10/24 VALKYRIE ディファ有明興行 観戦記 Ver1.1

今日の小見出しは、パンフレットで各選手が語っているフレーズを使っております

本日はディファ有明にてVALKYRIEを観戦。


女子格闘技界に異変が起きて、約一年。長年、観戦してきたSMACK GIRLは2008年10月に終了。なんで終了したかは各自調査!なのだが、これに伴って女子格闘技界は新たに二つの団体が誕生した。

一つは、これまでのSMACK GIRLの流れを受け継ぎつつ、選手のビジュアルを重視したカード編成を行なうJEWELS。そしてもう一つの団体こそ、今日観戦するVALKYRIEなのである。佐伯繁氏率いるDEEPが主催し、選手のビジュアルを売り物にしているJEWELSに対して、和術慧舟會主催のVALKYRIE実力主義。闘いの舞台をリングから金網へと移し、ルールでもグラウンドでの顔面パンチを解禁。ふ〜む、男子でも珍しい金網の舞台が準備できるのは慧舟會の強みだね。

今日の興行のメインは、茂木康子 vs 瀧本美咲の「友情対決」。普段は練習仲間だというこの二人が、どういう経緯で闘うことになったのかは知る由もないが、女子格闘技の黎明期から参戦している二人の対戦は非常に興味深いといえるだろう。今日はその他にも慧舟會の軽量級エースである大室奈緒子や、正式に闇愚羅へ移籍したSACHIなども参戦。なんだよ、今日のVALKYRIEはビジュアルも全然、JEWELSに負けてないじゃん。


というワケで当日を購入、S席は5500円也。ふ〜む、こりゃあ正直、先にA席(3500円)を買っときゃ良かったなぁ。観客の入りは約四割程度。まぁ、フルバージョンのディファ有明が満員で埋まるのなら、女子格闘技界全体がこんなに厳しい状況になるワケはないんだけど…それにしたって、ちょっと寂しい入りだなぁ。

第二試合 「そこに立つもんだと思っていた(あやめ)」立つところを観れなかったのは残念

女子ライト級 3分2R
○あやめ(和術慧舟會RJW/H.T.W道場) ※三浦絢女 改め
●森雅恵(総合格闘技闇愚羅)
[判定 3−0]

この試合、僕が会場に着いて観戦し始めた途端に試合が終了してしまったのだった。う〜む、観てないものは語れない、というか。というワケで…判定の結果、3−0であやめが勝利。とりあえず写真だけ載せときますわい。



第三試合 「元同門には負けられないです!(高木)」という対決は離脱した先輩に軍配

女子フライ級 3分2R
○ハッピー福子(総合格闘技道場コブラ会) ※浜田福子 改め
●高木佑子(総合格闘技闇愚羅)
[2R 1分1秒 腕十字固め]

なんだかよく解からんが…今日のVALKYRIEでは、改名ブームが到来している。この興行では三人の女性が改名しており、この試合に出場するハッピー福子も改名した一人。まあ何にせよ、観ている側が覚えやすい名前に変えるのは良いことだ。ちなみにこの試合は元同門対決、ハッピー福子は元闇愚羅なんだそうな。


1R、まずは高木が引き込んでグラウンド。上になった福子は高木を金網に押し込みパスガードを狙うも、その後は展開なくブレイクに。中盤、高木は首投げの体勢から福子を崩す。だが福子は流れの中でグラウンドで逆転して上になると腕十字の体勢へ移行。ピンチを迎えた高木だが、これを逃れると上からパンチを落として反撃。んで、ここで1Rは終了。う〜む、やはり総合ルールでの3分間は短い。



2R、開始早々に高木の裏拳がハードヒット。これには観客も沸きかえったがが、福子はこれを喰らいつつも高木の組み付きを崩してグラウンドで上になる。ここからじっくりと腕を捕らえた福子は、満を持して腕十字の体勢へと移行。今度はガッチリ極まった、逃げれられない高木の様子を見たレフェリーが試合を止めた。



う〜ん、なんとなくだけど…。試合を観る限りでは、グラウンドでの力は高木の方が上のように感じたんだけどなぁ。やっぱり極め技のある選手は強い!って事なのかねぇ。まぁ、高木はこれがデビュー戦のようなので、これから強くなっていけばいいさね。



第四試合 「今回もぶっ壊します!(♂ha)」「グチャグチャにしてやります!(スギロック)」怖ぇよ

女子バンタム級 3分3R
スギロック(和術慧舟會A-3) ※杉山直歩 改め
●♂ha@THE♀(パラエストラ柏)
[判定 3−0]

いつ読んでも、名前がまったく読めない♂ha@THE♀。これで「アゲハ・アット・ティーエッチイー」って読むんだけど…、Leet文字ですらないこの名前を読めるのは本人と名付け親だけ、なのではないだろうか。というワケで、この観戦記では彼女の事を「アゲハ」と記述します。あしからず。


1R、まずはスギロックが右ローでアゲハを牽制。アゲハはスギロックの頭を脇に抱えの首投げを連発して崩しに掛かるが、グラウンドで上を獲ったのはスギロックだ。この後、スギロックはラウンド終了までパンチを落としていった。ふ〜む、ここまでの展開を見るにつけ、実力はスギロックの方が一段上っぽいなぁ。



2R、開始早々からワンツーを放ち、前に出たのはスギロック。その後、両者は組み付き、金網際での差し合いを展開。首相撲と立ちレスリングで攻めるスギロックに対して、アゲハは頭を脇に抱えての柔道殺法。スタンドでの技術の違いが面白い。2Rの大半を費やした金網際の攻防、競り勝ったのはスギロック。グラウンドでサイドを奪ったスギロックは顔面へパンチを落とすと、ニー・オン・ザ・ベリーの体勢へと移行して尚もパンチを落としていった。ぬぅ、このままだと…3Rも同じような展開かな?



3R、序盤はスギロックがスタンドで右ローを連発。ローをカットできないアゲハ、左のももを蹴られる度に表情が曇っていく。続いては金網際の攻防、アゲハが正直からのフロントチョークからグラウンドへ引き込む。だがスギロックは冷静に首を抜くと…試合終了までの30秒間、アゲハに対して容赦なくパウンドを落としていった。



試合終了、判定の結果3−0でスギロックが勝利した。



試合の文章にも書いたけど、すべてにおいてスギロックが上だったね。スカッとした勝ち方ではなかったけれど、インパクトは充分だったなぁ。スギロックの名前は覚えておきましょう。

妖怪対決を制するのはどっちだっ!?

休憩時間の後、次の興行でVALKYRIEフェザー級王座を争う辻結花とV一(「ヴィーはじめ」と読む)が登場、金網の中から挨拶を行った。その中で王者の辻は、Vが得意とする「妖怪テケテケ」なる技に対抗して「妖怪油すまし」を考案したと発言。これを受けたVも「妖怪テケテケ」は人前ではまだ30%しか出していない、と切り返す。



う〜ん、なんで妖怪なんだかサッパリ判らないけど…。旗揚げ戦でこの二人が闘った時は辻が圧倒しているだけに、Vの「妖怪テケテケ」には大いに期待したいところだな。




第五試合 「絶対に負けたくない!気持ちを見せる!(SACHI)」負けたくない気持ちは出ていたなぁ

女子バンタム級 3分3R
○SACHI(総合格闘技闇愚羅)
●村浪真穂(和術慧舟會イカツ道場)
[2R 2分32秒 腕十字固め]

そのルックスの良さから、ライバル団体であるJEWELSの旗揚げ戦にも参戦しているSACHI。今回は所属ジムを禅道会から闇愚羅へと変更してからの第一戦となる。今日の対戦相手は、SMACK GIRLで行われたTHE NEXT CINDERELLA TOURNAMENT 2007のフライ級で優勝した経験を持つ村浪真穂だ。


(11/10追記)
下のコメントで指摘されたのですが、SACHIが禅道会から闇愚羅へと変更したのは前の試合からのようです。つまり、今回は所属変更から二戦目となります。関係者様、申し訳ありませんでした。



1R、試合開始早々からSACHIが積極的にタックルを連発。二度目のタックルで村浪をテイクダウンしたSACHIは、村浪を金網に押し込んでパスガードを狙うが、この後は展開なくブレイク。それでもSACHIはタックルに拘り、再びテイクダウンに成功するも、ここで1Rは終了。村浪はここまで、いいところがない。反撃なるか?



2R、序盤にSACHIの右フックがヒット。怯む村浪、SACHIはタックルを敢行してテイクダウンを奪う。尻で立とうと必死な村浪をベッタリと寝かせるSACHI。パスガードを決めて、サイドからマウントへとポジションを移行すると、程なくして腕十字の体勢へ。ガッチリと極まった腕十字、やがてレフェリーが試合を止めた。





う〜ん。第四試合に続いて、またしても一方的な試合だったなぁ。まあ、これだけ鮮やかに極めてくれれば、いうことはないんだけどね。村浪のいいところが観れなかったのは残念。バンタム級だと勝手が違うのかなぁ?


(追記)
と思ったら、下のコメントにある通りSMACK GIRLのフライ級とVALKYRIEバンタム級は0.5kgしか差がないらしい。だとしたら、ここは素直にSACHIの強さを褒めるべきだね。



第六試合 「ちっちゃい物対決を大きく魅せたい!(関)」今日の貴方は大きく見えました

46kg契約 3分3R
○大室奈緒子(和術慧舟會東京本部)
関友紀子(フリー)
[判定 3−0]

この試合の組み合わせを観た時に「また関さんが、便利に使われているよ…」と思っていた。

なんか関さんって、カードが決まらなくって困った時に突然、呼び出される印象があるんだよなぁ。だからパッとしない戦績の割には、妙に強豪との対戦が多いというかねぇ。どうやらネットには彼女のこれまでの戦績が残っていないみたいなんだけど、ちょっと調べただけでもMIKU、しなしさとこ、そしてSBルールでレーナだからなぁ…って、戦犯はDEEPとSBじゃねぇかよ…。

んで、そんな関さんが今回対戦するのは、実力には非常に定評のある大室奈緒子だ。あ〜あ、また関さんが何もできずに負けていくのかなぁ…と思っていたら、この試合は意外と関さんが頑張った。


1R、まずは大室がワンツーを放ち、関の脇を差して金網へと押し込む。関も脇を差し返して応戦するが、大室は更に差し返して金網へ押し付ける。ここは展開がなくブレイク、続いてはスタンドでのパンチによる攻防に。自信を持って堂々と殴り合う両者、これを観た観客が盛り上がらないワケがない。う〜ん、今日の関はなんか度胸が据わってるなぁ。



2R、序盤はスタンドによる攻防。お互いに距離をとり、関も大室もパンチを連発。続いては両者組み合っての金網際での差し合い、これは大きな展開なし。と、ここまでの展開でスタンドに自信をつけた関は、更にパンチを振って前に出たが、大室は「待ってました!」とばかりにカウンターのタックルを決めてテイクダウンを奪う。虚を突かれた関だが、グラウンドはすぐに脱出。だが大室は、後ろからの立ちレスリングで関をコントロールすると、離れ際に良いパンチを数発入れた。う〜ん、巧いなぁ。



3R。2Rでカウンターを取られたにも関わらず、関はワンツーで前に出る。良いパンチが数発ヒット、セコンドも激を飛ばす。中盤は何度目かの、金網際での差し合いの攻防。大室はレスリングで関をコントロールすると、離れ際にパンチをヒットさせる。なかなかの一進一退の攻防、まさか関がこんな試合を展開するとは予想もしなかったなぁ。



その後、スタンドでの殴り合い&金網際の攻防を繰り返す両者。終盤、関は右ストレートをヒットさせるも、勢いづいた関のパンチに、大室は再びカウンターのタックルを決めてテイクダウンを奪う…というところでタイムアップ。う〜ん、今日の関はかなり喰らいつたなぁ、大したもんだ。



試合終了、判定の結果は3−0で大室が勝利。



うん、寝技が本業でありながら打撃志向が強い大室と、もともと打撃が得意な関さんの対決はかなり面白かったなぁ。体格も実力も噛み合っていたように思う。それにしても僕は、関さんの実力をみくびっていたようだな。関さん、本当にゴメンナサイ。今日から悔い改めます。

第七試合 「友情対決(パンフレットより)」勝負の世界は非情なり

女子フェザー級 3分3R
○瀧本美咲(空手道禅道会横浜道場)
●茂木康子(ストライプル)
[3R 51秒 TKO]
※スタンドでのパンチ連打

本日のメインイベントは、VALKYRIEのプロデューサーを務める茂木康子が自ら出場、練習仲間である瀧本美咲との一戦に挑む。

女子格闘技界の黎明期からSMACK GIRLへ参戦しているこの二人、共に練習してきた時間も当然のように長いのだろう。相手の実力や技量はお互いによく判っているだろうし、その中で育まれた友情もあるだろう。それでも瀧本は「練習仲間でも関係なくやらしてもらいます」と言い切り、茂木は「むしろ殴りたい!!」と息巻く。う〜ん、茂木の一言には「友達ならでは」の含みを感じるねぇ。「あいつに一言、言いたい!」「目を覚まさせたい!」みたいなニュアンス、というかねぇ。


1R、ワンツーと左ミドルで攻め込む瀧本に対して、茂木もパンチで応戦。だが、空手をベースとする瀧本に対して、茂木のベースは柔術。その打撃の技術にはかなり差があり、中盤を迎える頃には「瀧本圧倒」と言える展開に。瀧本の打撃を前に、その表情を曇らせる茂木。左ミドルがかなり効いているのだろう。

「ならば」と茂木は、自分の技術を活かすべく組み付くが、瀧本は首相撲でコントロールし、ガラ空きとなったボディに膝蹴りを入れてダメージを与える。早くも打つ手がなくなった茂木に対して瀧本は終盤、フックのラッシュで一気に攻め込む。大振りながらも力の篭った連打を前に、茂木はガードしながらも棒立ちの状態に。う〜ん、公言通りとはいえ、瀧本の打撃は本当に容赦がない。



2Rも同じような展開。瀧本は1Rと同じくワンツーで距離を茂木との測り、左ミドルで体力を削っていく。上背に優る茂木が組み付いても、瀧本は立ちレスリングで動きを制しつつボディへヒザ蹴りを連打、茂木をまったく寄せ付けない。



と、ここまで苦しい展開が続いた茂木だが、ようやく反撃を開始。中盤、瀧本の右ローに合わせたカウンターの右ストレートがクリーンヒット。そして終盤にはタックルでテイクダウンを奪う。観客は歓声で茂木の反撃を支持するが…終盤の展開ということもあり、チャンスを活かせないままラウンド終了を迎えてしまう。ぬぅ、こうなると茂木は苦しいな。



3R、いよいよ瀧本が勝負に出る。再びテイクダウンを狙うべく組み付く茂木に対して、瀧本はこれまでと同じくボディへ膝蹴りを放った後で突き放すと、金網へと追い込んで一気にラッシュを仕掛けた。左右のフックをブンブン振れば、茂木は苦しい表情を浮かべてガードをするのが精一杯。瀧本はトドメとばかりにボディへパンチ、モロに喰らった茂木が崩れる。この様子を見たレフェリーが試合を止めた。



試合を終えた瀧本はマイクを握ると、涙を見せながら「いつも一緒に練習している茂木さんと試合をすることになって、思いっきり闘いました。今後も女子格闘技でこういう『熱い試合』が、沢山出てくるように願っているので、応援よろしくお願いします」とアピール。



敗れた茂木もマイクを握り、「今日は友情対決ということで、瀧本さんと闘えて、本気で殴ってもらって良かったと思います」と語ると、最後は「これからも、VALKYRIEをよろしくお願いします」とプロデューサーらしい言葉で今大会を締めくくった。



う〜ん、練習仲間であるこの二人は、試合前からお互いの技量は判っていたんだろうなぁ。加えて年齢の差、総合格闘技での戦績での差、そしてお互いの技術の相性の問題…。色々なことが判っていながら、その壁に真正面から向かっていける茂木という人は凄いと思うし、それに対して非情になり切った瀧本は凄い選手だと思う。

目は人生を雄弁に語る

ああ、思い出したよ。この図式って、地味に茂木の総合デビュー戦である深谷愛戦に似ているんだなぁ…。


「タレントの深谷が、柔術で実績を残している茂木に立ち向かう」という現実に対して、深谷が見せた目は…格闘技という恐怖に怯えながらも、タレントとしてのプライドもあって「何かをしなければならない」という悲壮な想いを感じさせるものだった。そういえば彼女は、茂木に腕十字を獲られた後で、泣きながら「まだやれるよっ!」と訴えていた。当時は「みっともないなぁ。三崎(和雄)は『負けても、リング上で悪あがきする』ことまで教えているのか?」とも思ったが…。今思えば、彼女はリングの上で何もできなかった自分が、本当に悔しかったのだろうなぁ。


今日の茂木の目は、デビュー戦の対戦相手だった深谷の目の延長線にあるものだ。たとえ相手の方が強いと判っていても、たとえ相手が練習仲間であっても、たとえ相手が自分が苦手とする分野を得意としていても、プロとして相手に立ち向かう目は、本当に強い人が持つ目だった。2Rに右ストレートがヒットしたのも、テイクダウンに成功したのも、彼女の格闘技人生で培った目の力で得たものなのだろう。



茂木選手は本当に「強い人」だ。こんな強い目ができる人がいるのは、女子格闘技界の宝だと思う。

雑感

途中からの観戦が残念なくらい、今日は一本勝ちや好勝負が続出していたように思う。ぶっちゃけてしまえば…、今まで観戦したVALKYRIEの中では一番、面白かったなぁ。下から選手が育ってきているのも感じたし、上の選手もベテラン選手も頑張っているし。苦境が続く女子格闘技界だけど、派手さはなくともこういう興行を地道に続けてリピーターを増やしていけば、再び注目を浴びる時が来ると思うなぁ。


いやいや、本当に面白かったです。


以上、長文失礼。