2/17 修斗 代々木第二体育館興行 2分の1観戦記

まずは一言、「高い」

本日は代々木第二体育館にて修斗を第二部から観戦。チケット代は7500円、第二部からは五試合しかないのにこの値段。後半三試合はタイトルマッチなので損をした感じはないのだが…、もう少し何とかならないものなのか?

さて。最古の歴史と圧倒的な選手層を誇りながらも、最近はHERO'SやPRIDEにエース級選手が流出し続けている最近の修斗。だが今日の興行にはPRIDE武士道で活躍していた川尻 達也とヨアキム ハンセンが凱旋、タイトルマッチを行う。更には「跳関十段」青木 真也や「修斗のカリスマ」佐藤ルミナも参戦。元々の選手層が厚い修斗、いくら選手が流出しても要(かなめ)となる興行にはビッグネームが揃う。それでもチケット代は…、もう少し何とかならないものなのか?

会場は超満員、モニター設置の為に一面を潰しているとはいえ文句のない客入りだ。NKよりは狭い会場ではあるけど超満員はやはりいい。しかしチケット代は…、もう少し何とかならないものなのか?

第五試合 予想通りの打撃勝負

環太平洋ライト級王座 次期挑戦者決定戦 5分3R
○リオン 武(172cm/65kg/シューティングジム横浜/修斗ライト級 環太平洋七位)
●石川 真(172cm/65kg/PUREBRED大宮/修斗ライト級 世界六位 環太平洋五位)
[判定 3−0]

お互いにパンチを得意としているだけあって、試合は終止ボクシング勝負。「剛術」石川 真が豪快にフックを振り回しながら前に出るも、打撃が大振り過ぎてガードが甘くなる。反対にリオン 武の打撃は真っ直ぐなストレートが中心、パンチとしては最短距離。「こりゃ、いつかはリオンのパンチがカウンターでヒットするな」と思ってたら、2Rにそれが出た。前に出る石川にリオンのストレートがヒット、モロに喰らった石川は一撃でダウン。

その後、石川はフックばかりでなくボディブロー等を駆使する、しかし相変わらず打撃は大きい。リオンが要所要所でストレートをヒットさせてその勢いを止め。しかし石川のエンジン自体は時が経つ程に上がり、反対に3R終盤頃はリオンの動きはやや落ちていた。あれだけ振り回して疲れないんだから、スタミナは凄いね。

だがダウンした事実は如何ともし難く、判定までもつれ込んだ勝敗は3−0でリオンが勝利して環太平洋ライト級王座の挑戦権を獲得。

第六試合 「修斗のカリスマ」の現実

ライト級 5分3R
○アントニオ カルバーリョ(173cm/64.8kg/カナダ/シャオ フランコ マーシャルアーツ/修斗ライト級 米大陸一位)
●佐藤 ルミナ(167cm/65kg/roots/修斗ライト級 世界四位 前環太平洋王者)
[2R 49秒 TKO]
※マウントパンチ連打

修斗のカリスマ」佐藤ルミナも32歳。年月は過ぎるのが早いねぇ。秒殺を狙うスタイルでファンを魅了し続けたルミナ、だがそれ故に攻めが雑になり逆転負けする事もしばしば…と前振りしたのには「訳」がある。今日の試合がその典型だったからだ、嗚呼ルミナ。

1R、左フックでアントニオ カルバーリョをグラつかせたルミナ。観客の大歓声の中、組み付いて引き込んだルミナは速攻の横三角絞め。ルミナらしさ爆発の展開に歓声は更に大きくなる…がこれは極まらず。ならば、と立ち上がったカルバーリョを再びテイクダウンするルミナ、持ち上げてのバスター、半立ちからのパウンドで大攻勢。ルミナの圧勝を信じて疑わない観客の歓声はまだまだ続く。ルミナは相手の腕を掴んで、無理な体勢から速攻の腕十字!

だが…、この腕十字が見事にスッポ抜け。カリスマの大攻勢に元気だった観客も、この瞬間に何かを察したかのように意気消沈。ゴロンと転がったルミナからサイドを奪ったカルバーリョ、あっさりとマウントへ移行。観客から悲痛な叫びが発せられる中、カルバーリョのマウントパンチが「やめられない、とまらない」。このパンチは1R終了まで続き、ルミナには明らかにダメージがありあり。観客はガッカリ。

2R、カルバーリョの左フックでダウンを喫したルミナ。観客が再び悲鳴を挙げる中でマウントパンチの連打を浴びる。やがてレフリーが試合をストップ。

嗚呼ルミナ。残された時間は少ないというのに、自分のスタイルを曲げないがゆえの敗北。「修斗のカリスマ」よ何処へ行く。

第七試合 一進一退

環太平洋ウェルター級王者決定戦 5分3R
○石田 光洋(167cm/69.9kg/T-BLOOD/修斗ウェルター級 環太平洋一位)
●冨樫 健一郎(179cm/69.2kg/パラエストラ広島/修斗ウェルター級 環太平洋七位)
[判定 2−0]
※石田が第二代王者に

この試合は前王者である朴 光哲が、負傷の為に指名試合を消化できずに返上した環太平洋ウェルター級王者決定トーナメントの決勝戦。対戦するのは、川尻 達也と同じT-BLOOD所属の「無尽蔵のスタミナ」石田 光洋と、カストロ議長や江田島平八から激励賞が贈られた「技巧派」冨樫 健一郎。

1R、試合前から「僕のタックルからは逃れられないぞ!」と公言していた石田、冨樫をしつこい片足タックルでテイクダウンを奪うと半立ちになってパンチを連打する。が、冨樫はこれをキャッチして下から腕十字。両腕をクラッチして耐える石田だが冨樫がこれを引きちぎる。石田は倒れて腕が完全に伸び、「これは極まった!」…かと思ったが、なんと石田はこれを逃れる。観客から歓声が起こるが、まだまだ冨樫の攻勢は続く。亀になる石田の上になってスリーパーや腕十字を狙う冨樫、石田はラウンド終了まで守るのが精一杯の状態。このラウンドは冨樫の技術が冴えた。

2R、ハイキックをヒットさせた石田、パンチから組み付いてテイクダウンを奪う。インサイドガードの石田は下からラバーを狙う冨樫を警戒しつつ上からパンチ、1Rのパウンドと比べて一発一発を慎重に打っている。一発をクリーンヒットさせた石田はパスガード狙いからサイドに近いハーフマウントを奪うと、ガッチリと冨樫を押さえつつボディパンチ、顔面への鉄槌、ボディへのヒザ蹴りの三択攻撃。ラウンド終了まで続いたこの攻撃で冨樫はスタミナを奪われる。このラウンドは石田の押さえ込みの強さが目立った。

3R、鮮やかな低いタックルからテイクダウンに成功した石田、パスガードを狙うも冨樫は下から腕十字を仕掛ける。これをはずした石田は上から鉄槌を落とす、冨樫は尚も下から腕十字を狙う…が、段々と石田の鉄槌の勢いが増す。冨樫は腕十字を諦めたが石田の鉄槌は尚も続く、更にはインサイドガードからのパンチの猛連打。何とかしようと再びラバーを狙う冨樫だが、石田は外して鉄槌&パンチの連打。この後、石田の打撃の勢いが落ちたところでブレイクが掛かったが…、ここまで冨樫が押されっぱなし。最後のスタンド、石田がタックルを仕掛けて冨樫が引き込む。下から起死回生の腕十字を狙う冨樫、結構良い形まで入ったが、ここで試合終了。

判定の結果は2−0、入場曲の「さくら(独唱)」が流れる中で素朴な好青年 石田が環太平洋ウェルター級新王者に。いやいや、中々の好試合。冨樫は昨年8月の興行でヨアキム ハンセン相手に大善戦していたので漠然と「今日は勝てるかなぁ?」と思っていたが…、僕が思った以上に石田が強かった。

第八試合 一生『修斗』します

世界ミドル級タイトルマッチ 5分3R
○青木 真也(180cm/75.9kg/パラエストラ東京/修斗ミドル級 世界四位 環太平洋四位)
●菊地 昭(173cm/75.7kg/KILLER BEE/修斗ミドル級 世界王者)
[判定 3−0]
※青木が第8代王者に

柔道、柔術、サンボの大会で実績を残し、たった四試合という異例の早さで世界王座への挑戦権を手にした「跳関十段」青木 真也。対戦相手は「寝技大魔神」菊池 昭、山本 "KID" 徳郁も在籍するKILLER BEE所属で現在の修斗ミドル級 世界王者、この試合はそのミドル級王座のタイトルマッチだ。お互いに寝技を得意とする選手、どちらが勝つにしても一本勝ちは必至か?

1R、まずは青木が極めの強さを武器にガンガン仕掛ける。菊池のワンツーをダッキングでかわしつつ組み付いた青木、菊池に腕ひしぎ脇固めを仕掛けた。かつて対戦相手の腕を折った事もある戦慄の立関節に観客が沸く。菊池はこれを逃れるが、青木の攻勢は尚も続く。ハイキックや右ストレートがヒット、組み付いてテイクダウンを奪い、あっさりとマウントを取ってパンチを落とす。菊池は乗りすぎた青木から逃れてスタンドに戻し、スタンドレスリングからショートアッパーをコツコツ当てる。1R終了、ここまでは青木が圧倒的な攻勢。

2R、スタンドでバックを奪った菊池、ロープ際で後ろから顔面にパンチを当てる。青木はパンチで反撃、この時、運悪く菊池は右のまぶたをカット。だがこれにめげる事なく、菊池はバックをキープしたまま青木を崩す。オモプラッタや腕十字で反撃しようとした青木を潰した菊池は上からパンチ、ゆっくりパスガードしてサイドを奪いパンチを連打。1Rとは打って変わって劣勢の青木、下から何度かオモプラッタや腕十字で逃れようとするも菊池は許さない、立ち上がってローキックを放ち、再び潜ってパンチを入れる。青木が再び腕十字を仕掛けたところで2R終了、このラウンドは菊池が攻勢。

「天下分け目」の3R。菊池は警戒したのか、リングの周りを回って青木と距離を取る。間合いが詰まらない両者だったが、菊池のワンツーを切欠に前に出た青木がバックを奪うと、そのまま上からおぶさり鉄槌の連打。青木の胴絞めは傍目にもかなりキツそうで、その不安定な体勢ながらも全くバランスが崩れない。何とか逃れようと前転を試みる菊池だが青木はポジションをキープ、今度はスリーパーを仕掛ける。どうにか立ち上がる菊池、青木は相変わらずのおぶさりポジションで最後まで後ろから鉄槌を落とし続けた。

ちなみにこの間、2度に渡り出血の激しい菊池にドクターチェックが入ったが…、試合が再開するたびに青木は菊池の背中に乗っかっていた。まあドントムーブと同じ扱いなのだから当然の処置だとは思うのだが、その何だか間抜けな光景に観客からは少なからず笑いが洩れていた。まあ、やられている菊池にしてみればたまったものではないのだろうが。

判定の結果は…「天下分け目」を制した青木が3−0で勝利、世界ミドル級王者となった。青木は泣きながら「ありがとうございます。修斗のランカーでもないのに世界王座に挑戦できた僕は幸せ者です。今、修斗は他団体への登龍門的存在になっているけど、俺は修斗が一番だと思っています(観客歓声)。俺は一生修斗しかやりません!」とアピール。こりゃあ「一生『修斗』します」宣言だねぇ。

それにしても青木は強かった、ひょっとしたら修斗では相手がいないんじゃないかなぁ…、桜井 "マッハ" 速人に負けてるけど。僕としては他団体にも是非参戦して欲しいけど…、本人がこういっているのならしょうがないかな。

第九試合 ♪No.1にならなくてもいい もともと特別なOnly.1

世界ウェルター級タイトルマッチ 5分3R
○川尻 達也(170cm/70kg/T-BLOOD/修斗ウェルター級 世界王者)
●ヨアキム ハンセン(177cm/70kg/ノルウェー/チーム フロントライン/修斗ウェルター級 世界一位)
[1R 8秒 反則失格]
※川尻が初防衛

この両者は昨年は大舞台で活躍。川尻 達也はPRIDE武士道で実績を積み、元修斗 世界ウェルター級王者である五味 隆典と対戦。物凄い緊張感あふれる打撃戦の中、最後はチョークスリーパーで敗れたものの…この一戦を昨年のベストバウトに推す声は多い。
対するヨアキム ハンセンはHERO'Sの舞台で、これまた元修斗 世界ウェルター級王者の宇野 薫と対戦。激闘の末、集中力の切れた宇野にヒザ蹴りをクリーンヒットさせて勝利を収めた。その後はPRIDE武士道を中心に活躍、勝利を積み重ねた。
そんな2人の対戦は世界ウェルター級のタイトルマッチ。実力を世間に示した二人が今、最高峰の闘いを魅せる…。

と思ってたんだが。開始早々、ハンセンのローキックが川尻を股間を直撃、川尻悶絶。

まずは川尻の回復を待ったのだが…、待てど暮らせど再開の見込みはなし。最初は黙って待っていた観客だが、やがて「無理しないで」「また観に来るよ」「こんなので負ける姿は観たくない」という暖かい声の方が飛び交い始める。まあいい加減に長い興行だったから、皆「終わるなら終わっていいよ」というような気持ちになりやすい背景があったと思われる。

で、約10分のインターバルの後、ゴングが鳴って試合終了。観客の暖かい拍手の中、メインの重責からか川尻は四方に土下座していた。う〜ん、川尻は悪くないのにねぇ、可愛そうに。

そりゃそうと、この10分間という時間の中、関係者が川尻の周りでオロオロするばかりで、観客に何の説明もなかったのは、組織のあるべき姿としてどうか?どうなのか?老舗団体なのだから、この辺の立ちまわりはもっとしっかりして欲しいね。

雑感

悲劇のライトヘビー級王者・須田匡昇の引退式、マモルとBJによるバンタム級王座戦の調印式を行った事もあり、あれよあれよと22時を過ぎてしまった今日の興行。僕は第二部からの観戦(19:00)だったので丁度良いボリュームだったが…第一部から、つまり16:00から観戦していた人は6時間超の長丁場。さすがにキツイと思う。まあ、試合自体はかなり楽しめたから僕自身はいいんだけどね。


以上、長文失礼。