5/21 全日本プロレス 後楽園ホール興行 観戦記

主力選手の相次ぐ離脱、それでもショーは続く

本日はPON君(id:pon-taro)のお誘いで全日本プロレスを観戦。

最後に全日本プロレスを見たのは、チーム3Dが初試合をした昨年9月30日。そこから数えて約8ヶ月ぶりの観戦となるわけだが…正直、チーム3D、ジャマール、曙、ジャイアント・バーナードと主力選手が次々に離脱してからは興味が薄れていたのだ。

その反面「じゃあ主力離脱後の全日本プロレスってどうなんだ?」という点にも興味があり、今日の観戦はそれが動機。チケット代は4000円、プロレスにしてはちょっと高い気もするが気にしない。パンフレット代は1000円、全日本プロレスのパンフレットは奇麗で小さくて出来がいい。

今日の全日本プロレスの見所は…僕にはよくわからん。PON君曰く「久しぶりの興行なんですよ、1ヶ月ぶりですかね?」という事なので、そういう事なのだろう。見所になっていないが気にしない。客入りは満員、あれだけの離脱劇があったのに、人気が衰えないのは素晴らしいな。

オープニングはRO&Dタイムから、これ定番

オープニングは相変わらずのRO&Dタイム、しかしそこにジャマールがいない光景は寂しく見える。いつも通り、TAKAが今日の流れをソツなく説明した後でVOODOO-MURDERSが乱入…。おっと、こちらは日本人4人だけになったのか。ぶっちゃけ随分と貧相になっちゃったねぇ。あ、そうか、チャック・パルンボも抜けたんだっけ。密かにいいレスラーだと思ってたのになぁ。

それでも悪いことばかりでもなかった。以前に比べてYASSHIのトークが巧くなっていたのだ。彼のネタに対して観客も素直に反応してたし、TAKAも最後は「ちょっぴりだけトークが巧くなった」と認めていたし、これは良い事だね。オープニングを「安心して」VOODOO-MURDERSに任せる日も近いかな?

第一試合 菊ちゃんのどこまでやるの?

シングルマッチ 20分一本勝負
渕正信(183cm/105kg)
菊タロー(167cm/96kg/フリー)
[6分43秒 首固め]

どこまで続くの「渕 vs 菊タロー」劇場。股裂きに苦しんだり、ボディスラムで腰を痛めたり、ドラゴンスクリュー〜シャイニング・ウィザードを決めたりで、いつもの菊タロー節が爆発。今日は村山レフリーと股間の打ち合いがハイライトだった。渕、今日は珍しく雪崩式ブレンバスターを決めたが…最後はお約束の首固め。この試合は、この先何年もこの調子なんだろう。

第二試合 ジュニア戦線異常なし

タッグマッチ 30分一本勝負
 NOSAWA論外(180cm/87kg/フリー)
竹村豪氏(178cm/96kg/フリー)
vs
カズ・ハヤシ(173cm/83kg)
 TAKAみちのく(175cm/90kg/フリー/RO&D)
[7分48秒 無我クラッチ]

NOSAWAが笑いを取る事なく試合をしていた事に驚いた。PON君曰く、NOSAWAは僕の観戦していない半年の間にお笑いキャラを卒業したそうだ。「いっその事『論外』ってリングネームもなくせばいいのに」、成程ね。

この試合は怪我で欠場していたTAKAの復帰戦だったが、試合では新参者の竹村が存在感を発揮。ジュニアとは思えない体格からリフトアップを披露、観客からは驚きの声。だがその後はソツのない展開が続く。NOSAWAのシャイニング・ウィザード、TAKAのジャスト・フェースロック、カズのムーンサルト・プレスとそれぞれの得意技が飛び出す中、試合を決めたのは竹村。みちのくドライバーから、最後は無我クラッチ(サムソンクラッチ)でカズをフォール。う〜ん、TAKA絡みの試合ってどうも印象が薄くなるなぁ。気のせいかね?

試合終了後はいつものジュニア劇場。今日のテーマは次期シリーズで開催される「全日本プロレス ジュニア・ヘビー級 リーグ戦」。竹村は「全日本のジュニアの皆さん、いつリーグ戦やるんだよっ!?」と詰め寄り、NOSAWAは「オイ!オレはおまえらのかませ犬じゃないぞ!」と、どこかで聞いた事のある台詞を吐く。そこへVOODOO-MURDERSが乱入、近藤は竹村に「そこの筋肉バカ!お前、オレとキャラがかぶってんだよ!」と笑いを取り、「トーナメントへは、渕が出るなら出場する」と妙な条件を突きつけて退場。

VOODOO-MURDERSと入れ替わるように乱入したのは、何故か「ピープルズ・チャンピオン」モードの菊タロー。周りを見廻しつつリングに上がれば…、試合をしていた四人が一斉にリングを降りる。観客の爆笑の中、一人残された菊タローはめげずに腕を広げながら小刻みに振るわせ、上を向きながらマイクを逆立てて、いよいよ「Finary!!」と…叫ぶ前に大音量で音楽が流れてしまった。菊タローは何も喋らずにいそいそとリングを降りていった。またまた観客は爆笑…って、これは本来は石狩 太一の仕事。彼も抜けてしまったんだよねぇ…。

っていうか、試合よりもその後の寸劇の方が面白いというのもどうなんだ?

第三試合 デブ三人揃えば暑苦しい

六人タッグマッチ 30分一本勝負
 嵐(190cm/146kg)
吉江豊(180cm/160kg/フリー)
 ブルート一生(194cm/140kg)
vs
 荒谷望誉(185cm/120kg)
平井伸和(185cm/110kg)
 土方隆司(175cm/95kg)
[14分8秒 体固め]
※ダイビングボディープレス


♪ 俺たち陽気なDEBU-MURDERS 誰が呼んだか知らないが
♪ 男三人寄ったら 暑苦しいとは愉快だね
♪ DEBU BOO-BOO DEBU BOO-BOO
♪ 仲良く ヒップアタック ボディプレス
♪ 明るく楽しく 潰して勝ちます
♪ ギュギュゥと ムギュゥと 暑苦しい


グリフォンさん(id:gryphon)、「元ネタのわからん替え歌」っていうのはこういう歌の事をいうのだよ。それにしても、替え歌っていうのは頭の中で歌いながら思案するものなんだな。考えていてちょっとハズかしかった、というか。

第四試合 このシャイニング・ウィザードが目に入らぬか!

タッグマッチ 30分一本勝負
武藤敬司(188cm/110kg)
 AKIRA(180cm/99kg)
vs
 ディーロ・ブラウン(185cm/138kg/アメリカ/RO&D)
●ブキャナン(197cm/140kg/カナダ/RO&D)
[14分7秒 体固め]
シャイニング・ウィザード

ブキャナンの右手をAKIRAと武藤が攻める(アイアンボム封じ) → 体格に劣るAKIRARO&D組に苦戦 → 武藤が反撃、お約束のシャイニング・ウィザード → 一件落着。

そんな中、目立っていたのはディーロ・ブラウン。プロレスLOVEポーズや、スリーアミーゴ(ブレンバスター三連発)で盛り上げ、それ以外にも要所で観客を煽っていた。テンポの良い攻めは見ていて気分が良い。大黒柱のジャマールが去ってしまったRO&D、その穴がディーロで埋まっている…とは思わないが、試合巧者の彼が帰ってきたのはRO&Dにとって不幸中の幸いだったのかもしれないねぇ。

途中、メキシコ帰りの武藤がフライング・クロスチョップやメキシカン・ストレッチを披露していたが、そんなに盛り上がる程の事なのだろうか?最近の武藤のプロレスは伝統芸能っぽくて好きになれんよ。ヒザがかなり悪いのはわかるんだけどね。

第五試合 決着戦が前哨戦になってしまった罠

シングルマッチ 30分一本勝負
太陽ケア(185cm/106kg/アメリカ/RO&D)
鈴木みのる(178cm/102kg/PANCRASE MISSION)
[時間切れ]

みのるに「世界一公平なレフリー」と紹介された和田 良覚氏、和田 京平氏と握手して何もせずにそのまま退場。これには笑った。たった2〜3分の出番が、この後の試合を完全に喰ってしまっていた、というか。

前シリーズで行なわれた「チャンピオンカーニバル」での準決勝で因縁が生まれたこの二人。今日はその決着戦である。その背景を踏まえて「30分時間切れ引き分け」と聞くと、普通のプロレスファンは「激闘」という二文字を思い浮かべるだろう。

だが、みのる絡みの「30分時間切れ引き分け」は一味違う。手っ取り早く書けば「序盤の攻防」が30分続いたのだ。想像して欲しい。手四つの攻防、ショルダータックルによる意地の張り合い、ロープブレイクの駆け引き、じっくりとしたレスリング…、これらの攻防が抑揚なく30分続く光景を。正直、苦痛以外の何者でもないよ、コレは。特に25分が経過したあたりで「あ、この試合はこのまま終わるんだな…」と判ってしまってからの5分間が圧倒的に辛かったなぁ。せめてみのるにもう少し試合で魅せる力があれば…。

っていうか、ぶっちゃけ最近のPANCRASEって客入りがかなり悪いジャン。みのるよ、こんな事してる場合じゃないぞ、マジで。

第六試合 「61分三本勝負」の「1分」って何の意味があるんだっけ?

八人タッグマッチ 61分三本勝負
○<VOODOO−MURDERS>
 TARU(185cm/100kg/VOODOO-MURDERS)
 諏訪魔(188cm/120kg/VOODOO-MURDERS)
 近藤修司(173cm/103kg/VOODOO-MURDERS)
 "brother"YASSHI(173cm/80kg/VOODOO-MURDERS)
vs
●<小島&佐々木&中嶋&雷陣組>
 小島聡(183cm/112kg)
 佐々木健介(180cm/115kg/フリー)
 中嶋勝彦(175cm/82kg/フリー)
 雷陣明(183cm/105kg)
[2−1]

今日のメインイベントは、日本のプロレスでは今時珍しい「61分三本勝負」形式による試合。対戦するのは「VOODOO-MURDERS」と「正規軍&健介一家」。それにしてもVOODOO-MURDERSはカラーがハッキリしてるのに、小島&佐々木&中嶋&雷陣組っていうのは…、何だか「寄せ集めの寄せ鍋ゴッタ煮にこごり風味」という感じでどうにもこうにも。

一本目 プロレスは受け

小島聡(183cm/112kg)
●"brother"YASSHI(173cm/80kg/VOODOO-MURDERS)
[5分43秒 片エビ固め]
ラリアット

いきなり場外乱闘…っていうのは、これまでの試合内容が比較的大人しめであった事と無関係ではないのだろう。で、散々に悪口を捲し立てたYASSHI、健介のラリアットで一回転してカウント3。う〜ん、YASSHIはいい仕事するねぇ。健介、倒れたYASSHIに両手で中指を立てて挑発。こちらはこちらでイキイキしてるな。

二本目 プロレスは凄味

諏訪魔(188cm/120kg/VOODOO-MURDERS)
雷陣明(183cm/105kg)
[15分21秒 体固め]
ラリアット

イヤイヤ、YASSHIの体を張ったいじられっぷりは、見ていて気持ちが良い。二本目でも小島組の容赦のないチョップの連打を散々に喰らって、場外に逃げても見方に戻され…ホントにご苦労様。その後はVOODOO-MURDERSが反撃し、そのまま勝利。

フィニッシュの諏訪魔ラリアットは本当に凄かった。決して小さくない雷陣が浮き上がる程の決まり方で、これが「必殺技」と言われてもまったく違和感がないくらいだ。正直、小島や健介のソレより迫力があったと思う。そういえば彼が目指していたジャンボ 鶴田も隠れたラリアットの名手だったねぇ。

三本目 プロレスは迫力

諏訪魔(188cm/120kg/VOODOO-MURDERS)
中嶋勝彦(175cm/82kg/フリー)
[8分29秒 体固め]
ラストライド

二本目で諏訪魔の「痛恨の一撃」の前に倒れた雷神がまったく立ち上がれない。確かに、説得力のある決まり方してたしね。雷神が回復するまでYASSHIが罵声で繋ぐ。ナイスフォローなわけだが、三本勝負って意外に大変なんだな。で、三本目は全員による総力戦となったが、チームワークで優るVOODOO-MURDERSが勝利を得る事に。

フィニッシュの諏訪魔ラストライドは凄かった。軽量の中嶋を高々と持ち上げる姿は圧巻で、「必殺技」と言われてもまったく違和感がないくらいだ。…って、さっきと同じ文章を書いている気もするが、まあそれだけ今の全日本で諏訪魔が「規格外」だという事だ。ヒール転向は大正解…なのはいいが、彼に見合う体格を持つ正規軍の選手が小島くらいしかいないのが、今の全日本プロレスの悩みの種かな。一生はもう少し痩せなさい、雷陣はもう少し肉をつけなさい。

それにしても、試合全体を通して小島の存在感が薄い薄い…。一時は四冠王者だったし、今だって三冠王者なのに。正直、彼がチャンピオンである事で著しく「三冠の価値」を落としてしまっているなぁ。どうしても試合ぶりに「人の良さ」が出てしまい、それが観客との距離を必要以上に縮めている気がする。レスラーが発する独特の「近寄り難さ」がないというか。もっともっと「堂々とした態度」で「地に足を固めたプロレス」をやらないと、ずっと「脱サラレスラー」の域を脱しないだろう。いつまでも若手じゃないんだしさ。最後の締めのマイクにしたって、健介から奪ってでも喋るくらいの気概が欲しいね。

…もう、こういう事を期待するのはムリなのか?ぶっちゃけ、もうムリなんだろうけど。対照的に健介が自分のやりたい事をノビノビとやっているところを見ると「ベルトを健介に献上して、健介は他団体で防衛戦やれ!」とか思ってしまう。

そしてもう一人。僕のひいきの近藤もまた陰が薄かった…。これは単純に悲しかったのでノータッチでお願いします。

雑感

今回、観戦記は全体的に辛口に書いている気がするが、「つまんなかったのか?」と聞かれれば「いや、まあまあ面白かった」と答えるだろう。大きな期待をせずに見た分だけ、それなり楽しめたように思う。第五試合だけはかなりキツかったけど。

でも。昨年見た全日本プロレスと比べると、やはりスケールダウンの感は否めなかった。大型の外国人の相次ぐ離脱は、そのまま全日本プロレスのパッケージのスケールをも小さくしてしまったなぁ、と。ならば日本人選手の熱い闘いでその穴を埋めなくてはならないと思うんだけど…層の厚いジュニアはともかく、ヘビー級はどうにも駒不足、というか。特にヘビー級の「牽引役」にならなくてはいけないハズの小島が、いまだに自分自身すら表現しきれていないのは厳しいなぁ。何とかならんのかねぇ…。


以上、長文失礼。