2/13 SB 後楽園ホール興行 観戦記 Ver1.0

「新年一発目の興行」は、賑やかな内容に

本日は後楽園ホールシュートボクシング(以下、SB)を観戦。


今年のシリーズ名を「維新」と名付けたSB、その第一弾となる本日の興行は「選手のお披露目」の意味合いが強い興行となった。Girls S-CUP 2009王者のRENA、SB東洋太平洋ウェルター級王者の宍戸大樹、そしてSB日本スーパーウェルター級王者の梅野孝明が揃い踏みを果たし、オーストラリアの立ち技ジムであるJUBOUTから送られた選手と対戦する。今年は二年に一度の祭典、S-CUP開催の年。今年最初の興行で、三人のエースは何を見せてくれるのだろうか。今年のSBが進む方向性を示す上でも、大事な興行だと言えるだろう。

また今日のSBの興行には、現CAGE FORCEライト級王座の弘中邦佳が参戦。女子プロレスや女子総合格闘技で活躍する風香は、格闘技引退マッチの相手として、同じくプロレスラーの朱里(元KG)と対戦。うむ、今日の興行は一年の一発目にふさわしい、華やかな興行になりそうだね。


ちなみに観客の入りは約九割、満員の入りである。最近は後楽園ホールを満員にできない団体も増えてきたが、その中でこの観客動員は大したモノだ。

第五試合 「風香 格闘技引退試合」は、非常に残酷な内容に

女子48kg契約 2分3R + 延長3分1R
○風香(シーザージム新小岩)
●朱里(SMASH)
[判定 2−0]

女子プロレスラーでありながらジョシカクにも参戦し、S-CUP 2008にもワンマッチにて参戦を果たした風香が、「格闘技ラストマッチ」と銘を打ちSBのリングに再登場。正直、S-CUP 2008の時は入場時のダンスが派手だった割に、肝心の試合がお粗末だった印象のある風香だけど、女子プロレスという絶滅寸前のジャンルの中で、己のルックスを武器にあらゆる場所で自分を売り込む姿勢は素晴らしいと思う。

で、その風香の対戦相手となるのは…所属団体だったハッスルから独立したプロレス&格闘技団体、SMASHに所属する元KGこと朱里。何でもこの試合は、朱里の挑戦状を風香が受ける形で実現したのだそうな。僕自身、朱里という選手を観るのは初めてなのだが、意外な身長の高さに驚かされた。その上、朱里は空手経験者。こりゃ、風香の格闘技引退は、思ったよりも厳しい一戦になりそうだなぁ…。


1R、空手出身の朱里が仕掛ける。ガンガン距離を詰めて、ワンツー〜左ミドルを連打する朱里に対して、風香は朱里の前進を止められずに大苦戦。必死にパンチによるカウンターを当てようとするが、懐の深い朱里には当たらない。う〜ん、朱里は打撃慣れしてるなぁ、そして風香はまったく打撃に慣れていないなぁ。




2R、1Rの流れで自身を得たのか、このラウンドも朱里がワンツー〜左ミドルを武器に前に出る。対する風香、朱里の勢いを前に下がりながらも、カウンターのワンツーや打撃逃れのタックル、そして朱里の接近を止めるための前蹴りを駆使して攻撃をしのいでいく。気がつけば、朱里の勢いが1Rよりも落ちてる。ぬぬぅ、攻め疲れか?



迎えた3R、今度は打撃を喰らい続けていた風香の勢いが落ちる。気力を絞って前に出るも、まったく手数が出て来ない風香に対して、朱里はワンツー〜左ミドルで押し込み、右ストレートを何発もヒットさせる。前進してくる朱里の勢いを止められない風香の動き止まる中、朱里は前に出てのワンツーを連打。この時の風香は本当に苦しそうだった。



ってなワケで試合は終了。判定の結果、2−0で朱里が勝利。う〜ん、いくら何でも、この内容でドローって事はないと思うけどなぁ…。



試合後は風香の格闘技引退セレモニー。マイクを持った風香は、昨年は体調を崩していた事を告白すると、最後の試合を沢山の人に観てもらった事を素直に喜びつつ、次の人生でもSBに挑戦したという事実を自信にして生きていくと宣言、観客の拍手を誘っていた。最後に10カウントゴングが鳴り響き、風香の格闘技人生は終わり告げた。



ふ〜む、風香の引退試合は、思った以上に厳しい展開になったなぁ。朱里の打撃の実力に対して、風香がまったくついて行けてなかったように思う。正直、そんなに打撃が巧い選手ではない事は判っちゃいたが、もう少し実力的に見合う選手を当てても良かったんじゃないのかなぁ?という気もするなぁ。

対する朱里だけど、空手出身らしい攻撃方法に加えて、長いリーチから放たれる打撃にも魅力を感じたなぁ。機会があれば、Girls S-CUP 2010にも参戦して欲しいところだね。

第六試合 「日豪女子高生対決」は、一方的な内容に

女子49kg契約 2分3R + 延長3分1R
○RENA(160cm/48.6kg/及川道場/Girls S-CUP 2009 王者)
●クリスティーナ・ジャルジェビック(165cm/49.0kg/オーストラリア/JUBOUT/IMAF世界 女子フライ級トーナメント 準優勝)
[判定 3−0]

今、SBが猛プッシュするジョシカクファイターのRENAだが、前回の試合では女子総合格闘技界で活躍する藤野恵実を鼻骨骨折に追い込んで勝利し、その成長ぶりをSBファンにアピールする事に成功。そんなRENAの今日の対戦相手は、こちらも女子高生ファイターのクリスティーナ・ジャルジェビック。実力は未知数だが、パッと見だけでもリーチが長い事がわかる。この試合、RENAがどう立ち向かうかが見物だな。そりゃそうと、クリスティーナはダンスチューンのRYDEENだった。意外と親日派なのか?


1R、体格に優るクリスティーナはプレッシャーを掛けつつ前に出て、良く伸びるワンツーと前蹴りでレーナを攻め込んでいく。思わず下がるRENA、今回は苦戦が予想されたが…。RENAは「打撃がダメなら…」とばかりにクリスティーナに組み付くと、首投げを綺麗に決めてシュートポイントを1P獲得。これに気を良くしたRENAは尚も組み付いたが、クリスティーナは首相撲に捕らえる。だがRENAは再び首投げを決めて、更にシュートポイント1Pを獲得。う〜む、クリスティーナは投げに対する耐性がないのね…。




2R、1Rに投げられ続けた事でSBルールを理解したのか、今度はクリスティーナがRENAに組み付いて投げを狙う。だがRENAはこれを防ぐと、今度はスタンドの肩固めを狙い、終盤にはスリーパーを極めてキャッチポイントを1P獲得。ややルールに振り回されている感のあるクリスティーナは「やはり私は、打撃が本分!」とばかりにプレッシャーを強めてフックを振り回す。そんなクリスティーナから、RENAがスタンドでバックを奪ったところで2Rは終了。



3R、このラウンドも強気に前に出てきたクリスティーナだが、気持ちで優位に立っているRENAはカウンターのパンチを入れつつ投げを狙う。そして今度はRENAが前に出てワンツーで押し込んでいくも、クリスティーナも上背を活かした首相撲からの膝蹴りやワンツーで反撃した。



ここで試合終了。判定の結果、3−0でRENAが勝利。



むぅ。「打撃がダメでも、投げや関節技がある!」というのがSBルールの基本であり、そういう意味ではRENAの完勝だと思うのだが、クリスティーナのリーチの長さと度胸の良さには魅力を感じたなぁ。今日はルールに慣れていない事もあって負けちゃったけど、まだまだ若いし、更に練習を重ねての倦土重来を期待したいね。Girls S-CUP 2010あたりに出ないかな?

「今年一発目の会長のご挨拶」は、気合の入った内容に

休憩の後は、お馴染みのシーザータイム。

「2010年、最初のシュートボクシングの大会!こんなに大勢の皆さんにおいで頂き、誠にありがとうございます!今年でシュートボクシングは二十五周年ですが、ここまで来れたのも関係者、そしてファンの皆さんの熱い思いのお陰です!これからも我々は世のため、人のためになる選手を育て続けます!もう一度、心より御礼申し上げます!ありがとうございました!」




第七試合 「現役総合格闘技王者、参戦」は、文句がつけられない試合内容に

スーパーウェルター級 3分3R + 延長3分無制限R
弘中邦佳(176cm/69.95kg/マスタージャパン/CAGE FORCEライト級(70.kg) 王者)
●黒木信一郎(176cm/69.85kg/ストライキングジムAres/SB日本スーパーウェルター級 五位)
[2R 2分24秒 TKO]
※3ダウン

かつては修斗やUFCに参戦し、現在はDREAMやCAGE FORCEで活躍する弘中邦佳が突如、SBに参戦。正直、総合格闘技の選手がSBに参戦する事は珍しくはないのだが、弘中のような寝技中心の選手が参戦するのは珍しいなぁ…と思っていたら、隣で観戦していたフリジッドスター氏に「弘中は、打撃もかなり強い」とのツッコミを受ける。う〜ん、僕は修斗CAGE FORCE系統の選手にはトコトン弱いんだよなぁ…。

で、その対戦相手となる黒木信一郎は、デビューしてまだ五戦のルーキーである。所属するストライキングジムでは講師をしているらしく、声援からは「先生、頑張れっ!」という子供の声が聞こえてくる。う〜ん、子供たちには悪いけど、両者の戦績を観る限りでは弘中の勝ちは動かない気がするなぁ…。


1R、序盤からリーチに優る黒木の蹴りが伸びるも、弘中はパンチを合わせてこれに応戦。立ち技でも堂々と立ち振る舞う弘中に対して、黒木は左ローや首相撲なども駆使して切り崩そうとするも、弘中は破壊力のあるパンチを確実に返し、徐々にプレッシャーを強めていく。終盤、弘中の強烈な左ボディが黒木にハードヒット。ぬぅ、弘中の闘い方は、打撃のみのルールに慣れを感じるなぁ。




2R、黒木は様子見に右のインローを放つも、試合の流れを掴んだ弘中は動じずにプレッシャーを強めて前に出る。右フックを放ち、組み付いての投げを狙う弘中に対して、これを嫌がる黒木は右のジャブを伸ばしたり、左ローで蹴ったりするも、弘中の強烈なプレッシャーは捌けない。完全に試合のペースを掴んだ弘中は、距離を縮めてのフック連打で黒木からダウンを奪う。

何とか立ち上がる黒木だが、そのダメージは大きいようだ。そんな黒木を、弘中は左フックを叩き込んで再びダウンを奪い、尚も立ち上がる黒木にパンチを入れ続ける。モロに喰らって顎が上がってしまう黒木、弘中が更なるパンチを入れたところでレフェリーが試合を止めた。




う〜む。弘中が、こんなにちゃんとした打撃が出来る選手だとは思わなかったなぁ。パンチの一発一発がしっかりしている上、線がぶれないのが素晴らしいなぁ。その上、総合格闘技の選手がSBに参戦した時にありがちな「安易に投げに頼る」ような事もないのも好感が持てたね。また何か機会があったら、SBルールでの試合が観たいねぇ。



第八試合 「SBスーパーフェザー級王座 次期挑戦者決定戦」は、順当にして意外な試合内容に

スーパーフェザー級 3分3R + 延長3分無制限R
○鈴木博昭(167cm/60.0kg/ストライキングジムAres/SBスーパーフェザー級 四位)
●石川剛司(170cm/59.9kg/シーザージム/SBスーパーフェザー級 一位)
[1R 1分6秒 KO]
※右ストレート/石川は1Rにダウン2

本日のセミ前は、なかなかの好カードが組まれた。「SBの絞首刑人」石川剛司に、「SB軽量級の新星」鈴木博昭が挑む。

元々デビューが遅い石川は、今年で36歳。それでも試合はコンスタントにこなした結果、気がつけばキャリア30戦に手の届くところまで来た。最近は連敗している石川だが、一方は荒ぶる気持ちを抑えきれなかった上での反則負けであり、もう一方は強豪を相手に判定で苦杯という感じであり、決して力が衰えたわけではない。今日は若手の急成長株を相手にする石川、ここで勝てれば再浮上のきっかけとなるが…。デビュー当時からか指摘されていた「態度の悪さ」が、これだけキャリアを積んでも治る気配がないのはどうか?どうなのか?

そんな石川に対する鈴木は、まだデビューして七戦のルーキー。しかし、その実績の中には歌川暁文や及川知浩を撃破するなどで、その短いキャリアの中で確かな実績を残している(但し、及川戦の時は鈴木が契約体重をオーバーしていた)。前回の試合では、及川が持つSBフェザー級王座に挑戦した鈴木。ここではKO負けの恨みを忘れず、対策をバッチリと練ってきた及川を攻略できずに敗れてしまった鈴木ではあるが、今日の対戦相手は同級ランキング一位の石川。これを撃破し、再び王座への挑戦権を掴むことができるのか?




1R、いきなり鈴木の左ハイがヒットすると、鈴木はプレッシャーを強めてワンツーを放つ。モロに喰らった石川はダウンを喫してしまう。おお、鈴木が強いのは知っていたけど、この展開は予想していなかったなぁ。

立ち上がる石川だったが、鈴木はワンツーで追撃。右ストレートがヒットして石川は再びダウン。立ち上がった石川だったが、ダメージは大きそうだ。この様子を見たレフェリーが試合を止めた。




う〜む。このところの両者の戦績と勢いを考慮すると、この結果は決して意外ではないのだが…やっぱり意外だなぁ(笑)。まあ、石川が派手なKO負けを喫した試合って、ちょっと記憶にないしねぇ。それにしても、今の鈴木には若さと勢いがあるねぇ。長年王座に君臨する及川からベルトを奪取するのも、もはや時間の問題なのかなぁ?


第九試合 「『SBの日本人エース』の復帰戦」は、余裕の感じられる試合内容に

69kg契約 3分5R + 延長3分無制限R
宍戸大樹(174cm/68.7kg/シーザージム/SB東洋太平洋ウェルター級 王者)
●グレッグ・フォーリー(170cm/69.6kg/オーストラリア/JUBOUT/WMTC豪州ウェルター級 王者)
[5R 1分24秒 スタンディング・チョークスリーパー ]
※宍戸は1Rにシュートポイント1

昨年9月、「SBの日本人エース」宍戸大樹が久々に大一番に挑んだ。元ラジャダムナンスタジアム認定フライ級王者であり、昨年1月行われたムエタイの祭典「ムエローク」で、物凄い強さを発揮していた「壊し屋」ボーウィ・ソーウドムソンと対戦。


その結果は…惨敗。


今まで、宍戸が負けるパターンは「試合序盤でのイージーダウンが原因」というのが多く、判定での敗北の場合は「あと1Rあれば、間違いなく宍戸が勝っていたのに…」とか「相手のホームの試合であり、惨い身びいき判定のせいで負けた」というパターンが多いのだが…。ボーウィとの一戦は、そのどのパターンにも嵌らない負け方だった。一言でいうのであれば「まったく歯が立たずに完敗」。宍戸がこんな屈辱的な負け方をしたのは、ひょっとしたら初めてかもしれない。

宍戸が得意とする右ロー、ボディストレート、そしてソバットといった下半身中心の攻撃は、太い太股を持つボーウィにはまったく通用しない。反対にボーウィの重い左ボディを喰らい続けた宍戸が段々と動けなくなってしまう。ボディスラムでシュートポイントまで奪われてしまった宍戸は、5Rに強烈な右ストレートを浴びて壮絶なKO負けを喫してしまった。う〜ん、宍戸という選手に惚れ込んでSBを観戦し続けて八年目になる僕だけど、あんな宍戸の負け方を観たのは初めてだったなぁ…。

そんなこんなで、今回は約半年ぶりの試合となる宍戸。復帰戦の相手は、先日までSB日本ウェルター級王者だった金井健治をKOして勢いに乗るグレッグ・フォーリー。う〜ん、決して弱い選手ではないものの…正直、宍戸の実力から考えるとちょっと実力不足な気がする。今年は大事なS-CUPの年、あのボーウィもS-CUPへ参戦するという噂が流れたのであれば、宍戸としてはこんなところで足止めされている場合ではないのだ。




1R、宍戸はいつも通りにリングを大きく回りながら、確実に右ローを重ねる。対するフォーリーは、序盤から強烈なプレッシャーを掛けつつ前に出てワンツーを放つも、宍戸は左ボディストレートや右ローといった、いつも通りの下半身主体の攻めで確実にスタミナを奪っていく。ならばとフォーリーも、右ローや左ボディから膝蹴りに繋げて行く、こちらも下半身中心の攻撃だ。迎えた終盤、フォーリーの右アッパーに裏拳で対抗した宍戸は、綺麗な首投げを決めてシュートポイントを1p獲得して優位に立つ。



2R、ポイントを奪われたフォーリーが攻める。右アッパーを放ち、組み付いてボディへ膝蹴りを繰り出すフォーリーに対して、宍戸は左ボディストレートでスタミナを削ると、フォーリーの腕を捕えて関節技を仕掛ける。これはフォーリーに逃げられてしまうも、徐々にペースを握ってきた宍戸は、左ボディストレートや前蹴りを駆使してガンガン攻める。フォーリーも前蹴りや首相撲からの膝蹴りで応戦するも、宍戸は終盤に再び腕を捕らえて極めに行くなどで、試合ぶりに余裕がある。これを見習ったフォーリーは、バックに回ってのスタンディング・スリーパーを試みたが、宍戸は差し返してからの小手投げで、反対にフォーリーをマットに這わせる。う〜ん、こりゃ宍戸の勝利は動かないな。



3R、完全に試合のペースを掴んだ宍戸が、プレッシャーを掛けつつ積極的に前に出るのに対し、フォーリーは組み付いての股への膝蹴りをコツコツ放ってやり過ごそうとする。だが宍戸はこれに動じるワケもなく、ジワジワと前に出て左右のローでフォーリーの動きを止めると、今度はフロントチョークを極めようとする。う〜む、今日の宍戸は随分と関節技にこだわるなぁ。終盤、フォーリーは得意技である右アッパーを放つも、これをかわした宍戸は左ボディストレートをヒットさせ、体勢こそ崩れたものの投げを放った上、追撃の右ミドルで更にフォーリーの体力を奪っていく。



4R、変化が起こる。ここまで下半身を攻撃され続けたフォーリーの動きが鈍り始めたのだ。フックを繰り出しながら前に出るフォーリーだが、全体的な手数は明らかに減っている。そんなフォーリーを、宍戸はこだわりのスタンディング・アームロックで極めようとする。SB生観戦歴が八年の僕だけど、スタンディングの腕関節技が極まったのって一回しかなかった気がするのだが…。



腕関節技はフォーリーに逃げられてしまったが、フォーリーはダメージのせいでブレイク後も動けない。この様子を見た宍戸が、一気に打撃を連打して追い詰めていく。パンチを返して距離を離そうとするフォーリーだが、宍戸はしつこく距離を詰めてラッシュを仕掛ける。次々に打撃がヒットして苦しいフォーリーはタックルで難を逃れるも、宍戸はブレイク後も距離を詰め続け、フォーリーのパンチを捌きながら左の膝蹴りを連発する。ぬぅ、ここでも下半身への攻撃か。徹底してるなぁ。



5R、これまでの展開で、ほぼ勝利を手中に収めた宍戸が、いよいよ仕上げに入る。得意のソバットで観客を沸かせた宍戸は、フォーリーの右ハイをかわすと、右ローを連発してフォーリーの動きを止める。意図通りに試合を運んだ宍戸は、ここで突如、フォーリーのバックに回ってスタンディング・スリーパーの体勢へ移行。逃れるべく自ら膝を付こうとするフォーリーだが、宍戸はこれを無理矢理引き起こしてガッチリとスリーパー。この様子を見たレフェリーが試合を止めた。



ふ〜む、今日の宍戸は随分と関節技に拘っていたなぁ。お陰でフィニッシュまでは時間が掛っちゃったけど、まあ今日の宍戸の試合ぶりからは余裕を感じたなぁ。最初こそ互角だったけど、結果的にはフォーリーとの実力差は歴然としていたねぇ。

さてさて。この勝利の先にあるのはS-CUP 2010。もしボーウィが噂通りに参戦してきたのなら、リベンジは是非とも果たさなくてはならないのだが…。忘れちゃいけないのは、宍戸はS-CUPの舞台でアンディ・サワーにも二度、敗れている事実である。ここは次のS-CUPでこそ「三度目の正直」を実現させて欲しいのだが…。

一日でボーウィとサワーに勝利って、どんなに強い選手でも実現は難しいだろうなぁ…。



第十試合 「『SBの新エース』のお披露目試合」は、期待通りの試合内容に

スーパーウェルター級 3分5R + 延長3分無制限R
梅野孝明(178cm/70.0kg/シーザージム/SB日本スーパーウェルター級 王者)
●ディーン・エグゼレブ(178cm/69.6kg/オーストラリア/JUBOUT/WKBF豪州ミドル級 王者)
[2R 1分43秒 KO]
※右ハンマーストレート/梅野は1Rにシュートポイント1、2Rにシュートポイント1

今やSBの新しい大黒柱になりつつある「東洋のハルク」梅野孝明。そのベイビーフェイスとは裏腹に、元ヘビー級から絞り込んだ肉体を持ち、フルスイングのハンマーフックでKOの山を築き続ける男だ。前回の試合では、元ルンピニースタジアム認定ウェルター級王者であるチョークディ・ポー・プラムックを相手に、得意のハンマーフックでブン殴りまくってKOするという、豪快極まる勝ちっぷりを披露。今日の興行ではその試合ぶりが評価されて、宍戸を押さえての連続メインイベント出場を果たした。いや〜、あれはかなり凄い勝ち方だったなぁ…。

そんな梅野の、今日の対戦相手はディーン・エグゼレブ。正直、まったく無名の選手なので梅野の勝ちは動かないと思われる。ならば今日は、勝利という結果以上に、その勝ち方が問われる一戦となるだろう。




1R、まずはディーンが膝蹴りを見せるも、梅野はいきなり組み付くと、豪快な首投げでシュートポイントを1p獲得。先手を取られてしまったディーンだが、積極的に前に出てワンツーを放ち、組み付いて梅野のプレッシャーをやり過ごし、前蹴りで梅野を突き放すなどで自分のペースを作り直すと、梅野のボディへ左の膝蹴りを一閃。この一撃で梅野の動きが止まると、動揺する観客を他所にディーンはワンツーの連打で追撃。思わず崩れそうになる梅野に対して、観客からは悲鳴が上がる。

だが梅野は、一旦距離を置いて持ち直すと、得意の右のハンマーフックと左のボディブローで試合のペースを取り戻す。再びディーンが下がり始めると、梅野は更に大振りな右フックを放って観客をどよめかせる。ラウンド終了直前、梅野は再び綺麗な首投げを決めてシュートポイントを1p獲得。う〜む、危ない場面もあったけど、この時点で梅野は随分と優位に立ったなぁ。




迎えた2R、序盤は組み付いてからの細かい攻防が続いたが、ブレイクの後は梅野が攻めた。右のハンマーフックでディーンを後退させると、再び腰投げを放ってシュートポイントを1p獲得。ポイントで追い詰められたディーンはワンツーを放ちながら前に出るも…、そこに待っていたのは梅野のもう一つの得意技「全体重を乗せた、カウンターの右のハンマーストレート」だ!モロに喰らったディーンは一撃でダウンし、立ち上がるも足元はフラフラ。これをレフェリーが試合を止めた。



豪快な勝利を飾った梅野だが「自分としては『ただKOで倒せただけ』で、内容はまだまだだと思います。もっともっといろいろ勉強して、また頑張っていきたいと思います」と反省することしきり。まあ、今日は1Rに危ない場面もあったからねぇ。



とはいえ、なんだかんだ言っても、梅野の試合は豪快そのものだよなぁ。今日は一撃必殺でのKO劇だし、さすがはシーザー会長に見込まれた男だね。噂されていたK-1MAXへの参戦は見送られたみたいだけど、S-CUP 2010に参戦するのは確実だろう。その闘い方の荒さから、マニアからは実力が疑問視されているのも事実だけど…。これまでは、そういった意見を問答無用のパワーで捻じ伏せてきた梅野。となれば、そろそろ誰も文句が出ない真の強豪との対戦が望まれるが…次戦はどうなるっ!?

雑感

う〜ん。観戦記の冒頭にも記述したけど、今日はSBのお披露目試合的な色合いが強いから、それぞれの選手の闘いぶりを細かく言う気にはなれないなぁ。とりあえず、三人のエース(梅野、宍戸、RENA)はシッカリと結果を残したし、他競技からの参戦となった朱里と弘中もなかなか良い試合ぶりだったし、鈴木の秒殺劇も見れたし、良い結果が粒揃いで興行自体は成功だったんじゃないかなぁ。


さてさて、次回のSBについてなのだが、思わぬビッグニュースが飛び込んできた。一つはローカル局ながらも地上波放送を開始した事だ。昨今、ローカル局にプロレス番組が進出するのはよく見掛けるが、格闘技番組の地上波進出は珍しいと言えるだろう。開始したのサンテレビ(神戸)とチバテレビ(千葉)。ああ、何で僕は今、神奈川に住んでいるのだろう…。

そして、もう一つのビッグニュースが、次回の4/11のカードである。今日のメインを務めた「東洋のハルク」梅野孝明の対戦相手が、宍戸大樹に完勝したボーウィ・ソーウドムソンだというではないかっ!うわ〜っ、これは久々に文句なく凄いカードと言えるねっ!梅野謹製のハンマーフックが、ボーウィにどこまで通用するかが見物だなぁ。


そして脇を固めるカードも素晴らしい。宍戸大樹の対戦相手は、K-1MAXにも参戦中の元ボクシング日本ミドル級王者 鈴木悟に決定。そしてRENAの対戦相手は、最近カムバックを果たしたジョシカクのエースの一人、渡辺久江だという。更にはSB日本フェザー級王者の及川知浩も参戦。その対戦相手はブアカーオ・ポー・プラムックの弟子にして、SBでは無敗のパジョンスック・ポー・プラムックだという。う〜む、今回の興行がお披露目だとしたなら、次回の興行はSBの本気が見れるワケか。これは楽しみだ。


というわけで皆さん、次回のSBは必見です。入場料も安いですし、観戦してみてはどうでしょうか?


以上、長文失礼。