6/6 PANCRASE 後楽園ホール興行 観戦記

Mask_Takakura2006-06-06

暗雲を吹き飛ばせ!

総合格闘技界を激震する大事件が発生。


フジテレビがDSEとの契約を解除、テレビ放映とイベントへの関与を中止。


黒い噂の絶えないPRIDEのバブルがついにハジけた…という感じだが、僕はそんなにはショックはない。それこそ鶴龍対決が全盛の頃の全日本プロレスから天龍 源一郎が離脱した時のショックとは雲泥の差だ…何ぃ?「そんなモンと比べるな!」だと?バカ言え!あの離脱は何の予告もなかったんだよ(遠い目)!ま、その後全日本プロレスは三沢 光晴、川田 利明、小橋 健太の台頭によって更なる全盛期を迎える事になるのだが…。

森下社長が死んだ時に開催されたPRIDE25、オープニングに横浜アリーナの巨大モニターに映し出されたのは「PRIDE NEVER DIE!!」の力強い文字。森下体制から榊原体制へと移行したPRIDE26、キャッチフレーズに使った単語は「REBORN」。果たして他団体から選手を高額で引き抜きながら巨大化したDSEに、それだけの再生力があるのか?生き返れるのか?やれんのか?


「…そんな事を今、考えてもしょうがないな。なんかスッキリしないし、PANCRASEでも観るか」


というのが今日の観戦動機。チケット代は5500円、フラッと観に来た割には高くついた。観客入りは約六割程度とかなり少ない。平日開催が祟ったのか、宣伝不足のせいか、みんなPRIDE騒ぎでそれどころじゃないのか、それ以前にPANCRASEが忘れ去られつつあるのか…。恐らくはそのすべてなのだろう、もっと頑張れPANCRASE

今日の見所は…今、PANCRASEで最も熱い階級となったフェザー級の初代王者決定トーナメントの開催。「PANCRASEの救世主」前田 吉朗を筆頭に、山本 篤、DJ.taiki、志田 幹と、最近のPANCRASEの軽量級を代表する選手が勢揃い。参加者こそ四人と少ないが「このメンツのうちの一人がフェザー級王者になる」という事に異論を唱えるPANCRASEファンはいないだろう。「量より質!」と言わしめるファイトを期待。


※観戦記は第三試合から。

第三試合 とってもピンクな大凡戦

ミドル級 5分3R
△花澤大介13(170cm/80.8kg/総合格闘技道場コブラ会/PANCRASEミドル級 八位)
△久松勇二(177cm/80.9kg/和術慧舟會TIGER PLACE/PANCRASEミドル級 九位)
[判定 1−0]
※久松は2Rに減点1

履いてるパンツがピンク色の二人による対戦。ピンクの面子を争うのは、PANCRASEでは何故か勝てない事でお馴染み久松 勇二と、このところは久しく勝ち星に恵まれない花澤 大介13の二人。


試合はあまりにも膠着したので超ダイジェストで。試合全般を通してお互いにテイクダウンを奪ったり奪われたりしながら時間は進んだが…、両者共上になってもパンチをコツコツ当てるのが関の山で、その後の攻めが続かない。とにかく「グラウンドでガチガチ」という時間が大変に長い、どうにも眠い、退屈なる事この上ない。

その上、2Rには久松がグラウンドで膠着ブレイクの後に下から蹴り上げイエローカード、花澤はダメージが深く回復のインターバルがとられる。タダでさえ動きのない試合なのに変なタイミングで間が空いてしまった。カンベンしてくれぇ。花澤も花澤で、久松に倒されそうになるとロープを掴もうとする。どうにもこうにもやりきれない。

試合全体ではテイクダウンの数などで久松先生の方が若干押していたように感じたが、イエローカードが一つあったせいでドローに。


う〜ん、この二人の対戦に「5分3R制は長すぎた」って感じだなぁ。やる側は元気かもしれないが、観る側のスタミナがもたない、というか。疲れちゃったよ、マジで。

第四試合 PANCRASEに花咲く紅二点

PANCRASE ATENA 56kg契約 3分3R
SAYAKA(156cm/55.7kg/ガールファイトAACC)
伊藤あすか(162cm/55.0kg/PANCRASE稲垣組)
[判定 3−0]

初めて観る伊藤 あすかはこれまでPANCRASEで3戦3勝1S、非常に気の強そうなビジュアルがいい感じだ。対戦相手はSMACK GIRLでもお馴染みのSAYAKA


試合内容は寝技の噛み合った好勝負、お互いにアグレッシブにグラウンドで鎬を削りあう。1R、SAYAKAは伊藤にテイクダウンされながらもリバースして上になり、パスガードからサイドを奪う。伊藤は上を奪い返してパスガードしサイドにつくも、SAYAKAは下から積極的に三角絞めを狙う。2R、SAYAKAは投げを放ち、サイドを奪い、上から足を絡めて三角絞めを極めにいく。伊藤は脱出すると同時にサイドを奪い反撃。3R、SAYAKAはタックルを見切られて伊藤に上を許してしまうが、ならばと下から三角絞め〜腕十字の連携。腕が伸びれば極まるところだったが…伊藤に粘られ極まらず。試合は判定までもつれ、アグレッシブな攻めが評価されたSAYAKAが3−0で勝利。


二人のグラウンドの攻防が一進一退だった事もあるが、それ以上に3分3Rという短い時間が試合のテンポを良くしていたように感じた。今日は敗れた伊藤だが、動きを見る限りまだまだ伸びしろがあるように感じたし、初敗北にめげずにガンガン試合に挑んで欲しいね。

第五試合 猛虎の狩りには無駄がない

ヘビー級 第二代王者決定トーナメント 準決勝 5分2R
アルボーシャス・タイガー(180cm/96.3kg/リトアニア/ラトビア士道館/PANCRASEライトヘビー級 四位)
●三浦康彰(183cm/96.8kg/禅道会広島支部)
[1R 1分35秒 TKO]
※右ストレート

第五試合はPANCRASEヘビー級 第二代王者決定トーナメントの準決勝、試合の勝者は8月27日の横浜文化体育館大会でポアイ 菅沼と王座を賭けて闘う事になる

で、この試合、本来は元極真会館の野地 竜太が出場する予定だったが…怪我の為に欠場。代わってリザーバーの三浦 康彰が、アルボーシャス タイガーと決勝進出を争う。三浦は禅道会所属、アルボーシャスは士道館。野地も合わせて三人共に空手家で、もはやPANCRASEでもなんでもない気がするが気にしてはいけない。


試合開始、中間距離を保ちつつ牽制する両者。三浦は小気味よくボディブローやワンツーを放っていたが…、不意に放ったアルボーシャスの右ストレートがヒットし、三浦はフラッシュダウン。すぐに三浦は立ち上がったが、そこへアルボーシャスが右ストレートを放つと、再びヒットしフラッシュダウン。それでも立ち上がる三浦、またしてもアルボーシャスの右ストレート。三浦が三度目のフラッシュダウンを喫したところでレフリーが試合を止めた。


アルボーシャスの圧勝、それ以外に言葉が見つからない。それにしても、放たれた右ストレートはどれも腰が入っているようには見えなかったんだけど…、よほどの破壊力があるのだろう。この突きがポアイの顔面を捉えるのか?それともポアイに寝かされて負けてしまうのか?横浜文体興行が楽しみだ。

第六試合 飄々と白星を重ねる低気圧系格闘家

フェザー級 初代王者決定トーナメント一回戦 5分3R
DJ.taiki(172cm/63.3kg/K.I.B.A.)
志田幹(164.5cm/96.8kg/PANCRASE P's LAB東京)
[3R 2分3秒 TKO]
※左フック

今日のセミファイナルとメインイベントは、PANCRASEフェザー級 初代王者決定トーナメントの一回戦。その第一試合に出場するのは、やる気のない発言とは裏腹に今泉 堅太郎や前田 吉朗といった格上の選手を次々に撃破しているDJ.taikiと、少林寺拳法をベースにオールラウンドな攻めで会場を沸かせる「PANCRASEの小さな強豪」志田 幹。

この試合、DJ.taikiの持つ「いつでも物事を斜に見る雰囲気」と、勤めていた会社を辞めてまで格闘技を続ける志田の「真っ直ぐな姿勢」。生き方そのものがまったく違う両者の激突、という意味でも興味深い。で、今大会で配られていたパンフレットにはDJ.taikiへのインタビューが載っていたのだが…、兎に角「やる気」とか「意気込み」とか、そういうものがまるで感じられない。発言は後ろ向きで、格闘家になった切欠が「ゲームのプロレス」、将来は公務員を目指しており、時折クラブでDJやったり。おおよそ我々が考えている「格闘家」のイメージとは正反対で、そのキャラクターには賛否両論ありそうだ。

一読の価値あり DJ.taikiの「斜め」なインタビュー

http://www.pancrase.co.jp/data/news/2006/0606/index.html

参考までに 2005/07/31 の志田の「真っ直ぐ」なインタビュー

http://www.pancrase.co.jp/data/news/2005/0731/index.html


1R、スタンドでのお見合いが続く中、身体を振ってリズムを作る志田が不意にタックルを放ち、taikiをコーナー際へと追い込んでテイクダウン、インサイドガードからパンチをコツコツと落としていく。taikiは下から足を効かせて脱出を図るが、志田はこれを封じてパスガードを狙っていく。今度はtaikiがクロスガードで防御、志田は持ち上げてのバスターでリングに叩きつける。その後、試合は膠着。

どうにも劣勢なtaikiだが終盤になんとか脱出。志田の脇を差してテイクダウンを奪うと、お返しとばかりにバスターを決める。半立ちになってのパンチ、更には踏みつけ…と攻め続けるが、1Rはここで終了。このラウンドは志田優勢といって良いだろう。

2R、今度はtaikiが攻める。スタンドでプレッシャーを与えつつジリジリと前へ出る。志田はリングをグルグルと廻りながらタックルを仕掛けるが、taikiを場外に出してしまったり切られてしまったりで、試合をグラウンドへ持ち込めない。

taikiは中間距離からのローキックやミドルキックで志田を蹴り、中盤には志田を首相撲に捕えてヒザ蹴りを放つ。そして右ストレートがヒット、志田はフラッシュダウンを喫する。すかさずtaikiが潜り、半立ちになってパンチを落とす。一度はサイドを奪い、志田に戻されれば猪木アリ状態からローキック。更には終了前、タイミングを見て立ち上がった志田に対し、taikiはワンツーをヒットさせて再び志田からフラッシュダウンを奪った。2R終了、このラウンドはtaikiが優勢だ。

3Rはスタンドでの打撃戦で始まった。まずは志田のワンツーがヒット、taikiがやや疲れた表情を見せる。左フック〜右ハイキックという高難易度のコンビネーションを見せる志田、taikiは右ストレートをヒットさせてお返しするが、どうもスタミナを切らしている様子。

チャンスと見た志田、taikiのパンチに合わせてカウンターのストレート、更にはパンチを出して前に出るが、そこへtaikiの左フックがヒット、志田はフラッシュダウン。すぐさま立ち上がった志田が再び前に出るが、またしてもtaikiの左フックがヒット。志田は再びフラッシュダウン、と同時に志田のセコンドからはタオルが投入された。


う〜ん、taikiは掴みどころがないというか、飄々と勝ってしまうというか…。危なっかしいところを沢山持ち合わせていながらも、最後には自分の勝ち方で勝ってしまうんだよなぁ。もう少し彼の闘い方は、活目して観る必要がありそうだな。それにしても志田に勝ってしまうとは…絶対負けると思ってたのに。

第七試合 勝負度胸の良さが生んだ衝撃の一撃

フェザー級 初代王者決定トーナメント 一回戦 5分3R
前田吉朗(170cm/63.7kg/PANCRASE稲垣組)
●山本 篤(169cm/62.0kg/KILLER BEE)
[2R 4分36秒 KO]
※飛び膝蹴り

メインイベントは、PANCRASEフェザー級 初代王者決定トーナメント 一回戦の第二試合。決勝進出を賭けて争うのは、山本"KID"徳郁と同じKILLER BEEの所属で、ここまで10戦7勝2敗1分1KO3Sと好戦績を残す山本 篤と、PANCRASEでは、先日DJ.taikiに負けるまではデビューから18戦無敗を誇っていた「PANCRASEの軽量級エース」前田 吉朗。気の強そうな雰囲気を持つ二人による対戦、KO決着は必至か?


1R、スタンドで徹底したお見合いが続く。山本がリングを廻り、前田がそれを追う。中間距離を保ちながらローキックで牽制しあう両者だが、なかなかその距離は縮まらない。

試合が動いたのは3分が経過した後。山本の左ミドルキックをキャッチした前田がテイクダウンを奪った。インサイドガードからパスガードを狙う前田、山本はそれをさせない。前田は鉄槌を顔面に落とすが、山本は隙を見てグラウンドを脱出し右ストレートをヒットさせる。前田は飛びヒザ蹴りやヒザ蹴りで反撃するも、1Rはここで終了。ここまでは互角。

2R、このラウンドは前ラウンド以上に徹底したスタンド勝負に。今度は前に出て、右ストレートや左ミドルキックを放つ山本。タックルで前田に組み付き、コーナー際へ押し込んでワンツーを放つと、右ストレートを連続でヒットさせる。

やや劣勢になった前田は左ミドルキックで反撃、コーナー際でワンツーを放ち、ローキックの後で右ストレートをヒットさせる。更に二発目の右ストレートをヒットさせて徐々に試合のペースを掴みつつあったが、その後に放ったローキックがローブローに。山本悶絶、暫く試合は中断。

試合再開、山本は仕切り直しとばかりに前に出てワンツースリーとパンチを放つ。真っ直ぐ後ろに下がる前田、非常に危なっかしい展開だったが…。

更に前に出る山本に、前田の右ストレートがカウンターでヒット、更に右ストレートのダメ押し。一気にコーナー際まで下がる山本、そこへ前田は…2.5mの助走つきの左飛びヒザ蹴り一閃!これが山本のアゴにヒットし一発でダウン、まったく立つ気配なし。とんでもない決着の付き方を前に観客からは叫び声や歓声が上がる中、前田が「快心の一撃」で決勝へと勝ち名乗りを上げた。

マイクを持った前田は「決勝ではDJ.taiki君と闘います。こんなに早くリベンジの機会を得られて嬉しいです。PANCRASEを背負う者としてベルトを獲ります。皆さん、力を貸して下さい!」と話し、PANCRASEファンから歓声を受けていた。


いや〜、それにしても凄い一撃だ。ああいうスタンドで膠着した展開の中で一気に博打にいけるのは、やはり試合経験の豊富さから来る「勘」なのだろうか…。勝負強さというか、度胸の良さというか、今日のような自力の強さを発揮できれば、DJ.taikiを簡単に倒させる気がするんだが…。こういう勢いを殺すのもDJ.taikiって事なのかねぇ…。う〜ん、決勝の展開が読めん。

雑感

第三試合はとんでもない膠着劇だったけど、第四試合は好勝負だったし、第五試合〜第七試合はKO劇だし、特に最後の飛びヒザ蹴りはなかなかお目に掛かれない一撃だし、そこそこ満足度は高い…んだけど。

じゃあ、これが「5500円の価値はあったのか?」と問われれば…、難しいところ。4000円なら文句はないんだけど…。興行の時間が2時間だったのも「ちょっともの足りない」という気分にさせられる。そんなにギャラの高そうな選手もいないし、今日はあと二試合くらいは足せたんじゃないのかなぁ?

少なかった客入りを含めて、妙に「PANCRASE、ジリ貧」を印象づけた興行だった、というか


以上、長文失礼。