1/11 ボクシング 二大タイトルマッチ 東京ビッグサイト興行 TV観戦記

Mask_Takakura2010-01-11

ふ〜む、気づけばこんなに増えていたんだねぇ…

いきなりだが備忘録を兼ねて、現在の日本人のボクシング世界王者を記述する(Wikipediaより)。


・WBC世界バンタム級王者        長谷川穂積 2005年 4月16日〜
・WBC世界スーパーバンタム級王者    西岡利晃  2008年 9月15日〜
暫定王者の時期を含む
WBA世界スーパーフライ級王者     名城信男  2008年 9月15日〜
WBA世界スーパーウェルター級暫定王者 石田順裕  2009年 8月30日〜
・WBC世界フライ級王者         亀田興毅  2009年11月29日〜

ふ〜む、ボクシングの世界王座戦はなるべくチェックするよう心掛けているんだけど、こうして見ると…知らないうちに王者になった選手や、僕がまったく知らない選手もいるなぁ。昨年末は「亀田興毅だ!内藤大助だ!長谷川穂積だ!粟生隆寛、頑張れ!」なんて騒がれていたけど、年始になっても二大タイトルマッチかぁ。これってひょっとして、現在の日本ボクシング界は黄金期を迎えているって事なのかなぁ?


ちなみに今日王座に挑戦する細野悟内山高志は、失礼ながら僕は知らない選手。だから今日は勉強させてもらいます。

無敗の選手でも勝てない、生ける伝説

WBA世界スーパーバンタム級 タイトルマッチ 3分12R
○プーンサワット・クラティンデーンジム(164cm/55.3kg/タイ/WBA世界スーパーバンタム級 王者)
細野悟(170cm/55.3kg/大橋ジム/WBA世界スーパーバンタム級 十位)
[判定 2−0]
※プーンサワットが防衛に成功

「バズーカ」の異名を持つ細野悟は16戦16勝無敗12KOという完璧な戦績の持ち主だが、対するプーンサワットは40戦39勝1敗28KOにして二階級制覇を成し遂げ、更にはムエタイでは100戦以上の経験を持つ絶対王者。細野が勝てば「歴史的快挙」と言えるかもしれないが、なにせ相手は二階級での防衛総数が28回にもなる「生ける伝説」。KO率も高い両者の対決は、期待に違わぬ派手な打ち合いとなった。


1R、序盤はお互いに距離を置いて打ち合ったが、中盤からは角を突き合わせての我慢比べとなる。ボクシングならではの間合いでの殴り合いは中々に見応えがある上、両者ともに威力のありそうなパンチを交換していく。2R、プーンサワットの左ボディは有効打となっていたが、細野も左アッパーを連発して応戦。とにかく、両者ともにクリンチせずに至近距離から打ち合い続ける。すげぇなぁ…。3R、中盤にプーンサワットの左アッパーをモロに喰らうも、細野はすかさずボディの連打を返していく。だがプーンサワットも右アッパーを多用、徐々に細野の体力を削っていく。う〜ん、王者も強いな。


4Rはカット。5R、相変わらず両者は、頭を付けての打ち合いを続ける。物凄いド突き合いだったが、終盤はプーンサワットのパンチが冴えた。6R〜8Rがまたまたカットで9R、まだまだ両者は頭を付けて打ち合うも、プーンサワットのパンチが細野のガードの隙間を突いて入っていく。特に左アッパーはかなり厄介そうだ。それにしても、二人とも凄い根性だなぁ。


10R、距離を開けるプーンサワットの左ストレートと右ボディストレートが冴え渡る。細野も打撃を返しているが、ここに来てちょっと打撃の数に差が出てきた。11R、プーンサワットは手数を減らさないが、細野は序盤にワンツースリーでプーンサワットの動きを止めて喰い下がる。だが中盤以降、プーンサワットの左アッパーが何度もヒット。疲労を隠せない細野のプレッシャーが弱まる。迎えた最終12R、細野は最後の気力を絞って前に出る。対するプーンサワットもワンツーを繰り出して応戦。中盤、細野の左ボディフックがクリーンヒット。ここから細野はヒット&アウェイを繰り返してプーンサワットに打撃を入れていく。プーンサワットも逃げずに応戦、両者は最後の最後までパンチの手数を減らさずに攻め合った。いや〜、いい試合だった。


判定の結果は2−0でプーンサワットの勝利。それでも審判のうち一人がドローとした事実に、この試合の判定の難しさが出ているのだろう。

う〜ん、今日の細野は惜しかったし、本人も「次やれば獲れる」とは言っているけど…。なんとなく。なんとなくだけど、このプーンサワットって、実はまだまだ実力の底を出していない感じがしたなぁ。何て言うか、あと一歩だけど、その一歩の差が凄く大きい、そんな感じ。まあ、細野もこれで諦めずに、また挑戦して欲しいけどね。

無敗 vs 無敗は、意外な程の圧勝劇に!

WBA世界スーパーフェザー級 タイトルマッチ 3分12R
内山高志(171.5cm/58.9kg/ワタナベジム/WBA世界スーパーフェザー級 三位)
●ファン・カルロス・サルガド(174.5cm/58.9kg/メキシコ/WBA世界スーパーフェザー級 王者)
[12R 2分48秒 TKO]
内山高志が新王者に

「KOダイナマイト」内山高志。僕はまったく知らない選手なので、ちょっとwikipediaで調べてみた。

拓殖大学時代、最初は補欠選手にすら選ばれず、同級生の荷物運びに甘んじていたという内山高志。だが、屈辱をバネにして努力を重ねた結果、大学四年生の時に2001年全日本選手権を制覇。社会人になってからも2002年国体優勝、2002年全日本優勝、2003年全日本優勝と順調にキャリアを重ねるも、2004年のアテネオリンピックのアジア地区最終予選会では敗退し、本選出場を逃してしまう。そしてこの時、ボクシングからの完全引退を決意したが…。この年の国体は出身県である埼玉県での開催で、「国体では開催県が絶対に優勝しなければならない」という不文律に呑み込まれた結果、何年も前からボクシングの代表選手として選ばれていた内山は引退する事も許されず、体調は万全ではないまま国体に出場。その決勝で対戦して敗れた相手こそ、前の試合で世界王座に挑戦した細野悟だったのだ。う〜ん、運命やねぇ…。

細野に敗れて以来、格闘技界から足を洗おうとした内山だったが、最終的には説得されてワタナベジムからプロデビューしてからは破竹の快進撃で、ここまでの戦績は13戦13勝無敗10KO。デビュー後、二年で東洋王者となった内山が、五度防衛した王座を返上し、いよいよ世界の頂(いただき)へと挑む。

その内山に立ちはだかるのは、WBA世界スーパーフェザー級王者のファン・カルロス・サルガド。あの無敗の怪物「ゴールデンボーイホルヘ・リナレス(当時は27戦27勝無敗18KO)をわずか90秒でKOして世界王者となった選手である。その戦績は22戦21勝無敗1分15KO。両者ともに無敗同士の対決だが、単純に数字や肩書きだけ見ると、今日の内山の相手は物凄い強豪なんだな。勝てるのかなぁ…。


1R、前の試合とはまったく逆に充分な距離を取る両者。緊張感が張り詰める中で先に動いたのは内山、サルガドにプレッシャーを掛けつつ長い左のジャブを放っていく。対するサルガドは内山の周りを回りつつワンツーを伸ばしていくが、内山は序盤に至近距離から左ジャブを当ててサルガドを吹っ飛ばすと、左のボディを使って体力を削っていく。2R、序盤からリング中央を陣取った内山が、サルガドに右ストレートを叩き込む。サルガドは内山を警戒しながらストレートやボディを放つも、クリーンヒットが出ない。内山は終盤、打ち合いの中で左フックをクリーンヒットさせた。うん、ここまでは一方的な展開だなぁ。

3R、自信をつけた内山が前に出て攻める。序盤に左右のボディを入れると、中盤にも左ボディ。体力を奪いにいく内山に対し、サルガドは終盤、ようやく左ボディで反撃するが、ここまでまったく手数が出ていない。4R、リングを回り続けるサルガド、追う内山。序盤にサルガドが左ボディと左フックで攻撃するも、内山は怯まずに右ストレートで反撃し、中盤にはサルガドをロープ際へと追い詰めて短いラッシュを仕掛ける。どうにも劣勢が続くサルガドは終盤に左ボディをヒットさせるも、打撃が単発になっている。う〜ん、お互いの戦績から考えると、信じられない試合展開だ。

5R、これまでと変わらずプレッシャーを掛けて前に出た内山は、序盤にコーナー際でワンツーを叩き込む。サルガドは左ジャブを伸ばして距離を置いて左ボディやワンツーを返していくも、終盤に内山の右の打ち下ろしのフックがヒット。6R、中盤に内山は、前に出てきたサルガドに左フックを当てると、右ストレート、左ボディと連続で叩き込む。内山のパンチを喰らい続けたサルガドの口が半開きの状態になる。

ここで6R終了。う〜ん、折り返し点だけど…一方的な展開だなぁ。「サルガドは何らかのの形で調整に失敗したのでは?」と思えるような展開だ。それにしても、内山のパンチはよく伸びるね。


7R、後半に入っても距離を詰めていく内山に対して、ここまでの流れを変えたいサルガドが前に出てくる。軽快なステップから長い左のジャブを伸ばし、時折ボディを放つサルガドに対して、内山は無理をせずに様子見。う〜む、これが本来のサルガドのボクシングなんだろうな。8R、このラウンドは距離を詰める内山に対して、サルガドは軽快なステップから左ボディと左ジャブを放つ。だが内山はサルガドの左ジャブに左フックを合わせ、終盤には右ストレート、左ストレートを叩き込む。ふむ、内山がサルガドのペースに合わせ始めたね。

9R、プレッシャーを掛ける内山に対して、サルガドは距離をとって軽快なステップでリングを回るが、疲労のせいかガードが低い。このラウンドは終盤に激しく打ち合うシーンがあったが、大きな動きはなし。しかし10R、序盤に内山の右ストレート、そして左ボディがヒット。更には中盤に右ストレートを当てた内山は、終盤にも左ボディと左フックを叩き込む。う〜ん、本当に一方的だ。これは、大逆転KOがない限り、新王者誕生は確実だな。

11R、序盤から距離を詰めるサルガドに対し、内山もまた距離を詰めてパンチを放つ。お互いにスウェーやステップバックを駆使してパンチを防御する中、内山は左ボディを駆使してサルガドを崩していく。終盤、内山の右ストレートが連続でヒット、サルガドのダメージは大きいようだ。う〜ん、こうなると…新王者誕生の前に、せめてサルガドのダウンシーンが見たくなるね。


ついに迎えた最終12R。観客が新王者誕生を期待する歓声を上げる中、大逆転を狙うサルガドが前に出る。内山も逃げることなく距離を詰め、序盤から打ち合いを展開する両者。観客の歓声が続く中、内山は中盤に左フックをクリーンヒットさせると、ダメージの残るサルガドをロープに詰めて右フック、そして右ストレートを叩き込む。「もうすぐサルガドが崩れる!」ダウンシーンを期待する観客の歓声が更に大きくなる。

迎えた終盤、内山はロープ際で右ストレートを叩き込むと、露骨に下がるサルガドとの距離を詰めてラッシュを仕掛けた。放ったパンチが次々にヒット、サルガドがついにマットに倒れる。観客の大歓声の中、サルガドは何とか立ち上がるも…ダメージはかなり大きい様子。試合再開後、朦朧としているサルガドに対して、内山は非情の右ストレートを連続で叩き込む。モロに喰らったサルガドは棒立ちの状態、観客の大歓声の中、レフェリーが慌てて試合を止めた。


いや〜っ、内山カッコいいなぁ!ハッキリ言って、この試合は前半の時点で勝負アリ!の状態だったし、終盤はガード一辺倒でポイントを奪われても内山が勝てる事は誰の目からも明らかだったのにねぇ。最後の最後まで相手を倒す事に拘った末、実際にKOしてしまうという。さすがは「KOダイナマイト」、その異名に偽りなしだね!試合スタイルも攻撃型のボクシングだし、一方的な展開ながらも見ていて飽きなかった。正直、ボカァこの試合だけでファンになっちゃったよ(笑)。

雑感

さてさて。晴れて世界王者となった内山だが、次の対戦相手の候補として、前々王者にあたるホルヘ・リナレスや、元WBC世界フェザー級王者の「高校六冠王」粟生隆寛の名前が挙がっているそうな。う〜ん、この二人ってどちらも帝拳ジム所属の選手だよね。この辺はジム同士の政治の話が絡んできちゃうのかなぁ…。

それはそれとして、ふ〜む、リナレス戦が実現すれば、お互いにKOの山を築いた者同士の対戦となるわけかぁ。粟生には悪いけど、どちらかというとリナレス戦が見てみたいなぁ。


以上、長文失礼。