1/4 Krash 後楽園ホール興行 観戦記 Ver1.0

Mask_Takakura2010-01-04

新年一発目から不安でいっぱい…

僕にとって、一年で一番最初の生観戦は1月4日の全日本キックと決まっている…のだが、今まで散々書いたように全日本キックは昨年6月に崩壊。んで、今年はその遺髪を継いだKrushが毎年恒例の「1.4 後楽園」を開催するのだが…。


ぶっちゃけ、今年の1.4は「新年一発目!」なのにカードが異様に弱い。12月の藤原祭で前田尚紀山本真弘の二枚看板を使ってしまい、山本優弥の闘いの舞台は完全にK-1 MAXへと移行。山内裕太郎は2月にチェコでのドラゴとの一番が控え、藤原あらしはKrushに背を向けてしまった。山本元気大月晴明も出場しない1.4という危機的状況の中でただ一人、石川直生がメインイベントに登場。対戦相手は「K-1谷川貞治プロデューサーからの刺客」ジョン・デニス。まったく情報のない選手を相手に、石川はどういう闘いを見せるのか?


そしてセミファイナルには、石川や優弥の盟友である「キック日本三冠王」となった寺戸伸近も出場する…のだが、肝心な対戦相手は来日直前に足を負傷して欠場となってしまった。そんな寺戸のピンチを救ったのは、現在は修斗初代フライ級王者として総合格闘技の舞台で活躍するランバー・ソムデートM16。う〜ん、エキシビジョンながらもランバーのキックの試合が観れるのはちょっと嬉しいなぁ。


…と、一生懸命に自分を鼓舞する文章を書いてはみたが、やっぱり今日のカードは弱いよなぁ。ぶっちゃけ、今日の興行でプロとしてそれなりの肩書きがある選手って、あとは水谷(秀樹)先生くらいだもんなぁ。隣の東京ドームでは新日本プロレスとNOAHの現役エース同士が対戦している事を考えると、現状のKrushの体力の少なさを感じるねぇ。


ってなワケでチケットを購入。A席5500円。観客の入りは…うおっ!? 三割程度だとっ!? 近年の全日本キック及びKrushの客入りとしては、間違いなく過去最低の入りなんじゃないのかコレっ!? う〜む、昨年の今頃は、まさか全日本キックがこんな事になるとは予想もしなかったよなぁ…。

第一試合 う〜ん、二人とも知らないなぁ

65kg契約 3分3R
○小川貴広(177cm/64.7kg/青春塾)
●わた丸@シグナム(171cm/64.9kg/P.O.D.)
[判定 3−0]
※わた丸は3Rにダウン1

「う〜む、二人ともに知らない選手だなぁ」と思いながら、300円のパンフレット(二つ折りの紙一枚)に目を通して納得。小川はこの試合がデビュー戦、わた丸はまだ二戦のルーキー対決なのだ。これって全盛期の全日本キックなら、間違いなくオープニングファイトの枠の試合だなぁ。いや〜、Krushの台所事情の厳しさが垣間見えるよなぁ…。




1R、小川が距離を置いて左ミドルで蹴るのに対して、わた丸は距離を詰めてのパンチを狙う。中盤、わた丸の右フックがヒット、喰らった小川は思わずスリップ。この後、試合はわた丸がパンチを武器に優位に進める。離れて蹴りたい小川の右ハイがヒットする場面もあったが、ここまではわた丸のペースに捕まっている感じ。



2R、わた丸は1Rと同じように前に出るも、小川は下がりながらの前蹴りと左ミドルで対処。蹴りを喰らい続けたわた丸のプレッシャーが弱まると、今度は小川が前に出て左ジャブと右ストレートによるワンツー、そしてテンカオで攻勢に出ると…序盤とは一転、今度はわた丸が下がり始める。



3R、インターバル中に体力を回復したわた丸の左フックがヒット、これを機にわた丸はプレッシャーを強めて攻める。



だが中盤、前に出るわた丸に小川の右ストレートがカウンターでヒット、この一撃でわた丸は痛恨のダウンを喫してしまう。流れを掴んだ小川は前に出て攻めたが、わた丸はダウンに腐ることなく最後までこれに応戦した。



判定の結果、3−0で小川が勝利。



小川は嬉しいデビュー戦での勝利だが、僕はわた丸が3Rにダウンを喫しても最後まで攻めた姿の方がが印象に残った。

第二試合 これまた、あんまり知らないなぁ

55kg契約 3分3R
○洋センチャイジム(167cm/54.4kg/センチャイジム)
●坪井悠介(169cm/54.3kg/斬刃拳/K-1甲子園2008 中部地区 準優勝)
[判定 3−0]

最近はNJKFとの交流を深めているKrush。今回はセンチャイジムから35歳のベテラン洋がリングに上がる。対するのは一昨年のK-1甲子園で中部地区準優勝を果たした坪井悠介。こちらは18歳の若手である。う〜ん、この試合も二人ともあんまり知らないなぁ…。




1R、洋はムエタイジム所属の選手らしく、序盤は様子を見ながら首相撲と右ミドルで攻め込む。対する坪井はパンチで洋の動きを牽制しつつ、こちらも様子見。静かな展開のまま時間が経過する中、坪井は頭から洋に突っ込んでバッティング、洋は顔面をカットしてしまう。だが坪井は躊躇することなく、前に出てパンチを放つ。洋はガードを固めつつ左ミドル&左ローで応戦。



2R、洋は自ら下がって距離を置き、左ミドルの連打で攻勢に出る。対する坪井はパンチを放ちながら前に出るも、洋はカウンターのパンチで応戦。坪井の顔面に前蹴りを入れた洋は、首相撲から膝蹴りや左右のミドルでペースを掴んでいく。う〜ん、洋の攻め方はなんともムエタイという感じだねぇ。



3R、2Rからの流れを受けて、洋が首相撲からの膝蹴り&パンチ&左ミドルで攻め込む。洋の打撃を喰らい続けた坪井の動きが鈍り、顔面からは鼻血が。活き活きと打撃を放つ洋に対して、坪井は苦しそうな表情を浮かべていたが、試合終了が近づくと前に出てワンツーで攻めるようになる。しかし時既に遅し、試合の形成は変わる事なく終了した。



判定の結果、3−0で洋が勝利。



う〜む。若い坪井が洋の闘い方に合わせられずに負けた…って感じだなぁ。まあ、これも経験だね。

第三試合 どうにか知っている選手が出てきました

60kg契約 3分3R
○遠藤大翼(172cm/59.9kg/和術慧舟會駿河道場)
●宮田隼児(173cm/59.8kg/キックボクシングアカデミーROOTS/2008年 全日本新空手K-2軽中量級 王者)
[判定 2−0]

和術慧舟會 駿河道場の遠藤大翼は、PANCRASECAGE FORCEで活躍する総合格闘技の選手である。今回、どういう経緯でキックボクシングの舞台に上がる事になったのかは知る由もないが、対戦相手の宮田隼児は一昨年の新空手の軽中量級王者。遠藤としては気が抜けないね。それにしても、ようやく僕も知っている選手が出てきたよ…。




1R、宮田はワンツー〜右ミドルで前に出るも、遠藤がカウンターの右ストレートを叩き込む。モロに喰らった宮田の足元がよろけると、チャンスと見た遠藤はワンツーによるラッシュを仕掛ける。右フックと左ストレートがヒット、宮田はダメージがありそうだったが…。宮田は打撃を喰らいながらも足を使って逃げ続けた結果、終盤頃には体力を回復することに成功。う〜ん、逃げられちゃったねぇ。



2R、ダメージの抜けた宮田はワンツー〜右ミドルで攻勢に出ると、遠藤は前蹴りとワンツーで応戦。宮田はワンツー〜左ロー、右ハイで軽快に攻めたが、攻める一方でガードが甘くなったところに遠藤の右フックがヒット。今度は勢いに乗じた遠藤が右ローや右ストレートで攻め込むも、宮田はパンチと右ローで応戦。試合は淡々としているけど、二人とも打撃が途切れないから観ていて飽きないよ。



3R、遠藤は序盤にロープ際でラッシュを仕掛けるも、このタイミングで宮田のローブローを喰らってしまい悶絶。

インターバルの後で試合は再開、遠藤はローブローに怯むことなく距離を詰めてワンツーを放つが、宮田は突き離したり、膝蹴りを放ったりで勢いを止めに掛かる。遠藤は右フックでプレッシャーを掛けるも、宮田が右ローを繰り出すと遠藤の動きが止まってしまう。どうも2Rから喰らい続けた右ローが効いて来たようだ。

左足のダメージが大きい様子を見た宮田は、執拗に右ローを連打して勝負に出るも、遠藤はパンチでこれに応戦。気が付けば逆に、宮田の顔面からは出血が。宮田は攻めるときにガードが露骨に甘くなる傾向があり、そこを遠藤は丁寧に攻めていたね。




試合終了、判定の結果は…なんと1−1のドロー決着。「う〜ん…。さすがにこれは遠藤の勝ちでしょ。悪くてもドローで、この内容で宮田の勝ちって判定はないでしょ!?」と考えていた。



するとこの後で場内アナウンスがあり、先ほどの判定結果はミスであることが発覚。正しい判定結果は2−0で見事、遠藤の勝利となった。オイオイKrush、しっかりしてくれよ…。



まあそれはともかく、今日の遠藤は相手の反撃に動揺する事なく自分の攻めを貫けたのが良かったね。

第四試合 生で何回か観ているハズなんだけどなぁ…

65kg契約 3分3R + 延長3分1R
渡部太基(173cm/64.9kg/藤原ジム/元全日本ライト級 十位)
●笹谷淳(175cm/64.9kg/P.O.D./J-NETWORKウェルター級 一位)
[判定 2−0]

冒頭の文章には記述しなかったが、今日のKrushはここから「若手 vs ベテラン」と題した試合が三つ続くのだ。う〜ん、興行の中心に据えるにはインパクトが弱いねぇ。正直「世代交代マッチ」とかの方が聞こえがいいように思うけど、まあ今日のカードではそこまで名の通った選手がいるワケでもないからなぁ…。

閑話休題、話を戻す。渡部太基は藤原ジム所属の若手で、全日本キック時代は前座戦線で活躍していたようだ。対する笹谷淳はJ-NETWORKを主戦場にしていた、知る人ぞ知るベテランの強豪らしい。ぬぅ、二人ともどこかで観戦した事があるハズなのだが、まったく記憶にないなぁ…。




1R、まずは渡部がワンツーで前に出る。これに対して笹谷は下がりながら左ローを放ち続けると、尚も前に出ようとする渡部にカウンターの右ストレートを叩き込む。だが渡部も負けていない。強烈な右ローを放つと、笹谷のワンツーと左ローの連打を喰らいながらも、終盤にはワンツーのラッシュを浴びせて攻勢。うん、一進一退の攻防で面白いね。



2R、渡部は1Rと変わらずワンツーで前に出る。笹谷はガード固めながら左ローを放って応戦。渡部が右フックを入れれば、笹谷は左フックで対抗。打撃を喰っても下がらない渡部がワンツーを出せば、笹谷は左ボディを叩き込む。ならばと渡部が右ローを放つ、笹谷は左ローを連打。右足のダメージで動きが落ちる渡部だが、前進を止めずにワンツーを放ち続ける。う〜ん、両者ともに一歩も引かないなぁ。良い試合だ。



3R、ワンツーを打ち合う両者だが、笹谷はベテランらしくコンビネーションの最後に左ローを放つのを忘れない。更には首相撲から膝蹴りを放つ笹谷に対して、渡部は右ローを放って対抗。ならばと笹谷は膝蹴りと左右のローで攻め込む。こうして両者の凌ぎ合いは延々と続いていたが…。

ついに均衡が破れる。中盤、渡部はプレッシャーを掛けて笹谷をコーナーへと追い詰めると、怒涛のワンツーのラッシュを仕掛けたのだ。このパンチの連打は長時間続き、笹谷は防戦一方。それでもなんとか堪えた笹谷はワンツー〜左ローで反撃、だが渡部は再びワンツーのラッシュで攻勢に出る。派手な展開に観客が歓声を上げる中で試合は終了。う〜ん、最後に渡部が勝利への執念を見せたね。




判定の結果、2−0で渡部が勝利。



うむ、これはいい試合だった。今までは二人とも名前を知らなかったけど、この試合で覚えることにします。スイマセンでした。

第五試合 ようやく両方とも知っている選手になりました

55kg契約 3分3R + 延長3分1R
瀧谷渉太(161cm/54.3kg/桜塾/元全日本バンタム級 一位 & 2007年 全日本新空手K-2軽量級 王者)
那須儀治(163cm/54.1kg/興気塾/元全日本バンタム級 五位 & 2004年 全日本新空手K-2軽量級 王者)
[2R 2分28秒 KO]
※3ダウン

「若手 vs ベテラン」の二試合目は、ようやく二人ともに知っている選手が登場。2007年度の新空手の軽量級王者としてキック界に殴り込んだ瀧谷渉太は、弱冠20歳にして戦績13戦10勝3敗5KOという期待の新鋭。対する那須儀治は2004年度の新空手の軽量級王者、リザーバーながらも真王杯55kg級にも出場した経験もある上、かつて全日本キック寺戸伸近と互角の殴り合いを演じた事もある隠れた実力者である。うむ、実はこの試合は密かに楽しみだったんだよね。


1R、まるで空手の試合の如く、いきなり接近して打ち合う両者。瀧谷は右ロー〜ワンツーを放つと、左フックがヒット。身長では那須より小さいが、身体の厚みで上回る瀧谷が試合を優勢に進める中で、瀧谷の左フック、、右ミドル、ワンツーが次々にヒット。那須も素早い打撃でよく応戦しているが…、試合の流れは完全に瀧谷が掴んでいる印象。う〜ん、那須は決して悪い選手ではないのだが、いかんせん身体が小さいのが、打撃の軽さに直結しているなぁ。




2R、1Rと同じく両者は接近しての殴り合いを続けるが、主導権を握ったのはやはり瀧谷だ。那須の顔面に前蹴りを入れた瀧谷は、中盤にラッシュを仕掛ける。下がる那須、そこへ瀧谷は左の飛び膝蹴りを一閃!観客の歓声の中、モロに喰らった那須はダウンを喫した。



この時点で勝負あり。那須はなんとか立ち上がったが、ダメージは大きそうな上に顔面からは出血が。瀧谷は容赦なくラッシュを那須に浴びせて二つ目のダウンを奪うと、尚も立ち上がる那須に更なるラッシュを畳み掛けた。パンチの連打を喰らってグラつく那須、この様子を見たレフェリーが試合を止めた。



う〜む、小さい身体の瀧谷と並んでいるところを観ても、那須の方が小さく観えちゃったなぁ。なんか、骨が細く観えるというか、身体に厚みがないというか。那須の本領が観れるのは、本来ならフライ級なんだろうなぁ。でも年齢が年齢だから(那須は35歳)、これ以上の活躍を望むのは難しそうだよなぁ…。残念だ。


第六試合 勢いのある若さが、ベテランの執念から逃げ切った

60kg契約 3分3R + 延長3分1R
青津潤平(172cm/60.0kg/NPO JEFA/J-NETWORKライト級 一位)
水谷秀樹(172cm/60.0kg/スクランブル渋谷/RISE FLASH to CRUSH Tournament '06 王者)
[判定 2−0]

RISEでFLASH to CRUSH Tournamentの王者になった事もある水谷秀樹は35歳。人に聞いた話によると現在はリタイア状態で、主に後進の指導に当たっているらしい。ふ〜む、そんな水谷に声を掛ける辺りに、今日のKrushの苦しさが出ているなぁ。その対戦相手は青津潤平、昨年行われたKrush ライト級GPにも出場した(一回戦で山本真弘に敗北)、J-NETWORKライト級 一位の25歳。「若手 vs ベテラン」の三試合目は、共に実績を残している者同士の一戦となった。




1R、水谷は序盤から積極的に前に出るも、いきなり青津の左フックがヒット。水谷は尻餅を突くようにしてダウン。直ぐに立ち上がる水谷、ダメージはなさそうだが、思わぬ一発に観客から歓声が沸く。あらららら、これは水谷先生にとって、大きな痛手だなぁ。

水谷が構えて試合は再開、だが青津は勝負を付けるべくラッシュを仕掛けた。左フックと左アッパーが冴える青津、水谷は前蹴りで突き放したり、クリンチを繰り返したりで青津のプレッシャーから逃れようとする。だが、ラウンド終了と同時に青津の右ストレートがヒット、水谷は崩れるようにダウン。ダウン自体はノーカウントとして処理されたが、今の一撃のダメージは大きそうだ。う〜ん、水谷厳しいねぇ。




2R、闘い方の相性の問題もあるのか、両者が積極的に接近し合い、細かい打撃を応酬してクリンチ…という展開が続く。途中、水谷は鯖折りを使用した為に口頭で注意を受ける。だが、尚も続く細かい打撃とクリンチ地獄。1Rに仕掛けたラッシュのせいか、青津には疲れの色が見える。それでも青津は中盤、前に出る水谷にカウンターのワンツーの連打と右ローを浴びせた。だが水谷もクリンチの後でワンツー〜左ローを返したり、前に出る青津に膝蹴りを入れるなどで応戦。うん、水谷が自分のペースを取り戻しつつあるね。元々後半勝負の選手だし、この先の展開が楽しみだ。



3R、流れは変わる。ここまでクリンチを繰り返してきた水谷が体力を回復し、逆襲に転じたのだ。まずは青津のボディに右膝を入れると、下がる青津に何度も右膝をバシバシと当て攻勢に出る。うむ、水谷は後半勝負の選手なので、こういう展開になっても不思議はないね。他にも右ストレートや前蹴りを駆使して攻め込む水谷に対して、青津は水谷が前に出ようとしたところに前蹴りを入れてスリップさせると、左右のローを駆使する水谷にワンツーを返していく。ぬぅ、水谷はダウンまでは奪えなかったか。



判定の結果、2−0で青津が勝利。



うむ、今日の青津は試合開始早々のダウンによるポイント差を活かして、そのまま逃げ切った…って感じだね。でも正直、水谷が終盤にダウンを奪えれば、展開としては面白かったんだけどね(苦笑)。

エキシビジョン 誰のためのエキシビジョン?

エキシビジョンマッチ 2分2R
寺戸伸近(青春塾/M-1バンタム級 王者 & RISE 55kg級 王者 & 元全日本バンタム級 王者)
ランバー・ソムデートM16(M16ムエタイスタイル/修斗フライ級 世界王者)
[勝敗なし]

本日のセミファイナルには、山本優弥石川直生の盟友にして「キック日本三冠王」の寺戸伸近が登場。


止まらない打撃のコンビネーションを得意とする寺戸にとって、昨年は素晴らしい年となった。1月には第五試合に出場した瀧谷渉太を倒して全日本バンタム級王座に君臨すると、3月にはNJKFで活躍する前田弘喜をKOで倒してM-1バンタム級王座を戴冠。6月は主戦場である全日本キックが崩壊するという憂き目に合うも、11月にはTOMONORIをKOしてRISE 55kg級王座を獲得。国内の名立たる強豪を次々に下した寺戸は、この試合で「キック英国四冠王」のアンディ・ハウソンに挑戦する予定だったのだが…。残念ながらハウソンは来日直前に怪我をして欠場。むむぅ、噂によるとハウソンはかなりの強豪だったようなので、この欠場は残念だ。


こうして今日の寺戸の試合は宙に浮いてしまったのだが、そこに現れたのは、なんと…。昨年11月に田原しんぺーを破り、新設された修斗フライ級の初代世界王者となったランバー・ソムデートM16である。う〜む、その昔、日本のキックボクシング界を席巻したランバーが総合格闘技を始めたのが2001年頃。あれから8年、まさかランバーが総合格闘技で世界王者になるとは思いもしなかった…。エキシビジョンながらも、日本のキック界のリングで闘うのは約9年のランバー。だが前出の田原戦を観る限り、試合感については何の心配もないだろう。寧ろ、寺戸の方が心配だ…。




1R、現在は総合格闘家であるランバーは、それを示すかの如くオープンフィンガーグローブを着用して登場すると、いきなり寺戸にタックルを敢行し、レフェリーから注意を受ける。観客から笑いが起こる中、喰らった寺戸もタックルを仕掛ける素振りを見せたが…その直後、反対にランバーが本当にタックルを仕掛うと、戸惑う寺戸からマウントを奪ってパンチを落とそうとする。観客の笑いと抗議が交差する中で、レフェリーは再びランバーを注意。ひでぇ。

試合再開。寺戸は得意のコンビネーションを披露してランバーを攻め込むも、寺戸の右ローを喰らったランバーは反対に「コンニチワ!」と挨拶。寺戸が更に右ローを繰り出せば、左腿を叩きながら「モット!モット!」と打撃を促す。ならばと寺戸はワンツー〜ローを繰り出したが…。ランバーは待ってました!とばかりにカウンターのタックル〜マウントで応戦、またしてもレフェリーから注意を受ける。う〜ん、今日のランバーはずっとこんな感じなのかなぁ…。




なんて思っていたら。2R、ランバーは今度はボクシンググローブに身を固めて登場、まずは挨拶がわりにムエタイ式の強烈な左ミドルと左ハイを披露。その切れ味に、観客は大いにどよめく。打撃で真っ向勝負ができるなら、自ずと寺戸も積極的になる。ランバーの挨拶に、得意のワンツー〜右ローのコンビネーションで返答すると、尚も積極的にワンツーを繰り出していく。だがランバーは強烈な左ミドルを返すと、それでも続く寺戸のコンビネーションをスウェーの連発でかわしてしまう。

ランバーの華麗な動きに観客が歓声を上げる中、試合終盤は両者ともに正面からの殴り合いを披露。パンチの連打を繰り出す寺戸に対して、スウェーを駆使しながら正面から打ち返すランバー。




軽量級とは思えない迫力のある打ち合いを観た観客から歓声が上がる中で、白熱のエキシビジョンは終了。寺戸はマイクでハウソンとの対戦を再アピールした。



う〜ん、面白かった。面白かったんだけど…。ぶっちゃけこの内容じゃ、誰の為のエキシビジョンかわからんよ(笑)。やっぱりランバーは凄いなぁ、と改めて実感したなぁ。対する寺戸、エキシビジョンとはいえランバーと闘えたのはいい経験になったんじゃないかなぁ。強豪と言われているハウソンとの一戦は是非、今年中に実現して欲しいね。

第七試合 石川の「Road to Dynamite!!」、第二章は波乱のスタート

61kg契約 3分5R
○ジョン・デニス(174cm/60.9kg/英国/バッドカンパニージム/SIMTA英国ライト級 王者 & 2008年WMFアマチュアムエタイ 銅メダル)
石川直生(177cm/60.7kg/青春塾/元全日本スーパーフェザー級 王者)
[1R 2分19秒 KO]
※3ダウン

昨年もっとも活躍した60kg級のキックボクサーは、Dynamite!!への出場を公約に掲げていた石川直生だと思う。




K-1 MAXではなく、あくまでキックボクシングの試合でDynamite!!に参戦する」という難しい目標を掲げていた石川は、昨年の1月に現役のラジャダムナンのランカーを飛び膝蹴りでKOし、実現困難な公約を実力を示す事で突破しようとした。だが、この年の全日本キックK-1ルールによる興行「Krush」を連発、石川自身もその波に巻き込まれる事になる。3月にはKrushへの出場を余儀なくされ、大月晴明にKOされてしまう。だが、これでスイッチを切り替えた石川は5月、Krushの舞台で「K-1 60kgのエース」と呼ばれる上松大輔を撃破すると、6月には久々のキックルールの試合で前田尚紀と対戦して全日本スーパーフェザー級の王座を防衛(ドロー)。名のある選手と対戦し続けることで、石川は自分の公約を実現しようとした。

しかし6月、主戦場だった全日本キックは崩壊。後継団体のグッドルーザーが今後主催するのは、すべてKrushになるという。寝耳に水の状況に対して石川が取った選択は…、Krush ライト級 GPに出場し、優勝する事で実力を示す事だった。一回戦ではTURBOを相手にダウンを奪われながらも、最後は右ハイで逆転勝利した石川は、二回戦でも水落洋祐にダウンを奪われてから右ハイで逆転KO。準決勝では山本真弘を倒した実績の持ち主である"狂拳"竹内祐二を飛び膝蹴りでKO。神懸り的な強さを目にした観客は「Krush ライト級 GPを制覇するのは石川だろう」という見方をしていたが、石川は竹内戦で頭部を切ってしまった為に決勝戦を棄権。それでも、今年の石川の活躍は、彼をDynamite!!に出場させるには充分な活躍だったと言えよう。

だが、昨年のDynamite!!は二転三転の末、「DREAM vs 戦極」の対抗戦に落ち着いたのはご承知の通り。キックボクサーとしてDynamite!!出場を目指していた石川にとっては、自身の出場どころか「キックボクシング」というジャンルそのものが無視されるという、非常に屈辱的な結末を迎えてしまった。


それでも、石川の野望は潰えない(ついえない)。石川の今年のテーマは「K-1もキックも自分が引っ張る」である。その具体策は…石川がK-1に出場して活躍する事で60kg級と70kg級の立場を逆転させた上で、K-1出場で得た知名度後楽園ホールに持って帰り、キックボクシングの軽量級の魅力を世にアピールする、というものである。う〜む、昨年の目標と比較すると「随分と角が取れて丸くなったなぁ」と思う反面、「より実現可能な目標になったなぁ」と感じるね。

そして、そんな石川の活躍に目を付けたのが…誰あろう、K-1谷川貞治プロデューサーだ。今日の石川の対戦相手であるジョン・デニスは、谷川Pが石川のK-1 MAX出場に向けて放った刺客なのである。勝てばK-1 MAXへの出場は決定的となる石川、相手が実力未知数であっても、ここで勝たない事には石川の道は開かれない。




試合開始。デニスの牽制の右ハイに対して、石川は様子を見ながら右ローを放つ。両者のクリンチを挟んで、石川は重い左ロー〜左ミドルの連続技を繰り出して観客の歓声を浴びる。

だがこの時、この試合がここからあっという間に決着がつくなど、誰も予想していなかった。




迎えた中盤。デニスは前に出て不意に右フックを放つと、これをモロに喰らった石川はダウンを喫してしまう。石川の予期せぬダウンに観客がどよめく中、石川は直ぐに立ち上がってノーダメージをアピール。だがレフェリーは当然のごとくカウントを続行。石川はカウント8でファイティングポーズをとった。そしてこの時点では、石川のダメージは小さいように見えたのだが…。



こちらが観ている以上に、石川のダメージは大きかったようだ。デニスは再び前に出て左ストレートを放つと、ガードの隙間からこの一撃を喰らった石川が再びダウンを喫してしまう。これも早い段階で立ち上がってノーダメージをアピールした石川だったが、さすがにダメージは隠せない。試合再開後、石川は後ろに下がって逃げるようなる。昨年の石川の活躍を知る者には信じられない光景だったが、デニスはこれを追いかけると、トドメの左フック一閃。喰らった石川はあっさりと三度目のダウンを喫してしまう。

『1R、3ダウンによるTKO負け』、石川は最悪の形で2010年のスタートを切る事になった。




う〜ん…。最近の石川は試合中にポカをやらかす事が多いなぁ。勝利が確定していたにも関わらず、最終ラウンドで気迫に圧された前田戦。最終的には勝ったものの、何でもないところでダウンを喫してしまったTURBO戦と水落戦。そして勝利しながらも、直前のパンチでカットしてしまった"狂拳"竹内戦。そしてこの試合も、序盤の様子見の段階での被弾。う〜ん、今日はそういう石川の悪い面が、一番最悪な形で出てしまったなぁ。実力差というよりは、事故という表現の方がしっくり来る、というかねぇ。何にせよ、石川はまた一から出直しだな。

対するデニスだが、正直まだ強いとは思えない。彼の実力が本物なのかどうかは、W山本(山本真弘山本元気)や桜井洋平との対戦でハッキリするだろう。再来日を希望。



雑感

う〜ん、全体的に薄味な興行だった分、セミのランバーの強さとメインの石川の敗北劇が突出しているなぁ。っていうか、他の試合があまりにも薄味なんだよなぁ。選手には悪いし、いい試合もあったけど、味としては薄味というかねぇ…。正直、こんなカードしか組めないのなら、もう来年は1.4はないのかなぁ…って思っちゃうし、無理してやる必要もないと思うね。


それにしても、まさか石川がこのタイミングで負けるとはねぇ。昨年の活躍を思うと可哀想だけど…、一瞬で失った信用はコツコツと勝利を重ねて取り返していくしかないよね。それが格闘技というものだし。頑張れ、もっと頑張れ石川直生。僕は観ているぞ!


以上、長文失礼。