8/4 DEEP 後楽園ホール興行 3分の1だけど画像つき観戦記

どうしても「観に行きたい!」って時もあるんだよね

本日は、会社から出る直前に仕事上のミスが発覚。慌てて自らつけてしまった火を消そうと七転八倒したが…仕事が終わったのは19:15。会社から後楽園ホールまではキッカリ1時間、本日のDEEPは全九試合。とりあえず、会場で観戦しているセイントマンブラックKさん(id:the_saintK)に連絡したところ「今は第三試合の途中」と告げられた。会場到着予定時間は20:30、どうやったって三試合は終わってしまうだろう。「となると、生で観戦できるのはたったの三試合かぁ…」。さて、どうしたものか?


とかなんとか書きながらも、こうやって観戦記を起こしているって事は…やっぱり生観戦の道を選んだわけで。その決定打になったのは、セミファイナルに組まれた「ジョシカク、頂上決戦」をどうしても観たかったから。新設されるDEEP女子ライト級王座を争うのは…ジョシカク創生期から活躍する二人。SMACK GIRLフライ級の女王であるしなし さとこと、かつてはTBSの「黄金筋肉」女子総合格闘技 最強女王決定トーナメントを優勝した渡辺 久江。DEEPの新しい「女王」となるのは「サンボの女王」しなしか?「日本人で唯一、失神KOを奪う打撃を持つ女」渡辺か?


チケットを購入、立見席で5000円。いつも思うが、DEEPの立見席の料金は高すぎる。せめて4000円とかにならんのかねぇ。観客の入りは…超満員。客席はびっしりと埋まり、立ち見にも僅かながら列ができていた。今、後楽園ホールにこれだけの動員を見込める総合格闘技団体がいくつあるというのか?すげえなぁ、不入りの時代もあったDEEPだけどすっかり客入りが復活したなぁ。

大会前半についての拾い聞き

会場にいたKさん、フリジットスターさん(id:frigidstar)、ドキタローさんなんかから聞いた話を、ちょこちょこと。

第三試合での山崎 剛が素晴らしかった…らしい。柔術で紫帯を持つ杉内 勇から次々にパスガードを奪う姿は、観る人が観れば圧巻だった…らしい。「…らしい」と書いているのは、僕があんまり山崎を知らないからなんだけど。GRABAKAで唯一、PANCRASEが主戦場ではなかった選手…って程度。いつか観たい選手ではあるんだけどねぇ…。試合は判定3−0で山崎の勝利。


第四試合では、普段はつまんない試合を連発していた…らしい雷暗 暴が、「SKアブソリュートで唯一『極め』を持つ男』長谷川 秀彦となかなかいい試合をしていた…そうだ。隠れた実力者である長谷川といい試合が出来ていたのなら、ベテラン雷暗も頑張ってるね。と言っても、僕は修斗はそこまで熱心に見てなかったから、雷暗の事はよくわかんないんだけどね。結果は判定1−1のドロー。


第五試合でホアン・ジュカオン・カルネイロに判定3−0で敗北した元PANCRASEの石井 大輔が、今回の興行を最後に現役を引退。それでも試合内容自体は「石井大輔史上に残るベストバウト」だったそうで。う〜ん、最後の勇姿はちゃんと観たかったなぁ。ちなみに石井が引退を口にした瞬間、リングサイドにいたPANCRASEの梅木 良則レフリーが一瞬、嗚咽したそうだ。昔から見てきてるもんねぇ。


第六試合は「足関十段」今成 正和とフレジソン・パイシャオンが対戦。終盤のみを生観戦したが、今成が足関節技を仕掛ける等で攻勢。しかし判定結果は3−0で今成の敗北。フリジット氏曰く「今成をヨイショした判定になると思っていたけど、それはなかったか」だって。序盤は今成が押されっぱなしだったらしい。

とまあ、つらつらと書いてきたが…、彼らが総じて口にしていたのが「あまり盛り上がってないよ」の一言。確かに上記の結果も「判定がズラリ!」って感じだし。ま、とりあえずこれからの三試合が熱ければ僕としてはノー問題、というか。

第七試合 「光陰矢の如し」なれど、変わらぬは「犬が西向きゃ尾は東」

76kg契約(グラウンドでの顔面への蹴りが有効) 5分3R
中尾受太郎(177cm/75.9kg/フリー/DEEPウェルター級 王者)
●窪田幸生(174cm/75.2kg/フリー)
[2R 2分8秒 TKO]
サッカーボールキック

2004年6月にPANCRASEを離脱して以来、試合の数が激減している窪田 幸生が久しぶりにDEEPの舞台に登場。以前は身体が小さいのに無理してライトヘビー級の体格をキープしていた窪田だが、この試合は76kg契約という事もあり身体はかなり絞れていた。すっかり大ベテランになった窪田がこの試合で意地を見せるか?

だが今日は相手が悪い。なぜなら、対戦相手がDEEPウェルター級王者の中尾 受太郎だからだ。こちらは窪田以上にいい身体をキープ、ビキニのパンツが目に眩しい。試合に勝てば、その殆どが一本勝ちという強さを持つ中尾、得意の三角絞めで「簡単」に窪田を極めるのか?


1R、いきなり突進する中尾、しかし窪田は冷静に距離を取る。中尾、タックルからバックを奪うが、窪田はコーナー際でテイクダウンを堪える。中尾は太腿にヒザ蹴りをコツコツと入れるが展開なくブレイク。スタンドでは窪田のフックがヒット。続いて中尾のタックルも切った窪田はジャブで牽制、だが接近する中尾が左ストレートを奇麗に入れる。のけぞる窪田、しかし中尾は深追いせず。お互いに慎重だな。

残り1分30秒の時点で中尾がついにテイクダウンを奪ったが…、窪田はクロスガードでガチガチに防御。中尾の攻撃はインサイドガードからの小さなパンチのみに留まり、この体勢のまま1Rは終了。う〜ん、膠着してるな。


2R、中尾は早々にテイクダウンを奪うと、ハーフマウントからパンチを落としつつパスガードを狙う。下から身を起こし、亀の体勢を経て立ち上がる窪田。「中尾が押してはいるんだけど、どうも決め手がないなぁ…」なんて思っていたら、次のスタンドで中尾のストレートがクリーンヒット。崩れて倒れる窪田、中尾が頭頂部に容赦なくサッカーボールキックを連打する。動けない窪田を見たレフリーが試合を止めた。

観客の歓声の中、マイクを持った中尾は「病気療養中の佐伯代表を元気づけたかった」「一本勝ちが出来て良かった」とコメント。





う〜ん、なんとも順当な結果であまり感想らしい感想もなく。あえて言うなら…中尾の得意技である三角絞めが観たかったなぁ。

第八試合 「日進月歩」、女子でも「三日会わざれば活目して見よ」

DEEP女子ライト級 王者決定戦 5分2R
渡辺久江(160cm/48kg/フリー/TBS「黄金筋肉」女子総合格闘技最強女王決定トーナメント 優勝)
しなしさとこ(148cm/45.7kg/フリー/SMACK GIRLフライ級 女王)
[1R 3分53秒 KO]
※右ストレート/渡辺が初代王者に

本日のセミファイナルは、DEEP女子ライト級の王者決定戦にして「ジョシカク、頂上決戦」。


「不敗神話」の持ち主ながらも佐伯代表と蜜月になってからは「強豪を相手にする事が少なくなった」と指摘され続けている「サンボの女王」しなし さとこPRIDE武士道への進出を願ってやまない彼女も気づけば三十路の手前。今は少しでも肩書きが欲しいしなし、得意の関節技で「SMACK GIRLフライ級女王」に続いて、ホームのDEEPでも王者となるのか?

対戦相手は、成長著しい「日本人で唯一、失神KOを奪う打撃を持つ女」渡辺 久江。最近は出稽古で寝技を磨いたりしているが、その本分は打撃にある。特に今年の2月15日に行われたSMACK GIRLでのvs 15戦で見せたショートフックは本当に圧巻で、カウンターで入った一発で15は失神してしまった。ジョシカク離れした一撃を持つ渡辺、今日も自身たっぷりの表情で入場。Kさんが「ボコボコにしろよ!」と声を掛ければ、顔を向けて「勝つよっ!」と返答。いや〜っ、堂々としてるなぁ。


ちなみにこの二人は2002年12月に一度対戦しており、この時はしなしが一本勝ちを修めている。そして、あれから渡辺は伊原ジムで打撃を学び、ライバルの辻 結花から寝技を学んだ。三年半前の彼女とは別人となった渡辺、そしてしなしは…今日、それを身を持って知ることになった。




試合開始、と同時にスーッと接近するしなし、そこへ渡辺のカウンターの前蹴りがヒット。しなしが思わぬ一撃に尻もちをつけば観客は大歓声だ。そして、この光景を観戦していた僕とフリジット氏は、この時点で「あ、渡辺の圧勝かも」と予想。この一撃があまりにも綺麗に入り、しなしはまったく反応していなかったからだ。

そして、試合は予想通りに動いた。渡辺のハイキックは当たらなかったが、続くミドルキックがヒット、再び倒れるしなし。「やはり組み付かなければ勝てない!」とばかりに接近するしなしがタックルを敢行、ところが渡辺はこれをあっさりと捌く。「これは、いよいよ渡辺の圧勝かっ!?」という空気が会場を支配する中、渡辺は不用意にミドルキックを放ってしまう。これをキャッチしたしなしは崩してテイクダウンを奪った。僕は「あ、さすがにこの体勢になると厳しいかな?」と思ったのだが…。

グラウンドでインサイドに入ったしなし、クロスガードで防御する渡辺のボディにパンチを入れつつパスガードを狙うが、渡辺はもう「三年前の渡辺」ではない。パスさせないどころか、何とあの「サンボの女王」に対して下から三角絞めを敢行したのだ!どうにかこうにか腕を抜いたしなしだが…、寝技が本分であるしなしがグラウンドで圧倒される場面に観客は騒然…っていうか、僕もかなり驚いた。いや〜、こりゃ強いわ。


両者スタンド、渡辺しなしに組みついてボディへヒザ蹴りを一閃。お返しとばかりに、しなしは得意の一本背負いでテイクダウンを奪って上になる…が、渡辺は再び下から腕十字を仕掛けると、これがガッチリと入った。レフリーがキャッチのサインを出せば観客は大歓声、今度こそ本当に「あの」しなしが極められるのか?という空気が漂ったが、ここはしなしが脱出に成功し、すかさず足を捕っての関節技で逆襲。しなしの逆転勝ちを願う応援団から大歓声が起こったが、渡辺が脱出に成功しスタンドへ。

そして、その瞬間は訪れた。得意の寝技でも圧倒され、思わず後ろに下がるしなし。そして渡辺は逆にコーナー際へと追い詰め…、右ストレート一閃。ガードが下がり、がら空きだった顔面にヒットすれば、しなしはその場にドサッと倒れた。

誰が見てもわかるジョシカク離れしたKO劇、「不敗神話」の崩壊、チャンピオンの誕生、そして何より渡辺の圧勝劇に、観客が狂喜乱舞する。まあ僕も相当に騒いだんだけどね。




この「お祭り騒ぎ」に火をつけたのが…リングインしてきた渡辺の両親。親孝行なのだろう、記念のトロフィーは母親が、勝利者賞は父親が受け取った。特に大きなトロフィーを持った母親は本当に嬉しそうで、本人以上に大はしゃぎした後で号泣していた。一通り騒いだ後はリング上で深々と礼。一連の光景に、観客は笑いと歓声を上げていた。う〜ん、いいものを見た。なんていうか、DEEPはいつまでもこういうローカルな光景が似合う団体であって欲しいな。




それにしても…渡辺が強かった!まあ正直、体格差も大きいように感じたのだが…打撃・寝技・パワー。そのすべてにおいて渡辺が上だとは思わなかったし、あのしなしの初敗北がこんなもの凄い負け方になるとも思っていなかった。腰が入っていてスピードのある右ストレートは、誰が観ても文句のない一撃。正直、ジョシカクの打撃は「軽いなぁ」と感じる事が多いのだが、これは僕のそんな先入観をブッ飛ばすだけの一発だった。間違いなく渡辺は今日、ジョシカクの打撃の第一人者として多くの人の脳裏に刻まれただろう。いや〜、本当に見事だった!




対するしなしだが…、厳しいね。噂で「あまり練習をしていなかった」という話も耳にしたが、今日は「たとえ練習していたとしても、渡辺に勝てたのだろうか?」という疑問が残るくらいの完敗。年齢的にも、25歳とまだまだ若い渡辺に対し、しなしはやや下り坂を迎えつつある29歳。この一線でPRIDE武士道への道は閉ざされるのか?それとも、これを機に更なる執念を燃やすのか?カギを握っているのは…彼女の持つ「SMACK GIRLフライ級」のベルトだろう。防衛戦でどんな相手に何を見せるのか?追い詰められた女の情念に期待したい。



それにしても、凄い試合だった。

第九試合 「悪戦苦闘」に「七転八倒」、なれど最後は「紙一重

83kg契約(グラウンドでの顔面への蹴りが有効) 5分3R
桜井隆多(178cm/83kg/R-BLOOD)
●プロフェッサーX(185cm/82kg/フランス/TEAM Boon!)
[1R 4分47秒 腕十字固め]


第八試合を長々と書いていたが、今日のメインはこの試合。今や長南 亮と並んで「DEEPのエース」となったマッチョシューター、桜井 隆多。もうベテランでありながらもマッチョな身体を引っさげて、大応援団の歓声を受けつつ、ビル ゴールドバーグの入場曲である「Invasion」をバックに入場する桜井、カッコいいねぇ。何かを期待させるよね、この曲は。


■おまけ
ゴールドバーグってこんな人、入場曲はこんな曲
http://www.youtube.com/watch?v=q5hBXyBshjs





対戦相手はフランスからの刺客、プロフェッサーX(以下、Prof.X)。185cmという身長以上に四肢の長さが厄介そうな選手だ。見た目はザ スネーク(シリル ディアバデ)に似ているね。


試合開始…と同時に桜井は突進、Prof.Xがかわす。しかし桜井、長身のProf.Xを相手に果敢にワンツーを繰り出しつつ前に出る。ストレートがヒットしProf.Xが腰を落とせば観客からは大歓声。チャンスと見た桜井はProf.Xに組みつき一気に腕十字を狙うが、これは難なく外される。ならばと桜井、今度は下から相手の足を一気に伸ばしてアキレス腱固めを極めに入る。桜井の執念に観客は再び歓声を上げたが…。

これがProf.Xのチャンスとなった。四肢の長いこの男が捕られていない方の足を振り下ろせば、余裕でカカトが桜井の顔面に入ってしまうのだ。それでも足関節技に拘る桜井に対し、Prof.Xは何度もカカトを顔面に叩き込む。さすがに厳しくなった桜井が足を離せば、今度は上になって顔面にパンチを落とす。気がつけば桜井の顔面は真っ赤、ドクターチェックが入る。そういえば桜井は、前回の長南との試合で鼻を負傷しTKO負けを喫している。その悪夢を知っているのだろう、観客が悲壮感を持ってこの光景を見守る。




幸いにして試合は再開、だがProf.Xの攻勢が続く。リングを回りながら桜井のリーチの外から左ストレートを伸ばせば、これがコツコツと顔面にヒットする。負傷箇所への打撃という事もあり桜井は劣勢、それでも右フックをヒットさせて反撃に出る。観客の歓声の中、テイクダウンを奪った桜井は上からパンチを落としつつパスガード狙い。しかしProf.Xはこの体勢をリバースし上になる。桜井は下から再び足を捕ってヒールホールドを極めに入るも、上のProf.Xがサイドの体勢へ移行、またしても出血している顔面へパンチやキックを見舞う。

「今度こそもうダメか?」と思われた桜井だが、Prof.Xの蹴り足をキャッチして倒すと、マウントの体勢を経て一気に腕十字へ移行、これがガッチリと極まった。観客も勝利を確信し大歓声を上げているが、Prof.Xがギブアップをしない。観客も「実は極まっていないのでは?」と疑念に駆られたが…やがてレフリーが試合を止めた。劣勢を押し返しての勝利に、観客の歓声は最高潮に達した。




イヤイヤ、今日の桜井は危なかった。もう少し、顔面に打撃を喰らっていればKO負けは必至だっただろう。長南戦の負傷以来、鼻から血が出るのは癖になっちゃってるのかなぁ?ちょっと心配ではあるが、最後はキッチリと一本勝ちを修めるのだから見事だね。この勝利の先に待っているのは…長南との再戦か?それとも再びPRIDE武士道のリングなのか?いずれにせよ、いまやDEEPに欠かせない顔となった彼の活躍をもっと見たいねぇ。

雑感

結局、観戦できたのはたったの三試合だったけど…満足度はかなり高い。


まあ、なにせ第八試合が凄かった!デビュー当時から観戦している渡辺だけれど…正直、こんなに強い選手に成長するとは予想できなかった。ジョシカク史上に残る一戦は、目の肥えたファンで満員となっている後楽園ホールの観客を納得させる内容とフィニッシュで幕を閉じた。あの盛り上がりを見れば、佐伯代表も安心してジョシカクの試合をメインに据える事ができるのではないだろうか。

あとはメイン。桜井に対する観客の声援はかなり大きく、特に最後の腕十字が極まった時に歓声はハンパではなかった。最近は一時の勢いが落ちてきている総合格闘技界だが…この歓声を聞くにつけ、まだまだその人気は衰えていない事を痛感した。


いや〜っ、DEEPは面白いね!


以上、長文失礼。