2/15 SMACK GIRL 後楽園ホール興行 観戦記

ジョシカク」は生きてます!

本日は後楽園ホールにてSMACK GIRLを観戦。チケット代は3500円。安い、プロレスより安い。パンフがタダなのにこの値段は安い。

ジョシカク」という単語がもてはやされたのも今は昔。幾多の「ジョシカク」団体が現れては消えていく中、老舗SMACK GIRLだけが定期的に後楽園で興行を打てる団体となった。他団体が「ジョシカク」の甘い部分だけを吸おうとして失敗する中、SMACK GIRLだけはアマチュア部門を作って底辺の拡大に努めていた結果といえるだろう。継続は力なり、というか。

北側席は大型モニターを設置しているので潰しているのだが…、客席は満員には至らない(約6割)。とはいえ、今のSMACK GIRLは「キッカケ待ち」の状態、何かの弾みでブレイクする前にしっかりとした体力をつける事も大事だと思うので、客入りがどうのこうの…というよりは、先を見据えての選手育成が大事だと思ってる。…ま、「キッカケ待ち」とか書くと、スタッフの人に「それを言われて続けてもう何年にもなるんですけど…」とか言われそうだけど。

第一試合 未観戦

SGS公式ルール フライ級 5分2R
○KM-MAKI(152cm/47kg/R.I.S.E.ファイトクラブ)
●川崎 みずほ(169cm/49kg/SOD女子格闘技道場)
[判定 3−0]

観てないものは語れない。両者共にあまり知らない選手となれば余計に語れない。

第二試合 未観戦

SGS公式ルール ミドル級 5分2R
○森藤 美樹(165cm/60kg/T-BLOOD)
●杉本 由美子(160cm/58kg/禅道会)
[判定 3−0]

観てないものは語れない…のだが、Love Impactに流れていた禅道会の選手が再びSmack Girlに上がるようになったのはいい事だ。しかしまあLove Impactも続かなかったねぇ。旗揚げから何となく危なっかしい感じはしてたけどね。

第三試合 「ジョシカク」は日々成長しております

SGS公式ルール 55kg契約 5分2R
○せり(164cm/52kg/SOD女子格闘技道場)
●内藤 晶子(158cm/56kg/和術慧舟會RJW)
[判定 3−0]

スタンドでのパンチの打ち合いが主な攻防だったが、せりがストレートとミドルキックで試合を優位に進めた。内藤 晶子は時折打撃を避けてタックルを仕掛けるも、以前はこういう場面で簡単にテイクダウンを許していたせりの腰が重くなっていたのにはちょっと驚いた。

反対に内藤を倒す事が多かったせり、そこからの攻めはなかったのは今後の課題。内藤は試合の最後でマウントを奪い腕十字を仕掛けたが、目立った攻めはこれくらい。
試合終了、判定は3−0でせりが勝利。

第四試合 「ジョシカク」の試合のレベルは確実に上がっております

SGS公式ルール 60kg契約 5分2R
○端 貴代(162cm/60kg/和術慧舟會東京本部)
●諸星 和奈(165cm/56kg/原宿道場)
[判定 3−0]

第三試合とは一転してのグラウンドの攻防が中心の試合だったが、「隠れた実力者」である端 貴代に諸星 和奈がガッチリと食い下がる。1R、積極的にタックルを仕掛ける、端に潰されながらも下からの腕十字で対抗。逆にテイクダウンを奪う場面もあったりで健闘。

だが、それが逆に端の実力を引き立たせる。2R、下から腕を取ろうとする諸星を潰して逆に腕を取ったり、マウントを奪ったり、諸星のタックルの潰して上になったり、と寝技の実力を発揮。「グラウンド30秒ルール」の為にいずれのグラウンドも発展しなかったが、それがなければ「端が一本勝ちしていたのではないか?」と思わせるような強さだった。

試合終了、判定は3−0で端が勝利。それにしても、休憩前でもこれくらいの攻防が観れるようになったんだなぁ…。昔に比べて試合のレベルは確実に上がっている、というか。

第五試合 「ジョシカク」にだって、気迫を押し出す攻防はあるんです

SGS公式ルール 無差別級 5分2R
○たま☆ちゃん(165cm/64kg/SOD女子格闘技道場)
●イ ヒジン(168cm/58kg/韓国/CMA KOREA KWANAK BJJ)
[2R 1分48秒 アームロック]

お互いに見るからに気が強そうな感じ。それにしてもたま☆ちゃんはいつでも自信に満ちた顔をするよなぁ。

1R、テコンドー出身のイ ヒジンが中々鋭いパンチを出しても、たまは一歩も引かずにパンチを繰り出し続ける。更にたまは、組み付いては主に首投げでテイクダウン、グラウンドではヒール ホールドを極めに行くシーンがあったりで積極的に攻めている。イにリバースされマウントを取られる事もあったのはご愛嬌。イはここまで押され気味の展開だが、その目は全然死んでいない。

2R、開始早々の殴り合いからたまがテイクダウン、サイドを奪い腕十字を極める。イがタップして試合終了…しない。30秒が経過していたのだ。絶対的なチャンスを逃したたまだが、「チャンスはまた作ればいい」と再びイをテイクダウン、袈裟の状態からアームロックを仕掛けた。ガッチリ極まるもイは中々タップしない、レフリーがストップして試合終了。

今日の試合ぶりは、たまのいいところが出ていたように思える。特に打撃戦における気の強さは中々良かったように感じる。パンフレットには「肝心な試合で負ける事が多い」とあるが、今年は肝心な試合で劇的な勝ち方を期待したいところ。

第六試合 「ジョシカク」にはこんな強面の人がおります

SGS公式ルール 56kg契約 5分2R
○WINDY 智美(158cm/54kg/PANCRASE ism)
●チャ ソンジン(159cm/57kg/韓国)
[1R 3分47秒 TKO]
※戦意喪失による

ジョシカク」で強烈な打撃を武器に勝利を重ねるWINDY 智美、強面の顔を更に険しくしながら今日も打撃で大暴れ。

試合開始直後から重そうな右ローキックを連打するWINDY、最初は強気にパンチで対抗していたチャ ソンジンも喰らい続けているうちに次第に逃げ腰に。尚も続くWINDYの打撃、右ローキック、ハイキック、ヒザ蹴り。最初の強気もどこへやら、チャの心はすっかり折れてうつむきながら逃げるばかり。この態度を見たレフリーがダウンと見なす。チャは一向にファイティングポーズを取ろうとせず、ここで試合終了。チャのお尻に書かれた「金宋王道場」の文字がなにやら悲しい。そういえば金 宋王も元PANCRASEだったっけ。

勝ったWINDY、次回の大阪興行にてSMACK GIRLミドル級 女王の辻 結花に対戦表明。AJジム仕込みの強烈な打撃を武器にいよいよ頂点を目指す。さて、どうなるかねぇ?グラウンドには難があるけど打撃は強いからなぁ。辻の強烈なグラウンドを何とかできれば勝てるかもね。

第七試合 「ジョシカク」にも「未知の強豪」と呼ばれる存在がいるんです

SGS公式ルール 61.5kg契約 5分2R
○赤野 仁美(170cm/61kg/AACC)
●デビ パーセル(163cm/57kg/アメリカ/エイペックス柔術&ファス バーリトゥード)
[判定 3−0]

一時期、「ジョシカク」の掲示板に以下のURLが飛び交っていた時期があった。
http://www.fightergirls.net/video/Debi-Purcell.php

上記のリンクを辿ると…EMINEMの「Lose Yourself」にのせて、強烈な打撃でダウンを奪い、腕十字で一本勝ちを収める女性の映像が見れる。そしてこの女性こそ長らく来日が待たれたデビ パーセルなのだ。「未知の強豪」がついに初来日、その実力やいかに?

…と思ったら、やっぱりパーセルは強かった。1R、グラウンドにおいてはブッチギリの強さを持つ赤野 仁美を相手に、距離を置きながら強烈なローキック、ミドルキック、ストレートを叩き込んでいく。腰を据えての構えは堂に入っている。対する赤野、中々相手に近づく事ができずに苦戦するも、終盤に足を掛けてテイクダウンを奪い、足関節を取ろうとするシーンがあった。赤野、いよいよ反撃開始か?

2R、やはりミドルキックやローキックで蹴り続けるパーセルだが、赤野はキックのカウンターで近づくと、腕を取って鮮やかな小手返しを披露、パーセルからテイクダウンを奪ってスイスイと関節技を狙っていく。赤野は中盤にも小手返しでテイクダウンに成功し、終盤には単発ながらも右ストレートを何度かヒットさせて攻勢。パーセルの打撃はこのラウンドも変わらず放たれていたが、赤野の動きを見るにつけローキックはあまり効いていない様子。

試合は判定となり3−0で赤野が勝利。パーセルの打撃は中々良かったし手数は多かったように思うが、その綺麗なフォームとは裏腹にダメージは今一つだったようだ。効いていないわけではないんだろうけどねぇ…。反対に赤野は、攻めの手数は少なかったけど数少ない寝技の展開の中で「グラウンド30秒ルールがなければ一本勝ちできたかも」と思わせたのが大きい。いずれにせよ中々面白い試合だった。パーセルには再来日を望みたいところ。

第八試合 「ジョシカク」でも「鮮やかなKO劇」が見れるんです

SGS公式ルール フライ級 5分2R
○渡辺 久江(160cm/48kg/フリー)
●15(不明/不明/所属不明)
[2R 31秒 KO]
※右ショートフック

もうすっかり「『ジョシカク』の中心人物」の一人となった渡辺 久江。伊原道場で打撃の練習を行い強さを磨いた渡辺、今は塚本 徳臣の元でも練習をしている。打撃だけではない、寝技に関しては辻 結花の所属ジムである暗愚羅に出稽古をしているそうだ。強くなる為には誰の元でも練習を重ね、一度負けた相手のジムに通える「心の強さ」。これこそ今の渡辺の強さを支える武器だといえるだろう。

…しかし、この試合で「心の強さ」を見せたのは、寧ろ謎の覆面戦士15の方。「この試合では、亡くなった未来の分も闘う(全日本女子プロレスで同期だったらしい)」と誓っていた15、1Rから果敢に渡辺を攻め込む。打撃を得意とする渡辺にパンチで真っ向勝負、何度も組み付いては引き込んでグラウンドに誘い込む。最初のグラウンドで腕十字を極められそうになったがめげずグラウンドに拘る15、後半からは秘策 蟹挟みで何度も渡辺を倒しつつ足関節を極めに行く。対する渡辺、ややペースを握られながらもスタンドでは要所要所で右ストレートをヒットさせていた。1R終了、15の思わぬ善戦、噛み合った好勝負に観客も歓声を揚げる。

2R、エンディングは突然に。ローキックを放つ渡辺に対してワンツーで前に出る強気な15。そこへ渡辺のショートフックがカウンターでヒット。綺麗に決まった一撃、15は棒立ちのまま横倒れ、誰が見ても失神しているのがわかる状態。観客が騒然とする中、渡辺が衝撃のKO勝利を飾った。

凄い…。「ジョシカク」でここまで壮絶なKO劇っていうのはちょっと記憶にない。15の「勝ちたい」という気持ちが「前へ前へ」の姿勢へと現われて、渡辺の「強くなりたい」という気持ちがカウンターのショートフックとして現われた。大袈裟ではなく両者の生き様が見れたKOシーン。ただただ、凄い…。

15は今日の気持ちを忘れずに練習すればいつか必ず強くなると思う。

第九試合 「ジョシカク」はどこかの団体のようにエースをプロテクトしません

SMACK GIRL無差別級女王 タイトルマッチ 5分3R
○アマンダ ブキャナー(164cm/63kg/アメリカ/アカデミー オブ MMA BJJ ボールダー)
●藪下 めぐみ(158cm/62kg/SOD女子格闘技道場/SMACK GIRL無差別級 女王)
[1R 3分45秒 フロントチョーク]
※ブキャナーが新女王に

この試合は藪下 めぐみが持つ SMACK GIRL無差別級王座 のタイトルマッチ。「ジョシカク」黎明期から柔道仕込みの寝技とプロレスラー魂で観客を魅了し続ける藪下、今日の対戦相手は近藤 有希の足を膝十字固めで破壊した実績を持つ強豪、アマンダ ブキャナー。う〜ん、これは女王に対して強豪を当てたなぁ。正直、藪下が勝つのはキビシイんじゃないだろうか…。

と思っていたら、やはり…スタンドもグラウンドもブキャナーが上。ローキックで牽制するブキャナー、藪下はコーナーで組み付いて一本背負いを狙う…もスッポ抜け。ブキャナーは30秒経過するまで亀になる藪下にパンチを浴びせる。

両者スタンド、ワンツーやローキックで藪下にプレッシャーを掛けるブキャナー、またしてもコーナーに追い詰められた藪下は組み付いての投げを狙う…も、また失敗。それでもグラウンドで上になったが、ブキャナーは下からの腕十字からフロントチョークへと移行。見た目では極まっているのかどうかわからず、藪下も全く動かなかった…が、ここで突然藪下がタップ。観客から溜息が出る中、ブキャナーが新女王となった。

ぬぅ…薮下、完敗。本当に何もできないままの完敗。っていうか、日本人でブキャナーを倒せそうな選手っているかなぁ。こりゃあブキャナーが王座を返上しない限りは、日本には当分SMACK GIRL無差別級王座は戻ってきそうにないなぁ…。

雑感

確実に一歩一歩「ジョシカク」の…、いや「SMACK GIRL」の試合レベルは高くなっている、と思う。特にWINDY、赤野、渡辺、ブキャナーの強さはもっと多くの人に知られるべきだろう。

今日のベストバウトはもちろん「渡辺 vs 15」。15の勝ちたいという気持ちは観ている側にも伝わったし、それを打ち砕いた渡辺のフックは明らかに練習の賜。ジョシカク史上に残る戦慄のKO劇は、2人の気持ちの現れだと思う。繰り返しになるが…負けた15ではあるが、この負けは彼女の糧になると思いたい。

いい試合でした。ありがとう。


以上、長文失礼。