1/27 DRAGON GATE 後楽園ホール興行 観戦記

プロレスの最先端

ちょうど「観たい」と思っていた時に興行があったので、今日は後楽園ホールにて久々にDRAGON GATE観戦。後楽園でDRAGON GATEを観るのは初めてだなぁ。DRAGON GATEは土日に東京で興行を行なう事は少ないし。

んで、個人的なDRAGON GATEの印象は…、「試合のレベルは高いけど、複雑な人間ドラマやが新しい客への敷居を高くしている」。ドラマに関しては、実際に観戦すれば解り易く説明してくれている…とは思うんだけど、いかんせん細かいストーリーがあまりにも多いのがイカンなぁ、と。たまに週プロを読むと、何がどうなっているかサッパリわからん事が多い、というか。

今日の興行にしても最初は「谷嵜なおき、『Blood Generation』入り!?」、が主なストーリーだったんだけど、オープニング劇場のやりとりでメインのカードが急遽変更されて、「『いじめっ子』マグニチュード岸和田 vs 『いじめられっ子』アンソニー・W・森」がメインストーリーになっていた。やり取り自体は小慣れていて解り易いんだけど、その小慣れ方が逆に「お昼のメロドラマ プロレス」って雰囲気を出しちゃって、団体のスケールを小さくしているように感じる。周りに大量にいる女性ファンの黄色い歓声を聞いているとその感じが一層強くなる、というか。

ちなみに本日は一番安い席を購入、4000円。プロレスのチケット代としてはやや高いが気なる値段ではない。パンフレットは…、以前買った時に「値段が高いばかりで内容がない!」と怒った事があるので買わない。

オープニング劇場

DRAGON GATEお家芸、お馴染みオープニング劇場から興行はスタート。

まずはDoFIXERの面々が出場、リーダーの斉藤了がファンに向かってキング オブ ゲート優勝を報告。その優勝賞金で、DoFIXERのメンバーを連れて年末年始に海外旅行に行ったらしい。ホントかね?

そこにBlood Generationの面々が乱入。CIMAが「俺たちは年末年始、6人で男祭り見とったわ!」と観客から笑いを取ると、話は「谷嵜なおき、『Blood Generation』入り!?」へと移行。「オイ、斉藤! オレには谷嵜から年賀状が届いたぞ!」と自慢し、DoFIXERの動揺を誘う。「…オレのところには来てないぞ!」と詰め寄る斉藤、谷嵜は動揺するばかり。DoFIXER内に不穏な空気が流れる中、CIMAは「谷嵜、今日試合で返事を聞かせてくれ」と迫る。

次にマイクを握ったのはマグニチュード岸和田。岸和田は開口一番、アンソニー・W・森の名前を出して悪口三昧。以前フォールされた事を恨んでいるようだ。怒った森が花道よりリングイン、興奮気味にまくし立てた後、「え〜っ!?」という観客の反対を押し切り、メインのキャプテンフォールでDoFIXER側のリーダーを務める事になった。勿論、Blood Generation側のリーダーは岸和田に決定するわけだが、まだまだオープニングのマイクは続く。

岸和田:「的にかけるぞ!謝れ!」
森  :「誰が謝るもんか!」
岸和田:「謝れ!」
森  :「謝るもんか!」
岸和田:「謝れ!」
森  :「謝るもんか!」
以下延々。
子供の口喧嘩にさすがのCIMAも「(岸和田に向かって)…兄さん、グダグダですやん」。

二枚目な男達(一部例外アリ)が男臭さのない程度の因縁の中で闘う事に、この団体の女性人気の秘密があるんだろう。ジャンプの漫画で言うと「キャプテン翼」とか「聖闘士星矢」とか「幽☆遊☆白書」か。んで、僕はこの手の漫画は大の苦手だったりする。嫌いではないけど苦手。

第一試合 バチーン、バチーン!

タッグマッチ
横須賀享(173cm/84kg/Final M2K)
 新井健一郎(176cm/85kg/Final M2K)
vs
●スペル・シーサー(169cm/77kg/Pos.HEARTS)
 キング・シーサー(不明/不明)
[12分30秒 体固め]
※友情(変形フェースバスター)

本日のDRAGON GATEの第一試合はお笑い中心の試合展開に。

つかみはZERO1-MAXの日高 郁人が得意とする「I'll be back」から。スペル シーサーは華麗に決めて観客から拍手を貰うが、負けじと挑んだ横須賀が大失敗。リング際でバタバタしながら場外へと落ちていく横須賀の姿に観客は爆笑。近くにいる女性ファン達は「ヨコスス、落ち込んでるんじゃない?」なんていいながら笑ってる。

腹いせなのか何なのかは知らないが、その後のM2K組はシーサーの背中に焦点を絞って攻撃。ツープラトンで「バチーン」、ブレーンバスター…と見せかけて「バチーン」。シーサーの背中はあっという間に「もみじ」だらけに。素で痛がるシーサーの姿に観客は爆笑。プロレス内容には定評がある横須賀だが今日は随分と「贅沢」な使い方してる。いいのか?

「やられてばかりじゃ男がすたる」とシーサー組が反撃開始。まずはダブルのトペ・スイシーダ。観客の歓声の中、巨漢のキング・シーサーが意外な程に良く動く。超高速のケブラドーラ・コンヒーロを決めれば、近くの女性ファンも「デブなのに動けるね」とご満悦。更には謎の組体操攻撃を仕掛けるシーサー組。これは文章じゃ説明できん。

終盤はM2Kがシリアスに逆襲。横須賀のパワーボム、新井の激突注意(ダイビング・ヘッドバット)を喰らうスペル・シーサー、何度か追撃を切り替えすも、最後は横須賀のジャンボの勝ち〜友情(変形フェースバスター)でフォール負け。だが試合が終わればノーサイド、横須賀と新井はシーサーの健闘を称えて両手を上げる、…ように見せかけて、背中に「バチーン」。お後がよろしいようで。

第一試合は「締めてくる」と思っていただけにこの内容は意外。観客へのウケは良かったが、個人的にはもう少しピリッとした横須賀が見たかった。

第二試合 飽きられるのはお笑いキャラの宿命

ハンディキャップマッチ
ダニエル三島(190cm/105kg/フロリダ・ブラザーズ)
 マイケル岩佐(180cm/85kg/フロリダ・ブラザーズ)
vs
堀口元気(173cm/75kg/DoFIXER)
[5分24秒 エビ固め]
※スウィートボーイズ(変形の丸め込み)

試合前のマイクで、何かとうまくいかない事を告白するフロリダ・ブラザーズ。「Oh!カードが変わったせいで、対アンソニー用に準備した衣装がダメにナリマシタ!」とか、「トザワ&ヴァンジェリスは驚異デース!我々の地位が危うくなってキマシタ!」とか。お家芸の「反則勝ち」も「飽きられてマス…」と嘆くフロブラ、そこで今後は「小悪党」路線でいくそうな。

で、その門出の試合は、両者ともにお互いの股間を狙う事を中心とした内容に。特筆する程の内容でもないし試合内容もまるで覚えちゃいないわけだが、股間を押さえながら必要以上に悶絶する三名に会場から何度となく笑いが漏れていた。

フィニッシュではフロブラが「新技」を披露。倒れた堀口を二人がかりのスクールボーイで丸め込み、一瞬にして勝利を拾っていた。「小悪党」らしい勝ち方という事なのだろうが、観客はあまりピンと来ていない様子で「ポカーン」状態。中には「えぇ〜?これで終わり?」なんて声も。

う〜ん、イメチェンって難しいねぇ。

第三試合 新人の台頭…何か違う

タッグマッチ
○BXBハルク(178cm/80kg/Pos.HEARTS)
 カツオ(167cm/77kg)
vs
 ヴァンジェリス(不明/不明)
●トザワ(170cm/80kg)
[8分6秒 片エビ固め]
※E.V.O.(変形エメラルド フロージョン)

専属ダンサーを従えたBXBハルクの入場には拍手が起きたが、それ以上に、ヴァンジェリス & トザワの入場に大爆笑が起こる。ドラゲーでは見習い要員のトザワ、今日はヴァンジェリスと全く同じコスチュームでリングイン。髪を銀色に染め、白い海兵服に身を包み、股間にタオルを擦りつけて踊るトザワの姿に観客は大爆笑。近くにいる女性ファン達も「これ、後で新井に怒られるよぉ〜!」と、こちも大爆笑。…う〜ん、ホントにバカウケだな。そんなに面白いのかねぇこのネタ?

さて試合なのだが…あんまり覚えてないが、ひたすらトザワが中心だった気がする。ところどころでヴァンジェリスのマネをして腰を振り観客の爆笑を誘っていたトザワ、ハルクのバク転式サマーソルトドロップ、カツオのエアプレーンスピンを喰らいつつも根性を見せる。最後もハルクのフェースバスター、ムーンサルトプレスといった猛攻を前に粘りを見せたが…、切り札・E.V.O.を決められては3カウントを聞くしかなかった。

で、試合後にはお目附役の新井 健一郎が登場、トザワにお説教。「(溜息をつくように)呆れたわ(観客爆笑)。お前ねぇ、どんなにカッコつけても…、『BXBハルク側の人間』か「オレ側(新井 健一郎)の人間」かと言えば、どこをどう見たって『オレ側の人間』だろうがっ!!(観客爆笑)」

…ってな調子で、新井は今日でトザワのダンスキャラを「卒業」させる事を宣言。ところが観客はこれに「エエエェェェーーーッ!?」と猛反発。ホントにバカウケだったからなぁ。思わぬ反応に新井は「と、とりあえず今日はこいつと話し合いますから…」とその場を凌ぐのに必死だった。

周囲にはバカウケだったけど、個人的にはノレなかったなぁ。ま、この辺のネタは毎回ドラゲーを観てないとわからないんだろう。いずれにせよ「トザワ」というキャラクターに注目する切欠にはなりそうだな。

それにしても三連続で「お笑い」ですか。なんともかんとも。

第四試合 そろそろ締めていきますか

タッグマッチ
望月成晃(175cm/88kg/Final M2K)
 マグナムTOKYO(180cm/83kg/DoFIXER & Pos.HEARTS)
vs
ドン・フジイ(175cm/105kg/Blood Generation)
 鷹木信悟(178cm/88kg/Blood Generation)
[19分19秒 飛龍原爆固め]

この試合では望月成晃マグナムTOKYOがチームの垣根を越えたタッグを結成。どういう経緯でタッグを組む事になったかはまったく知らないが「ドラゲー最強タッグ」と言えるだろう。対戦相手はドラゲーで最も勢いのある軍団「Blood Generation」のドン・フジイ鷹木信悟。どんな試合になるのか…と思ったら、ドラゲーらしからぬドロ臭さに満ちた試合となった。

マグナムは打撃技を多用。鷹木には容赦のない蹴りを見舞い、フジイとはチョップ合戦で真っ向勝負。そして打撃と言えばドラゲーではこの人、今宵の望月はマグナム以上に容赦がない。サッカーボールキックを鷹木に決めれば、その重い音に観客からどよめきが起こる。

だがどんなにバシバシと蹴られても、鷹木は全くといっていいほど弱みを見せない。マッスルポーズを取りながら痛みに耐えると、望月には掟破りのツイスター。キャリア一年弱とは思わせない存在感を発揮し最強コンビと互角に渡りあう。フジイも負けてはいられない。意外にもドロップキックで宙を舞ったかと思えば、マグナムのWARスペシャルには同じ技で対抗、望月にはパワーボム〜ナイス・ジャーマンで畳みかける。

思わぬ真っ向勝負に観客もヒートしたこの試合、最後は望月がドラゴンスープレックスでフジイをフォール。最強コンビが青息吐息の中でなんとか面子を守った…が、敗れたフジイは納得がいかず、レフリーを務めた神田 裕之を捕まえて暴行を加えていた。ヒールとしては正しい行為だ。

ここに来てようやくピリッとした試合を観れたわけだが、僕の中で印象に残っているのは…、その激しい試合内容より、「望月選手の事を『モッチー』とか言っちゃう男性ファンって、どう思う?女性ファンが言うならまだしもねぇ。」とか言っている近くの女性の声だったりするわけです。言いたい放題だな。

第五試合 DRAGON GATEの「今」

キャプテンフォール イリミネーションマッチ
○アンソニー・W・森(171cm/70kg/Pos.HEARTS)
 斉藤了(170cm/80kg/DoFIXER)
 ドラゴン・キッド(162cm/70kg/DoFIXER)
 谷嵜なおき(172cm/75kg/DoFIXER)
vs
マグニチュード岸和田(175cm/105kg/Blood Generation)
 CIMA(174cm/82kg/Blood Generation)
 土井成樹(173cm/80kg/Blood Generation)
 吉野正人(172cm/72kg/Blood Generation)
[25分56秒 三角絞め]
※キャプテンは森と岸和田

メインイベントは、キャプテンが負けたら試合が終了する「キャプテンフォール」形式の試合。オープニングから散々引っ張ったこの試合の焦点は、「谷嵜なおき、『Blood Generation』入り!?」「『いじめっ子』マグニチュード岸和田 vs 『いじめられっ子』アンソニー・W・森」の二点。この試合で、谷嵜は悪の軍門に下るのかっ!? そして子供の喧嘩の行方はっ!?

お約束の大乱闘から試合はスタート、場外で谷嵜は早々に流血。金髪が真っ赤に染まる中、タイミング悪く斉藤の攻撃が谷嵜に誤爆する。谷嵜は「やってられない!」と試合を放棄。花道を引き上げていくに観客から「え〜っ!?」の声が。それにしてもDRAGON GATEの観客は、団体が造るアングルに気持ちよく乗っかっていくねぇ。

谷嵜がいない間に進んだのは、「森の頼りなさ」と「岸和田の力強さ」の強調。森に波状攻撃を仕掛けるBlood Generation、次々にチョップを浴びせると、森はあっという間に青息吐息。反対に強烈に存在感を発揮するのが岸和田、大きな身体を利用してのバックブリーカーやパワースラム、たった一人でPos.HEARTS & DoFIXER連合軍を次々に蹴散らしていく。

観客に「森と岸和田=『いじめられっ子』と『いじめっ子』」という図式が浸透、大ピンチの森。だが森は吉野のプロテイン攻撃を間一髪でかわす。するとこれが土井に誤爆。目を押さえて苦しむ土井、そこに谷嵜が突如復活、電光石火の逆さ押さえ込みでカウント3を奪う。観客からは歓喜の声が沸き起こる中、谷嵜はマイクで「オレは一生、DoFIXERでやっていくぞ!」と宣言。

更なる大歓声が沸き起こったが…怒り心頭なのは、これまで散々谷嵜を勧誘していたCIMAだ。執拗に谷嵜を痛めつけて、必殺のシュバイン二連発で完全KO。試合をあっさりと3 vs 3の状態に戻す。

そんな中、密かに因縁を深めていたのはキッドと吉野。高度な技の応酬の中、キッドは秘技ドラゴン ラナを繰り出したが、吉野は逆襲のライトニング スパイラル。頭から落ちたキッドはカウント3を聞くハメに。2 vs 3、Pos.HEARTS & DoFIXER連合軍、大ピンチ。

そしてここからBlood Generationによる本格的な「森イジメ」が始まった。CIMAがパーフェクトドライバーで頭から落とし、岸和田はダイビング ボディプレスで巨体を浴びせる。だがどんなに技を喰らっても今日の森は3カウントを聞かない。これに観客は大歓声で応える。だがBlood Generationの猛攻は止まらない。ジャーマン、ニーパット、ラリアット、ミサイルキック。

さすがの森も虫の息…だったのだが、ここで森、「いじめっ子」岸和田に起死回生の三角絞め。「こざかしい!」とばかりに、二度も森を高々と持ち上げてのパワーボムを繰り出した岸和田。だが森は、どんなにリングに叩きつけられても三角絞めを離さそうとしない。観客にも「これはもしやっ!?」という期待感が生まれる中、三度目を出そうとした岸和田の体勢が崩れた。「期待」が「確信」へ変わり観客は歓声で森を後押し、ほどなくしてレフリーが試合をストップ。観客は最高の形でハッピーエンドを手に入れた観客は、更なる大歓声で森の勝利を祝福した。

試合の中に「DRAGON GATEらしさ」が凝縮されていた試合。さっきから散々色々言っていた近くの女性も、前半こそ森の弱さに文句をブツブツ言っていたが、森が粘りを見せ始めたあたりからは試合を真剣に観て声を上げていた。つくづくにDRAGON GATEの観客は団体が造るアングルに気持ちよく乗っかっていくねぇ。

雑感

相変わらずプロレスのレベル自体は高いと思います。そしてマイクのやり取りも日本のマット界でもNO.1だと思います、ハイ。昨今のプロレス業界の事情を考えれば、今、円熟期にあるDRAGON GATEは本当に凄いと思います。

でも…、冒頭にも書いたけど、なんか馴染めないんだよなぁ。ストーリーの根底に男気を感じないからかなぁ。「あまりにも安心して見てられるプロレス」というか「刺激に欠けるプロレス」というか。ま、この辺は好みの問題だと思いますけどね。DRAGON GATEは僕みたいな人を最初から常連客として見込んでないだろうし(笑)。

途中で近くの女性が言っていた「望月選手の事を『モッチー』とか言っちゃう男性ファンって、どう思う?女性ファンが言うならまだしもねぇ。」この一言にDRAGON GATEの方向性が集約されている気がします、ハイ。


以上、長文失礼。