5/26 SB 後楽園ホール興行 観戦記

Mask_Takakura2006-05-26

呪われたシュートボクシング

今日は後楽園ホールシュートボクシング(以下、SB)を観戦。

今回のSBは…、一言でいうと「とにかく呪われた」。なにが呪われたかというと…選手の欠場が相次ぎ、カードが次々に変更されてしまったのだ。欠場選手、及びカード変更については以下の通り。

■第二試合 センカン大和 vs 炎出丸
→ 大和が欠場、炎出丸の相手は歌川暁文に変更、試合順は第四試合へ変更


■第六試合 及川知浩 vs 石川剛司
→ 石川が欠場、及川の相手はラジャサクレック・ソー・ワラピンに変更


■第七試合 緒形健一 vs 大東旭
→ 大東が欠場、緒形の相手はポール・スミスに変更


■第八試合 宍戸大樹 vs 安廣一哉
→ 安廣が欠場、宍戸の相手はイアン・シャファーに変更


全九試合中、四試合に絡む選手が欠場。なかなかに前代未聞、特に興行の目玉であった「正道会館の軽量級エース」安廣と「元ボクシング日本チャンピオン」大東の欠場はかなりの痛手。又、石川の欠場も急なもので、裏方は代替選手を探すのにも色々と苦労した事だろう。だが「泣きっ面に蜂」、危機的状況に追い討ちを掛けたのが…。

■SB創始・シーザー武志会長
→ 体調不良で欠場


なんと選手だけでなく、いままでSBの興行を一度も休んだ事のないシーザー会長までもが体調不良で欠場。健康状態の詳細などはまったく報道されていないので判らないが…、心は若くても実年齢は決して若くない人なだけに心配だ。早期回復を願う。

そんなこんなで、すっかり「呪われてしまった」今回の興行、見えないところでは東奔西走の忙しさだったのだろう。まずはしっかりと選手を揃えて、無事興行を開催できた事実を賞賛したい。本当にご苦労様でした。

呪われてばかりはいられない

で。今日のカードで注目すべきは…、第八試合の宍戸大樹 vs イアン・シャファー。欠場した安廣には失礼だが…、ハッキリ言ってこのカード変更は大歓迎。K-1 MAXの舞台では新田明臣に勝利し、魔裟斗との試合では判定まで持ち込んだ実績もあるシャファー。破壊力満点の打撃を前に試合巧者の宍戸がどのように闘うのかが見物だ。そしてメインには「SBの外国人エース」アンディ・サワーが約半年ぶりにSBの舞台に登場。6月30日に開催されるK-1 WORLD MAX勝戦の前哨戦として正道会館の大野崇と対戦する。一回戦では全日本キックのアマラ 忍に大苦戦したサワー、勝手知ったるSBのリングで完全復帰をアピールできるか?

チケットはB席を購入、4500円。パンフレットは1000円。観客は約九割の入り、満員だ。いかに「呪われたSB」であれどサワー、宍戸、緒形が揃う興行で「不入り」は許されない。そう意味では、まずは「面目躍如」だ。


※観戦記は第四試合から

第四試合 歌川の闘いぶりに呪い

エキスパートクラス特別ルール 57.5kg契約 3分3R
○歌川暁文(169cm/57.45kg/UWFスネークピットジャパン/SB日本スーパーフェザー級 二位)
●炎出丸(167cm/57.5kg/クロスポイント吉祥寺)
[判定 3−0]
※炎出丸は3Rにダウン1

「いまどきの不良」歌川 暁文も気が付けば26歳。戦績も20戦13勝6敗1分6KOとベテランの域に達しつつある。今日はセンカン大和の代役として急なオファーを引き受けての出場、4戦2勝2敗のルーキー 炎出丸ごときに負けるわけにはいかない…のだが、試合はなんともキレがないのでダイジェストで。


急なオファーの為か、怪我でもしたのか、自分のスタイルに迷いがあるのか…。歌川の左ミドルキックにキレがない。そんな歌川に対し炎出丸は右ミドルキックで応戦するが、こちらは蹴りに威力がない。不本意な互角の展開を前に、歌川は普段はあまり多用しない首相撲からのヒザ蹴りでペースを作っていく。しかしこれもキレがなく、ダラダラと試合は続く。

試合は全ラウンドを通して上記のような感じ。試合終了直前には歌川の右ストレートがヒットし炎出丸がダウン、これが決定打となり判定3−0で歌川が勝利を修めた。


ちょっと不満の残る内容。前回観たナグラチューンマーサM16戦といい、歌川はなんとなく自分のスタイル(左ミドルキックによる蹴りが中心)に自信を失っているように見える。まだまだ26歳、老け込むにはまだ早い。どのような形にせよ、活きのいい悪童ぶりの復活を望む。

第五試合 ナグランの右膝に呪い

エキスパートクラス特別ルール 60kg契約 3分3R
○三原日出男(170cm/59.7kg/シーザージム/SB日本Sフェザー級 五位)
●ナグランチューンマーサM16(166cm/59.65kg/龍生塾/SB日本フェザー級 二位)
[1R 終了時 TKO]
※タオル投入による/ナグラは1Rにシュートポイント1、三原は1Rにダウン1

SB日本Sフェザー級王者 及川 知浩の実弟、ナグランチューンマーサM16。層が厚くなりつつある「SBフェザー級」で今、波に乗る選手だ。対戦相手は35歳のベテラン三原 日出男。ナグランとしては超えておきたい壁だが…。


1R、ナグランが三原を圧倒。序盤からフックとローキックで積極的に攻め、鮮やかな首投げでシュートポイント1を奪うと、ローキックの連打で三原を崩す。三原はバックドロップで反撃するも、体勢が崩れてポイントには至らず。

ナグランはその後もワンツーの連打からのローキックで攻め、三原のヒジ打ちにはヒジ打ちで対抗。ラウンド終了前には右ストレートでダウンを奪う。勢いの差は歴然。「ナグランのKO勝利は時間の問題」と思われた。

だが1R終了後、ナグラン陣営が突如タオルを投入し試合は終了。呆気に取られる観客、レフリーの説明によるとナグランが右膝を負傷したらしい。椅子に座ったまま悔しがるナグラン。勝った三原も納得がいかない様子で「もう一回、やらせて下さい!」とマイクアピール。


う〜ん、試合展開が一方的だっただけにナグランは悔しいだろう。それにしても試合を優勢に進めた選手が負傷とは…、今日のSBは試合内容も呪われているな。

第六試合 及川の額に呪い

エキスパートクラスルール 60kg契約 3分5R
○ラジャサクレック・ソー・ワラピン(168cm/57.5kg/タイ/ウィラサクレック フェアテックスジム)
●及川知浩(165cm/59.75kg/龍生塾/SB日本Sフェザー級 王者)
[1R 50秒 TKO]
※額をカット

第六試合に出場予定だった「SBのダーティーヒーロー」石川 剛司が負傷欠場、代役として出場するのは「哀愁のWSR戦士(※)」ラジャサクレック・ソー・ワラピン。ワンロップ、ゲーオ、ゲンナロン…と名だたる強豪を抱えるムエタイジム、WSR。ならばこのワラピンも強豪なのでは?

さにあらず。この人、決して弱くはないのだが…何かと白星配給係のような役回りをやらされる事が多いのだ。今までにも前田 尚紀、竹村 健二、藤原 あらし、と層々たる面々に白星と共に「ムエタイ越え」を配給、欠場した石川も昨年6月26日の興行で、得意の絞殺刑で秒殺勝利しているくらいだ。

となれば、当然ながら石川より先輩であり格上である及川 知浩としては「勝つのが当然の相手」であり、むしろ「勝ち方が問われる相手」のはず…だったが。

※WSR → ウィラサクレック フェアテックスジムの略称


試合開始前、「ワセリンを塗り過ぎている」という事でワラピンにイエローカード、観客の失笑と共にゴングが鳴る。1R、いきなりワラピンは両ヒジを立てて及川の額に一撃二撃。モロに喰らった及川だがダメージはまったくなし、お返しとばかりに反撃しようとした。

が、レフリーはタイムを要請。なんと及川はこのヒジで額から出血したのだ。呆気にとられる観客、いらだつ及川。反対にワラピンは「してやったり!」の表情だ。

とりあえず試合は再開したが…、及川がローキックを放ち、ワラピンがスピードの乗ったストレートを出したところで再び試合はストップ。及川の血が止まらないのだ。再度のドクターチェック、観客からは溜息が漏れる中、やがてレフリーの手が振られた。


シャレにならん。前回の興行で「マッドドッグ」竹村から勝利を修めた及川が、一階級下の藤原あらしにKO負けしたワラピンに秒殺負けとは…。SB日本Sフェザー級王者として「絶対にあってはならない事」が起きてしまった。正直、僕の中の及川株はガタ落ち。この敗北は絶対にリベンジしなくてはダメだ。及川、気合を入れなおせ!

田中秀和リングアナ、降臨

突如、会場内に「ワールドプロレスリングのテーマ」が流れ、リングには元新日本プロレスの田中 秀和氏が登場、次の試合からはリングアナを務めていた。

K-1、PRIDE、何するものぞ!打つ!蹴る!投げる!これが立ち技総合格闘技シュートボクシングだ!」。

早速、どこぞの東京ドームで聞いた事のある前口上で観客を煽る。僕としては結構なサプライズなのだが、会場の反応は今一つって感じかな?あんまりプロレスとか観ないのかねぇ、SBファンは。会場の雰囲気は、立ち技界の中で一番プロレスに近いのに。

いつもの「♪シィ〜ザァ〜、シィ〜ザァ〜」もないままに

いつものシーザータイムは、本人病欠のため音声のみに。

「本日は皆様、お忙しい中お越しいただき、ありがとうございます。本日も会場に行こうとしたのですが、ドクターストップが掛かってしまいました。ご来場の皆様に直接御礼が申し上げられず、大変悔しいです。申し訳ありません。次の大会では必ず元気になってご挨拶させていただきます。」

肉声が聞けたのにはホッとしたが、ちょっと呂律が廻っていない。ひょっとして脳をやられたのか?ますます心配だな。

第七試合 緒形のS-CUPへの道に呪い

エキスパートクラスルール 72kg契約 3分5R
○緒形健一(172cm/70.9kg/シーザージム/SB日本Sウェルター級王者)
ポール・スミス(182cm/70.65kg/オーストラリア/チーム ジャブアウト/ISKAオーストラリア ウェルター級王者)
[2R 2分57秒 KO]
※パンチ連打/緒形は1Rにダウン1、2Rにダウン1

この試合に出場予定だった大東 旭は怪我の為に欠場、対戦相手が欠場するは緒形 健一にとって今年二度目の出来事だ。まあ一度目は、対戦相手が試合直前に倒れて試合そのものが中止になったのだが、今回はちゃんと代役が立てられて一安心。それにしても、今年の緒形はどこかツイていない。

で、大東と代わって緒形と対戦するのはポール・スミスという選手。その名前は「どうにもこうにも…」という感じではあるが、ミドル級ながらも182cmという長身の持ち主。先ほどのワラピンのような事もあるし、緒形としては舐めてはかかれない。


1R、緒形は距離を離してローキックや前蹴りを放つ。スミスは左のインローで対抗、基礎はしっかりしているようだ。だが緒形は得意のボディへのストレート、スミスのワンツーを潜ってワンツースリーフォー〜ローキックのコンビネーションで攻勢。観客も歓声を上げる。

だが中盤、緒形の放ったパンチのカウンターでスミスの右フックが炸裂、緒形は一発でダウン。思わぬ出来事に観客は騒然。

カウント8で立ち上がった緒形、どうやらダメージは浅いようだ。試合再開後、緒形は無理に失点を挽回しに行こうとはせず、淡々と前蹴りやローキックを放っていく。ベテランならではの冷静さだね。スミスもまた、無理にKOを狙わず中距離からワンツーを放つのみに留まる。そのワンツーに緒形のカウンターのフックがヒット。意気消沈していた観客から大歓声が沸く。だがスミスも、長身を活かしたヒザ蹴りやワンツーでそれ以上の追撃を許さない。

2R、緒形が再び窮地に追い込まれる。伸びるワンツーを繰り出して前に進むスミス、接近戦から不意に飛びヒザ蹴りを放つと、これがモロにヒット、緒形は二度目のダウン。再び観客からは悲鳴が上がる。

それでも立ち上がった緒形は試合再開直後にスミスのワンツーのカウンターでフックをヒットさせる。この一撃で観客は再び活気を取り戻し、その声を背に受けながら緒形は中距離からジリジリと前に出てプレッシャーを掛け、単発のストレートやボディへのストレートを次々に入れていく。対するスミスは首相撲からのヒザ蹴りなどで反撃したが…、緒形の打撃を前に徐々に下がる場面が増えた。スミスは自分の打撃に自信を持っていないように見えるな。経験不足か?

終盤、スミスをコーナー際へと追い詰めた緒形が至近距離からパンチの四連打を放つと、これがすべてモロにヒット。スミスはうつぶせにダウン、立ち上がる気配なし。緒形の大逆転勝利を観客はスタンディングオベーションと大歓声で祝った。

緒形はマイクで「今日は会長がいなくて、力みすぎてポカしてしまいました。『会長の留守は俺が守る』、その想い一つで闘い抜きました!」とアピール、観客は大歓声で応える。シーザー会長、早く良くなって下さい。


う〜ん、危なかしい。今日の緒形はベテランならではの冷静さで勝ちを拾ったが、スジの青い選手を相手に二度のダウンはいただけないなぁ。「S-CUPまでは一度も負けられない!」を公言している緒形だが、対戦相手の質や勝ち方も問われている事を忘れないで欲しい。

第八試合 宍戸が降りかかる呪いを吹き飛ばす!

エキスパートクラスルール 70kg契約 3分5R
宍戸大樹(176cm/68.25kg/シーザージム/SB日本ウェルター級王者)
イアン・シャファー(172cm/69.95kg/オーストラリア/リングス オーストラリア)
[判定 3−0]
※シャファーは5Rにダウン1

「SBの新エース」宍戸 大樹に「試練の一番」が続く。前回興行では体格は一回り上回るK-1 MAX戦士、マルフィオ・カノレッティを判定で下した宍戸だが、今日の対戦相手もデカくて強い。安廣の欠場に伴い代打出場するのは、K-1 MAXで魔裟斗と互角に闘った強豪、イアン・シャファー

う〜ん。正直、宍戸にとっては荷の重いカード変更だなぁ。本来はライト級の身体でありながら必死に体重を上げている宍戸に対し、上の体重から落としてきているシャファーは上半身の筋肉、ももの太さも尋常がでない。二人の体重差は約1.7kgしかないのに、見た目には二階級くらい差があるように見える。宍戸、勝てるのか!?


1R、シャファーが早くもエンジン全開。体格差に任せて前に出てブンブンと豪腕を振り回し、強烈なラッシュを連発。一発入ればKO負けは必至、宍戸はガードを上げてガチガチの防御。しかしシャファーはガラ空きのボディにブローを叩き込む。上下に打ち分けるシャファーの打撃、宍戸は早くも大ピンチ。観客からは悲鳴が上がる。

シャファーはやりたい放題。宍戸の蹴り足を取って裏アキレス腱固めを極め、体勢は崩れたがバックを奪ってジャーマン・スープレックスで投げ捨て、宍戸をバカにした態度で挑発。完全に試合を支配するシャファー、対する宍戸は防戦一方だが、コツコツとローキックを入れていく事は忘れていない。

2R、シャファーは1Rと同じくその豪腕を宍戸の体に叩き込もうとするが、宍戸はこのラウンドは前蹴りでしっかりと距離を離し、中距離からはミドルキックとローキックで蹴り、近距離ではボディブローを放つ。打撃を下に集めてシャファーのスタミナを奪う作戦なのだが、早くも効果が現われる。序盤はラッシュと挑発を繰り返したシャファー、しかし万遍なく宍戸の打撃を喰らった結果、終盤には動きが鈍くなる。そこへ宍戸のソバットが炸裂。5Rをすべて使って勝つ宍戸の真骨頂だ。

3R、1Rの勢いもどこへやら、シャファーの動きは重い。宍戸はリングを廻りながらのローキックとミドルキックで中間距離から徹底的に攻め続ける。シャファーは蹴り足を掴んでストレートを連打したり、ボディブロー〜ワンツー〜ボディブローの連打で反撃するが…宍戸はしっかりガードを固めて防御し、距離を離して再びミドルキックを連打。思わず後ろに下がるシャファー、宍戸はコーナー際へと追い詰め、飛びヒザ蹴りやワンツー〜アッパーで追撃。

4R、スタミナを失ったシャファーはローキックを放つのが精一杯。宍戸はジリジリとコーナー際に追い詰めて得意のショートパンチの連打。更にはローキック、前蹴り、ミドルキックと蹴り続け、再びコーナー際でボディブロー〜ワンツーの連打。シャファーもフックやボディブローを繰り出すが攻撃が続かない。終盤にはローキックも効いてきた。もはやボロボロ。

5R、ミドルキックを連打するシャファーに対し、宍戸はソバットを叩き込んでコーナー際へと追い詰めると、ミドルキックの連打でダメージを与え、接近戦でショートパンチを猛連打。シャファーはガードを固めて必死に防御、宍戸は更に組み付いてのヒザ蹴りを連打。ガードを固めながらうずくまるシャファーを見たレフリーがスタンドダウンを要請する。宍戸の素晴らしい攻めに観客からは大歓声。

試合再開後も宍戸が手を休めない。組み付いてのヒザ蹴り連打、ミドルキック、接近してのワンツー連打。反撃できずに下がるシャファーを宍戸は前蹴りで追撃するが、これがローブローに。だが様子がおかしい。明らかにミゾオチあたりを押さえて苦しんでいるのだ。レフリーは宍戸を注意するも、サブレフリーは「当たってない!」と主張。結局、両者にイエローカードが出された。

試合再開後、インターバル中に体力を回復したシャファーがラッシュを仕掛ける。やはりローブローはフロックだったようだが、宍戸はガードを固めてこれをしのいだ。試合終了、宍戸の勝利を確信した観客からは歓声が沸いていた。

判定結果は3−0で文句なく宍戸の勝利。マイクを持った宍戸は「大会前はドタバタしてしまい、本当に『呪われてるんじゃないか?』と思いましたが、こういう時こそ会長の教えを守っていこうと逆に気持ちが高まりました。これから7月、9月、S-CUPと厳しい闘いが続きますが頑張っていきます。応援よろしくお願いします」とコメント。観客から大歓声が沸く。


宍戸は今日も、豪腕を誇る相手に文句のない勝ちっぷりを見せた。どんな選手が相手でも、どんなに劣勢でも、最後に勝利するのが宍戸大樹という男の魅力。来るべきS-CUPに向けこれからも強豪との一戦が続くと思われるが、今の宍戸は3分5Rであれば「まず負ける事はないだろう」と思わせる何かを持っている。もっともS-CUPは3分3R制だから、その点は心配なんだけどね。

第九試合 サワーが完璧な邪気払い!

エキスパートクラスルール 71kg契約 3分5R
アンディ・サワー(172cm/70.4kg/オランダ/シーザージム チーム サワー/S-CUP 2002 & 2004 覇者、K-1 MAX 2005 世界大会 優勝)
●大野崇(180cm/70.4kg/正道会館/ISKA世界ミドル級王者)
[3R 2分10秒 TKO]
※3ダウンによる

今日のメインイベントは、約半年ぶりに「SBの外国人エース」アンディ・サワーが登場。

6月30日にはK-1 WORLD MAXの決勝戦が控えているにも関わらずこの興行に強行参戦してきたサワー。その理由はアマラ 忍を相手に大苦戦したMAXでの一回戦にある。「納得いかない!」と怒れる王者が、今日ホームのリングで大暴れする。

今日の対戦相手は、こちらもK-1 WORLD MAXにも出場経験がある正道会館の大野 崇。SB参戦以来黒星が続いた大野だが、2月の興行では「SB中量級の次世代エース」菊地 浩一からKO勝ちを奪った。今日は自分から志願してのサワー戦、無様な姿は晒せない。


1R、サワーが早くも攻勢。大野のミドルキックを喰らいながらも、接近戦で強烈なボディブローを放てばその破壊力に観客からは溜息が漏れる。その後もサワーは大野のパンチをものともせず、ローキックを放ちながらどんどん前に出て、コーナー際へ追い詰めて強烈な左右のボディブロー、更にボディブローとアッパーの追い討ち。サワーの迫力を前に、大野がジリジリと下がり始める。

サワーはボディへのストレート、大野のフックに合わせてのカウンターのフック、そしてコーナー際でアッパーをヒットさせ、これとは別にラウンドを通してローキックを数発も叩き込む。ローキックに弱い大野の足元が早くも崩れる。

2R、ヒザ蹴りやミドルキックで蹴る大野、サワーは相変わらずの強烈なプレッシャーで前に出る。大野は組み付いての投げを放とうとするが失敗、反対にサワーはローキックとボディブローでダメージを与える。更にはワンツー、ローキック、大野のパンチをスウェーでかわしての左フック、ワンツー、ワンツー〜ミドルキック、右アッパー、飛びヒザ蹴りと圧倒的な攻勢。打撃を喰らい続けた大野のガードが徐々に下がる。

サワーの攻勢が続く。得意の強烈な左ボディブロー、ストレート、ヒザ蹴り、ローキック×2、右フック〜左ボディブロー、右アッパー、ワンツー〜左ボディブロー、ローキック。無駄打ちの少ないサワーの打撃、喰らった大野は既にフラフラ。それでも自らを励ますように「打ってこいっ!」とサワーを挑発するが、その後で放たれる打撃に力がない。

3R、サワーが仕上げモードに突入。大野をコーナー際へと追い詰めて怒涛のワンツーの連打、そしてインロー。大野は一度目のダウン、何とか立ち上がったが足を引きずっている状態、こうなるとサワーの勝ちは動かない。

サワーは大野を追いかけて再びローキックを放つと、踏ん張りの利かない大野がスリップ。サワーは容赦なくボディブロー〜インロー、そして再びインローで二度目のダウンを奪う。尚も立ち上がる大野に観客から歓声が沸いたが…、サワーはワンツー〜インローと単発のインローで大野の気力を削ぎ、最後はインロー。完全に足が破壊された大野の腰がガクッと崩れ、試合は終了。

マイクを持ったサワーは「(日本語で)コンニチワ!次の試合はK-1 WORLD MAXです。トレーニングをし、強くなって試合を見せたいと思います。僕が日本で戦えるようになったのはシーザー会長のおかげです。今日は病気で来られないそうですが、早く良くなって欲しいです」と、恩人に対する感謝の気持ちを表していた。


サワー、磐石。今日の完勝劇を見る限りでは、今年のK-1 WORLD MAXでの活躍も充分に期待できるだろう。決勝戦での一回戦の対戦相手はブアカーオ・ポー・プラムック戦で株を上げたスティーブ・カラコダ。パンチを得意とする相手に、逆に得意の左ボディブローが炸裂するのか?右アッパーが爆発するのか?はたまたローキックで切り崩すのか?対戦が楽しみだ。

雑感

呪われた興行となった本日のSBだが、こんな時に課題であった「興行時間の短縮」を実践できたのは何とも皮肉な話。3時間丁度で終わった今回の興行は非常に理想的で、願わくは今後もこれくらいの時間で終わらせて欲しいのだが…。

試合内容についても「及川兄弟の呪われた敗北」なんて事もあったが、課題が多いなりに緒形が勝負強さを見せ、序盤は相手に圧倒されながらも宍戸が巧さを発揮し、調整試合ながらもサワーが一方的な強さを披露する等、SBファンに文句のない内容だったと思う。

また観戦記には書かなかったが、田中リングアナの名調子が会場を盛り上げるのに一役買っていた事も追記しておく。「今年のK-1S-CUP、すべてオレが戴く!アンディ・サワー入場!」なんていう台詞は、田中リングアナにしか似合わない、というか。機会があればまたやって欲しいところだ。


以上、長文失礼。