かたやTVの人気者、かたや衆議院議員。15年前の僕に教えたらさぞかしビックリするか、ホラ話として聞き流すかのどちらかだな(笑)。


試合は場外乱闘から始まった。VOODOO-MURDERSのボスであるTARU森前首相の前に差し出す。思わず椅子を手にする森前首相、会場も森コールでこれを後押し。惜しいなぁ、SPさえいなければ「前首相のイス攻撃」という前代未聞の光景がプロレスの歴史に刻まれたのに。

森前首相のイス攻撃…未遂

http://www.youtube.com/watch?v=Ej3N-rt5_Gw


試合はこれまでのの技の集大成って感じ。ストマックバスター、サンセットフリップ、懐かしいのインディアンデスロック〜鎌固め、YASSHIにはサンタマリアでキン●マを噛まれ、ジャイアント・スイングは自分の年齢に合わせて45回転。裏投げで巨体の諏訪魔を投げきり、バックドロップで弟子の諏訪魔に投げられる。フィニッシュ付近では束の間のハセケンタッグも復活、ダブルラリアットとバックドロップ+ネックブリーカーという懐かしい連携を披露。最後は…と言えばやっぱりコレ、ノーザンライト・スープレックス・ホールド。自ら3カウントを奪って有終の美を飾った。

引退式では、森前首相や恭子夫人、愛娘の鈴音ちゃんからも花束が。特に鈴音ちゃんはリング上で大泣き、さすがのもこれには涙を流していた。は「いつか総理大臣になって、SPをつけてリングに上がりたい」という言葉を残し、10カウントゴングを静かに聴いた。


…っていうか、試合を見てまず最初に思ったのは「これが本当に、引退する選手のコンディションなのか?」という事。そのヒザはボロボロだと聞いてはいたが、今日の試合を見る限りではまったくそんな風には見えない程に、のファイトは若々しかったし、技の切れも素晴らしかった。どこぞの邪道議員とはエラい違いだな。


さて。いわゆる「ファミコンプロレス」の代表格としてコアなプロレスファンからは嫌われていたではあるが、僕自身はのプロレスはかなり好きだった。「観客に喜ばれる展開を広げる事」に関してはピカイチだったと思うし、その才能はマット界の中でも桁違いに高かったと記憶している。

僕が真っ先に思い出すのが、ムタのところで記述した「一回目のグレート・ムタ戦」。ムタのピリッとしないファイトに業を煮やしたはいきなり往復ビンタを連発。これを切欠にムタは魔性に目覚め、試合は大変に盛り上がった。まあハッキリと覚えているのはこの試合くらいなんだけど、健介とのタッグでも随所で試合を盛り上げていた記憶がある。

僕としては、まだまだ現役を続けて欲しい選手だったなぁ。特に今日のようなコンディションを見せられると「まだまだ若手に試合で教える事がいっぱいあるだろ!」と思ってしまうよ、ホントに。


長い現役生活、本当にお疲れ様でした。

おまけ:馳日記より。森前首相は場外乱闘に対して大層ご立腹だったそうな(笑)。

http://www.incl.ne.jp/hase/schedule/s200608/s060827.html

雑感

今日のTV放送は、事実上「引退試合」に終始。これは「他の試合の面白さが云々」という事ではなく、「TVの編集」がそうなっていたって事なんだけど。とはいえ、引退試合は結構面白かったので、僕は満足している。


ただ、満足した試合が「引退していく選手の試合」だった事はちょっと引っかかるなぁ。正直、他の試合で面白そうだったのは「近藤 vs ハヤシ」くらいかなぁ。辛口かもしれないけど、全体的には「ちょっと厳しい内容」だったんじゃないかなぁ…と勝手に考察。とはいえ、観客動員自体は成功だったようなので、これをステップにさらなる全日本プロレスの発展に期待したい。とりあえずは「夜のシャイニング・インパクト」の復活を希望する。


以上、長文失礼。

最後に、この興行のダイジェストを

http://www.youtube.com/watch?v=o3gWd7arTQo&mode=related&search=