4/18 新日本キック 後楽園ホール興行 観戦記 Ver1.0

Mask_Takakura2010-04-18

今日の観戦記は興行の半分だけだけど、セミ前の試合だけを観に来た人も少なくないんじゃないかなぁ

本日は後楽園ホール新日本キックTITANS NEOSを観戦。


日本のキック界でも、NKBと並ぶ鎖国団体として知られる新日本キック。そんな彼らが唯一、他団体選手と交流できる興行がTITANS NEOSだ。

今回はチームドラゴンとの対抗戦を中心に据えているようだが、しかし興行の最大の目玉はセミ前に組まれた立嶋篤史vs深津飛成の一戦だろう。90年代のキック界を牽引し、交通事故の憂き目に遭っても六年ずっとリング復帰を目指した立嶋。00年代に新日本キックの軽量級の頂点に君臨し、二年半前に引退するも立嶋の復帰に感銘を受けて復帰した深津。今日、キック界を揺るがした二人の男が、後楽園ホールを震撼させる。

またメインでは、バンタム級のタイトルマッチが組まれた。ズバリ言って僕は、新日本キックバンタム級にどんな選手がいるかも知らないのだが、いい機会だから今回は勉強させてもらおう。


ってなわけでチケットを購入、B席5000円。う〜ん、最近はキックもチケット代が高くなったなぁ。観客の入りは満員、超がつくわけじゃないけど満員。正直、今日は立嶋vs深津以外に目玉はないんだけど、逆に言えば…このカードだけで、これだけ集まるわけか。イヤイヤ、大したモンだな。

第六試合 新日本キックvsチームドラゴン その1、互角の闘い

ウェルター級(肘なし) 3分3R
△佐々木超一(伊原)
△坂本洸巳(チームドラゴン/J-NETWORKウェルター級 四位)
[判定 1−0]

う〜ん、さすがにどちらの選手の知識もないと、書けることが何もないというか(苦笑)。とりあえず佐々木超一はテコンドーがベースの選手で、戦績は19戦8勝2敗9分2KOという引き分けの多い選手で、坂本洸巳はJ-NETWORKで新人王になった事があるそうで、戦績は12戦10勝2敗2KO。戦績だけ見ると坂本が有利な気がするが、まあ見てみないと判らないよね。




1R、佐々木が右ミドルと右ローを連発してプレッシャーを掛ける。対する坂本は左ハイを散発しつつワンツーと左ローを返していくが、佐々木は構わず右ミドルを中心に蹴り続けていく。だが坂本も序盤にストレートをヒットさせるなどで反撃。佐々木のプレッシャーは強いが、坂本は膝蹴りで巧くしのいでいく。



2R、1Rと同じく佐々木はプレッシャーを掛けて前に出る。右ローと右ミドルを武器とする佐々木に対して、坂本は1Rと同じくパンチを返して応戦。今のところは互角の展開だ。中盤以降、両者は首相撲からの膝蹴りを使用する場面が徐々に増えたが、ここでも前に出ていたのは佐々木の方だが、坂本もよく応戦している。



3R、佐々木は坂本の蹴りにパンチ合わせるも、倒れた坂本に蹴りを入れてしまい、レフリーから口頭注意を受ける。それでも佐々木は前に出たが、坂本は左ローを返す。佐々木はソバットを放ち、ストレートの連打から首相撲へと繋ぐが、対する坂本もソバットで応戦すると、組み付いてボディへ膝蹴りを放つ。

佐々木は首相撲から膝蹴りを放ちつつ右ミドルで攻めるも、坂本はカカト落としで応戦。終盤には両者のソバットが交差する場面もあるなど、両者は最後まで互角の展開を繰り広げた。




判定は難しい内容だったが、アッサリとドローになった。あ、マスト判定じゃないんだ。そういえば、そうだった気もするなぁ。そしてこれで佐々木は「戦績の半分が引き分け」になっちゃったのね。なんだか気の毒だな。勝ちでもなく負けでもなく、こう引き分けが続く選手の心理って想像がつかんよ。


第七試合 新日本キックvsチームドラゴン その2、体重差がねぇ…

ヘビー級 3分3R
○嚴士鎔(伊原/日本ヘビー級 三位)
●MANABU(チームドラゴン)
[判定 3−0]

嚴士鎔(げん しよう)は新日本キックのヘビー級で活躍する選手で、かつては野地竜太と対戦したり、内田ノボルとドローになった事もある選手だ。対するはK-1で活躍する京太郎と同門、チームドラゴンのMANABU…なのだが、今日の嚴の発表体重は210パウンド(95.25kg)、対するMANABUは178パウンド(80.74kg)。ひどい体重差だ。




1R、体格に優る嚴は序盤から前に出てMANABUをコーナーへ詰めると、左ロー〜右ストレートを叩き込むと、これ以降もガンガン前に出て、左右のローや左フックをヒットさせていく。嚴の圧力に押されっぱなしのMANABU、必死に右ローで応戦するも、嚴のプレッシャーは簡単には衰えない。途中、嚴のローブローにより試合は中断したが、嚴はパンチ&右ローを武器に休まず攻め続けて優位に立つ。う〜む、体格差が激しすぎて試合になってない…。



2R、このラウンドも嚴が距離を詰めて攻める。序盤、MANABUの右ストレートがヒットしたが、嚴は左フックを連続で叩き込んで倍返し。尚もプレッシャーを掛けて右ローを放つ嚴に対してMANABUは中盤から、これまでもコツコツと放っていた右ローをより徹底的に放って反撃。左脚のダメージが溜まってきてガードが下がる嚴に、MANABUが右ストレートを入れると、嚴は思わず尻餅を付いた。ダウン性のヒットのように見えたが、カウントは数えられず。むむぅ。



3R、2Rに右ローで流れを掴んだMANABUが、序盤から距離を詰めて右ローを放っていく。劣勢に回った嚴もワンツーと右ローで応戦したが、ここで嚴の左フックがクリーンヒット。観客の歓声の中、これで気力が沸いた嚴が再び攻勢を掛ける。勢いよくワンツー〜右ローで攻める嚴、対するMANABUは勢いに押されつつも右ローを返していく。ふ〜む、MANABUはここを我慢しないと勝ち目がないが…。

中盤以降は両者に疲れが出始め、試合はややグダグダになったが、それでも嚴は右ローを中心にMANABUを攻め込んで行く。MANABUも右ローを返していったが…ここにきて体格差が仇となり、MANABUの動きが目に見えて鈍って行く。対する嚴は試合終了まで、ワンツーと右ローを連発して攻め込んだ。




判定の結果、3−0で嚴が勝利。



う〜ん。体重差も何するものぞ、MANABUにも充分に勝機はあったんだが…。っていうか、2R終盤のスリップがちゃんとダウンと数えられたらドローでしょ。う〜ん、あんまり言いたくはないけど、なんか伊原ジムびいきのレフェリングのような気がするなぁ…。

目指せ!明日のゴールデン小雪!(小雪NJKFだけど)

休憩前には何故か芸人によるショートコントが。アップルパインなる女性芸人二人がおっぱいを強調していた。ホリプロ所属らしいよ。



伊原タイムは恫喝タイム、気合が入り過ぎなんだよなぁ

休憩後にはTITANSのプロデューサーである伊原信一会長による挨拶が。


「今日、ご来場の皆さんの暖かい心に感謝いたします!私は昔から、何でもいいから『一番になりたい』と思っていました!それに対して恩師が『頑張れ!』と声を掛けててくれて、一杯ご飯を食べさせてくれました!今は私がご飯を食べさせる番になりましたが、ここには良い選手が沢山います!皆さん、彼らを精一杯、応援してあげてください!」。




この後、K-1 MAX 63kg級トーナメントで大月晴明と対戦する松本芳道が登場し、挨拶を行った。ふ〜む、相手はかつてキックボクシング界に名を馳せた強豪だけど、松本もライト級の現役王者だからねぇ。激戦に期待しよう、僕は元全日本キックのファンだから大月を応援するけどね(苦笑)。


第八試合 新日本キックvsチームドラゴン その3、意外に強いなぁ

68kg契約 3分3R
○渡辺健司(伊原稲城/日本ウェルター級 四位)
●吉川英明(チームドラゴン/J-NETWORKウェルター級 三位)
[判定 2−0]

ふ〜む、やはり新日本キックの選手って知らない選手が多いなぁ。この試合に登場する渡辺健司はこの階級の成長株で、戦績は16戦6勝3敗5分1KOだそうだ。対する吉川英明はJ-NETWORK全日本キックに参戦していた選手で、戦績は26戦16勝7敗3分6KO、パンチが得意だけどミドルやテンカオも放てるトータルファイターだ。




1R、渡辺が序盤から攻める。自らは下がりながらワンツー、左ミドル、左ハイを駆使して吉川を圧倒。一発のパンチが非常に重い渡辺、距離が開けば右ローと左ミドルが放たれる。対する吉川は前進を続けて渡辺をプッシュするも、渡辺は下がりながらも手数多く吉川を攻める。左ミドルを重ねていく渡辺は、吉川が接近すればワンツーを返す。渡辺の戦法はムエタイっぽいな。



2R、1Rのペースをキープする渡辺がワンツーと左ハイを重ねるも、吉川は距離を詰め続ける。だが渡辺はパンチで吉川を迎撃すると、打つ手の無くなった吉川の手数が減っていく。それでも吉川は接近したタイミングで右ローとパンチを繰り出すも、渡辺はワンツーに加えて首相撲からの膝蹴り、右アッパー、左ボディを駆使して吉川を迎撃。吉川が攻略の糸口が掴めずに大苦戦しているなぁ。



3R、吉川は距離を詰めてワンツーを放つも、渡辺は倍の数のパンチ、そして肘打ちで迎撃すると、首相撲から膝蹴りで追い討ち。吉川は尚も距離を詰めたが、渡辺は左ミドルとワンツーを返していく。

終盤、後が無くなった吉川は、首相撲からボディへの膝蹴りとフックで反撃したのをきっかけに、休むことなくワンツーと右ローで攻め込んでいく。対する渡辺はやや押される展開だったが、ワンツーと左ミドルでキッチリと反撃していた。




判定の結果、2−0で渡辺が勝利。ん?2−0なの?どう観ても渡辺の勝ちだと思うのだが…。でもまあ、渡辺が手堅く勝ちに行ったねぇ。吉川を相手にこれができるのって、渡辺って結構強いのかもなぁ。


第九試合 新日本キックvsM−1ムエタイ、曲者赤羽、キック界にはばかる!

フェザー級 3分3R
△菊地大介(伊原稲城/日本フェザー級 一位)
赤羽秀一(WSRフェアテックスジム/J-NETWORKフェザー級 九位)
[判定 1−1]

長年、新日本キックフェザー級の頂点に君臨し続けた菊地剛介(現在休業中)の双子の兄、菊地大介。剛介に代わってフェザー級の頂点を目指すべく、今年1月の興行では現王者の蘇我英樹と対戦するも判定で苦杯を舐めた。もう一度、王座戦を実現するためには、地味ながらも実力者として知られる赤羽秀一を倒すことは必須だろう。ちなみに赤羽は、入場の際にトップロープをまたごうとしてコケていた。相変わらず、とぼけたキャラクターだなぁ。




1R、菊地は下がりながら左ミドルと右ローを放つも、赤羽はズンズンと前に出続けて、首相撲からボディへ膝蹴りを入れていく。菊地も首相撲で対抗しようとしたが、この展開は赤羽が最も得意とする攻め方だ。ブレイクが掛っても赤羽はガンガン前に出続けて、首相撲からボディへ膝を入れていく。菊地も必死に膝蹴りを返すが、赤羽は首相撲の技術を駆使して優勢に立っている。菊地はラウンド終了直前に右肘を放って意地を見せたが、赤羽は動じない。



2R、このラウンドも赤羽はひたすら前に出ては、首相撲からボディへ膝蹴りを重ねていく。対する菊地、ブレイクで距離が離れたところに右ローを重ねていくが、赤羽はお構いなしに前へ出る。赤羽の首相撲に対して、菊地も膝蹴りを返したが、ここまでは赤羽の徹底した首相撲からの膝蹴りと投げの前にペースを乱されている印象。



3R、このラウンドも赤羽は首相撲からの膝蹴りと投げを続ける。菊地はパンチを返して行くが、赤羽の首相撲は尚も続く。こうして赤羽の首相撲地獄に嵌った菊地の動きに疲れが出ると、赤羽は縦の肘打ちで流血を誘おうとする。菊地はワンツーを返すも、赤羽は最後まで首相撲固執した。



ここで試合終了。判定の結果は1−1でドロー。



う〜む、試合のペース自体は赤羽が掴んでいたと思うけど、アウェーの地で有効打が出なかったのが痛い。5Rあれば赤羽が勝てる展開だったんだけどねぇ…。

第十試合 新日本キック vs 全日本キック、日本刀の切れ味は健在!

フェザー級 3分5R
○立嶋篤史(ASSHI-PROJECT/元全日本フェザー級 王者)
●深津飛成(伊原/元日本フライ級 & バンタム級 王者)
[3R 26秒 TKO]
※左肘打ちによる頭部のカット

今日はこの試合を目的に観戦に来た人は多いだろう。90年代のキック界を牽引して伝説を作った立嶋篤史。00年代の新日本キックを彩った深津飛成。二人の伝説が今日、このTITANS NEOSで激突する。…それにしても、すげぇマッチメイクだなぁ。


90年代の全日本キックで活躍し、「年俸1000万円プレイヤー」として名を馳せた立嶋篤史。いじめられた過去を断ち切るべくキックボクシング界に身を投じ、高校生で全日本キックフェザー級王者となった立嶋。以降は様々な発言(「許されるならば、対戦相手を後ろからナイフで刺してやりたい」 http://number.bunshun.jp/articles/-/11748 より)などで話題を呼んだ。

特にライバルと言われた前田憲作との闘いでは、前田の一見軽薄そうな見た目も相まって抜群のコンストラストとなり、格闘技マニアの注目の的となる(1992年〜1993年)。1997年、K-1フェザー級トーナメントを開催。前田が参戦が決定する中で立嶋の動向に注目が集まる事に。石井和義館長からも熱烈なラブコールもあったが、打倒ムエタイを掲げる立嶋はK-1に背を向けた。不器用すぎる立嶋の生き様、だがそれがファンの心を惹きつけて止まない。立嶋篤史とは、そういう選手なのだ。

時の流れは恐ろしく、90年代後半からの相次ぐ分裂劇でキック界は散々になり、全日本キックも倒産を経験。そんな中、若い頃から第一線で闘い続けてきた立嶋も、ダメージの蓄積のためか徐々に勝ち星から遠ざかるようになり、全日本キックの主役は小林聡魔裟斗へと移っていく。その魔裟斗は2000年に全日本キックを離脱することになるが、立嶋はその翌年の2001年にひっそりと離脱。

その後、立嶋は当時は新興団体だったNJKFで闘うようになるが、聞こえてくるのは「○○(選手の名前)、立嶋超えを果たす!」という話ばかり。ライバルの前田が2002年10月、一足先に現役を退いてチームドラゴンを創設する中で、2003年6月にはIKUSAの舞台で前田の弟子、萬田隼人に判定で敗れてしまう。更には同年12月に交通事故で大怪我を負ってしまい、以来立嶋はキック界から姿を消す事になる。この時、誰もが「立嶋は引退した」と思ったが、こんな状況でも本人の口からは「引退」の二文字が出る事はなかった。

そんな立嶋が突如リングに復帰したのは昨年9月、このTITANS NEOSのリングだ。小野智史を相手に1Rはラッシュを浴びるも、2R以降は代名詞の右ローで攻め込み判定勝利を修めた。六年ぶりの復帰戦を勝利で飾った立嶋が、69戦36勝28敗4分25KOという数字を引っさげて、今日もBonnie Tylerの「HERO」に乗って日本刀を携えて入場。おお、これぞ立嶋だ!ちなみにセコンドには、長年の盟友である田村潔司の姿が。




その立嶋に相対するのは、新日本キックのフライ級とバンタム級の二階級制覇を果たし、00年代の新日本キックの軽量級に君臨し続けた深津飛成。「男を勃たせて女を濡らす」を公言し、真っ黒に焼いた身体で白熱した試合をやり続けた男だ。

現役時代は、たとえトレーナーが交通事故で亡くなっても、リング上では少し泣いた後で「財布は重く!股間は軽く!」と明るい笑顔を振りまく絶倫男だった深津は、フライ級では建石智成と名勝負を繰り広げ、バンタム級では蘇我英樹や阿部泰彦といった面々と激闘を繰り広げ、合間にはムエタイの現役ランカーをも撃破。新日本キックの軽量級の看板だった男は、阿部へのリベンジ戦で勝利した2007年10月に引退を表明。この時点での戦績は67戦46勝14敗7分25KO。そう、この男も立嶋の戦績に負けない程の伝説を築いているどころか、戦績だけなら立嶋よりもずっと上なのだ。

そんな深津がキックボクシングを始めた切っ掛けこそ、誰あろう立嶋の存在なのだ。「立嶋が棋士なら、僕は棋士になっていた」という程に心酔している深津が今回、現役復帰したのも、立嶋が第一線に復帰したからだという。それでも二年半のブランクは本人にとって不安材料だったようで、ましてや対戦相手が憧れの立嶋とあって、なかなか落ち着く事ができなかったらしい。この一戦に向けて深津は、パンフレットのインタビューにて「太陽で夕日が一番きれいなのは、朝日の時間もあったし、真上から照らした時間もあったから。知らない間に消えようとしていたけど、それは雲に隠れていただけで、まだ地平線には沈んでいない」と語る。

「真っ直ぐにしか生きれない者同士の闘いを見せる」と意気込む深津は、仲間達の大声援を受けて入場。そして立嶋の日本刀のパフォーマンスには、敬意を込めて深く一礼。う〜ん、この試合は入場だけでお腹が一杯になるねぇ。




1R、大深津コールと大立嶋コールが交差する中で試合は開始。立嶋は得意の右ローで攻めていくも、深津はキレのあるワンツーをヒットさせて早くも立嶋のアゴを跳ね上げる。深津応援団のストンピングが会場に鳴り響く中、深津は右アッパーをヒットさせると、立嶋は一発でフラフラになり、レフェリーがスタンディングダウンを宣告。深津応援団の大歓声、そして立嶋ファンの声援と怒号。後楽園が二人の生ける伝説を前に揺れる。



ファイティングポーズを取った立嶋を、深津はチャンスとばかりに尚も強烈なパンチの連打で攻めていく。ブランクを感じさせない深津の動きに歓声が沸く中、立嶋は右ローで反撃するもローブローに。だが再開後も、立嶋は迷う事なく右ローを放ち続ける。そんな立嶋に深津はボディブローを連打、ラウンド終了前にはフック連打の猛攻。強烈な打撃を前にここまで押されっぱなしの立嶋だが、まずは1Rを耐え切った。



2R、あくまで自分の法を曲げない立嶋は、最大の武器である右ローを連打し続ける。深津もフックを当ててヒットさせて反撃していくが、1Rのラッシュで体力を消耗したのかこの後の攻撃が続かない。更に立嶋が右ローを放つと、喰らった深津が逃げる。左脚のダメージが大きいようだ。



この様子を見た立嶋は更に右ローで攻めると、嫌がる深津がクリンチで逃れるようになる。思わぬ逆転劇に立嶋ファンからは大立嶋コール、そして深津応援団からは深津への激が飛ぶ。そんな中、勢いに乗った立嶋はまだまだ右ローを放つ。深津はワンツーや左アッパーを入れて反撃するも、疲れやダメージで打撃が連続で出てこない状態だ。試合がやや一方的になる中、立嶋は左ミドルと右ローで深津を追い詰める。



3R、伝説の対決の決着は突然ついた。ここまで右ローで攻め込み続けた立嶋が、至近距離から左の肘打ちを一閃。この一撃で深津は頭部から出血、ドクターチェックが入り、やがてレフェリーが試合を止めた。観客は大歓声、勝った立嶋には大きな声援が飛んでいた。



マイクを持った立嶋は「こんな世の中だけど、頑張っていきましょう!」とアピール、観客は大歓声で立嶋の呼びかけに応えた。花道を引き上げる際には仲間が大勢詰めかけ、全員で一斉に万歳三唱。みんな立嶋という選手が大好きなのだろう。僕も好きだけどさ。



う〜ん、凄い試合だった。1Rでガス欠を起こした深津、長年の闘いでドランカー気味の立嶋。そんな男達の激闘は、深津の言うとおりの「太陽で夕日が一番きれい」と言えるような魂の入った激闘になったと思う。1Rの深津はKOに拘り、立嶋は昔からの得意技である右ローを武器に闘った。「真っ直ぐにしか生きれない者同士の闘い」かぁ、実際にその通りになったなぁ。

ただ、やっぱり立嶋がこれからも現役を続行することは心配になるね。1Rのダウンも随分とアッサリと喫していたし、長年のダメージの蓄積は相当のものなのだろう。でも本人は周りが何を言おうとも現役を続行するだろうしなぁ…。なんとも複雑な気分にさせられるねぇ。



第十一試合 新日本キックvsボクシング?K-1?HEAT?、肩書きが多くてわからん(苦笑)

ヘビー級 3分3R
天田ヒロミ(デジタルスピリッツ/HEATキックルールヘビー級 王者)
松本哉朗(藤本/日本ヘビー級王者)
[2R 24秒 KO]
※左フック

往年のK-1 JAPANのリングで活躍していた天田ヒロミ。2007年10月に傷害事件を起こしてからはK-1のリングには上がれなくなったが、2006年にTITANSに上がったのが縁で、新日本キックのリングにはチョコチョコと顔を出していて、最近は名古屋発の格闘技のHEATにて、キックルールのヘビー級王者にもなった。K-1のリングを経験した身としては、たとえ相手がホーム団体の王者であっても負けられないだろう。

そんな天田に対する松本哉朗は、元々は日本ミドル級王者だったが、昨年ヘビー級に転向して日本ヘビー級王座決定トーナメントに出場し、連続KOでアッサリと王者に。昨年10月には第七試合に出場した嚴士鎔を右の肘打ちで2RにTKOで勝利。新日本キックの中でも屈指のパンチ力とテクニックを誇る選手だが、両者の間に横たわる9kgの体重差(発表では天田は230パウンド(104.33kg)、松本は210パウンド(95.26kg))が気になるところ。




1R、ボクサー攻略の定石とも言えるローキックを連発する松本。キレのある左ローが、次々に天田の右脚を襲う。対する天田は得意のパンチで攻めるべく前に出るも、松本は突き離して左ローを放つと、怯む天田にストレートを当てていく。早くも左ローが効いてきた天田、松本は非情の右のインローで攻め込むも、ラウンド終了前に天田の左フックがクリーンヒット。体重差も手伝ってか、松本は一撃でダウンを喫してしまった。あらら、僕はこのまま松本が一方的に勝つと思っていたんだがなぁ…。



2R、1Rの失点を挽回すべく、松本は下がりながらの左ローを連打して攻勢に出たが…。迎えた中盤、これまで我慢していた天田は一気に距離を詰め、、再び左フックを一閃!モロに喰らった松本は再びダウンを喫し、立ち上がることができなかった。天田の思わぬ逆転劇に、観客は大いに沸いた。



う〜ん、僕は松本みたいに、コツコツと技を積み重ねるタイプの選手が好きなんだけどなぁ…。体重差なのかパワー差なのか、いざ天田が前に出てきた時に、彼の突進を捌けなかったのが痛いなぁ。勝負は非情の世界、それでも僕は松本に勝って欲しかった…。


第十二試合 新日本キックvs新日本キック新日本キックでやれ(笑)

日本バンタム級タイトルマッチ 3分5R
○木暮智(ビクトリー/日本バンタム級 王者)
●池田茂由(伊原/日本バンタム級 一位)
[判定 3−0]

本日のメインイベントは、日本バンタム級のタイトルマッチである。…と言っても、普段は新日本キックを観戦しない僕にとっては、二人とも馴染みの薄い選手なんだけどね。とりあえずパンフレットによると、この二人は昨年7月と10月に対戦して一回目は池田茂由、二回目は木暮智が勝利しているそうだ。ふ〜む、たった一年の間に三回も同じカードでタイトルマッチをやるのか…。それって、ランキングが機能していないって事じゃないの?という気もするが、とりあえず試合の図式は「左ミドルの木暮 vs パンチの池田」という事らしい。三度目の勝負で、両者に白黒はつくのか?




1R、池田は序盤から距離を詰めてワンツー〜右ローを放ち、対する小暮は下がりながら右ローを返していく。両者の右ローが交差していく中、池田は首相撲からの膝蹴り、ワンツー、右ミドル、そして右ローで圧倒的な攻勢に出る。終盤には池田が距離を詰めてワンツー〜右ローを放つなど、手数で木暮を圧倒、池田応援団は早くもベルト奪取を確信したかのような大騒ぎだ。



2R、池田は尚も右ローを中心に攻め込む。右ストレートを放てば、喰らった木暮がスリップダウンして池田応援団は大歓声。対する木暮は左ミドルを返すも、池田は右ローを連発してペースを譲らない。何とか状況を打開したい木暮は飛び膝蹴りの奇襲を掛けるも、池田は動じずに右ローと右ミドルを重ねていく。木暮はこれまでと変わらず左ミドルを返すが、池田の右ローがちょっと効いてきた様子。ふ〜む、なんとも一方的だなぁ。



3R、池田は右ローから裏拳を放ったが、これに対して木暮が裏拳を返すとこれが見事にヒット。小暮応援団からは歓声が沸いたが、池田は怯まずに前に出て右ローを放っていく。木暮は離れながらの左ミドルで応戦、両者の蹴りが交差する中でややダメージがありそうなのは、やはり木暮の方だ。終盤、池田はワンツーで木暮を押し込んで一気に攻勢、池田応援団の歓声が鳴り止まない。う〜ん、このまま行けば池田が王座奪取だろうなぁ、とこの時は思っていた。



だが、4Rに試合の流れがガラリと変わる。池田はこれまでと変わらずに右ローを中心に攻め込んでいたが、このラウンドから木暮が突如爆発。ジャブの連打で池田を遠ざると、溜め込んでいたものを一気に出すかの如く左ミドルを連発して池田にダメージを与えていく。勢いに圧された池田もワンツーと右ローを返すも、木暮はお構いなしに前に出て、左ミドルを連発する。このラウンドはほぼ一方的に蹴り続けた木暮に対して、これまでは元気のなかった木暮応援団が大歓声で後押し。う〜ん、これまで動きが悪かったのは、力を温存していたってことなのかなぁ。正直、この展開は読めなかった…。



5R、完全に主導権を握り返した木暮は、池田の右ローをかわして左ミドルを入れると、更には右ストレートを池田の顔面に叩き込む。池田は右ローを返すも、木暮はラストスパートとばかりに、自らは下がりつつも左ミドルと左ローの数を増やして攻め込んでいく。対する池田も前に出てのワンツー〜右ローを放つが、この間にも木暮の左ミドルがバシバシとヒット。それでも池田は、試合終了前にワンツー〜右ミドルを木暮に叩き込んで意地を見せた。



さて判定。前半は池田ペース、後半は木暮が圧倒という試合内容だったが、僕としては前半の猛攻を評価して池田の勝利だと思っていた。しかし実際の判定は3−0で木暮の勝利。ふ〜む、後半の小暮の圧倒的な爆発力が評価されたのかな?



しかしまあ、読めない展開だったなぁ。前半にラッシュして後半はヘトヘト…というのは良くある光景だけど、前半は耐えに耐えて後半は一気に爆発!というのは、僕自身はあまり観た事がないかもなぁ。調べてみると、小暮は34歳のベテラン選手。成程、自分のスタミナと相談してこういう闘い方になったのかぁ。いや〜、世の中には色々な選手がいて、色々な作戦があるもんだなぁ。目からウロコです。

雑感

ふむ、面白かったなぁ。セミ前の立嶋篤史vs深津飛成の一戦は、二人とも長い間、第一線を退いていた割には、ちゃんと試合内容でも魅せてくれたと思うしね。深津はこの先、自分を追い込んでスタミナを付けれれば、まだまだ第一線で闘えるんじゃないかなぁ。まあバンタムに絞るのは無理だとしても、フェザー級の選手として他団体の選手との夢の対戦も観てみたいなぁ。あと、メインイベントの逆転劇には素直に驚かされたね。正直、今日の興行は立嶋vs深津以外は、どんなカードが組まれているかも判らないまま観戦したんだけど、意外といっては失礼だけど「当たり」の興行でしたな。立嶋もカッコ良かったしね。




ただ、ヘビー級の二試合(第七試合、第十一試合)は体重差が酷くて、僕好みの試合にはならなかったなぁ。新日本のヘビー級には体重に上限が存在しないので(86.00kg以上)「不公平だ!」という気はないけれど、同じくらいの体重なら軽い方が勝っていたと思わせる展開を、体重差からくるパワーだけで逆転しちゃうのは、なんか見ていて切なかった。MANABUも松本哉朗も決して弱い選手ではない事は証明したと思うので、これからも頑張って欲しいのだが…。


以上、長文失礼。