8/1 UFC サンディエゴSA興行 TV観戦記

Mask_Takakura2010-08-01

今年二回目のUFC地上波放送です

8月7日、テレビ東京にてUFCが放送された。放送の目玉は「崖っぷちに立たされた、五味隆典UFC第二戦!」という事になるのだろう。まぁ、僕が気になるのは五味よりも、岡見勇信の方だったりするんだけどね(苦笑)。


「それにしても前回の地上波放送は、秋山成勲の熱い熱いエアセコンドぶりに翻弄されっぱなしだったなぁ…」なんてことを思いつつ、今回も秋山の解説を期待してテレビを見ていたのだが、解説は残念ながら秋山ではなく須藤元気。う〜ん、須藤の解説って、言う事は的確だけど、一般層を意識した「選手への変なヨイショ」が入るから、僕は苦手なんだよなぁ…。

第九試合 岡見勇信、危なげなし!

ミドル級 5分3R
岡見勇信(188cm/83.9kg/和術慧舟會東京本部)
●マーク・ムニョス(183cm/83.9kg/アメリカ/アルティメット・フィットネス)
[判定 2−1]

UFCの地上波放送でありがたいのは、UFCで活躍する日本人、岡見勇信の試合が見れる事だろう。何せ僕はWOWOWとかに加入しているワケでもないので、岡見の試合って殆ど見た事がないんだよねぇ。実際は、PANCRASEに上がっていた頃に何度か生で観たこともあるんだけど、その頃はまさか岡見がこんなに活躍する選手になるとは思わなかったなぁ。そんな岡見の今日の対戦相手は、横須賀の海軍施設生まれのフィリピン系アメリカ人、マーク・ムニョス。UFCでは三連勝中なのだそうな。


1R、リーチで優位に立つ岡見は、ずっしりと腰を落としつつ、右のジャブと左ストレートでプレッシャーを掛けて行く。対するムニョスはジリジリと下がるばかりでロクな反撃が出来ない。時折、タックルを仕掛けるムニョスではあったが…。岡見は捌いたり、倒されてもすぐに立ち上がったりで、ムニョスに攻め入る隙を与えない。そして離れ際に左の膝蹴りを叩き込む岡見、ここまでは静かな展開ながらも岡見が優位だ。


2R、リズムに乗った岡見の動きが良くなる。頭を下げてフルスイングのパンチを放つムニョスに対して、岡見は右のジャブで金網際へと追い詰めて左ストレートや右アッパーと繋いでいく。ムニョスのタックルもガブって潰すなどで何もさせない岡見だったが…。

中盤にムニョスの放った左フックがヒット、この一撃で岡見はダウン。観客の歓声の中、一気に前に出てくるムニョスにタックルを仕掛けて倒して追撃を逃れる岡見。立ち上がった後、尚もムニョスは岡見を追いかけて、右ストレートや右アッパーを浴びせるも当たりは浅い。岡見はサークリングを駆使して追撃を逃れる。

終盤、ムニョスは再びタックルに行くも、その動きは悪い。どうやらスタミナを失ったようだ。岡見はガブってムニョスに何もさせない。立ち上がったムニョスは脚を掛けて岡見を崩しに掛かるが、岡見は簡単には崩れない。う〜ん、不利な状況の中で、しっかりとリカバリーが出来るのも強さの証明だな。


3R、スタミナを失ったムニョスに、岡見の打撃が襲い掛かる。確実にタックルを潰し、右のジャブでプレッシャーを掛け、金網際でワンツースリーと打撃を連発する岡見。疲労の激しいムニョスもパンチを返すが、まったく腰が入っていない。タックルに移行しても休むばかりのムニョスに、岡見は中盤にカウンターの右ストレートを叩き込む。倒れこむムニョスを追撃する岡見、ムニョスは立ち上がって難を逃れたが、この後は攻撃の伴わないタックルを放ち、亀になって休む。退屈な展開に、観客からはブーイングが飛んでいた。


試合は判定となり、なんと審判の一人がムニョスを勝者にするも、残り二人は無事に岡見を勝者に。う〜ん、この展開でムニョスを勝者にするのはおかしいな。


まぁ、2Rには危ない場面もあったけれど、終わってみれば岡見の圧勝だったなぁ。なんか、見ていて凄く安心できる強さの持ち主だね。今回の試合で、僕はようやく岡見という選手がどういう選手なのか判った気がするなぁ。

第十試合 ジョン・ジョーンズ、一方的!

ライトヘビー級 5分3R
ジョン・ジョーンズ(193cm/93.4kg/アメリカ/チーム・ボムスクワッド)
●ウラディミール・マティシェンコ(186cm/93.4kg/ベラルーシ/VMATトレーニング・ファシリティ)
[1R 1分52秒 TKO]
マット・ヒューズポジションからの、左の肘打ち連打

この日の地上波放送は1時間15分の放送枠でありながら、日本人の試合は二試合のみ。なので今回は海外勢同士の対戦も放送された。で、最初に放送されたのは、今回の興行のメインイベントとなった試合。2008年4月のデビュー以来、ポカミスの反則負け以外では負けなしの超新星ジョン・ジョーンズ(戦績10戦9勝1敗6KO1SKO)と、2001年〜2003年にUFCで活躍し、最近再びUFCに復帰したベテラン、ウラディミール・マティシェンコによる対戦だ。下馬評ではジョーンズの圧勝と見ている人が多いようだが…?


試合開始。身長以上に手足が長く、213cmという驚異的なリーチを誇るジョーンズが両手を広げてプレッシャーを掛ける。マティシェンコは右のパンチを返すも、ジョーンズはソバットを繰り出す余裕ぶり。マティシェンコはパンチを出しながら前に出たが、ジョーンズはカウンターのタックルでテイクダウンを決める。

グラウンドで上になったジョーンズは、肘打ちで嫌がらせをしつつ、長い手足を使ってアッサリとパスガードに成功。サイドを奪ったジョーンズはそのままの体勢でスライドすると、足を使って腹固めの要領でマティシェンコの腕を固定。そして片腕でマティシェンコのもう一方の腕を固定すると、余った腕でマティシェンコの頭部に肘打ちを猛連打。これぞ「マット・ヒューズポジション」、そして止まらないジョーンズの肘打ち。この様子を見たレフェリーが試合を止めた。


うん、殆どUFCを観たことがない僕でもわかるわ…。この選手、メチャメチャ強いよ。現在、UFCのライト級王者はマウリシオ・ショーグンなんだけど…、ハッキリ言って僕はジョーンズの方が強いと思うなぁ。う〜む、ショーグンとジョーンズが闘うのであれば、金を払ってでも観戦したいなぁ。

第二試合 シャーレス・オリベイラ、これは鮮やか!

ライト級 5分3R
○シャーレス・オリベイラ(178cm/69.8kg/ブラジル/ブロンクス・ゴールドチーム)
●ダレン・エルキンス(178cm/70.0kg/アメリカ/デューンランド・ヴァーリトゥード)
[1R 41秒 腕十字固め]

次に放送されたのが、この試合。柔術がベースで、12戦12勝無敗6KO5SKOの戦績を引っさげてUFC参戦を果たすシャーレス・オリベイラと、今年3月からUFCのリングに上がっている、レスリングがベースのダレン・エルキンスとの対戦だ。う〜む、二人とも知らない選手だのう。


試合開始、まずはワンツーでプレッシャーを掛けるエルキンス。タックルを決めて豪快にオリベイラをテイクダウンしたが、オリベイラは電光石火の三角絞めを極める。あっという間にピンチに陥ったエルキンスは必死に逃れようとするも、オリベイラはすかさず腕十字に移行。ガッチリと極まり、やがてエルキンスがタップして試合は終了。


この間、わずかに41秒。いや〜、これは鮮やかだったなぁ!オリベイラはこの勝利で、今回のサブミッション・オブ・ザ・ナイトを受賞、賞金は$40,000だそうだ。う〜ん、やっぱりUFCは景気がいいなぁ…。

第八試合 ジェイク・エレンバーガー、地味だが強い!

ウェルター級 5分3R
○ジェイク・エレンバーガー(183cm/77.3kg/アメリカ/レイン・トレーニングセンター)
ジョン・ハワード(170cm/77.3kg/アメリカ/ワイクーMMA)
[3R 2分21秒 TKO]
※ハワードが左瞼をカット

前座戦線が放送された後、今度は本戦が放送された。う〜む、試合のチョイスがイマイチ読めない…。ってなワケでこの試合で対戦するのは、レスリングをベースに持つジェイク・エレンバーガーと、柔術ムエタイをベースに持つジョン・ハワード。相変わらず二人とも知らない選手なワケだが、エレンバーガーの方はM-1グローバルを通して来日経験があるようだ。両者ともに、昨年からUFCに参戦しているらしい。


1R、まずはエレンバーガーがプレッシャーを掛けて前に出て、金網際で組み付きながら右の膝蹴りを入れていく。この後、金網際で右ボディを入れあうだけの攻防となり、観客からはブーイングが。やがてブレイクが掛かると、今度はハワードがワンツーを放って前に出たが、エレンバーガーは首相撲から膝蹴りを放った後でタックルを仕掛けてテイクダウンを奪う。う〜む、エレンバーガーは膝の使い方が巧いなぁ。

インサイドのエレンバーガーは時折、肘打ちを放ちつつ金網際へと移動。対するハワードはガッチリとクロスガードでガッチリと防御。エレンバーガーは攻める事ができずにブーイングを受けてしまう。またしてもブレイクが掛かる。スタンドではエレンバーガーが左ジャブを刻んで、ハワードの動きを止める。対するハワードは強引に組み付いたが、エレンバーガーは逆にテイクダウンを決める。上から肘を入れるエレンバーガーに対して、ハワードは必死に防御。ここで1Rは終了、ここまではエレンバーガーが有利だ。


2R、ハワードはいきなり右ハイをヒットさせるも、エレンバーガーは気にせずにカウンターの左ジャブを当てる。そして組み付く両者だったが、ハワードは突き放して右フックを当てる。エレンバーガーはカウンターのタックルでテイクダウンするも、ハワードは下から首を捕って応戦。だがエレンバーガーは首を抜くと、ハーフマウントから肘を入れつつパスガードを狙う。ハワードはガードポジションに戻すも、エレンバーガーは鉄槌や肘を落として応戦。

劣勢のハワードは、下から腕を掴もうとするも失敗、亀の体勢になったハワードをエレンバーガーがひっくり返して再びインサイドへ。立ち上がってパンチを入れ、再びインサイドに入るエレンバーガーだが、ここまでグラウンドでは目立った攻めがない。観客からブーイングが飛び始める中、強引な肘打ちを狙ったエレンバーガーの隙を突いてハワードが立ち上がる。

観客の歓声の中、ハワードの反撃は始まった。タックルに行こうとしたエレンバーガーにカウンターの膝蹴りを浴びせたハワードは、ダメージを負って下がってしまうエレンバーガーを追ってワンツーを浴びせる。苦しくなったエレンバーガーはタックルを決めてテイクダウンを奪うも、インサイドで休んでしまう。観客が再びブーイングを浴びせる中、エレンバーガーは勢いのある肘打ちを重ねて観客を黙らせる。そのうち、大きく振りかぶって放った右の肘打ちで、ハワードの左目は腫れてしまった。


3R、ハワードの左目の腫れが凄い事になっている。そして自身も「もう後はない」と思ったのだろう、ハワードはエレンバーガーの右ミドルをキャッチすると、一気に前に出て飛び膝蹴りを放ち、大振りなワンツーでエレンバーガーを攻め立てる。ハワードの派手な攻撃に観客が歓声を上げる中、尚もプレッシャーを掛けるハワードがタックルを敢行。これはエレンバーガーに切られるも、ハワードは尚も前に出続ける。

だが、エレンバーガーは冷静だ。たとえ観客のブーイングを浴びても、エレンバーガーは自ら下がりながら左ジャブを刻みつつ、タックルでハワードをテイクダウン。インサイドから右ボディや左肘でフェイントを掛けつつ、負傷したハワードの左目を狙ってパンチを放っていく。これらの打撃はハワードの左目にヒットすることはなかったが、一発でも当たれば大変な事になりそうな状態だ。そして、これを見たレフェリーがドクターチェックを要請し、ドクターが試合を止めた。


う〜ん、地味な攻防ではあったけど、やっぱり肘打ちは恐ろしい武器だね。そしてエレンバーガーは地味だけど強いな、地味だけど。

第七試合 五味隆典、これぞスカ勝ち!

ライト級 5分3R
五味隆典(173cm/70.0kg/日本/久我山ラスカルジム)
●タイソン・グリフィン(168cm/70.0kg/アメリカ/エクストリーム・クートゥア)
[1R 1分4秒 KO]
※右フック

UFCの地上波放送もいよいよ最後。登場するのは「火の玉ボーイ」五味隆典だ。

戦極(現SRC)に参戦した時はセルゲイ・ゴリアエフや北岡悟に敗れるなどで、精細を欠いた五味。昨年は修斗でも試合をしたが…、VALE TUDO JAPANの舞台では、KOTCライト級王者のトニー・ハービーを相手に4Rに失速。判定勝ちこそ手中にしたが、自分の納得する試合が出来なかった五味は「無理だよ。あのね、大晦日魔裟斗選手と……無理だよ。無理だ、やめる!」と呟き、魔裟斗との対戦を避けてしまった。この時、恐らく五味のファンの多くは「どうした、五味っ!?」と思ったことだろう。

そんな中で五味は今年1月、UFCと契約を結んだ事を発表。そして3月、UFNの舞台でケニー・フロリアンを相手にUFCデビューを果たした五味だったが…、試合では何もできないまま、フロリアンチョークスリーパーの前に沈んでしまった。確かにフロリアンはかなり強豪だと聞いていた。それにしたって、何も出来ずに敗北するとは…。この時、恐らく五味のファンの多くが「もうダメかもなぁ…」と思ったことだろう。

そんな中で迎えた、今回の「五味のUFC挑戦 第二戦」。その対戦相手は、2006年からずっとUFCの常連の座をキープし続けているタイソン・グリフィン、17戦14勝3敗6KO3SKOを誇る強豪だ。まぁ、下馬評では五味有利とは見られているが、五味にとっては舐められない相手だろう。




試合開始。身体の小さいグリフィンに対して、五味は真っ向から打撃で勝負。左のボディストレートを重ねてダメージを与えていく五味。グリフィンも飛び込んでワンツーを放つが、五味は迎え撃って距離は離す。堂々と打ち合いに応じる五味に対して、グリフィンはどんどん前に出るも、今度は五味の右ボディフックがヒット。

そして決着は突然、終了した。グリフィンが左ローに反応して、五味がカウンターの右フックを放つと、これがグリフィンの顔面を打ち抜いた。その場にうつ伏せに倒れるグリフィン、これを追撃しようとした五味をレフェリーが慌てて止めた。




五味の鮮やかなKO劇に観客が大歓声を上げる中、五味は金網に登って「ダナ!ダナ!」と、UFC代表のダナ・ホワイトの名前を連呼。そして再び金網に登ってガッツポーズを取れば、観客も大歓声で五味の勝利を支持。最後は五味らしく、金網の上に立ってガッツポーズを見せた。うん、これでこそ五味だな。



わずか64秒で、今までKO負けを喫した事がないグリフィンを一撃でKOした五味。そして、この勝利で五味は今回のノックアウト・オブ・ザ・ナイトを受賞。賞金はやっぱり$40,000。う〜ん、この賞金はデカいね。それにしても、久々に五味の「五味らしい勝利」を見たね。お金よりも、ファンにとってはそっちの方が大きかったんじゃないかなぁ。久々に景気の良いものが見れて、こっちもスッキリしたね。

雑感

う〜む、僕は地上波分しか試合は見ていないけど…、今回は興行全体を通して良い試合が続いたんじゃないかなぁ。地上波的にも技術戦もあり、問答無用の強さあり、鮮やかな一本あり、そしてスカ勝ちありで、テンポ良く観戦できて面白かったなぁ。

それにしても今日の五味の勝利はデカいだろうね。日本の格闘技界にとっても、五味自身にとっても、ファンにとっても熱い一勝だったと思う。とはいえ、五味の目の前にはケニー・フロリアンやBJペンがいるんだよなぁ。いや〜、UFCで闘うのも本当に大変だなぁ…。


以上、長文失礼。