5/2 PANCRASE 後楽園ホール興行 観戦記

PANCRASE LOVE!

本日は後楽園ホールにてPANCRASEを観戦、チケット代は4000円。値段そのものに文句はないのだが…最近のPANCRASEは費用対効果が今一つ。とはいえ、圧倒的に選手層の薄くなった今のPANCRASEに対して、ああだこうだと文句をいうのも酷な気もするんだが。

さて本日の興行だが、正直テーマらしいテーマはない。一応、セミファイナルにはヘビー級王者決定トーナメントの準決勝である「ポアイ菅沼 vs 桜木裕司」が組まれ、メインイベントはウェルター級タイトルマッチの次期挑戦者決定戦「石毛大蔵 vs 北岡悟」が組まれているが…、弱い、惹きのカードとしては圧倒的に弱い。

そしてその弱さを象徴するように、今日の観客の入りは約6割という苦しさ。最近のPANCRASEはリングサイド席を多くは設けない事実を踏まえれば、かなり厳しい。せめて今日の興行から「次へのドラマ」が生まれれば良いのだが…。

第一試合 プロレスLOVE!

スーパーヘビー級 5分2R
河野真幸(185cm/108.6kg/フリー)
ティモール・アリエフ(185cm/114.9kg/アルメニア/アリエフ プロフェッショナル チーム)
[1R 4分9秒 KO]
※スタンドパンチ

河野は全日本プロレス在籍時代、お世話になった武藤敬司の昔の入場曲である「HOLD OUT」を使用して入場。僕は武藤の入場曲の中ではこれが一番好きだな。

試合開始、タックルを仕掛けた河野だが、豆タンク体型のアリエフが力任せに潰してしまう。ならば、とグラウンドで下から三角絞めを決めようとする河野だがアリエフが極めさせず、亀になって逃げる河野に力任せにパンチを振るう。立とうとした河野をまたしても力任せに潰すアリエフ、インサイドガードを奪う。河野はクロスガードで必死に防御、この後は展開なくブレイク。

異変が起きたのはこの時。ブレイクなのにいつまで経ってもアリエフが立ち上がれない。ここまで力任せな攻めが目立っていたアリエフ、どうも酸欠か何かを起こしたらしい。なんとか立ち上がった後も肩で息をしていて動けないアリエフ、そこへ河野のローキックとストレートがヒット。アリエフがダウンして試合終了。

う〜ん、なんだかなぁ。面白いって言えば面白いんだけど、お粗末って言えばお粗末って感じ。ともあれ河野の勝利は「良かったねぇ、武藤社長も喜んでいるだろうさ」というところで。

第二試合 大相撲LOVE!

ヘビー級王者決定トーナメント リザーバー戦 5分2R
○三浦康彰(183cm/96.6kg/禅道会広島支部)
玉海力剛(183cm/99.6kg/PANCRASE チーム玉海力)
[1R 1分43秒 腕十字固め]
※三浦がリザーバーに決定

入場曲は「北斗の拳のテーマ」だった三浦は空手着で登場。対する玉海力は「座頭市のテーマ」にのってお百度参り姿で入場、観客が盛り上がる。

試合は一方的。三浦のローキックに対して、玉海力は下を向きながらパンチを振るって突進という「駄々っ子パンチ」スタイル。ズバリ言って、この時点で玉海力の技術が心配になったわけだが、それでも玉海力は組み付いた三浦の腕を取って小手投げを決めようとする。しかし決まらず、結局は三浦にテイクダウンを許してしまった。

あっさりとマウントを奪った三浦はパンチを連打し、腕十字を決めに行く。玉海力は必死に抵抗するが、何度目かの腕十字がガッチリ決まってタップ、試合終了。

嗚呼、玉海力。今日はいいところなく敗北してしまった。次の参戦がいつになるかはわからないけど、これにめげずにまた頑張って欲しいところ。

第三試合 秋葉原LOVE!

キャッチレスリング 無差別級 5分2R
佐藤光留(174cm/81.9kg/PANCRASE ism)
△花井岳文(171cm/82.7kg/TWIST)
[判定 0−0]

この試合はキャッチレスリングルール、つまり「打撃なし」の試合。

佐藤は入場曲の冒頭に長渕剛の「純恋歌」を使用していた。何でだ?長渕と佐藤は全くイメージが合わないのだが。対する「真・足関十段」こと花井が頭を丸めていたのには驚いた。髪を伸ばせば結構イイ男なのに。

んで、この試合は全く動きがなかったのでダイジェストで。

お互いに神経を使いながら、手を取ろうとしたり、足を取ろうとしたりしたのだが…、どうにも噛み合わずお見合いのシーンが続く。たまに両者が組み付いても…佐藤の投げ技は悉く失敗、「真・足関十段」花井が足関節を仕掛けても…反対に佐藤に足関節を極められそうになったり。1R中盤にあった「花井が後転から腕を捕って腕十字を仕掛けるが、佐藤はバスターで脱出」という展開がこの試合唯一の見せ場。試合は判定にもつれ込み、両者に決定打はなくドローに。

グラップリングルールは難しいねぇ。もう少し大胆にルールをいじっていかないと、なかなかアグレッシブなグラウンドの攻防をメイキングする事は出来ないんじゃないかなぁ?

第四試合 膠着LOVE!

ミドル級 5分2R
竹内出(180cm/81.6kg/SKアブソリュート/PANCARSEミドル級 一位)
●アザード・アスガロフ(172cm/78.0kg/アルメニア/アリエフ プロフェッショナル チーム)
[判定 3−0]

竹内出、本日も「イズルガール」を従えて入場。いつも思うのだが「イズルガール」のレベルは高い。今日は正直、PANCRASEラウンドガールよりもレベルが高かったような気がする。

1R、竹内は少しずつ前に出てプレッシャーを掛けていく。アリエフを二回り小さくしたような見た目のアスガロフが、バックハンドブローをヒットさせて反撃。更にはスピードの速いワンツーをヒットさせると、竹内に組み付いてもの凄いスロイダーを放つ。だが竹内は、ロープに助けられて倒れず、逆に倒れたアスガロフからマウントを奪う。俄然有利となった竹内はパンチを落としながら腕十字を狙う。ここはアスガロフが脱出、その後は大きな展開なくラウンド終了。

2R、竹内はアスガロフをコーナーへと追い込んで組み付き、テイクダウンを狙う。アスガロフはロープを掴んでこれを防御…、レフリーが反則とみなしイエローカード、減点1。

試合再開、1Rと同じく竹内は前に出てプレッシャーを掛け続ける。アスガロフは時折パンチで反撃する…が、スピードは速いが打撃は単調、竹内は後ろに下がってこれを防御。再びプレッシャーを掛けてコーナーへと追い詰めた竹内は、至近距離からワンツーとボディブローを連打。しかしラウンド終了直前、アスガロフもフックを連続でヒットさせる。

竹内がテイクダウンを狙う中で試合は終了、判定は3−0で竹内が勝利。

なんとも竹内らしい試合…というか、どうにも極めっ気がない…というか、試合運びのみで勝っていく…というか…。その強さはPANCRASEファンの誰もが認めるところだが、より大きな舞台で活躍するのであれば+αが欲しい…というか。

第五試合 AJジムLOVE!

ウェルター級 5分3R
○ロバート・エマーソン(177cm/73.4kg/アメリカ/ノーリミッツ&チーム オーヤマ)
伊藤崇文(176cm/72.4kg/PANCARSE ism/PANCARSEウェルター級 七位)
[判定 3−0]

このところは全日本キックでの活躍が目立っていた伊藤がPANCRASEへ凱旋。もうPANCRASE所属というよりは、キックの出稽古先であるAJジム所属と言われた方が「しっくり」とくるのだが、昔から応援してきた選手なので頑張って欲しいところ。しかし…。

試合はほぼ同じような展開が繰り返されたのでダイジェストで。AJジムで練習したお蔭なのか、伊藤は右ローキックの破壊力は以前より増しているように見えた。「バッシーン!」という音がする度に観客も声を上げていたが…、1R中盤にはこのローキックを見切ったエマーソンは、カウンターのストレートを合わせるようになる。それでも伊藤の打撃は右ローキック一辺倒、パンチも出せばいいのに。2Rにはエマーソンのカウンターパンチで伊藤がスリップダウン、そのままエマーソンに上を取られる場面も。あ〜あ。

ならば、と伊藤はテイクダウンを奪うべくタックルを繰り出すのだが…、これはパワーのあるエマーソンに悉く潰されてしまう。潰したのは1Rに2回、2Rに1回、3Rに1回。3Rにはエマーソンが自ら組み付いてテイクダウンする場面も。こうしてグラウンドで上を取られ続けた伊藤、エマーソンのパンチや鉄槌を何発も喰らう。伊藤は下から腕十字を狙ったり(2R)、足関節技を狙ったり(2R)、アームロックを狙ったり(3R)していたが…全部ダメ。こうして度々グラウンドで上になったエマーソンだったが寝技に固執する事はなく、自ら立ち上がり猪木アリ状態からローキックを数発放ってブレイクを待ったりしていた。う〜ん、エマーソンの攻めは非常に淡白だな。

試合は判定へともつれ込み、3−0でエマーソンが圧勝。

伊藤、今日は何も通じなかった。折角、全日本キックの本部ジムであるAJジムで練習しているのに、右ローキック以外の打撃が何も出なかったのは痛いな。せめてジャブ&ストレート&ローキック等、打撃を上下に散らすような事くらいはして欲しかった。あの山内裕太郎からコーチを受けているなら尚更の話だ。数少ないと思われる伊藤ファンの僕としても「もっと頑張れ!」と思わずにはいられない。

待望のフェザー級トーナメント、ついに開催

休憩後、最近のPANCRASEの中では圧倒的に充実しているフェザー級のトーナメントを開催する事が発表された。まあトーナメントと言っても出場する選手はたったの4人…なのだが、いずれも今のPANCRASEフェザー級の充実ぶりを象徴する面々なので文句なし!


尚、組まれたカードは、

前田吉朗(PANCRASE 稲垣組) vs 山本篤(KILLER BEE)
志田幹(P's LAB東京) vs DJ.taiki(K.I.B.A.)

の二試合。う〜ん、これはいいねぇ。現状のPANCRASEフェザー級の中では最高のカードではないだろうか?ちなみにリザーバーとして砂辺光久(HYBRID WRESTLING 武∞限)が決定。これもいい感じ。

第六試合 英霊LOVE!

ヘビー級王者決定トーナメント 準決勝 5分2R
ポアイ菅沼(188cm/95.7kg/アメリカ/TWIST/PANCARSEヘビー級 一位)
桜木裕司(180cm/92.0kg/掣圏会館/全日本キックヘビー級 一位)
[1R 4分47秒 KO]
※グラウンドパンチ/菅原が決勝戦へ進出

以前からそのマッチョぶりが話題となっていた菅沼だが、今日は桜木の体と見比べる事でよりその差がハッキリした、というか。何が凄いって…上半身もかなりの筋肉なのだが、何よりも丸太のような太ももが凄まじい。

で、試合では菅沼が圧倒的な強さを発揮。試合序盤こそ桜木が強烈なローキックとミドルキックで小気味良く菅沼を蹴っていったが…、試合時間が1分経過した頃、桜木は自らのローキックでスリップしてしまう痛恨のミス。労せずテイクダウンを奪ったポアイはあっさりとマウントを奪い、パンチを入れながらバックマウントを奪ってスリーパーを極めようとする。

大ピンチの桜木、何とか下からバランスを崩そうとするが…、太い太ももを持つ菅沼が抜群の安定感でマウントをキープ、バックマウントから桜木の体を伸ばしに行く。こうして約3分半に渡ってマウントをキープした菅沼、最後はスリーパーを諦めてマウントパンチを連打。残り時間は少なかったが、桜木はこのパンチで顔面から出血、レフリーが試合を止めた。

強いなぁ菅沼。どれくらい強いのかは今一つ見えないんだけど、少なくとも「PANCRASE ヘビー級王者決定トーナメント」の中では断トツの強さだ。こりゃあ、DEEPやPRIDE武士道への進出も時間の問題かねぇ?反対に桜木、今日は得意のローキックが仇となっての敗北…とはいえ、今の桜木にはポアイに勝つにはこの闘い方しかなかっただろう。今後はグラウンドを強化するか、打撃をより磨くか。どちらかが課題かねぇ。

第七試合 フロントスリーパーLOVE!

ウェルター級タイトルマッチ 次期挑戦者決定戦 5分3R
石毛大蔵(176cm/74.1kg/SKアブソリュート/PANCARSEウェルター級 三位)
北岡悟(168cm/74.9kg/PANCARSE ism/PANCARSEウェルター級 一位)
[判定 3−0]
※石毛が挑戦権を獲得

先日のウェルター級タイトルマッチにて王者 井上克也に挑戦した北岡だったが、結果はドローに終わる。その上、試合内容では井上に完敗していた。今日は再び挑戦のチャンスを得る為の「次期挑戦者決定戦」。北岡としては負けたくないし、より強烈な勝ち方をしたいところ。対戦相手はPANCRASE ismの大石幸史を撃破して波に乗る石毛大蔵、打撃を得意とする選手である。

試合は第五試合と同じく、同じような展開の繰り返しなのでダイジェストで。試合の中心となったのは打撃戦、お互いに一定の距離を保ちつつ打撃を交換。リードしていたのはリーチで8cmほど優位に立つ石毛。単発ではあるがジャブもストレートも北岡の顔面を捉えていた。打撃で劣勢に立たされた北岡は片足タックルを仕掛ける…も、悉く石毛に潰されてしまう。1Rに1回、2Rに2回ほどタックルを潰してグラウンドで上になった石毛、北岡の顔面にパンチを落とす。北岡はクロスガードで防御するのが精一杯の状態、どうにも反撃ができない。

ちなみに北岡のタックルは、「石毛のパンチに対してのカウンター」としてかなりバッチリなタイミングで入っていた。そして、そのタックルを捌かれてしまうのだから…、北岡としてはどうにもならない。石毛自体の腰の強さもあるのだろうが、北岡の手足の短さが石毛のバランスを崩せない要因の一端にもなっているように感じた。北岡、どうにも厳しい。

それでも3R、やっとの思いで石毛を倒した北岡、インサイドガードから得意のフロントスリーパーへ移行したいところだったが不発。パスガードを狙っても石毛のガードは堅い上、下からのパンチをもらう場面もあった。石毛に立ち上がられた後、今度は前から組み付いて強引にフロントスリーパーを狙うもこれも不発。最後のタックルも焼け石に水、スタンドではヒザ蹴りやストレートを喰らっていた。

試合は判定へともつれ込み、3−0で石毛が勝利。石毛はこれにより、ウェルター級の暫定王者 井上克也への挑戦権を獲得…したが、勝利のマイクはなし。PANCRASEも何か喋らせてあげれいいのに。

それにしても…、得意のフロントスリーパーも不発、打撃も劣勢、あれだけ綺麗なカウンターのタックルを決めても相手を倒せないのであれば、今日の北岡には全く勝ち目がなかった、というか。前回の井上との試合でも完敗といっていいドロー劇。こりゃ、一から出直しですな。間違っても井上克也 vs 石毛大蔵の勝者に挑戦…という流れは避けて欲しいところ。

雑感

う〜ん…。とにかく今日のPANCRASEから「次へのドラマ」をまるで感じなかったのは辛かった。やっぱりPANCRASEの選手が勝利しないと明るい未来は…、という事については毎回のように言っている気もするが、いくらなんでも負けが混み過ぎている、というか。

初心者の玉海力はともかく、伊藤と北岡については「救いようのない負け方」だった。唯一ドローだった佐藤も微妙な試合ぶりだしなぁ。もういいよ。誰でもいいから「勝つPANCRASE」を体現してくれ!…あ、前田吉朗がいるか。フェザー級トーナメントに期待大、ですな。


以上、長文失礼。