1/22 ZERO-1MAX 後楽園ホール興行 観戦記

ゼロ中っていまどこにいるんでしょ?

本日はタカハシ氏に誘われて後楽園ホールにてZERO1-MAXを観戦。タカハシさん、お誘いありがとうございます。

さて僕は、今までZERO-ONEを一度しか観戦していない。しかもその時はZERO-ONEご自慢の外国人選手がまるでいない興行で、全体的な印象も今一つ。それをそのまま観戦記にしたら、異様な長さも手伝って当時の「ゼロ中」のバッシングを受けたっけ。ま、なんにせよその興行からは「日本人選手の『薄さ』」、特に「若手の『薄さ』」を感じたのは事実で、結局、そこは良くなる事なくZERO-ONEZERO1-MAXへと移行していったイメージがある。

という訳で、今や日本人が中心となったZERO1-MAXにはあんまり期待はないんだけど、折角の誘い、断る理由もないのでZERO1-MAXを観戦する事に。ちなみに今日の客席は満員。北側席は大型モニターを使用してたので潰れてたけど、このプロレス不況のご時世の中、健闘しているんじゃないでしょうか。

開会式

ほほぅ、今時のプロレス団体でこういうセレモニーを開くのは珍しいね。出場する全選手が入場した後、大谷の紹介で今日のVIPであるニック ボックウィンクルがリングイン。目の前にいるニック氏は大谷と背がどっこいどっこい。意外に小さい事には驚いた。

第一試合 若さがなくてユルいなぁ

タッグマッチ
 神風(186cm/107kg)
○GENTARO(176cm/90kg/アパッチプロレス)
vs
不動力也(180cm/115kg/フリー)
 高橋冬樹(188cm/105kg)
[12分35秒 足決め首固め]

高橋冬樹の入場曲、爆風スランプの「がんばれタカハシ」を聴いて、「あ〜、そういえばオレはその昔、ZERO-ONEを観戦したなぁ」と思い出した。で、その時の高橋や不動力也(当時は黒毛和牛田か?)って印象になかったんだけど、今日も全く印象なし。「若いんだから、もっと自分に対してガムシャラでもいいんじゃねぇの?」ってのが率直な感想。自分の役どころを丁寧にこなす事で「いっぱい、いっぱい」になっているように見えた。

反対に、見た目にどうにも華がない神風がレスラーとしてはとても器用で驚いた。オーバーヘッドキックやムーンサルトプレスを綺麗に決めたり、相手の動きの先を読んで、タイミングよくコブラツイストを決め続けたり。特に不動のダイビング ボディアタックコブラツイストで切り返す動きは素晴らしかった。

最後は、今日は控え目なGENTAROが分断作戦の後、パワーまかせの不動を一瞬の丸め込みで料理。

試合全体としては「前半レスリング、後半ハイスパット」って展開。第一試合はもっと技が少なくて、その代わりに気迫とかが伝わってくる試合が「好み」なんだけど、そういう時代でもないのかなぁ?時々、妙な笑いまで起きていたしねぇ。なんともユルいな。

第二試合 日高だけができる男でユルいなぁ

タッグマッチ
 日高郁人(172cm/80kg)
浪口修(174cm/84kg)
vs
 高岩竜一(178cm/99kg)
石狩太一(177cm/85kg/フリー)
[16分56秒 横十字固め]

大型モニターに映った紹介映像によると、この試合は「メキシコより凱旋帰国した浪口修の売り出し」が中心となる試合だったらしいが、蓋を開ければ、仕事ぶりには定評のある日高郁人の一人舞台と化していた。特に高岩との絡みは見事。まあ、このメンツを見れば予想通りの展開ではあったかなぁ。

そんな中で迎えた終盤、石狩太一の回転ニールキックが浪口の顔面にモロに当たるシーンが。ダウンする浪口、レフリーが起こそうとするも全く起き上がれない。あれだけジャストミートすればねぇ。っていうか、レフリーはそのシーン見逃してたように思える。ダメだよ、ちゃんと休ませないと。それでも浪口、高岩のパワーボム + 石狩のライダーキックを返すと、石狩を丸め込んでピンフォール勝ち。殊勲の星を挙げた浪口だが…、歓声が集まっていたのはパートナーの日高の方。何をか言わんや。そしてこの試合も「前半レスリング、後半ハイスパット」がガチガチに守られている。そんなモンかね。

それにしてもZERO1-MAXには「笑い」が多い。観客がやたらと「簡単に笑いたがる」のだ。またレスラーがこのニーズに簡単に応えているから始末が悪い。「観る側」と「観せる側」の緊張関係が皆無、そしてユルユルな空気。ZERO1-MAXをいつも観に来ている人は良いのかもしれんが、外様としてはどうもこういうのは苦手。

第三試合 道はどんなにユルくとも、笑いながら歩いていこうぜ!

シングルマッチ
安田忠夫(193cm/120kg/フリー)
●NOSAWA(180cm/87kg/フリー)
[3分36秒 体固め]
タイガードライバー

体格が全然違う者同士によるシングルマッチ、「どうやって試合が成立するんだろ?」と思っていたら、NOSAWAの助っ人に菊タローが登場、これでこの試合の方向性が一気に決定。全日本プロレスではお馴染み「論外&菊タローの仕事」の後、最後は安田がタイガードライバーでNOSAWAをKO。

前の二試合ですら「笑い」が多かったのに、更に「笑い」を狙った試合ぶり。まあ観客にはウケは良かったように思える。菊タロー & NOSAWA、さすがというか何というか。この会場のユルい空気が更にユルくなったのは仕方がないね。さて、次の試合あたりから締めていくのかな?

第四試合 ニューカマーはユルくない!

タッグマッチ
○コルト・カバーナ(不明/不明)
 Gamma(170cm/92kg/フリー)
vs
 田中将斗(181cm/108kg)
佐々木義人(176cm/95kg)
[12分38秒 体固め]
※コルト45

正直、今日のカードで一番注目度が低かったのだが…、終わってみれば一番面白かった試合だった。

既に色々なメディアで伝えられているが、「インチキ・ラティーノ」コルト・カバーナが素晴らしかった。試合の流れに全く関係のないところで、やたらラテンの香りがプンプンするオーバーアクション。それでいて、案外巨漢であるにも関わらずラ・ブファドーラやラ・ケブラーダをも使いこなす身体の器用さ。そしてフィニッシュのコルト45(カナディアン・バックブリーカー・ドロップ)も説得力充分。今日が初登場にも関わらず周りに盛り立てられる事なく自分を光らせた上、会場までをも大いに盛り上げた。ま、そのおかげで、他の三人が何をしていたのか全く覚えてないわけだが(苦笑)。

う〜ん、同じ「笑い」でも第一試合〜第三試合までに流れていた「笑い」とは明らかに異質、というか。会場にひたすら開放的な「笑い」の空間を提供したそのキャラクターに脱帽です、ハイ。それにしても、あれだけ「コパカバーナ」が似合うキャラクターというのも凄いねぇ。

第五試合 因縁の対決でもちょっとユルい

シングルマッチ
菅原拓也(178cm/93kg/フリー)
藤田ミノル(181cm/131.5kg(?))
[14分30秒 横入り式エビ固め]

紹介映像によると「似たもの同士による遺恨精算マッチ」らしい。成程、確かに顔もキャラも似てるかも。ヒール系ジュニアヘビー級レスラー同士による遺恨試合…なのだが、こんなところでも「前半レスリング、後半ハイスパット」の不文律が頑なに守られていた。試合の組み立てられ方が一辺倒で、観ている方としてはチト飽きる。

試合途中には菅原の盟友"brother"YASSHI登場、藤田を散々にいたぶる。更にはGammaが介入、藤田の脳天にブラックボックスで一撃を加えると、すかさず菅原がスクールボーイ、藤田から遺恨の残る一勝を挙げた。菅原一味が「悪事一辺倒」という元・悪冠一色らしさを発揮した一戦ではあるのだが、ピンポイントでタイミング良く悪い事をした方がヒールとしては光るのではないだろうか?

試合後、ブーイングの中で"brother"YASSHIは「カス野郎!」を連呼し、次回dragon door興行の宣伝。ヒールが何かを宣伝するのは大変だなぁ。

第六試合 AWAにユルく挑戦

AWA挑戦者査定試合 ニック ボックウィンクル御前試合 タッグマッチ
大森隆男(190cm/110kg)
 崔領二(190cm/105kg)
vs
佐藤耕平(193cm/115kg)
 川田利明(183cm/105kg/フリー)
[19分25秒 片エビ固め]
※アックスボンバー

紹介映像によると「AWA挑戦者査定試合」にして「ニック ボックウィンクル 御前試合」なのだそうな。となると、俄然やる気を出しているのが前王者の大森隆男。さてどうなることか。

…といったところだったが、試合自体は非常に淡々としていた。相変わらず「前半レスリング、後半ハイスパット」が必要以上に守られてた事、他の三選手からは、AWAを意識している素振りが全く感じられなかったのが原因かねぇ。川田利明があんまり一生懸命プロレスしていなかった事や、久々に観た佐藤耕平がふてぶてしさを増していたのが記憶に残っている。あとは忘れた。

さしたるインパクトもないまま、大森がアックスボンバーで佐藤を倒して終了。

第七試合 ユルい…というよりドン引き

AWA認定世界ヘビー級選手権試合 シングルマッチ 60分一本勝負
大谷晋二郎(181cm/107kg)
スティーブ・コリノ(183cm/100kg)
[20分26秒 ジャーマン・スープレックス・ホールド]
※大谷が新王者に

かつてはジン・キニスキーやフリッツ・フォン・エリック、ジャンボ鶴田やスタン・ハンセン、そしてこの試合の立会人であるニック・ボックウィンクルも腰に巻いたAWA認定世界ヘビーのベルト。試合前にはニック氏がスティーブ・コリノからベルトを預かっていた。

…しかし伝統あるベルトを掛けた一戦も、大谷晋二郎の「客を煽ってからの顔面ウォッシュ」で台無しに。たとえ今は昔の話でも栄光のベルトに敬意を払うのであれば、客に媚びる様な試合はして欲しくないね。コリノはコリノで「とうきょうバカヤローッ!」と叫んだり、ジャンピング・ニーから「オーッ」やったり。自身のモノマネ・キャラクターがあるとは言えど、AWAの威光もヘッタクレもない行為だなぁ。

試合途中、両者場外乱闘の中、イス攻撃を繰り返すコリノからニック氏がイスを取り上げるシーンが。このファインプレーに観客からは拍手が沸いたが…、今度はそのイスで大谷を攻撃し、更にはリングに戻ろうとする大谷の足を引っ張るシーンも。そういえば現役王者時代のニック氏は、セコンドのボビー ヒーナンの力を借りて反則防衛を繰り返していた。「こ、これはコリノのセコンドとして力を貸しているのかっ!?」…と、多少ワクワクして観ていたが、これ以降は試合に介入する事はなく、大谷がジャーマンでコリノを倒した後も素直にその勝利を祝福。…何とも中途半端だなぁ。個人的にはヒールモードのニック氏のボストンクラブが観たかったんだが。

で、新王者となった大谷、ここで観客に「プロレスの教科書」の一斉唱和を要求。

大谷:「プロレスの教科書!」
観客:「プロレスの教科書!」
大谷:「57ページ!」
観客:「57ページ!」
大谷:「火祭り王者とAWA王者になった者は!」
観客:「火祭り王者とAWA王者になった者は!」
大谷:「ZERO1-MAXを観に来る観客に!」
観客:「ZERO1-MAXを観に来る観客に!」
大谷:「夢と感動を与え続けなくてはならない!」
観客:「夢と感動を与え続けなくてはならない!」

…う〜ん、ドン引き。全体的にユルい会場の雰囲気と相まって、さらにドン引き。第二試合のところにも書いたが、ZERO1-MAXをいつも観に来ている人は良いのかもしれんが…。まあ大谷自身は自分ができる事をやって観客を喜ばせているのだろうが、客観的にこの光景を観て止める人はいないのかなぁ…。

雑感

全体的に「ユルさ」が支配していた興行だったような気がします。ZERO1-MAXをいつも観に来ている人にとっては、全体的にはハッピーな興行だったのかもしれないけど、僕のような外様の観客にしてみると「なんでこんなにユルい笑いが頻発するんだろう?」って感じです。一試合でもいいから「ビシッ」と締める試合が欲しかったような気がするんですが…、なかったなぁ。そういうのを今のZERO1-MAXに求めるのは間違いなのかなぁ…?

ま、コルトは非常に良かったです。


以上、長文失礼。