4/11 SB(シュートボクシング) 後楽園ホール興行 観戦記

今日は本当に楽しみだな、楽しみだなぁ

本日は後楽園ホールSB(シュートボクシング)を観戦。


SBのメイン興行となる『維新』シリーズ。その第二弾となる本日の興行で、SBファン待望の一戦が実現。「東洋のハルク」梅野孝明が、「ムエタイの壊し屋」ボーウィー・ソーウドムソンの牙城に挑む。ヘビー級の身体をミドル級まで絞った梅野に対して、ボーウィーはフライ級でムエタイの頂点に立ちながらも、体重をミドル級にまで上げてきた選手。そして両者が得意としているのは「相手を破壊するパンチ」と来れば、これはもう「期待するな!」という方がムリだ。梅野にとっては初となる「真の強豪」との一戦。果たして、最後まで立っていられるのは、どちらの選手なのだろうか…?


今日はその他にも見所は沢山。前座では、日本の立ち技界では久しぶりとなる55kg級のトーナメント「YOUNG CAESARS TOURMENT55」が開催される。更に女子部では、かつてジョシカクのエースだった渡辺久江が復帰戦に挑み、セミファイナルでは「SBの日本人エース」宍戸大樹が「元プロボクシング日本ミドル級王者」の鈴木悟と闘う。う〜ん、随分とカードが充実しているなぁ。ここ最近で一番、力が入っているんじゃないかな?これはキッチリ観戦しないとね。


観客の入りは約九割。満員ではあるが…正直、メインイベントの期待の大きさから考えると、どうしても「これしか入っていないのか…」と思ってしまう。それくらい、メインイベントに対する期待は大きいのだ。

第二試合 とりあえず写真だけでもな、だけでもなぁ

YOUNG CAESARS TOURMENT55 一回戦 エキスパートクラス特別ルール 3分3R + 延長無制限R
○元貴(立志会館/SB日本フェザー級 四位)
●村田大輔(ストライキングジムAres/SB日本スーパーバンタム級 五位)
[判定 3−0]

第二試合〜第五試合は、ファントム進也が持つSB日本スーパーバンタム級王座の挑戦権を争うトーナメント、その名もYOUNG CAESARS TOURMENT55。名前の通り、若手中心のトーナメントである。ふ〜む、SBは今までこの階級に力を入れていなかったから、こういうトーナメントは好感が持てるなぁ。


ってなワケで、この試合の途中から観戦したが、リーチに優る元貴が丁寧なワンツー〜ローで村田を終始圧倒していた。試合は判定へとももつれたが、元貴が判定で勝利した。





とりあえず、写真だけでも載せときます。


第三試合 お互いに積極的でしたな、でしたなぁ

YOUNG CAESARS TOURMENT55 一回戦 エキスパートクラス特別ルール 3分3R + 延長無制限R
○伏見和之(162cm/55.0kg/シーザー力道場/SB日本スーパーバンタム級 四位)
●メリー酒井(166cm/54.9kg/志村道場/HEAT New age cup 60kgトーナメント 王者)
[判定 3−0]
※酒井は1Rにダウン1

YOUNG CAESARS TOURMENT55の第二試合は…二人ともあんまり知らない選手なんだけど、伏見和之はボクシングのA級ライセンスを持つ選手で、メリー酒井は金網の大会であるHEATで優勝した経験を持っているそうな。ええ、パンフレットからの受け売りです。


1R、伏見がワンツー、右ロー、左ミドルといった打撃で酒井追い詰めていく。酒井の蹴りに対してカウンターの右ストレートを当てた伏見、この一撃で酒井はダウンを喫した。だがこれで吹っ切れたのか、酒井は立ちあがるとワンツーの連打で挽回を図る。対する伏見もワンツーを返して応戦。




2R、1Rのダウン以降、動きが良くなった酒井は真っ直ぐに前に出てワンツーを繰り出す。対する伏見はワンツーと左ローで応戦するも、勢いは酒井がやや上か。すると伏見、こんどは膝と左ミドルを有効に使い、前に出る酒井のボディに叩き込んでいく。対する酒井も右ローで応戦、両者の蹴りが休みなく交差する



3R、開始早々に酒井がローブローを入れて試合は中断。再開後、両者の打撃が交差する積極的な展開に発展。この中で伏見は下がりながらの左ミドルと膝蹴りを巧く使い、接近する酒井を迎え討つ。対する酒井も良く前に出てパンチを放つが、伏見は左ミドルで迎撃。お互いに積極的に打撃を放ったが、伏見が巧さで上回った。



判定の結果、3−0で伏見が勝利。パンチが得意そうな伏見だけど、今日は蹴りで勝ったね。


第四試合 これはひどいな、ひどいなぁ

YOUNG CAESARS TOURMENT55 一回戦 エキスパートクラス特別ルール 3分3R + 延長無制限R
○尹戸雅教(163cm/55.0kg/立志會館/SB日本スーパーバンタム級 六位)
●高嶋龍弘(165cm/体重未発表/シーザー力道場/SB日本フェザー級 三位)
[判定 3−0]
※高嶋は計量オーバーにより減点2、8オンスグローブを着用、勝ったとしても準決勝には進出できないハンデを負う

YOUNG CAESARS TOURMENT55の第三試合にてアクシデントが発生。「元ホームレス中学生」の高嶋龍弘が減量に失敗してしまったのだ。そんな高嶋に課せられたのは「試合前から減点2」「10オンスのグローブハンデ」「この試合に勝っても準決勝には進出できない」という厳罰。う〜ん、一体何キロオーバーしたら、こんなに重い処分になるんだろう?と思ったものの、体重発表はナシ。しかしまあ、こんなにハンデのある選手と対戦する尹戸雅教も気の毒だ。




んで、試合なのだが…。1R〜3Rの全般において、両者は単発のパンチを出してはクリンチ、単発のパンチを出してはクリンチ…をひたすら繰り返すのみの単調な展開に。う〜む、両者の相性の問題なのか、高嶋がすっかりやる気を失ってしまったのが原因なのか…。何にせよ、こんな試合を見せられた観客としては堪ったもんじゃないよなぁ。その上、2Rには高嶋によるローブローで試合は長期に渡り中断、観客の集中力は散漫する一方だ。う〜ん、これはひどい




そんなこんなで試合は判定までもつれ、差らしい差などつけようのない試合内容ながらも、先の減点により3−0で尹戸が勝利を収めたが、勝った尹戸もこんな内容では浮かない顔だ。



正直、色々と酷い試合だったなぁ。こんな内容になるくらいなら、思い切って尹戸の不戦勝にした方が良かったんじゃないの?

第五試合 K-1甲子園上がりの選手って強いな、強いなぁ

YOUNG CAESARS TOURMENT55 一回戦 エキスパートクラス特別ルール 3分3R + 延長無制限R
日下部竜也(163cm/54.65kg/大石道場/K-1甲子園2008 第三位)
●藤本昌大(164cm/55.0kg/龍生塾/SB日本スーパーバンタム級 三位)
[延長判定 3−0]
※本戦判定 1−0/藤本は2Rにシュートポイント1

パンフレットによると、この試合はYOUNG CAESARS TOURMENT55の優勝候補同士による一戦なのだそうな。K-1甲子園で活躍、妹も空手をやっていることで有名な日下部竜也と、今年1月の大阪興行で、名門ポー・プラムックジム期待の新鋭、ボーロン・ポー・プラムックをKOした藤本昌大による一戦である。ふ〜む、日下部って本来は55kg級の選手だったのか。それなのにK-1甲子園で第三位って結構すごいな。




1R、日下部はいきなり重い左ミドルを放って会場をどよめかせる。だが藤本はこれに怯まずにワンツーで日下部を押し込んでいく。一つ前の試合とは一転しての打ち合いに観客が歓声を上げる中、藤本のワンツーに対して、日下部はワンツーと右ローを返していく。まずは互角。



2R、日下部がローブローを放って口頭注意を受けるも、再開後は再び打ち合いに発展。ノビノビと闘う日下部の打撃に押され気味だった藤本だが、日下部に組み付いてフロントチョークを極める。極まることはなかったが、藤本はここ貴重なキャッチポイントを1p獲得。



ポイントで優位に立った藤本が、精神的に楽になったのか距離を詰めてワンツーを放つ。対する日下部は下がりながらの左ミドル、右ローで応戦。今度は藤本のローブローで一時中断、再開後は打ち合いになるが、日下部は突き刺すようなソバット、飛び膝蹴り、左ボディを駆使して優位に立つ。



3R、ポイント上では劣勢の日下部がワンツーと左ボディで攻め込む。藤本もワンツーと右ローで対抗するが、日下部はボディへの左の膝蹴り、左ストレート、ジャンプしての前蹴りといった多彩な技で藤本を攻めて行く。対する藤本は、SBらしくスタンドでバックを奪いスリーパーを狙うが極まらない。日下部は2Rでも見せた突き刺すようなソバットで観客を沸かる。



ここで試合は終了、勝敗は判定へと委ねられる。僕は「試合全体では日下部が優位だったけど、2Rのキャッチポイントがあるからどうかなぁ?」と思っていたが、実際の判定は日下部の1−0、試合は延長戦へ突入だ。う〜む、こうなると藤本は苦しくなるな。



延長R、3Rを優位に進めていた日下部がガンガン攻め込む。接近しての左ボディや前蹴り、組み付いての投げや崩しで藤本を翻弄すると、中盤にはラッシュを仕掛けて圧倒。劣勢を強いられる藤本だが、ワンツーや右ローで真正面から反撃、試合は再び打ち合いへと発展。そんな中、日下部は膝を巧く使って藤本の動きを止めていくが、終盤は攻め疲れのためかやや失速。今度は藤本が前に出るが、日下部は尚も膝蹴りで藤本の攻めをしのいだ。



ここで延長ラウンドが終了。判定の結果、3−0で日下部が勝利。



いや〜っ、日下部って強いんだなぁ。あの突き刺すようなソバットは一見の価値があるよ。正直、今日のトーナメントを勝ち上がった選手の中では、ダントツの優勝候補だと思う。正直「モノが違う!」というかねぇ。対する藤本も、そんな日下部を相手によくやっていたと思う。本来は超高速の右ローが得意な選手なようなので、それをもっと打てるような闘い方を身に着ければ、もっと強くなれるんじゃないかなぁ。素人意見だけどさ。

闘いを終えた選手達だが、もう明日を見ているのだ、見ているのだなぁ

ここで、YOUNG CAESARS TOURMENT55の準決勝のカードを決定するための抽選会が行われた。「選手がカードを引き、引いた数字の順番にトーナメント枠のどこに入るかを決めて行く」というK-1方式の抽選の結果、元貴vs伏見和之、日下部竜也vs尹戸雅教という組み合わせに。ふ〜む、元貴vs伏見は噛み合いそうで面白そうだが、日下部vs尹戸は試合内容を見る限りでは実力差がある気がするなぁ。尹戸には僕の下馬評を覆す活躍を見せて欲しいね。



第六試合 勝った鈴木より負けた歌川が印象に残ったな、残ったなぁ

スーパーフェザー級 エキスパートクラス特別ルール 3分3R + 延長無制限R
○鈴木博昭(167cm/59.9kg/ストライキングジムAres/SB日本スーパーフェザー級 一位)
●歌川暁文(169cm/60.0kg/U.W.F.スネークピットジャパン/SB日本スーパーフェザー級 二位)
[判定 3−0]

この試合はSB軽量級の新旧エース対決といえるだろう。このところ、その重い打撃でSB軽量級の台風の目となっている鈴木博昭と対するのは、長年に渡りSB軽量級で活躍し、左ミドルとここ一番のスープレックスで会場を沸かせた歌川暁文。この二人は昨年四月にも対戦し、この時は鈴木が判定で勝利している。今やSB軽量級の頂点を脅かす存在となった鈴木、歌川としては一矢報いたいところだが…。




1R、鈴木はいつもの通りに前に出てプレッシャーを掛けるが、ベテラン歌川は挨拶代わりに重い左ミドルを一発入れると、尚も前に出る鈴木に組み付いて足を掛けて倒してしまう。だが鈴木は、これに怯むことなく打ち合いに挑むと、歌川に重いパンチの連打を浴びせていく。鈴木のパンチに苦戦した歌川は、接近してくる鈴木をクリンチからの掛け倒しでやり過ごす。



2R、序盤から両者が打ち合いを展開、流れの中でバックに回った歌川が得意のジャーマン・スープレックスを狙うが、これは未遂。尚も歌川は組み付きを狙うが、鈴木は顔面に前蹴りを入れると、破壊力のあるパンチで追い込む。要所でパンチを喰らった歌川に疲れが出始める中で、歌川の反撃がローブローとなり試合は中断。再開後、ワンツーと組み付きを繰り返す歌川に対し、鈴木は打ち合いに挑むとラウンド終了前にワンツーをヒットさせて逆襲に転じる。パンチを浴び続けた歌川、体力の消耗が激しそうだ。



3R、序盤から両者が打ち合いを展開する中、歌川は膝蹴り、ワンツー、右アッパーなどを放つなどで意地を見せる。対する鈴木は左ストレートをハードヒットさせて反撃し、投げを狙うがこれは失敗。それでも鈴木は重いパンチで攻め続け、右ハイを打ち込むなどで試合を優勢に進める。対する歌川もバテバテながらも最後まで鈴木と打ち合い、膝蹴りで鈴木の前進を止めていた。試合終了と同時にDDTを放った観客を沸かせる歌川、「らしさ」が出てるなぁ。



判定の結果、3−0で鈴木が勝利したが、今日の鈴木は歌川の意地に苦戦した印象。対する歌川、鈴木の圧力に抵抗して旧エースとしての意地を見せたものの、自分の試合はさせてもらえなかった。かつての悪童も、寄る年波には勝てないのかなぁ…。


第七試合 試合後のマイクのインパクトの方が大きかったな、大きかったなぁ

女子48kg契約 レディースクラスルール 2分3R + 延長2分1R
渡辺久江(160cm/契約体重48.0kg/池袋BLUE DOG GYM/初代DEEP女子ライト級 王者)
●井川恵(身長不明/契約体重48.0kg/日進会館 宮原道場/西日本グローブ空手女子軽量級 王者)
[3R 1分25秒 TKO]
※レフェリーストップ

「無敗の女王」と呼ばれたしなしさとこをKOで破り、初代DEEP女子ライト級の王者となった渡辺久江。結婚を機にジョシカクの世界から姿を消した彼女が、突如リングに帰ってきた(何がきっかけで帰ってきたのかは各自調査)。そんなジョシカクのエースの対戦相手は、Girls S-CUP 2009覇者のRENA。女子新旧エース対決は、ジョシカク好きなら注目せざるを得ない一戦である。

だが、RENAは練習中に左手人差し指の付け根を亀裂骨折し欠場することに。第六試合の前にリングに上がって挨拶をしたRENAだが、想い余って泣き出してしまった。怪我であれば仕方がないさ、ゆっくり直してリングに上がってくれい。




さてさて。これにより僕の周りでは「渡辺の復帰戦自体が中止になるのでは?」という噂が飛び交ったが、最終的には西日本グローブ空手女子軽量級の王者という肩書きを持つ井川恵がリングに上がる事になった。井川はこの一戦を前に「あの渡辺選手とやれる機会なんて、そう誰にでもあるわけじゃない!チャンスと思って全力でぶつからせてもらいます!」というコメントを出していた。う〜ん、その気持ちは買いたいね。



1R、このラウンドはお互いに距離をとっての様子見に終始。お互いの距離が充分に開く中、井川はワンツー。渡辺は左ローなどで牽制するも、ラウンドを通して大きな動きはなし。途中、井川の腕を掴んで関節技を仕掛ける場面もあったが、極まることはなかった。ふ〜む、かつては伊原ジムで練習したりして、打撃のイメージが強い渡辺だけど、この人は立ち技ルールでの経験ってそんなにないんだよねぇ。



2R、このラウンドも基本的には静かな流れ。渡辺は左ミドルで牽制し、これに井川がワンツーで応戦。渡辺は投げや関節技を狙って何度か組み付くも、技には繋がらない。ラウンド終了直前に両者は軽めの打ち合いを展開したが、これも大きな動きとは呼べない内容。う〜む、正直イマイチ。



3R、最終ラウンドになってようやく渡辺が動く。右ローを多用して井川の動きを止めようとする渡辺に対して、井川はパンチで応戦するも、渡辺は何か意を決したかのように一気に前に出てワンツーの連打を浴びせて、井川を嫌がらせて強引にスタンディングダウンを奪う。
これで勢いがついた渡辺は井川ファイティングポーズをとった後で更なるラッシュを浴びせて、強引にレフリーストップを呼び込んだ。う〜ん、渡辺が強いというよりは、井川がプロの場に慣れていないって感じだったなぁ。



勝った渡辺はマイクを持つと、泣きながら「RENA選手が超煽るんで、超ぶっ飛ばしたくてリング上がりましたっ!(略)いろんな人が私の復帰に背中を押してくれて、ようやくリングに戻る勇気が出て、今回SBに出ました。」と語ると「シーザーさんも若い人よりも三十路の女がいいって言ってるんで、あと一年頑張らせてくださいっ!」とアピール、観客の爆笑とは裏腹にシーザー会長は苦笑いを浮かべていた。

っていうか、泣きながら強気な発言したり、人を笑わせたり、かぁ…。おちつけよ!って言いたくなるけど、渡辺も色々とあったらしいからねぇ(何があったかは各自調査)。まぁ、これからは好きな人生を歩めばいいと思うよ。



第八試合 ただただ悔しいな、悔しいなぁ

スーパーウェルター級 エキスパートクラス特別ルール 3分3R + 延長無制限R
イ・スファン(183cm/70.0kg/韓国/KHANジム 仁川ムビジム)/韓国ジュニアウェルター 王者& 韓国ミドル級 王者)
●金井健治(172cm/70.0kg/ライトニングジム/前SB日本スーパーウェルター級 王者)
[1R 2分5秒 TKO]
※3ダウン

金井健治はいつも、こういう役目を負う。未知の強豪であろうと、既知の強豪であろうと、真っ先に相手の実力を図るのは金井の仕事なのだ。一昨年〜去年に掛けて四連敗した金井、それでも前回の興行でチームドラゴンの堤大輔を相手にようやく勝ち星を得たと思ったら、今日の相手はK-1 MAX アジアトーナメントで優勝を果たし、かつて金井を破った尾崎圭司にも勝利した事があるイ・スファンなのである。いったい、金井が何をしたというのだろうか?なんか、こういう使われ方をする選手は本当に可哀想に思えてくるよ…。




そして試合は開始したが…。11cmの身長差以上に、フィジカルの差が凄そうな印象。そして、その体格差に任せてイがテンカオや右ミドルを放つ。対する金井は、巨漢退治の基本であり、得意技でもある右ローを放って応戦。だが、尚も蹴りを放つべく金井が前に出たところに、イの左ストレートでカウンターでヒットして金井は一撃でダウン。立ち上がった金井、しかしその足元はフラフラだ。



こうなると試合は早い。イの左ストレートを喰らって金井は再びダウン。それでも立ち上がったが、イはまたしても左ストレートを浴びせて金井から三度目のダウンを奪った。



凄まじい圧勝劇を見せたイだったが、勝利者撮影の際にはおどけたポーズを披露して観客を和ませていた。



う〜ん…。「金井、本当に無念」。この試合にはそれ以上の言葉が浮かばん…。対するイだが、いい選手だねぇ。S-CUP 2010に上がってくれんかなぁ?

元気でなによりだな、なによりだなぁ

休憩後はいつも通り「シぃ〜ザぁ〜っ!シぃ〜ザぁ〜っ!」とテーマ曲が流れ、シーザー武士会長がリングインして挨拶。「現在の格闘技界は壁にぶち当たっています。それをSBがブチ破ってみせます!」と宣言すれば、観客は大歓声でシーザー会長の姿勢を支持。しかしまあシーザー会長、本当に泣かなくなったなぁ。昔は挨拶の途中ですぐに泣いていたのに(笑)。



第九試合 ルールの中で勝ったのだから堂々としてればいいのにな、いいのになぁ

スーパーフェザー級 エキスパートクラス特別ルール 3分3R + 延長無制限R
○及川知浩(164cm/60.0kg/及川道場/SB日本スーパーフェザー級 王者)
●パジョンスック・ポー・プラムック(168cm/57.9kg/タイ/ルンピニースタジアム認定バンタム級 四位)
[判定 3−0]
※及川は2Rにシュートポイント1

今、SBの軽量級で猛威を振るっているのがパジョンスック・ポー・プラムックの存在である。2008年にSBに初参戦して以来、崎村暁東、石川剛司、そしてファントム進也といった上位陣を次々に撃破。もはや彼を止められるのは、SB日本スーパーフェザー級の王者である及川知浩だけになってしまった。及川の実弟であるナグラチューン・マーサM16をもKOしているパジョンスック、及川としては仇を討ちたいところだが…。




1R、及川は右ローで牽制、パジョンスックは重い左ミドルを浴びせてこれに返答。そして距離を開けたパジョンスックが左ロー、ワンツー、そして左ミドルで試合のペースを作る。ワンツー〜左ハイ、ワンツー〜左ミドル、そしてフックと徐々に手数を増やすパジョンスックに対して、及川はワンツーや右ストレートをヒットさせるが、全体的にはパジョンスックの圧力に押され気味。終盤にはパジョンスックのバッティングを喰らってしまう。う〜ん、ルンピニーの現役ランカーの実力はやはり凄い。



2R、パジョンスックが得意の左ミドルを連打して攻めていくも、及川はその左ミドルをスウェーでかわして右ローを入れる。なんとなく、及川が自分のペースを取り戻しつつあるなぁ…と思っていたが、ここで思わぬアクシデントが。パジョンスックの左ミドルが、及川の股間を直撃したのだ!及川はうつ伏せに倒れて悶絶して試合は中断。「タイキック((C)ダウンタウンガキの使いやあらへんで)が股間を直撃かぁ…。こりゃ、試合続行はムリだろ…」と思っていたが、約三分のインターバルの後、及川はヨロヨロと立ち上がって試合は再開。う〜ん、及川はよく立ち上がったなぁ…。



試合再開、及川は再びパジョンスックの左ミドルをかわして右ローを入れるも、ここからはパジョンスックが首相撲を多用。対する及川は首投げを決め、貴重なシュートポイントを1p獲得するも、パジョンスックは首相撲から後頭部に肘を入れたり(反則)、膝蹴りを出したり、バックを奪ってジャーマンを狙うなどで及川を面白いようにコントロール。間合いが開けば右ストレートや左ミドルを放つパジョンスック、ラウンド終了直前にはラッシュを仕掛ける。これは及川も真正面からワンツーを返して応戦するも、ローブローのダメージもあってか精彩を欠いている印象。



3R、パジョンスックは左右のミドルを駆使して及川を攻め込み、ラッシュを仕掛けて攻勢に出る。対する及川はタックルでパジョンスックを抱え上げて落とすも、シュートポイントには繋がらない。尚もパジョンスックがプレッシャーを強める中で及川は右ハイをヒットさせたが、パジョンスックは平然とパンチを返し、首相撲で及川を揺さぶっていく。終盤、及川が右ハイをヒットさせると、パジョンスックは思わず反則の肘打ちを使ってしまう。最後は両者が真正面から打ち合う中、ゴング後に及川がノーザンライト・スープレックスでパジョンスックを投げ捨てた。



試合終了。判定の結果、2Rにシュートポイントを奪っていたのが功を奏して3−0で及川が勝利したが、勝った気がしない及川は終始浮かない顔。



う〜ん、2Rのローブローは惨いものだったにせよ…。正直、試合内容では及川は負けていたからなぁ。とはいえ、シュートボクシングのルールに沿って勝利したのだから勝ちは勝ちでしょ。せめて、勝利者撮影くらいはしっかりやって欲しかったけどねぇ。

第十試合 なんだかヒヤヒヤものだな、ものだなぁ

スーパーウェルター級 エキスパートクラス特別ルール 3分3R + 延長無制限R
宍戸大樹(174cm/68.1kg/シーザージム/SB東洋太平洋ウェルター級 王者)
鈴木悟(183cm/69.6kg/Unit-K/UNIT-K/元プロボクシング日本ミドル級 王者)
[2R 1分39秒]
※フロントチョーク/鈴木は1Rにシュートポイント2

本日のセミファイナルは、意外な一戦。この試合がキャリア60戦目となる「SBの日本人エース」宍戸大樹に対するのは、元プロボクシング日本ミドル級王者の鈴木悟だ。鈴木というと元ボクサーということもあり、K-1 MAXで強豪を相手に苦戦している印象があるが、最近は元NKBミドル級王者の阿久津英一をKOするなどで二連勝。ようやく、キックのリングでの闘いに慣れてきたようだ。

NJKFでの健太戦を最後に引退した大野崇に代わるUnit-Kからの刺客。今回もメインを梅野に譲る形になったが、9cmという身長差を前に宍戸はどのように闘っていくのだろうか。




1R、開始早々にいきなり宍戸が浴びせ蹴りの奇襲。だが鈴木はこれに動じる事なく、ワンツー〜ボディのコンビネーションを宍戸に叩き込む。長い腕から繰り出されるパンチは非常に美しい。対する宍戸は、劣るリーチを右ハイ、ソバット、右ローといった蹴り技でカバーするが、鈴木は長いリーチを活かしたワンツーを多用して宍戸を徐々に追い詰めて行く。

そして左フックや左ボディで宍戸の動きを止めてコーナー際へと追い詰めた鈴木は、何とバックドロップで宍戸を後方へと投げ捨ててシュートポイントを2p獲得!観客が騒然とする中、劣勢に回った宍戸は尚も前に出てくる鈴木に前蹴りを入れて対処。だが、これで宍戸が追い詰められた事には変わりない。どうする宍戸っ!?




2R、1Rの劣勢から一転、宍戸が動く。右ミドルと右ローを駆使して鈴木の動きを止めに掛かると、組み付けば積極的に投げを狙う。徹底した蹴りで攻め込む宍戸に対して、鈴木はその勢いに押されつつも、長いリーチを活かしたワンツーでプレッシャーを掛ける。

だが宍戸は、ここで鈴木の首を捕えてフロントチョークへと移行。キャッチが入り、宍戸はグイグイと絞め上げるが、やがて型が崩れる。だが、鈴木がファイティングポーズを取ろうとすると一度、膝がガクッと落ちてしまう。そして、これを見たレフリーが試合を止めた。これに対して鈴木陣営は猛抗議をしたが、レフリーの判断は覆らなかった。




う〜ん、今日の宍戸は苦しい勝ち星を拾ったなぁ。まあ正直、最後のレフリーの判断は微妙だけどね。あの程度のダメージであれば、ダウン扱いでも良かったと思うんだけどねぇ。しかしまあ、やっぱり鈴木のパンチのコンビネーションは綺麗だなぁ。バックドロップまで出してくれたのあれば、もう立派なSB戦士と言えるだろう。またSBに参戦してくれないかな?


第十一試合 SBの歴史に残る一戦

スーパーウェルター級 3分5R + 延長3分無制限R
○ボーウィー・ソーウドムソン(168cm/69.6kg/タイ/WPKL世界ウェルター級王者、元ラジャダムナンスタジアム認定フライ級 王者、元WMC世界スーパーバンタム級 王者)
梅野孝明(178cm/69.9kg/シーザージム/SB日本スーパーウェルター級王者)
[2R 2分54秒 TKO]
※梅野の右目尻の負傷による/梅野は1Rにダウン1、2Rにダウン1とシュートポイント1、ボーウィーは1Rにダウン1、2Rにダウン1

本日のメインイベントはファン待望の一戦。「東洋のハルク」梅野孝明が、「ムエタイの壊し屋」ボーウィー・ソーウドムソンの牙城に挑む。


昨年一月に行われたムエタイの祭典、ムエロークで初来日を果たしたボーウィー・ソーウドムソン。この時はヴァヒド・ロシャニを相手に強烈なパンチの連打を浴びせ続けて、5RでKO勝利を果たした。そして昨年9月、SBに参戦したボーウィーは「SBの日本人エース」宍戸大樹にワンツーや左ボディの連打を浴びせて5RKO勝利。あの宍戸が何もできずに負けていく姿は、SBファンに強烈なインパクトを残した。日本格闘技界に突如現れた「ムエタイの壊し屋」ボーウィー。そして今日、その前に立ちはだかるのは「日本の壊し屋」だ。


「東洋のハルク」梅野孝明はここまで12戦12勝無敗6KO。80kg以上ある体重を70kgに絞り、フルスイングで繰り出すハンマーフックは相手を一撃で破壊する力がある。このところは四連続KOと勢いに乗る梅野、倒れた対戦相手の中には元ルンピニースタジアム認定ウェルター級王者のチョークディ・ポー・プラムックの名前もある。そんな梅野だが、左腕で相手をプッシングしながら、大振りな右のハンマーフックと左のハンマーボディ、そして右のハンマーストレートを振るうばかりの大味なスタイルに対しては、いまだにその実力を疑問視する声が多い。そういう意味でも、この試合で梅野が本物の強豪であるボーウィーと対戦すること大きいと言えよう。




1R、ボーウィーは序盤から、コンパクトながらも強烈な左右のフックで梅野に襲い掛かる。その破壊力に観客が驚きの声を上げたが、梅野は相手がボーウィーであっても戦法を変えず、いつも通りのフルスイングのハンマーフックで応戦していく。パンチのタイプはまったく違うが、二匹の怪物がガードも固めずにブンブンとパンチを振り回して殴り合う姿に、観客からは早くも大歓声が沸き起こる。



そんな中で、まず最初のダウンを奪ったのは、何と梅野だ!右のアッパーがハードヒットし、あのボーウィーがダウンを喫したのだ!このシーンを観た観客は上へ下への大騒ぎになるも、ボーウィーは「やるじゃないか!」と笑みを浮かべて立ち上がる。梅野もこれに笑顔で応える中、ボーウィーはファイティングポーズをとるとすぐさま梅野に接近、打ち合いの中で左アッパーを叩き込んで逆にダウンを奪い返す!ボーウィーはガッツポーズで観客にアピールするも、今度は梅野が笑いながら立ち上がる。いつも見ている立ち技格闘技とは何かが違う世界、文字通りの「決闘」を目の当たりに観客の大歓声は収まることがない。いや〜っ、これは凄い!

そして両者は尚も両者は足を止めて、フルスイングの殴り合いを展開。自分の闘い方を信じ、いつも通りに左腕でプッシングしながら、大振りな右アッパーと右のハンマーフックを連発する梅野。そして、振りが小さいながらも左右の腕でフック、アッパー、ストレートとあらゆるパンチを駆使するボーウィー。ガードの事など考えず、真っ向からパンチを打ち合い両者の闘いに観客の大歓声はまったく引く様子がない。凄い!本当に凄い試合だ!凄い試合なのだが…。梅野の被弾率が高いのがチョット気になるなぁ…。




2R、一分間のインターバルを挟んでも、両者はまったく戦法を変える事なく打ち合っていく。だが、パンチの正確さに優るボーウィーは、左アッパーを梅野のアゴに叩き込むと、下がる梅野を追いかけて強烈なラッシュを浴びせて梅野の右目尻から出血を誘う。尚も左右のフックに加えて左ボディを駆使して梅野の体力を削るボーウィー、劣勢の梅野の動きが徐々に鈍ってきたが、それでも左腕でボーウィーをプッシュしながら、強烈な右アッパーと右フックを返すのを忘れない。観客席はすっかり興奮状態で、もはやみんな何を叫んでいるのか判らない状態だ。だが梅野の出血は激しく、ここでドクターチェックが入る。オイオイ、こんな名勝負に水を差すなよ!止めるなよ!絶対に止めるなよ!



幸いにして試合は再開。大歓声の中、チェック中に体力を回復した梅野は強烈な左右のハンマーフックをブンブンと振り回して前に出ると、あまりの勢いに怯むボーウィーに右のハンマーフックを叩き込む!強烈な一撃にフラつくボーウィーに対して、梅野はそのまま右のハンマーフックを猛連打。苦しくなったボーウィーが梅野に組み付くと、梅野は首投げを放って貴重なシュートポイントを1p獲得!うん、ここに来てのシュートポイントはデカい!



だが、尚も梅野の勢いは止まらない。右のストレートでボーウィーの動きを止めた梅野は、ボーウィーが右フックを返したところに、真の必殺技である右のハンマーストレートがモロにヒット。この一撃でボーウィーは四つんばいにダウン!ここ最近、総合格闘技でもプロレスでも、そしてキックボクシングでも聞いたことがない程の大歓声が後楽園ホールにこだまする。すげぇ!すげぇよ梅野!本当にすげぇ…んだけど、あまりに興奮しちまったから写真がボヤけちまったよ…。



だが、ボーウィーはスクッと立ち上がると、ダウンの失点を挽回すべく梅野に猛然と襲い掛かる。梅野の左腕のプッシュを無視して前に出たボーウィーは左フック、左アッパー、そして左の膝蹴りを梅野に浴びせると、右フックで梅野をフラつかせ、頭が下がったところに左の膝蹴りで追撃。モロに喰らった梅野がダウンを喫すれば大歓声は一転、今度は悲鳴と激励が後楽園ホールを包む。



それでも立ち上がる梅野、観客からは再び大歓声が沸き起こったが…。ボーウィーの膝蹴りで梅野の右目尻からの流血は更に激しいものに。レフリーは梅野の顔を見るなり、すぐさま試合をストップ。「ふざけるなっ!」「もっとやらせろっ!」「死ぬまでやれやっ!」。レフリーのこの裁定に、観客の悲鳴と怒号は暫くの間、鳴り止むことがなかったが、ボーウィーが勝利をアピールすると、その実力を素直に認める拍手が沸き起こった。そしてリングを去っていく梅野にも大歓声が。



…凄い。本当に凄い試合だった。後楽園ホールがあんなに揺れたのは、それこそ全日本キックで伝説の一戦となった「前田尚紀 vs 梶原龍児」とか、あれ以来なのではないだろうか。まるで引く事を知らず、ガードなどお構いなしでひたすら殴り合う両者。そしてその一発一発が相手をKOできる破壊力を秘めている…とくれば、観客が沸かないワケがない。いや〜っ、それにしても梅野はボーウィーを相手にしても、戦法をまったく変えなかったなぁ(笑)。男らしいというか、なんというか…。まあ、お陰でこちらの期待や想像を、遥かに超える激闘が見れたのだから、感謝しなきゃいけないな。

キャリア13戦目にして初敗北を喫した梅野。だが、今日の敗北を非難する声は少ないだろう。むしろ、生で観ていれば梅野の実力を認めざるを得ないはずだ。何故なら梅野の荒削りな闘い方は、あのボーウィーと真っ向から勝負できる程のものだったのだから。

雑感

観戦後、僕は本当に久々に『放心状態』に陥ってしまった。


日下部竜也が良かった。渡辺久江が無事に勝利してホッとした。イ・スファンが強かった。鈴木悟に期待したい。そういった細々とした感想は色々ある。

だが、あれだけのメインイベントを観せられたら、もう他には何も残らない。凄かった、本当に凄かった…。


東京近郊に住んでいて、
格闘技界に絶望している人は、
梅野孝明の試合を観に来ればいい。


今、日本の格闘技界に自信を持ってそう言える選手が存在する事は本当にいい話だと思う。本当にそう思う。


以上、長文失礼。