5/11 DREAM さいたまスーパーアリーナ興行 色々なメディアで観戦記

ゆっくり書いていたら、もう二週間も過ぎちゃった

ちょっと遅れたけれど…地上波で観戦したり、動画サイトをハシゴしたりして、どうにかDREAMの全試合を観戦。イヤ、今回はDREAMにとって一つの転機となるであろう興行だったから、どうしても全試合を通して観戦して文章にしたかったんだよねぇ。僕自身、メジャー系の団体でこんな気持ちになるのは久しぶりだなぁ。


さてさて。相変わらず観客の入りがパッとしないDREAMだけど、今回は興行の内容で格闘技ファンを魅了。特にセミファイナルで実現したエディ・アルバレス vs ヨアキム・ハンセンの外国人対決は、このところはローテンションだった日本の総合格闘技ファンの魂に火を付ける一戦に。いや〜っ、アレは本当に凄い試合だった!このままいけば、今年の上半期のベストバウトは間違いなくこの試合になるだろうね。


ってなワケで早速、観戦記をば。今回は試合を詳細に書いております。

第一試合 無理は禁物

67kg契約 1R10分+2R5分(インターバル90秒)
○山崎剛(174cm/67.0kg/日本/GRABAKA)
昇侍(171cm/66.8kg/日本/KIBAマーシャルアーツクラブ/PANCRASEライト級王者)
[判定 3−0]

ふ〜む。この二人には失礼だけど、カード自体はDREAMっていうよりはDEEPって感じだよなぁ。それにしても昇侍PANCRASEでの試合から中二週間での出陣。しかも風の噂では、足に大怪我を負っていると聞く。DREAMへの出場は千載一遇のチャンスかもしれないが…一生に一度の人生なのだから、体は大事にして欲しいところ。


試合全体を通して、怪我の為に足の踏ん張りが効かない昇侍に対し、山崎はテイクダウンを奪ってはグラウンドで上のポジションを取り続けるも…1R終了間際に腕十字を極めかけた場面以外はペチペチと鉄槌を落とす程度で有効な打撃が見られない。

対する昇侍はグラウンドでは下から強烈なパンチを放ち、立ち上がればボディへ膝蹴りを入れる等でガッチリと応戦。右ハイやグラウンドでの膝蹴りがヒットする場面もあるなど、与えたダメージだけを見れば昇侍の方が上だったが、判定の結果は3−0で山崎が勝利。ふ〜む、ポジション獲りと腕十字が評価されたのかねぇ。僕は昇侍の勝利でも全然おかしくない試合だと思うんだけどなぁ。


それにしても…この試合展開は4/27のPANCRASEでの大石幸史 vs 昇侍に似てるなぁ。この時の昇侍は今日の試合以上に下になっている場面が非常に多くて、大石はポジション獲り以上の事は何もしなかった挙句、判定でドローになったんだよなぁ。ぬぅ、ひょっとしたら、大石幸史 vs 昇侍がDREAMで行われていたら大石の勝ちなっていたかもなぁ。イヤ、単に大石が勝てなかった事が悔しいダケなんだけどさ(苦笑)。

第二試合 貴方は化物

DREAMミドル級GP 一回戦 1R10分+2R5分(インターバル90秒)
ジェイソン・ミラー(185cm/83.8kg/日本/チーム メイヘム ミラー)
柴田勝頼(183cm/83.4kg/日本/ARMS)
[1R 6分57秒 TKO]
※マウントパンチ

日米「狂」対決となったこの試合は…作り物の「狂」である柴田を、ナチュラルな「狂」のミラーが一気に呑み込むような展開となった。


試合開始から間もなく、強烈な首相撲からの膝蹴りを放つミラー。更にタックルに繋げるミラーに対し、柴田はフロントチョークを仕掛けるも、ミラーはこれを外してグラウンドで上になり、カメラに向かってVサイン。「勝利を意味するVサイン(by キング・ザ・100トン (c)キン肉マン)」って奴か。それにしても、グラウンドでの動き一つ見ても、柴田との馬力の差は明白だなぁ。積んでいるエンジンが違うというかねぇ。本来はプロレスラーである柴田の方が「馬力だけならな負けない!」ってトロコを見せなきゃならんと思うんだけどねぇ。

こうして完全に柴田を呑み込んだミラーは、グラウンドでモンゴリアン・チョップを放ちつつ、マウントから柴田の左腕を極めにかかる。なんとか逃れる柴田だが、ミラーは尚も容赦なくマウントパンチや膝蹴りをゴツゴツ落とす。恐怖で表情が強張る柴田だが、ミラーはニコニコしながら柴田の顔面を固定して膝蹴りを入れ続ける。ダメージが蓄積し何もできなくなる柴田に対して、ミラーがマウントからパンチを落とし直したところでレフェリーが試合を止めた。あ〜あ、止めるのが遅すぎるよ。

勝ったミラーは日本語で「ワタシハ、バケモノ!」と叫び、観客の歓声を浴びた。願わくはこの選手の周りに、変な日本語を教える日本人がいない事を望む。このキャラなら、放送禁止用語も大声で叫びかねないからなぁ…。


う〜ん。正直、柴田は無理して総合格闘技を続ける必要はないんじゃないのかなぁ。狂犬が怯えていたのでは、本末転倒というかねぇ。そういえば元祖・狂犬キャラのプロレスラー・小原道由もPRIDEの舞台では、恐怖に支配されていたっけ。狂犬ってキャラは、総合格闘技では験が悪いのかも。

第三試合 不思議な事実

DREAMミドル級GP リザーブマッチ 1R10分+2R5分(インターバル90秒)
メルヴィン・マヌーフ(177cm/83.5kg/オランダ/ショー タイム)
●キム・デウォン(180cm/83.9kg/韓国/CMA KOREA 正進MMA)
[1R 4分8秒 TKO]
※グラウンドパンチ

ぬぅ、なんだってDREAMミドル級GPのリザーブマッチが、トーナメント本戦(第二試合)よりも後に組まれているんだろ?そして日本では実績を積み上げているマヌーフが、なんで本戦に出場できないんだろ?不思議だ。


試合開始。キムはマヌーフのテイクダウンを逃れ、打ち合いでは一歩も引かずにパンチを振るなど、強気な闘いぶりを見せる。観客の歓声の中、マヌーフをテイクダウンしたキムがサイドを奪うと、ギロチンで嫌がらせつつ顔面への膝蹴りを狙う。と、ここまではキムが健闘したのだが…。

マヌーフは力だけで強引にグラウンドから脱出、逆にキムをテイクダウンしてサイドを奪うと、側頭部に膝蹴りを入れ、続いて右ストレート一閃。強気な態度から一転、この二発でキムは体を強張らせてしまう。これを見たマヌーフは後頭部に膝蹴りを放ち、グッタリしたキムにパンチを連打。レフェリーが慌てて試合を止めた。


ふ〜む、二発目の膝蹴りはどう見ても反則だと思うんだが…。ついでに言えば、これは結果論だけど…それぞれの選手の実力を考慮すれば、ミラーvsマヌーフをトーナメント本戦にして、柴田vsキムをリザーブマッチにした方が良かったんじゃないかな。

第四試合 意外な決着

ライト級 1R10分+2R5分(インターバル90秒)
中村大介(176cm/69.9kg/日本/U-FILE CAMP.com)
チョン・ブギョン(171cm/69.8kg/韓国/チーム ユン)
[2R 1分5秒 KO]
※右ストレート

U.W.F.スタイルのプロレスラーである中村と、柔道出身のチョン。お互いに腕十字を得意とする者同士の対戦は、攻防が噛み合った好勝負に。


1R、スタンドでプレッシャーを掛ける中村に対し、チョンはバックから飛びついてグラウンドへ引き込み、下から腕十字を仕掛ける。その素早い動きに観客は驚きの声を上げるが、中村はしっかりと対応すると逆にアキレス腱固めを仕掛ける。う〜ん、U.W.F.だなぁ。

二度目のグラウンドで中村はサイドを奪い、ここから一気に腕十字。だがチョンも負けずに腕十字で逆襲。お互いに極めに行く姿勢を感じ取った観客から歓声が沸く中、チョンにバックを奪われた中村は前から腕を捕ると、その腕を伸ばして腕十字を仕掛ける。更には飛びつき腕十字まで見せる中村。おお、なんだか試合内容までU.W.F.っぽくなってきた(笑)。

最後のグラウンドではアンクルホールドまで見せた中村に対して、チョンはなかなか反撃する事ができずに苦戦。ふ〜む、自力の差が出てきたなぁ。チョンは柔道がベースの為か、中村が仕掛ける下からの関節技への対応が甘いね。


2R、中村は再びチョンにバックを奪わせると、前から腕を捕って小手を極めて投げてから腕十字を仕掛ける。チョンがタップしたのをレフェリーが見逃す中(オイオイ)、立ち上がったチョンに対して中村はノーモーションの右ストレートを放つ。モロに喰らったチョンは一撃でダウン、腕十字対決は意外な結末を迎えた。


うん、これはいい試合だった。チョンは下になってからの防御方法をちゃんと覚えれば、もっと強くなりそうだなぁ。そして中村は、この試合ではポテンシャルを発揮したと言えるだろう。元々好きな選手なので、この勝利は嬉しいねぇ。もう少し筋肉をつけて、もっと上の方で活躍が見たいなぁ。

第五試合 残酷な試合

DREAMウェルター級王座 代表者決定戦 77kg契約 1R10分+2R5分(インターバル90秒)
ニック・ディアス(183cm/77.0kg/米国/シーザー グレイシー柔術)
井上克也(175cm/76.7kg/日本/和術慧舟會RJW/前PANCRASEウェルター級 王者)
[1R 6分45秒 TKO]
※タオル投入

PANCRASEでは階級を落としたハズの井上がウェルター級に戻して試合に挑むも、ディアスとの体格差は歴然。そして試合は、両者の体格差がそのまま決め手となった。


試合開始早々からブンブンとパンチを振り回すディアスに対して、井上は左のカウンターで応戦。だがディアスは怯まずに左右フックに右ボディを交えて攻め続ける。リーチの外から放たれるパンチを前に井上が徐々に防戦一方となる中、ディアスは首相撲からアッパー、ボディと打ち分けて更なるスタミナを奪っていく。

試合のペースを握ったディアスは、井上からテイクダウンを奪い、グラウンドでの左ストレートで鼻血を誘う。尚もスタンドでパンチを当て続けるディアスに対し、井上は左ストレートを中心とした打撃で応戦するも、リーチ差のせいで殆どの打撃が届かない。最後はディアスの左右のフック。顔面に喰らった井上の動きが緩慢になる中で、ついにセコンドがタオルを投入した。


ハッキリ言って、ディアスの横綱相撲だね。これ以上の言葉が見つからないなぁ。まあディアスも、後半はスタミナを切らしていたように見えたけどね。それにしても体格差が惨かった。井上、いとあわれ。

第六試合 試練の連続

DREAMライト級GP 二回戦 1R10分+2R5分(インターバル90秒)
川尻達也(171cm/69.8kg/日本/R-BLOOD)
ルイス・ブスカペ(172cm/70.0kg/ブラジル/ブラジリアン トップチーム)
[判定 3−0]

昨年〜今年に掛けて一本勝ちから遠ざかっている川尻。実力には定評のあるブスカペから一本を奪えば、その実力を世間へとアピールする事はできるが、まあ相手はブスカペだし、一本を奪うのは難しいかな?


1R、前蹴りでコケたブスカペの上なる川尻だが、足元を掬われてテイクダウンを許してしまう。川尻は立ち上がるも、ブスカペは片足を獲って離さない。何度も崩される川尻だが、流れの中で上になるチャンスを得ると、得意のパンチを約1分半に渡って落としていく。劣勢に回ったブスカペはなんとか立ち上がってブレイク、ここまでで6分が経過。う〜ん、展開こそ少ないけど…ここまでは川尻が有利だね。

続いて右のクロスカウンターでブスカペをダウンさせた川尻、再びインサイドガードから鉄槌をガツガツと落とすも、ブスカペは立ち上がると逆に川尻を倒そうとするも、川尻はコーナーを利用してテイクダウンを許さない。そうこうしている間に1Rが終了。川尻のグラウンドのパンチは命中率が高いねぇ。非常に堅実な打撃というか。


2R、ブスカペの助走付きタックルをシッカリと受け止め、逆にテイクダウンを奪った川尻は。ハーフマウントからパンチを落とし、隙を見ては膝蹴りを入れるなどで攻勢をキープ。ブスカペが立ち上がっても小外掛けで倒して主導権を譲らない川尻、鉄槌を落として更なるダメージを与えていく。

いよいよ苦しくなったブスカペは、一か八かのタックルを敢行。これは川尻に見切られるも、グラウンドでの流れの中でバックを奪うチャンスを得る。ボディシザースを極め、いよいよスリーパーを狙うか…というところで、川尻は体勢を反転させて上になりパンチを落としていき、ここで試合は終了。


判定の結果、3−0で川尻が勝利。


ふむ、終わってみれば川尻はブスカペに何もさせなかったねぇ。完勝だとは思うんだけど、「世間にアピールできたか?」といえば…とてもそうは言えない内容だよなぁ、地上波もダイジェスト扱いだったし。最近はキツい選手との対戦が続いているしねぇ。せめてこのトーナメントが終わったなら、一回くらいは楽な相手をぶつけてもいいんじゃないの?

第七試合 伝説の試合

DREAMライト級GP 二回戦 1R10分+2R5分(インターバル90秒)
エディ・アルバレス(177cm/69.9kg/米国/ファイト ファクトリー)
ヨアキム・ハンセン(175cm/69.8cm/ノルウェー/フロントライン アカデミー)
[判定 3−0]

その実力は修斗、PRIDE、HERO'Sで広く知られているハンセンと、前回のDREAMで鮮烈なメジャーデビューを飾ったアルバレス。この両者の対戦は、早くも「今年のベストバウト」との呼び声も高い程の激闘となった。いや〜っ、これはマジでいい試合だったっ!


1R、スタンドで主導権を握ったのはアルバレス。いきなり右ストレートをヒットさせてダウンを奪うと、すかさずグラウンドで上を獲る。しかしハンセンもラバーガードからの腕十字で応戦、アルバレスは逃れて試合は再びスタンドに。いやいや、まだ開始から2分30秒なのに、随分と試合内容が濃いねぇ。

その後はスタンド中心の攻防となる。この時、主導権を握ったのはアルバレス。右ストレートでダウンさせたり、組み付いてテイクダウンを奪うなどで何度もハンセンの上になるも、グラウンドには固執せず、すぐにハンセンを立たせ、コンビネーションやボディブローでスタミナを削っていく。いや〜っ、MARSで見た時から「強豪だなぁ」と思っていたけど、まさかハンセンを相手に圧倒するとは…。

対するハンセンも、左ストレートやワンツーをヒットさせるなどで応戦したが、時間が経つに連れてアルバレスの打撃に押されるように。気がつけば顔面から出血し、動きは緩慢に。ふ〜む、アルバレスの打撃がコンビネーションを駆使しているのに対して、ハンセンの打撃は単発だからなぁ。その辺が実力の差となって現れている感じだね。


ってなワケで、1Rは「スタンド中心、アルバレスのペース」で進んだが、2Rはこれとは正反対の展開、つまり「グラウンド中心、ハンセンのペース」となった。正直、この展開は意外だったなぁ。


2R、ハンセンはグラウンドで上になるアルバレスを両足で浮かせ(バタフライってヤツ?)、腕十字を狙いつつマウントへ移行、すかさず腕十字〜三角絞めを極めに掛かる。う〜ん、1Rと同じ試合とは思えん。

変幻自在なハンセンの関節技を観客が歓声で支持する中、ハンセンはスタンドでバックを奪ったアルバレスの腕を極めて投げを放ち、更には諸手狩りから腕十字へと移行。一瞬、アルバレスの腕は完全に伸びきり、観客もハンセンの大逆転勝利を確信するも…、アルバレスは強引に逃れて立ち上がった。惜しいなぁ。

試合時間も残り10秒。両者共に激しくスタミナを消耗した状態の中、アルバレスは右ハイキックを叩き込むと、ワンツーでハンセンを攻め込む。最後の気力を振り絞ってハンセンが反撃する中で試合は終了。


両者はお互いの健闘を称え、観客はスタンディング・オベーションで名勝負の誕生を喜ぶ。そしてアルバレスは、コーナーポストからのバク転で観客の歓声に応えた。

判定の結果は3−0でアルバレスの勝利。だが、この勝負に勝者も敗者もないだろう。ハンセンはマイクで「エディは、今まで戦った選手の中で一番強かった!」と語り、アルバレスは「この試合はこの二人だからこそ出来たのだから、どっちが負けたとかではなく、二人とも勝者」と応えた。会場に吹いた爽やかな風、観客は大きな拍手で両者の健闘を称えた。


この一年で疲弊してしまった総合格闘技ファンの心に火を付けるのは、豪華な演出でもなく、ましてや凝ったアングルでもなく…高クオリティの試合を提供し続ける事だ。そういう意味では、DREAMという新しい舞台で、このような名勝負が誕生したのは大きい。「DREAMにはこれからも、このクオリティの試合を提供し続けて欲しい」、というのは贅沢な願いなんだろうけど…もし、それが出来たのであれば、日本の総合格闘技界の火は再び大きな焔(ほむら)を上げるだろう。

この試合で僕は「先の見えない日本の総合格闘技界」に一筋の光明を見い出した。ありがとうハンセン、ありがとうアルバレス

第八試合 実力の差

DREAMライト級GP 二回戦 1R10分+2R5分(インターバル90秒)
宇野薫(171cm/69.9kg/日本/和術慧舟會東京本部)
石田光洋(168cm/69.9kg/日本/T-BLOOD)
[2R 1分39秒 チョークスリーパー]

今回のDREAMのメインイベントは新旧修斗世界王者対決。ま、本当は石田は「環太平洋王者止まり」だけど、それは同階級の世界王者が川尻だったせいもあるので、「世界王者」って書いても問題はないだろう。ってなワケで、主催者推薦によりトーナメントを二回戦から出場する宇野に対して、石田が難癖をつけた事で因縁が勃発したこの一戦だが、これって本心からの発言なのかなぁ?なんか石田がメインイベントの重責から、無理して盛り上げようとしているように思うんだよねぇ。僕としては、あんまりキャラに合わない事はして欲しくないんだけどなぁ…。


1R、お互いに1分間以上も様子を見る中、試合はロー合戦に突入。石田のローブローを挟んで右アッパー、右フックをヒットさせたのは宇野。崩れる石田、それでも強引にタックルを仕掛けたが、宇野はコーナー際で粘ってテイクダウンを逃れる。おお、宇野が石田のタックルで倒れないのは意外だなぁ。

宇野の打撃で鼻血を出した石田は、再び宇野に組み付きタックルでテイクダウンを狙ったが、宇野はコーナーを使ってバランスを崩さない。石田の代名詞とも言える「ダイナモタックル」がまるで通用しない展開に、石田は徐々にスタミナを失っていく。おおぉ、スタミナには定評のある石田がこんな風になるとは…。

1Rも残り3分、ようやくテイクダウンを奪った石田だが、宇野は下から腕を獲ってパンチを打たせない。石田の腕十字も逃れた宇野は、再びスタンドで主導権を握る。左フックでフラッシュダウンを奪う宇野、石田は苦し紛れにタックルを決めてサイド、そしてバックを奪うも、宇野は巧みに防御して石田に攻め込ませない。う〜ん、宇野はここまで石田を子供扱いだなぁ。両者の間に、こんなに差があるとは思わなかった。

2R、左ローで石田の動きを止めようとする宇野。石田はタックルでバックを奪うも、宇野は身体を回転させて逆にマウントを奪い、回転体からバックを獲ってスリーパーへ移行。その鮮やかな動きに観客が歓声を上げる中、石田は力尽きてタップ。


ぬぬぅ…。「タックルでテイクダウンを奪い、あとはグラウンドでひたすらパンチを落とす」という戦法を得意とする石田だけど、この試合では「タックルが通用しないと負けが確定する」という事実をこの試合で証明しちゃった感じがするなぁ。

対する宇野は、憧れていたU.W.F.の回転体を使っての鮮やかな勝利。う〜ん、いい加減に第一線での活躍の長い宇野だけど、今日は彼が今も尚、選手として進化し続けているという事を見せ付けられてしまった。凄いなぁ、同じ三十代として素直に尊敬しちゃうよ…。


試合終了後、石田の盟友である川尻が『敵討ち』を宣言。ふ〜む、宇野と川尻かぁ。僕は昔から修斗にはトコトン疎いんだけど、四年前に実現した二人の対戦は何故か生観戦しているんだよなぁ。この時は「若干、川尻が有利か?」という展開の末、判定でドローとなっている。

そして今、二人を取り巻く環境は大きく変わった。宇野はHERO'Sを代表する選手となり、川尻はPRIDEの選手としてリングに上がる。そんな二人が今、激突すれば…勝つのは、大きい舞台での活躍経験が長く、己の技術に慢心しない宇野の方なのではないか。そんな想いを抱かせるには充分な完勝劇だった。ま、川尻の試合がピリッとしなかった、というのもあるんだけどね(苦笑)。

雑感

ジェイソン・ミラーイカレた強さを発揮し、攻防の噛み合った好勝負となった中村大介 vs チョン・ブギョンニック・ディアスが磐石の強さを示し、エディ・アルバレス vs ヨアキム・ハンセン総合格闘技界では上半期最高のベストバウトに。そして宇野薫の奥の深い強さが興行をビシッと締める。振り返れば、いい流れが続いた興行だったように思う。第一回、第二回とピリッとしない展開の続いたDREAMだけど、今回の興行は日本の総合格闘技ファンの心をガッチリと掴んだと思う。

こうなると重要なのが、掴んだファンをどう引っ張っていくか、だ。そんな中、次回のDREAMではホナウド・ジャカレイ vs ジェイソン・"メイヘム"・ミラー、桜庭和志 vs メルヴィン・マヌーフが実現。う〜む、ジャカレイとミラーは面白そうだし、桜庭とマヌーフは…桜庭側から観戦すれば、かなりハラハラする一戦になりそうだ。ふ〜む、次回のDREAMが素直に楽しみだ。


…まあ、こんな気分になれたのは、今回のDREAMがつくづく充実していたからだと思う。景気の悪い話、黒い噂、ズンドコ劇場、過剰な演出。色々なものが総合格闘技に取り巻いているけど…。


ファンを元気にするのは
『熱い試合』。


そんなシンプルな事実に、改めて気付かされた今回のDREAM観戦だった。


以上、長文失礼。