9/4 K-1 MAX 有明コロシアム興行 簡易観戦記

K-1 MAX、日本最弱!

タイトルをターザン山本風にしてみた。


日本キック界の強豪が集結して、対外国人戦に勝利したのはたったの二人、しかも一人は素人が相手。ってなわけで、今日のタイトルはこれ以外は思いつかないなぁ。それにしても、この単語の筆頭になった日本人がよりによって「SB、日本最弱」を救った宍戸大樹だという事実が悲しい。


数年後にこの大会を振り返った時、「強豪外国人を盾にK-1 MAXが日本キック界の制圧に乗り出す際、その第一歩となった記念すべき大会」なんて記憶にならなきゃいいんだが。

オープニングファイト第一試合(未観戦) 若作りしてもサトルヴァシコバは31歳

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
サトルヴァシコバ(171cm/70.0kg/勇心館/全日本キックライト級 一位&前王者)
●タカオサミツ(177cm/70.0kg/伊原道場/新日本キックウェルター級 二位)
[1R 55秒 KO]
※3ダウン

ほほぅ、ヴァシコバの完勝ですか。正直、相手のタカがどんな選手かわからないけど、試合経過を見る限りではヴァシコバは「いつものヴァシコバ」、決して後ろに下がらずに左のパンチを当て続けるスタイルを貫いたのだろう。

節操無く青く染めた髪も「らしさ爆発」というか。彼は観客が多ければ多いほど力を発揮するタイプだと思うから、これからもK-1 MAXに参戦して…。


イヤ、そんな強さがあるなら、はやいとこ全日本キックのライト級のベルトを、J-NETWORKの増田博正から奪い返してくれ。


■ヴァシコバの入場曲、East17「Let it Rain」
http://www.youtube.com/watch?v=uPP2rKZXi0g
ドラゴンボールZのAMVでどうぞ

オープニングファイト第二試合(未観戦) ツグト・アマラは最近スランプ気味

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
ジョーダン・タイ(180cm/69.0kg/ニュージーランド/レイ セフォー ファイトアカデミー)
●”SHINOBU”ツグト・アマラ(171cm/68.0kg/モンゴル/チーム ハードコア)
[判定 3−0]
※3R、アマラにダウン1

試合自体は序盤はアマラが劣勢、終盤にかなり盛り返したが、終了直前にダウンを奪われ判定負け…らしい。

過去にシェイン・チャップマンやジャン・スカボロスキーを撃破しているタイは強豪ではあるけど、アマラは結果としてはK-1 MAXで連敗してしまった。SBでの菊地浩一戦を含めて「一撃で不覚をとる」パターンが続いているのも気になるところ。ライト級で猛威を振るった圧力もこの階級では通用しないのだろう。


アマラは密かに正念場だな。一旦、キック界に戻るのも「手」じゃないのかなぁ。

第一試合 R.I.S.E.のDoA優勝者がすぐにK-1 MAXに出れるわけではない、TATSUJIは特例

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
マイク・ザンビディス(167cm/68.7kg/ギリシャ/メガジム)
●TATSUJI(174cm/70.0kg/アイアンアックス/K-1 MAX '06 日本大会 準優勝)
[判定 3−0]

TATSUJIはパンチを貰いすぎだね。でもまあ、それ以外はザンビディスと互角に渡り合っていたと思う。

僕は「もしパンチが互角なら、重いローキックや飛びヒザ蹴りを持っているザンビディスが有利かな?」と思ってた。蓋を開けたらTATSUJIのパンチの技術は一枚落ちていたが、それをローキックやテンカオで巧くカバーしていたと思う。何発もザンビディスのパンチを喰らっても動きが落ちないタフネスぶりも見逃せない。とりあえず今は、パンチよりもこれらの長所を磨いて自分のスタイルをしっかりさせた方が強くなるんじゃないかな?ガードはもっとしっかりした方がいいと思うけど。

それにしても、相変わらずザンビディスはカッコいい。ストレートもさる事ながら、左ボディブローには惚れ惚れするねぇ。一度でいいから、適正体重(おそらくライト級)でムエタイ選手とやらせたい。もちろんキックボクシングのルールで。

第二試合 ナイジェリアは一夫多妻制

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
安廣一哉(170cm/69.4kg/正道会館)
アンディ・オロゴン(181cm/70.0kg/ナイジェリア/チーム オロゴン)
[判定 3−0]

「ドコの馬の骨じゃい!」なんて思っていたけど、アンディ・オロゴンはなかなかの逸材だったね。デビュー戦とは思えない落ち着きぶり、必要以上には前に出すぎない闘い方、そして恵まれた体型。打撃のフォームとかはまだまだ改善の余地があるけど、本格的に打撃を覚えればもっともっと強くなるだろうね。っていうか、首相撲を覚えたらメチャクチャ強くなりそう。ま、K-1 MAXでは反則だけどさ。

対する安廣は安全運転。拾える白星は拾っておくべき…ってところか。しかし試合終盤に浴びせ蹴りを繰り出すクセはなんとかならんのかい。

第三試合 坊ちゃん顔しているが、HAYATΦの身長は180cm

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
○HAYATΦ(180cm/70.0kg/FUTURE_TRIBE)
アルトゥール・キシェンコ(172cm/70.0kg/ウクライナ/キャプテン オデッサ)
[延長判定 3−0]
※本戦判定 1−1

こういう試合を少しでも長く放送しようとするTBSの姿勢には好感が持てる。視聴者もとっつきやすいだろうし。

いつもは印象が薄いHAYATΦだけど、今日はバンバン打ち合って、延長でもバンバン打ち合って、テレビにもバンバン出て。前に出る姿勢を一歩も崩さずに最後までパンチを出し続ける姿はテレビ的にも好印象だろうね。僕がちょっと驚いたのは、延長になっても動きが落ちなかった事。キシェンコのミドルキックを結構喰らっていたのにねぇ。タフなんだね。しかしまあ、ここまで闘える選手がなんでK-1 MAX 日本予選では存在感を発揮できないんだろう。不思議だなぁ。

対戦相手のキシェンコも、あの調子だとまだまだ強くなるな。イヤイヤ、若干19歳にしてアレなのか。日本人がまったく勝てなくなる日も近いな。キビシイね。

第四試合(未観戦) 山本優弥は自分のスタイルが通用しないと、試合中でもグチる

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
○ファリッド・キダー(身長不明/70.0kg/フランス/バグノレ ボクシングクラブ)
山本優弥(175cm/70.0kg/青春塾/全日本キックウェルター級 一位)
[判定 2−0]

う〜ん、山本は負けちゃったか。まあ彼は他の日本人選手と比べればかなり若いから、「長い目」で見ていこうとは思うんだけど…、どうも彼は、一度他人のペースに呑まれると自分の力を発揮できないまま終わる試合が多いなぁ。まあ彼自身のスタイルが我侭だというのもあるんだろうけど、もう少し他人のスタイルに柔軟に対応できるようにならないとなぁ…って、未観戦なのに結構勝手な事を書いてるな(苦笑)。


とりあえず大きな怪我がないようだし、十月の全日本キックの「青春塾祭り」には出場して欲しいね。

第五試合 宍戸大樹がもう一度K-1 MAXに出場してもKO勝ちは期待しない方がいい

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
ブアカーオ・ポー・プラムック(174cm/68.0kg/タイ/ポー・プラムックジム/K-1 MAX '04&'06 世界大会 優勝)
宍戸大樹(174cm/67.0kg/シーザージム/SB日本ウェルター級 王者)
[1R 15秒 KO]
※左フック

想定していた結果の一つではあるけど、想像以上に最悪というかね。よりによって秒殺かい。

いつも宍戸の試合を観戦している僕が言えるのは、この日の宍戸は明らかに異常。あんなに不用意に接近して何をするつもりだったのか?「ラウンドをすべて使って徐々に相手を追い詰める」という、いつものスタイルは何処へ行ったのか?

まあSBと比べてK-1 MAXはラウンド数が短いから、序盤からラッシュを仕掛けて試合を優位に進めるつもりだったんだろうけど…打撃の軽い宍戸が、序盤にあんな真正面から打ち合いに行ったのがいまだに信じられん。沢山の客を前にしてのぼせたのか?結果論だけど、序盤はローキックで無難にやり過ごし、相手の様子が分かってから潜り込んだ方が良かったんじゃないかな?

それにしても、ブアカーオの反応は早かったし、KOパンチとなった左フックも早くて重かった。あんなのカウンターでモロに喰らったら誰でも一撃でダウンするわ。今のブアカーオには神々しさすら感じる。やっぱり、K-1 MAX初参戦の選手がいきなりブアカーオ…っていうのは無理があったのかなぁ。


なんにせよ、宍戸はこれでコツコツと積み上げてきた実績が一気に崩れた。また一からやり直しだ。

第六試合(未観戦) 寒川直喜は今回、我龍真吾との大激戦を制してK-1 MAXに出場

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
○ドラゴ(180cm/70.0kg/アルメニア/チーム イッツ ショータイム)
寒川直喜(181cm/70.0kg/バンゲリングベイ/J-NETWORKミドル級 王者)
[判定 3−0]
※寒川は3Rにダウン1

寒川は「これといった特徴のない」選手って印象だけど、試合経過を読む限りでは「これといった特徴のない」ままズルズルと敗北したっぽいなぁ。変則的で圧力が凄まじいドラゴを相手に、地道なスタイルを貫き通したまま負けてしまった…って感じなのかな?

最初はガードを固めにしていたのは恐らく相手のスタミナが切れるのを待っていたんだろうけど…、K-1 MAXは3分3R制、多少のムチャはカバーできるルールだからねぇ。それにドラゴの打撃はバランスが悪いように見えて、実は自分のスタイルとして確立しているものだから、派手な見た目の割にはスタミナが切れないんじゃないかなぁ。

う〜ん、今一つ「寒川が何をすれば勝てたのか」が見えないな。彼には「器用貧乏」って印象があるから、もっと信頼できる武器が欲しい。


あと、J-NETWORKでの我龍真吾との決着戦は絶対にやってくれい。あの試合の続きは素直に観たいし、それを望んでいるのは僕だけではないハズだ。

第七試合 宍戸大樹は今年、イアン・シャファーからダウンを奪って判定勝利している(SBルール)

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
イアン・シャファー(172cm/70.0kg/オーストラリア/リングス オーストラリア)
須藤元気(175cm/70.0kg/ビバリーヒル柔術クラブ)
[2R 59秒 KO]
※須藤が敵前逃亡/須藤は2Rにダウン1

シャファーが自分の闘い方を貫いた事で、須藤のトリッキーさがまったく通用しなかったねぇ。完全に圧力負け。最初のダウンを奪ったシャファーの上段後ろ廻し蹴りは本当に鮮やかでしたな。最後は須藤が敵前逃亡、対戦相手に背を向けて逃げるっていうのもどうか?どうなのか?それも「トリッキー」のうちなのか?

ま、彼の株は確実に落ちたね。CD出してる場合じゃないでしょ。


あ。この試合、今年のDynamiteで「須藤、K-1 MAXでの敗北は総合格闘技でリベンジ!」とかいう展開になるかもね。そっちの方が見たいな。

第八試合 幕之内一歩は日本王者、矢吹丈は東洋王者、司葉遼太郎は世界王者(演劇部出身)

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
ヴァージル・カラコダ(178cm/70.0kg/南アフリカ/スティーブズジム)
前田宏行(178cm/70.0kg/BUKUROジム/元プロボクシング日本ライト&Sライト&ウェルター級 王者)
[2R 33秒 TKO]
※前田が左まぶたをカット/カラコダは1Rにダウン1

試合開始と同時にカウンターの右ストレートでダウンを奪った前田。だが正直、これが悪い方に転がったように思う。KOを狙うべく一気にラッシュを仕掛けたが、1R終盤にはスタミナを切らしていたように見えた。第五試合の宍戸といい、普段は長いラウンドで闘っている選手は、なんでK-1 MAXになると短期決戦を仕掛けるんだろ?んで、2Rはカラコダのパンチとローキックに手を焼き、最後はカットで逆転負け。スタミナが切れた時点で前田に勝ち目はなかっただろう。

色々なサイトで彼の試合について「初めてのわりによくやった!」と評価しているけど、僕は、この一回で前田という選手を評価する気にはなれないなぁ。カラコダはパンチの得意な選手だからまだ互角だったけど、これがキックの得意な選手とやったらどうだったんだろうね。もっと言えば、大東旭がカラコダと対戦したらどうなるのか、とかさ。足をピタッと止めて打撃を放つ選手は、よほどの圧力がない限り実力を信用できないなぁ。

第九試合 佐藤嘉洋は昔、K-1 MAXのルールを「お嬢様ルール」と揶揄していた

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
アルバート・クラウス(175cm/70.0kg/オランダ/チーム スーパープロ/K-1 MAX '02 世界大会 優勝)
佐藤嘉洋(184cm/70.0kg/フルキャスト&名古屋JKF/K-1 MAX '06 日本大会 優勝)
[判定 2−0]

予想通り「クラウスのパンチ vs 佐藤のローキック」となったが、あんなに佐藤がパンチを貰う事になるとは思わなかった。テンカオの使い方とかは本人がいうほど悪いとは思わなかったけど、もっと前蹴りを多用して距離を撹乱した方が良かったんじゃないかな?

それにしても佐藤はK-1 MAXに来てから「試合展開は互角、勝負は敗北」という事が多い。やっぱりK-1 MAXは向いてないんじゃないの?ヒジあり&ヒザありで鬼のような強さを発揮していたのも今は昔。いつも言われている事だけど「お嬢様ルール」で闘い続ける以上、もっとパンチの対策を練らないとね。

第十試合 アンディ・サワーは脳溢血で倒れた父親の治療費を稼ぐためにS-CUP2002に出場

ミドル級 3分3R + 延長3分1R
アンディ・サワー(172cm/70.0kg/オランダ/SB オランダ/K-1 K-1 MAX '05 世界大会 優勝)
小比類巻貴之(180cm/70.0kg/チーム ドラゴン/K-1 K-1 MAX '04&'05 日本大会 優勝)
[判定 3−0]
※小比類巻は2Rに減点1、3Rにダウン1

今日の小比類巻は持てる力をすべて発揮したと思う。あれだけのサワーの怒涛のラッシュを前にしても、以前は多く見られた「相手のラッシュを前に背を向ける」という事もなかったし、3R前半に至っては真正面からパンチを打ち返していたし。ここ数年で彼は本当に成長したんだなぁ、という事を実感。そういえば2R途中、サワーを首相撲に捉えてヒザ蹴りを連打してたね。首相撲があれば、もっともっと勝ち星を重ねられる選手なのにねぇ。

対するサワーだが、相変わらずコンビネーションを放った時のバランスが抜群。得意の左ボディブローも冴え渡り、小比類巻に付け入る隙を与えなかった。思えば、今日は惨敗した宍戸もサワーのようなコンビネーションを放てる選手ではあるんだけど、宍戸とサワーじゃ一発の破壊力が違いすぎる。今日のサワーは以前よりも肩の筋肉が増しているように見えたし。やっぱり宍戸もK-1 MAXに出場するのであれば、もっと筋肉が必要だよなぁ。


さてさて、今日は快勝したサワーの次戦はいよいよSBのS-CUP…と言いたいところなのだが、実は今回は出場しないって噂が流れている。確かにK-1 MAXでここまで有名になってしまったら、たとえ本人がどうであれリスキーな事はしたくないよね。とりあえず噂が本当だったとしても、僕はワンマッチに出場してくれればノー問題だけどね。

雑感

日本人が全滅した事で、この大会には出場していない魔裟斗の価値が急上してしまったねぇ。変な感じだなぁ。

とりあえずは今日出場した日本人選手は、その大半は「帰るべき団体」があるのだから、そこでもう一度実績を積み上げなおして欲しい。とはいえ、キックルールで積み上げた実績がまるで通用しないのがK-1 MAXっていう舞台でもあるのだが…。


そして。実は魔裟斗の裏でもう一人、今回のK-1 MAXに出場しない事で価値が上がった選手がいる。

その男は、計量日前に焼肉を七回も食べた。その男は、見事に一度目の計量に失敗、二度目の計量を行う際に「汗が出ないから」と水をガブ飲みし、結果前の計量よりも100gも太ってしまった。その男は、翌日のR.I.S.E.での試合で、K-1 MAXへの出場も期待されていた尾崎圭司を、数発のパンチでKOしてしまった。

そして、その男は「今回は計量が苦しいから」と今回のK-1 MAXへの出場をパスし、何故かR.I.S.E.の80kg級トーナメントに出場する。


「『真』の最後の大物」に残された時間は少ない。谷川P、是非ご検討の程、よろしくお願いします。


以上、長文失礼。